ある少女の物語〜マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝より〜   作:転寝

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コラボの続きです。


ひとつのしんじつ

 冬天市。

 人口は約37万人程の地方都市。

 古くから交通の要所として栄え、外国人も多い。

 近隣の市として、県内最大級の病院である「陽ヶ鳴(ひがなき)総合病院」が所在する「陽ヶ鳴市」と、近年になって近代的な都市開発が進められ、最先端技術も数多く導入されている相当な規模の近未来型都市である「見滝原(みたきはら)市」が挙げられる。

 魔法少女の数は少なく、元から魔女の数もそこまで多く無い為治安は保たれており、魔法少女同士の争いも皆無に近い平和な街だ。

 そんな冬天市行きの電車にわたしと先輩は乗っていた。

 先輩は座席に座って直ぐに眠ってしまった為、わたしはワイヤレスイヤホンで音楽を聴きながら考え事をしていた。

 何故、自分はこの世界に飛ばされたのだろう。以前は先輩がわたしの世界に飛ばされて来て、今回はわたしが先輩の世界に飛ばされて来た…わたしと先輩だけが異常なのか、いろはちゃん達も飛べるのか…先ずそこが不明瞭だ。

 そして、わたしが飛んだ方法も分からない。ミラーズは使っていないのに世界線を超えるなんて…そんな事が、只の人間に出来るのだろうか?

 …全くもって分からない事だらけだ。頭痛がしてきて、わたしも目を閉じた。

 

 

『次ハ冬天駅ニ止マリマス。オ出口ハ右側デス』

 …無機質な車内アナウンスに目が醒めた。いつの間にか寝ていたらしい。ええと…次が冬天駅か。寝過ごさなくて良かった…。

 ほっとしながら隣を見ると、咲ちゃんが眠っていた。イヤホンしたまま寝てるよこの子…その寝顔は大丈夫かと心配になる程無防備だった。

「咲ちゃん、起きろ…次が冬天駅だぞ」

 俺は咲ちゃんを揺り動かし、起こす。咲ちゃんは暫く揺られていた後、薄目を開けた。

「せんぱい…?」

 寝起きのとろんとした目が俺を見る。だから無防備過ぎるんだよこの子は…変な人に襲われやしないかと不安だ…。

「おはよう。もうすぐ着くぜ?」

 その言葉に完全に覚醒したらしい。慌てた表情になり、口元に手を触れる。

「よだれは垂れてなかった。大丈夫だよ」

「……!先輩デリカシーないです!」

 顔を真っ赤にして言われた。失言だったか…。

『間モナク冬天駅ニ到着イタシマス。オ忘レ物ニゴ注意クダサイ』

 再びアナウンス。俺と咲ちゃんは立ち上がり、ドアの付近へと移動した。

 電車が完全に停止し、押しボタンが赤く点灯する。今時押しボタン式か…珍しいな。

 ボタンを押し、外に出た。

 

 

 駅の構内から出ると、見慣れた光景が広がった。

 神浜市の規模とは比べ物にならない街…だけど、少し前まではこの街がわたしの世界の全てだった。

「此処が冬天市か…」

「はい。懐かしいです…」

 行き交う人、車の排気音、規模が小さい高層ビル…全てが、懐かしい。

「もう昼飯か…どっかで飯でも食ってくか?」

 先輩の言葉に空腹のお腹が反応し、間抜けな音を響かせた。思わず赤くなると、先輩は笑いながら近くのファストフード店へと連れて行ってくれた。

 注文を済ませ、席に着く。昼時の店内は混雑していた。その中に、幾つか見慣れた顔を発見した。

「あ…」

「どうした?」

 かつて吹奏楽部で一緒だった人達が、笑いながらハンバーガーを食べていた。わたしには気づいていないようだったが…コンクールの時の事が頭を過ぎり、少し厭な気分になる。

「…なんでもないです」

 慌てて視線を逸らした所で注文した品が届いた。

 それからは、意識して食べるのに夢中で先輩とも話をしなかった。

 だけど、厭な気持ちはいつまでも胸の中で燻っていた。

 

