ある少女の物語〜マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝より〜   作:転寝

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コラボの続きです。


じけんのおわり

「え…」

 

 血飛沫。

 それは、目の前にいる人のものだった。

「せんぱい…?」

 スローモーション。

 全ての動きが遅くなる。時間が粘ついた様だった。

 先輩は、わたしの前でゆっくり吹っ飛ばされていく。それに手を伸ばそうとするがわたしの時間も粘ついていてままならない。

 先輩は数メートル程宙を舞い、どさりと音を立てて倒れ…そのまま動かなくなる。

 まるで…人形の様に。

「あ…」

 なんで。

 なんで、わたしなんかを庇って…!

「 ――――!」

 声にならないか細い声が響く。

 それが自分の喉から発せられたものだと気付くにはかなり時間が掛かった。

 魔女は前面を血で染め、またこちらに突進しようとしている。

 でも…そんな事はどうでもいい。

 

 

 

「せんぱい…」

 わからない。

 わからないよ。

 なんで、わたしをかばったの?

 なんで、わたしはいつもこうなんだろう。

 まわりのひとをきずつけて。

 じぶんだけがむきずでわらっている…

 

 

 

 …こんなわたしなんか、もういらない

 けしてやる。

 わたしもまじょも、ぜんぶ―。

 

 

 

「ぜんぶ、きえてしまえばいい!」

 

 

 ソウルジェムが濁り切って。

 そこから、()()が生まれた。

 

 

 

 

「…………っ!」

 

 激痛により、遠のいていた意識が戻った。

 あの魔女に激突されるのは実は二回目だ。どうやら俺は意外と頑丈らしい。前は二週間で退院出来たし。多分今回もこれ以上やられなきゃ大丈夫だろ。

「クソ…オカマほりめ…」

 なんで俺はあの魔女と縁が深いんだ。もしかして付け狙われてる?

「…そうだ、咲ちゃん…」

 咲ちゃんはどうなった。

 ソウルジェムが濁り切ってた…此処は神浜じゃない、このままだと手遅れになる…。

「グリーフシードは…あるわけないか…」

 よろよろと立ち上がる。アドレナリンが出てるのか痛みはあまりない。

 それで魔女の方を見た時…俺は目を疑った。

「なんだ…あれは…」

 

 ―そこには、二体の魔女が居た。

 一体は廃車の魔女。そしてもう一体は…。

「ティンパニ…?」

 目玉のついた三つの大きなティンパニの後ろに人間の形をしたナニカが居て、ソイツが廃車の魔女と相対していた。

 まさか…アレは…。

「咲ちゃん…なのか…?」

 咲ちゃんが…魔女に…。

 

 廃車の魔女はティンパニの魔女に突進しようとする。

 それに動じた様子も無く、ティンパニの魔女はティンパニを力強く叩いた。

 瞬間―衝撃波で廃車の魔女が吹っ飛ばされる。音こそ鳴らなかったが、そのティンパニから生み出される衝撃波は廃車の魔女と共に周りの使い魔を吹っ飛ばす程強力だった。

 廃車の魔女はもんどりうって転がり、逆さまになる。その隙を逃さずにティンパニの魔女は持っていたマレットで廃車の魔女を叩き始めた。

 マレットの先端はティンパニの皮を突き破らない様に少しモコモコしてる筈だが…叩かれた場所の部品は壊れていく。ティンパニの魔女はロールの要領で廃車の魔女を叩きまくり、一瞬にして鉄クズの山にしてしまった。

 そして最後に再びティンパニを叩いて衝撃波を発生させると、鉄クズの山は散乱し、辺り一面に散らばった。

 …これが、あの咲ちゃんなのか。

 無感情に廃車の魔女を本物のスクラップにしてのけたティンパニの魔女を見て、今更ながら恐怖が湧き上がる。

 魔女は俺の方に身体を向けた。こりゃあ本当に終わったか…?

