ある少女の物語〜マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝より〜 作:転寝
進みが遅いですがよろしくお願いします。
翌朝。
わたしはみかづき荘で朝食を食べていた。
トーストに目玉焼き、サラダに牛乳というメニューの朝食を、みかづき荘の皆と食べる。
わたしの世界でもみかづき荘の朝はこんな感じなのだろうかという事を考えながら、トーストにバターを塗り、一口齧った。サクサクしていて美味しい。
食べながら、話題は先輩の事になった。昨日の夜に先輩に連れられてみかづき荘に行った時、先輩に向けられていた冷たい視線…どうやらあらぬ誤解をされていた様だった。わたしと先輩はそういった仲じゃないけれど、傍目から見たらそう見えていたのかと考えると頬が熱くなる。
確かに先輩は素敵な人だと思う。だけどそれは「憧れ」であって恋愛感情ではない…と思う。でも先輩といると何だか懐かしい感じがして心地好い。その理由は何となく分かっていた。
先輩はわたしがよく知っている人…小説家志望のあの人とよく似ているのだ。魔女や使い魔を見ても動じない所も、頭が良いことも…よく似ている。
この世界のいろはちゃん達は、多かれ少なかれ先輩に好意を抱いている様だった。いろはちゃんとかういちゃんは特に分かりやすい。昨日の夕食の時、先輩との事を色々聞いてきたから。やちよさん達も興味深々で聞いてたっけ。でも…その気持ちも分かる。
魔法少女に理解を示してくれる…それだけでも、嬉しいのだ。それが男の人なら尚更だと思う。
わたしにはまだその気持ちがよく分からない…だけど、それを羨ましいと思った。
わたしもいつか、そんな気持ちになれるのかな?
「………さん、琴音さん!」
やちよさんに名前を呼ばれ、我に返る。
いつの間にか私以外の人は朝食を食べ終わっていた。
「あ…!ごめんなさい!すぐ食べます!」
「ゆっくりでいいわよ」
やちよさんは微笑んだ。わたしはありがとうございますと言い、またトーストを齧った。
今日は平日。皆は学校だ。わたしは学校に行っても意味が無いので先輩が言うところの「何か」を見つけるために行動しようと思っていた。
といっても手掛かりは何も無い。そもそも何を見つければいいのかも分からないのだ。全てが漠然とし過ぎている。
でも、わたしには一つ考えというか確信があった。わたしが見つけなければいけないものは、神浜には無いという確信が。
この世界の神浜にわたしは居ない。神浜には居ないというだけで他の場所には居るのかもしれないけど、神浜に居ないのは確実だった。
昨日、みかづき荘に向かう途中で琴音家がある場所に立ち寄ってみたらそこは唯の空き地だった。どうやらこの世界線のわたしは神浜に引っ越さなかったらしい。
じゃあどこに居るのかと考えてみると、答えはすぐに出た。
わたしが神浜に来たのはお父さんの転勤が原因だ。神浜に琴音家が居ないという事はお父さんが転勤しなかったという事になる。そうするとこの世界のわたしが居るのは前住んでいた街…冬天市だ。
先ずは冬天市に行ってみて、それからどうするか考えようと思った。一応先輩にも連絡しておこう。
わたしは携帯端末を持っていないので(持っていても繋がらない気もした)いろはちゃんの携帯端末を借りてメッセージを打った。
そして朝ご飯を食べ終わり、洗い物を手伝ってからみかづき荘を辞した。
そして新西駅へと向かうべく歩き出した…所でいろはちゃんに呼び止められた。
先輩からリプライが帰ってきたみたいで、それを見せてくれた。
そこには…「俺も行く。新西駅で待っていてくれ」とあって、わたしは思わず目を丸くした。
*
朝起きて、適当にトーストと牛乳で朝飯を済ませていると携帯にメッセージが届いた。
朝から何事だと思ってメッセージアプリを開いてみると、普段とは違った雰囲気のメッセージが届いていたのでぶったまげた。どうしたんだアイツは…改心でもしたか?