 

 飯を食った後、俺達は咲ちゃんの家に向かっていた。

 神浜には琴音家は無かった…若しかすると引っ越して来なかったのかもしれない。だとすると、冬天市にこの世界の咲ちゃんがいる筈だ。

 だが…咲ちゃんの案内によって辿り着いた団地の部屋には、違う人の名前が書いてあった。

「ここの筈です…」

 咲ちゃんが愕然とした様子で呟いた。

「落ち着け。ここの人に話を聞いてみよう」

 呼び鈴を押すと、何やら女物の衣装を纏ったイイ男が出てきた。コイツ…頭にオが付く系の人か?

「この部屋に以前住んでいた人について聞きたいんですが…」

「そう言われてもアタシは知らないわよぉ…アタシが入った時は空き部屋だったからねぇ〜…あ、そうだ」

 部屋の住人は見かけによらず良い人だった。何かを思い付いたように目を見開き、手を打つ。

「この近くに無題荘(むだいそう)っていうアパートがあるのよぉ。そこの大家をしてる(ババァ)なら何が知ってると思うわぁ」

「無題荘…」

 咲ちゃんが小さく呟いた。

「知ってるのか?」

「あの人が住んでるアパートです…」

 咲ちゃんが言う「あの人」とは彼女の恩人である小説家志望の青年の事だろう。

「そうか…ありがとうございます。行ってみます」

「お易い御用よぉ〜。アタシは釜野(かまの)っていうの、また何か困ってたら言って頂戴ねぇ」

「ありがとうございます釜野さん!」

 俺達は住人…釜野さんに礼を言い、無題荘へと向かった。

 

 

 無題荘はかなりのオンボロアパートで、人も余り居ないようだった。

「一階の真ん中が大家さんの部屋です」

「わかった。一応咲ちゃんは此処で待っていてくれ」

 先程は何も考えずに同行させてしまったが、若しかすると無題荘にこの世界の咲ちゃんが居るかもしれない。ミラーズじゃあるまいし、本人同士の対面は宜しくないだろう。咲ちゃんもそれを分かっているのか、小さく頷いた。

 呼び鈴を押すと、ややあっておばさんが出てきた。釜野さんは婆と言っていたが普通に若々しい人だ。

「あのー…すいません。この辺に琴音さんという人のお宅がある筈なんですけど…」

 大家は驚いた様に目を見開いた。

「アンタ…琴音さんの何だね?」

「え、いや…友人です。ちょっと外国にいたもので、久しぶりに会うんですけど…」

 勿論嘘だ。だが大家は信じたらしく、低い声で言った。

「……そうか、あの事を知らないのか…」

「え?」

「友人というのは…咲ちゃんの事かね?」

 いきなり咲ちゃんの名前が出てきて驚いたがよくよく考えれば当然だ。あの団地と無題荘は近所だし、交流もあっただろうからな。

「はい、そうですが」

「……落ち着いて聞きなされ」

 大家は暫く沈黙した後、徐に言った。

 

「咲ちゃんは少し前に自殺してな…もう、この世には居ないのじゃ…」




「………どういう事なの」

「いや、俺に聞かれても…」

「…咲も居ないし、今回は簡素でいいよね?」

「まあ、そうだな…」

「…次回もよろしくね」

「咲ちゃん…大丈夫なのか…?」


登場人物

琴音咲…この世界の咲は既に居ない模様。この事実を知る為にこの世界に飛ばされたのか…?

先輩(コラボ)…衝撃の事実を知る。次回、先輩はどう動くのか。

釜野…お人好し系オカマ。琴音家がいた部屋に住んでいるが事件の事は知らない模様。

大家…無題荘が誇るババア。事件の事を知っており、先輩に話してくれた。
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