 死ぬのは怖くない。だけど…絶望に染まった咲ちゃんに殺されるとは…。

 魔女がマレットを振り上げた…瞬間眩い閃光が走り、思わず目を閉じる。

 眩いひかりを瞼の裏で感じながら、俺はあっさりと自分の命を諦めた。つまりは観念した。

 もうダメだ。

 俺は此処で…死ぬ。

 

 

 

 

 

 

 …どれだけ経っても攻撃が来ない。

それどころか、辺りが騒がしくなっている。

「おい君!大丈夫か!?」

 何やら慌てた声が聞こえたので目を開けると、そこには顔面蒼白のおっさんが立っていた。…って、魔女は?

 辺りを見渡すと、元の街の風景が広がっていた。魔女が居た痕跡なんてどこにも無い。

 つまり俺は廃車の魔女に跳ね飛ばされた時の傷を負ったまま街の中で突っ立っていた訳で…そりゃあおっさんも顔面蒼白になる訳だった。

「………あー、大丈夫です」

「いや大丈夫じゃないからね!?直ぐ救急車呼ぶから!」

 で、すぐさますっ飛んできた救急車に乗せられ、隣町の病院に運ばれる事態になったのだった……オカマほりめ。

(それにしても…)

 咲ちゃんの魔女は…何処に行ったのだろう?

 此処が彼女の夢の中…だとしたら彼女自体には影響は無いはずだが…。

 それにあのひかりは何だ?

 まさか、あれのおかげで消えたとかじゃないよな?

 有り得ない…とは言いきれないが…とにかく、これで終わった事は確かだった。

 何も解決しないまま…終わったのだ。

 不意に、疲れを感じて目を閉じる。

 俺は静かに微睡みの中へと落ちていった。

 

 

 

 …こうして何もかも分からないまま、この物語は終わった。

 だけどこれは俺にとっての終わりであって、咲ちゃんにとってはこの物語はまだ少しだけ続いている。

 …そしてそれは、俺が語るべき物語ではない。

 後の物語は、咲ちゃんの口から語られるべきだろう。

 

 

 …けたたましいアラームの音に目を醒ました。

 手探りで小学生の頃から使っている目覚まし時計を探り当て、アラームを止める。

 まだ意識がぼんやりしていて、頭も働かない。ついでに目も開かない。

「………んー」

 掛け布団の暖かさが気持ちいい。このまま二度寝出来たらどんなにいいだろう…。

 いやでも、あと五分くらいなら…いいよね?

 また意識を眠りの底へと沈めようとした時…ドアが勢い良く開いた。

 次いで、大きな声が部屋中に響き渡る。

「咲!いつまで寝てるの!朝だよ!」

 …その声で、意識が完全に覚醒した。

 二度寝計画が失敗した事を残念に思いながら、ベッドから降りて制服に着替える。

 そして、朝ご飯を食べる為にリビングへと向かった。

 

 

「いってきまーす!」

「行ってらっしゃい。車に気を付けてねー!」

 家から出て、のんびりと学校へ向かう。

時間にはまだまだ余裕がある。わたしはイヤホンで音楽を聴きながら歩いていた。

 いつもなら至福のひとときとなる筈のその時間。だけど今日は音楽に集中出来なかった。

 その理由が気になって、つい口に出してしまう。

 

 

「―あの夢、いったいなんだったんだろう?」




「またボクだけか…まあいいや」

「意外とあっさり終わったね。咲が魔女化して、廃車の魔女を解体して…そのあと咲の魔女も消えて事件は終わり。──は助かって咲は元の世界で目を醒ました。特になんの感慨もなく終わったといえるだろう」

「補足しておくと、──がひかりを感じた時に咲は夢から覚めたみたいなんだ。あのひかりは、咲の魔女が消えた時のひかりみたいだね」

「これで大方終わって、次回はエピローグだよ。咲だけじゃなく、──のその後も明かされるからぜひ見てね」

「それでは今日はここまで。次回もよろしくね!」


登場人物

琴音咲…魔女化した。その後本人は元の世界で無事に目を醒ました模様。

先輩(コラボ)…廃車の魔女に轢かれたが何とか生きていた。全治三週間と診断されたが回復が早いので二週間で退院出来そう。

廃車の魔女…咲の魔女によって解体された。

廃車の魔女の手下…主の巻き添えを食らった、かわいそう。

ティンパニの魔女…琴音咲が魔女化した姿。性質は無音。誰かを楽しませる為にティンパニを叩いているがその音は誰にも届かずに滑稽に叩くだけとなる惨めな魔女。
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