改めてメッセージを見ていくと、それが咲ちゃんからだと分かった。そういえば携帯持って無かったな。だからアイツのを借りたのか。
自分がこの世界に来た原因を探る為に冬天市に向かう…内容は大体こんな感じだった。冬天市か…ここからじゃかなり遠い。三時間くらい掛かるんじゃないか?
それに多分咲ちゃん金持ってないよな?気付いてないみたいだけど…やれやれ、乗り掛かった船だ。俺も行くとしよう。学校?サボる。今日は大事なテストも無いし、出席日数にはまだ余裕があるからな。
「俺も行く。新西駅で待っていてくれ」とリプライを送って、準備を開始した。
*
新西駅で待っていると、先輩がやって来た。黒を基調とした私服姿で、髪はボサボサで目もどこか眠たげだった。
「おはよう咲ちゃん…」
「おはようございます…すいません、わたしなんかの為に…」
「いや、大丈夫だよ。それに咲ちゃん金持ってないだろう?電車乗れないんじゃないか?」
言われてみればそうだった。わたしは何も持ってない…転移した時に服装が寝間着から制服に変わったけど、そこにもハンカチとティッシュしか無かった。
「うっ…それはそうですけど…」
恥ずかしい。先輩はこうなる事を分かって着いてきてくれたんだ。
でも、神浜から冬天まではかなり遠い。交通費もそれなりに掛かる。
「やっぱり、悪いです…」
「大丈夫だって、俺は暇人だし。金の事なら心配しなくていい。それにやりたいからやってるんだ。悪く思う事はないよ」
先輩は微笑んだ。それで少し心が軽くなる。
「じ、じゃあ…戻ってきたら何か作ってもいいですか?わたし料理は得意なので…」
わたしに出来る恩返しなんて、これくらいしか無かった。
「有難いよ。楽しみにしてるな」
先輩ははにかんでわたしの頭を撫でた。小さな子供になったみたいでくすぐったかった。
それから二人分の切符を買い、改札をくぐって電車に乗った。
目指すは、冬天市―。
「結局みかづき荘メンバー全然関わらなかったな」
「当初の予定では一話丸々使う予定だったらしいよ。書いてる途中で気が変わったみたいだね」
「なんでも、自分にはあのカオス感を出すのは無理だーとか言ってたらしいです。それを書ける先輩は本当に凄いとも言ってました」
「…褒め言葉として受け取っておくよ。というか褒め言葉か。ここの作者はカオス感皆無の駄文が専門だからな」
「しかも二千字程度書くのに十日以上掛かってるし。本人は構成に八日掛けて執筆は二日で終わらせたとかほざいてるけどね」
「ま、まあ執筆スピードは人それぞれですから…」
「まああの阿呆の事は置いておいて…次回は冬天市って所に行くらしいな。咲ちゃんが元いた場所なんだろ?」
「はい、元の世界では色々と因縁がある場所でしたが、この世界ではどうなっているのか…」
「次回もよろしくね!」
登場人物
琴音咲…手掛かりを求めて冬天市へ向かう事に。ちなみに一文無しで携帯端末も持ってないらしい。その状態で何故電車に乗ろうと考えたのか…。
先輩(コラボ)…咲を放っておく事が出来ずに同行する事に。基本的にお人好し。だからモテる。咲の手料理を食べられるかは…今後の展開次第で。
環いろは(コラボ)…ちょい役での登場。ファンの皆様申し訳ございませんでした。作者の方の先輩曰く「バグいろは」らしい。彼女の詳しい人物像は「先輩と魔法少女」で描かれているので是非ご覧下さい。
七海やちよ(コラボ)…ちょい役での登場。本当にすいません…。彼女はいろはに比べると多少原作寄りかな?夕食時の会話で一番興味深々だったのはやちよさんだったとかいう裏設定があったりなかったり。そこら辺はまた番外編という形で書いてみたいです。