ある少女の物語〜マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝より〜   作:転寝

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コラボの続きです。
先輩と咲の一人称が切り替わりつつ進行していきます。


さいかいとへいこうせかい

 自宅に戻り、咲ちゃんを寝かせてから帰りがけに買った牛丼を食べ、それから本を読んだ。結局室内で過ごす事になったが…咲ちゃんを放置しておく訳にもいかないからな…。

 何を読んでるかっていうと… 村上春樹(むらかみはるき)の『1Q84』だ。難解だがいい小説だと思う。主人公は1984年の世界からその世界にそっくりな1Q84年に入り込んで、そこで色々な体験をして、ある男と再会して…非日常的なんだけど日常的っていうか…とにかく読んだ後に何かしらが残る小説だ。

 そんな感じで読んでると、ベッドの方から小さな声が聞こえた。どうやら目覚めたようだ。

 薄目を明け、まだぼんやりした顔で天井を向いた咲ちゃんに、俺は取り敢えず「おはよう」と言っておいた。

 …色々と誤解されそうなシチュエーションだった。

 

 

 

 

私はたまたまここに運び込まれたのではない。

 

私はいるべくしてここにいるのだ。

 

――――村上春樹『1Q84 Book3』

 

 

 

 …目が覚めると、何処か知らない部屋の天井が見えた。

 わたしはどうなったのだろう?確か何も無い空間で墜落して…という事はここってまさか…。

 混乱していると、誰かが「おはよう」と声を掛けてきた。

「ひゃっ!?」

 びっくりして思わず短く叫び声を上げると、その人も「うおっ!?」と驚きながら尻餅をついたようだった。

「あ…ごめんなさい」

「………いや、大丈夫だ。そっちこそ大丈夫か?」

「え?あ…大丈夫です…」

 ここでわたしは初めてその人を見た。尻餅をついたままの格好でいるその人は…わたしと同じ場所にいる事がない筈の人物だった。

「って、先輩!?」

「やぁ咲ちゃん…久しぶりだね」

 この人の名前は―。周りからは先輩と呼ばれているからわたしもそう呼んでいる。魔法少女の事を知っているだけではなく、魔女が見えたり並の使い魔にある程度は対抗出来たりと本当に凄い…という言葉では収まりきらない人だ。

 そして、わたしと先輩は住む世界が違う。これは比喩表現ではなく、本当に住む世界が違うのだ。先輩が居るのは、わたしがいる神浜とはまた別の神浜…所謂並行世界の神浜だ。わたしの世界の神浜には先輩は居なくて、同じ様に先輩の世界の神浜にはわたしは居ない。神浜に居ないというだけで何処かには居るのかもしれないけれど…兎に角、そういう事だ。

「お久しぶりです…先輩が居るって事は、此処って…」

「ああ、此処は俺が居る世界線の神浜だ。前とは逆の状況になってるんだな」

 以前、わたしがいる世界線に先輩が迷い込んだ事があって、彼とはその時初めて会ったんだけど…その時は確か「果てなしのミラーズ」が関わっていた筈だ。

 「果てなしのミラーズ」というのはとある魔女の結界の俗称だ。そこに入ると魔女の手下によって自分の型を取られ、自分のコピーと戦う事になる。わたしも行ったことはあるけど…本当におかしな結界だった。

 話が脱線したが、ミラーズには複数の入口があって、その中には並行世界に繋がっているものもあるらしい。先輩はそれで此方の世界に迷い込んできたのだ。最後は無事に元の世界に戻れたらしいけど…。

「でも…わたし、ミラーズなんて行ってないですよ?」

「だが、それ以外に世界線を超える方法なんて思いつかないぞ?咲ちゃんはここに来る前、どうしてたんだ?」

「えっと…」

 今ならあの暗闇に居た時より以前の事が思い出せる。と言っても特別な事は何もしていない。変わらない日常を過ごし、夜になって普通に眠った。そして次に気が付いた時はあの暗闇の中に居た。

