ある少女の物語〜マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝より〜   作:転寝

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活動報告にもありますが、今回からメインタイトルを変更しました。
重要な回にも関わらず相変わらず内容は薄いです…暇潰し程度に見てくだされば幸いです。


いろはの答え

「私は例え裏切られる事が分かっているとしても…それでも、咲ちゃんの力になりたい」

 目の前の少女から穏やかに告げられた言葉は、咲の予想とは大幅にかけ離れたものだった。

「…どうして」

 自分は親友を裏切ってしまった最低な人間だと咲は告白した。暗に「あなたの事も裏切ってしまうかもしれない」とも告げていた。だけど、いろははそれでも構わないと言ったのだ。

 いろはの眼は穏やかに咲を見詰めている。その奥底には、確かな「決意」が瞬いていた。

 嘘など全く込められていない、どこまでも真っ直ぐな眼…何故、こんな眼が出来るのだろう。

「咲ちゃんは裏切ったって言ったけど、私はそうは思わない。…咲ちゃんは、悪意を持って秕さんを傷付けたの?」

「それは違うけど…でも、わたしは…」

「なら咲ちゃんが悪いとは言えないんじゃないかな。悪意があって傷付けたならそれは咲ちゃんが悪い…でもね、悪意がないなら話は別だよ。それに…話を聞く限りだと周りに合わせようとしなかった秕さんにも非はあると思う」

「………」

 それは…そうかもしれない。客観的に見れば他人に合わせなかった秕にも非はある。それまでの出来事が積み重なってあの事態に発展したのだとしたら、寧ろ悪いのは秕かもしれない。それは分かっている。だが…。

「でも、わたしは手を差し伸べられなかった。秕ちゃんを、救えなかった。例え秕ちゃんが悪かったとしても…それを救えるのはわたしだけだったのに…わたしは自分勝手な願いでそのチャンスを無駄にした…!」

「…それは」

「秕ちゃんはわたしの助けを望んでたに違いない!なのにわたしはそれを踏みにじってしまった!だからわたしも悪いんだ!」

 叫ぶ様に言う咲は何処か狂ってさえあった。それを見ていろはの中にある疑問が生じる。

(なんで、咲ちゃんはそこまでして秕さんに拘るのだろう?)

 第三者である自分の目から見たら、この事件は誰が悪いという訳では無く、「起こるべくして起こってしまった」事件の様な気がする。秕の態度にも問題はあるし、それを許容しなかった周りも悪い。咲はただそれに巻き込まれただけなのだ。なのに咲は自分が悪いの一点張りでそれが余計に事件をややこしくさせてしまっている。「思い込み」に囚われてしまっている。

 そんな思考の間に、ふと咲の言葉が割り込んだ。

「仲間を作ったら、きっとわたしはその仲間を不幸にしてしまう。だからわたしは―」

 …その言葉に、いろはの感情は一気に沸騰した。

 

 

「そんな事はない!」

 激した感情が迸る。

 咲が驚いていろはを見た。

「それは思い込みだ!そんな馬鹿げた事…私は絶対に許さない!」

「環さん…」

 いろはは我に返り、それでも厳しい目付きで咲を睨んだ。

「それを言うなら、私が不幸になってから言ってよ。そんな事分からないのに、なんでそんな事が言えるの!?」

「………っ」

「私は絶対に咲ちゃんを見捨てないし不幸にもならない。秕さんの事だって私は咲ちゃんの思い込みじゃないかって思ってる。それでも咲ちゃんがまだ誰かを傷付けるのを恐れていて一歩を踏み出せないのなら…私がその手を掴むよ」

 その言葉を聞いて、咲の瞳の中に縋るような光が浮かび上がるのが分かった。弱々しい、けれど確かな光が、戸惑うかのように瞳の中で渦を巻く。

「私が咲ちゃんは悪くないって証明するよ。もしも傷を癒せなかったとしても、私が一緒に背負う。だから、そんな悲しい事、言わないで?」

 

 

 暫くの沈黙の後、咲は徐に言った。

「…いいの?」

「…いいんだよ、もう、一人で悩まなくても…いいんだよ」

「わたしは、仲間を不幸にしてしまうかもしれない。それでも、いいの?」

「大丈夫。それでもし不幸になったとしても、私は咲ちゃんを恨んだりしないよ」

 

 わたしは仲間を作ってもいいの?

 

 いいんだよ。

 

 わたしは、ひとりじゃなくてもいいの?

 

 私も一緒に背負うよ。咲ちゃんが背負ってるもの。

 

 

「だから…友達になろう?」

 

 

 

「…うん」

 

 

 

 凍った心が少しずつ解けていくような感覚。

 今まで背負っていたものの重さが、ふっと軽くなったような気がした。

 それで自分はひとりじゃないと、実感出来た。

 

 …不意に、涙が溢れた。

 今まで堪えていた感情が、一気に流れてゆく。

 感情の奔流に戸惑う咲の肩をいろはがそっと抱いてくれた。

 そして、

 

 

 

「………っ、うわああああああああっ!」

 

 

 

 気付いたら、彼女にすがりついて泣いていた。

 悲しい涙ではない。嬉し涙だ。

 涙を流してみて初めて、自分は救われる事ができるのかもしれないと思った。

 

 不意に、小説家志望の青年の言葉が蘇る。

―大丈夫だよ。神浜には今までの君を知っている人間なんて居ないはずだ。ゼロから、まっさらな状態で始まるんだからさ―

 青年はそう言ってくれたが、環境が変わったからと言ってまっさらな状態で始める事は出来ない。どこに行っても、何時までも、親友を裏切ったという罪は付いて回るだろう。その十字架をひとりで背負いながら、歩き続けていくのだと―そう思っていた。

 でも、いろはは自分も背負うと言ってくれた。咲と関わることで裏切られて、不幸になったとしても構わないとさえ言ってくれた。

 それが嬉しくて、咲はただただ泣いた。

 いろはは何も言わずに咲の背中をさすってくれている。

 街灯の光が、優しくふたりを照らしていた。

 

 

 ―ありがとう、いろはちゃん。




次回から新展開…なのかな?
とりあえずみかづき荘メンバーは出る予定です。
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