「特にこれといった事はしてませんが…」

 先輩に話すと、彼は腕組みをしながら何かを考えていたが、やがて言った。

「もしかしたら…此処は咲ちゃんの夢の中だったりしてな」

「夢の…中?」

「だって咲ちゃんはいつもの様に眠ったんだろ?だったら此処は夢の中だ」

「でも…」

 夢にしてはリアル過ぎる。先輩だって普通の人格を持ったれっきとした人間だ。

 先輩はわたしを見て、訊いた。

「…村上春樹の『1Q84』って知ってるか?」

「…読んだことはありますけど…」

 言うと、先輩は「咲ちゃんって意外と読書家なんだな」と感心したように頷き、また続けた。

「あの中で主人公は高速道路の非常階段を降りてもう一つの世界…1Q84年に迷い込んだ。村上春樹の作品には良く見られる『深層意識の世界』へ入ったってヤツだ」

「つまり…それと同じだという事ですか?」

「そうかもしれない。咲ちゃんは何らかの要因によりこの世界に運ばれた。まあ此処が咲ちゃんの深層意識の世界だとは言えないが、それでもれっきとした理由はある筈だ」

「理由…」

 そう、理由だよと先輩は呟き、窓の外を見た。昼間だが月が浮かんでいる。

「流石に月が二つ浮かんでるなんて事はないか…ま、兎に角この世界で咲ちゃんは()()を見つけるんだ。そうすりゃ帰れるんじゃないか?」

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と先輩は言って、大きく伸びをした。

 でも、わたしは思う。

 

 ― わたしはこの世界で何をみつければいいんだろう?

 

 

 

 

 夜になり、咲ちゃんをみかづき荘まで連れていって事情を説明し、泊めてもらう事にした。

 咲ちゃんは野宿でいいって言ってたが…年頃の女の子に野宿なんてさせる訳にはいかない。かといって俺の部屋だとあらぬ誤解を生みそうで怖かったからこの判断は妥当だったといえるだろう。

 然しみかづき荘に咲ちゃんを連れていった時の後輩(いろは)の顔…遂に間違いを犯したかという顔だった。何故だ…。

 ベッドに寝転び、目を閉じる。

 何故咲ちゃんは此方の世界に飛ばされて来たのか。あの時はああ言ったが、本当の所はよく分からない。大体見つけるものってなんだよ。

 分からない。今は、何も…。

 

 …いつの間にか、俺は眠っていた。




「…なんだか、よく分からない話になってきたね…」

「そうだね…」

「まあこれからどうなるかは作者の力量次第だろ。それよりキュゥべえ、挨拶しろよ」

「そうだね、此方でははじめまして、―の所のキュゥべえだよ」

「本編では魔法少女契約のプロであるキュゥべえだけど、コイツは感情が芽生えて精神疾患扱いされたからリンクを切られてるんだ」

「今は魔法少女の味方だよ。神浜には入れないけどね」

「そうなんだ…そういうキュゥべえって多いの?」

「まあ、そんなに多くはないかな。でもボクは感情を持てて良かったよ」

「そっか…」

「…って咲、ボクを抱きしめてもふもふするのはやめてくれないかな!?びっくりしたよ!?」

「なんか…可愛くて」

「……まあ、コイツは主に後書き要因になりそうだな」

「なんで!?ボクの出番…」

「基本神浜でストーリーが展開されるからな。まあ市外に出るかもしれないけど」

「はぁ…まだ分からないってことか」

「ああ、次回は…みかづき荘メンバーに咲ちゃんが翻弄される回になるかもな。此処の魔法少女は他とは一味違うぜ?」

「あはは…どうなるんでしょうね…。それでは今回はこの辺で終わりにします」

「次回もよろしくね!」



登場人物

琴音咲…目を覚ましたら違う世界線の神浜にいた。わけがわからないよ状態だが果たして無事に元の世界へと帰れるのだろうか?

先輩(コラボ)…村上春樹の『1Q84』を読んでいた。先輩ならあの話理解出来そう。作者は難解で挫折しました。咲が転移した理由をそれっぽく語るが…ぶっちゃけ本当の所は不明。
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