ある少女の物語〜マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝より〜 作:転寝
思えば、奇妙な夢だった。
もうひとつの神浜に飛ばされて、そこで先輩と再会して、どうして自分が別の世界に飛ばされたのかを探る夢。その理由は最後まで分からなかったけれど、でも…不思議な夢だった。
明晰夢というやつだろうか。夢の内容はやけにハッキリと覚えていた。目醒める前…つまり夢の終わり際の事以外は。
わたしが覚えているのは…先輩と一緒に廃車の魔女の結界に入ってしまった所までだ。そこからの事は曖昧で思い出せない。
先輩は…大丈夫だったのかな。結界に入って無事な一般人は少ない…だけど先輩は何度か結界に入って無事に生還したと聞いた事がある。だから大丈夫…とは言い切れないけど…。
もやもやした不安を抱えながら、学校に着いた。
授業中、わたしは今朝の夢の事ばかり考えてしまって授業に集中出来なかった。
「琴音さん!大丈夫?」
先生に呼ばれ、ハッとなる。
「具合悪いの?」
「あ…いえ、大丈夫です」
そうは言ったものの、授業に身が入らない。
もしかしたら、わたしのせいで先輩は死んでしまったのかもしれない。どんなに否定しても、その考えが湧き上がってくる。
…なんで、わたしはいつもこうなんだろう。
その後は、ぼんやり過ごすだけだった。いろはちゃん達にも心配されたけど、誤魔化すしか無かった。
夢の中で世界線を超えたなんて言ったら余計に心配を掛けてしまうだろうから。
夜になり、わたしはいつもの様にベッドに入った。
何時もなら直ぐに眠れるのだけど、今日は何故が目が冴えて中々眠れない。
暗闇の中、天井を見上げる。
(魔女の結界に入った後、どうなったんだろう)
そこが肝心なのに、どうしても思い出す事が出来ない。
わたしにとっては夢だけど、先輩にとっては現実だ。彼処で死んでしまったら、もうそれでお終いなのだ。先輩は、わたしの事を恨んだだろうか?
(…恨んだに決まってる)
振り回したのはわたしだ。先輩は巻き込まれたに過ぎない。全て、わたしが悪いのだ。
(もう一度夢を見たら…あの世界に行けるかな?)
可能性はある。だけど限りなく低いだろう。転移の原因が分からないし、試しても仕方がないと思った。
それから、まだ冴えている頭であの世界に行く方法を模索したがどれも具体的では無く、そのまま夜が明けていった。
結局、一睡もできなかった。
翌日は休日だった。
わたしはなんとなく果てなしのミラーズまで足を運んでいた。
別の世界線への移動…それはこの場所を使うしかない。それでもあの世界に辿り着ける確率は微小なものだろう。だけど、やるしかない。
コピー達を押しのけ、一つの鏡に飛び込もうとした時…鏡が光り、思わず目を閉じる。
次に目を開けた時、わたしの前には…一人の男性が立っていた。
*
結局、二週間ほどで退院出来た。前もオカマほりに撥ねられて入院二週間コースだった気がする。手加減でもされてるのか?
自分の身体の頑丈さを思い知りながら自宅に帰ってきた。何だか懐かしい感じがするぞ…そう言えば咲ちゃんのいる神浜から帰ってきた時もこんな感覚があったっけ。
それから夜になり、俺は酒を飲みながらこれまでの事を思い出していた。未成年は酒を飲んではいけない?今は黙認してくれ。疲れてるんだ。
…あの後、病院には魔法少女達がかわるがわるお見舞いに来てくれた。俺は彼女達に頼んで咲ちゃんの魔女を探したが結局見つけることは出来なかった。どうやら本当にこの世界から消えたらしい。兎に角、無事ではあるのだろう。
それで自宅であるアパートに帰ってきた時、自分の部屋の表札を見て思った事があった。
俺がいる神浜に咲ちゃんはいなかった。冬天市にはいたが、その存在は既にこの世から消えていた。
なら、咲ちゃんの世界の俺はどうだろう?前に行った時は神浜には居なかったが、もしかしたら他の場所にはいるのかもしれない。そうであってほしい。
もし…存在していなかったり魔法少女と関わらないうちに死んでしまっていたとしたら…ある考えが的中してしまうからだ。
もし仮に俺と咲ちゃんがそれぞれ魔法少女と関わるべき存在ではなかったとしたら、この状況は異常といえる。それなら、
そこまで考えてから思考の剣呑さに身震いする。酒を入れている筈なのに身体の芯が冷たい。俺は慌てて思考を中断した。
だけど、調べないと気が済まないよなぁ…自分が世界の異物だなんて、恐ろしすぎるだろ。…そうだ。
アルコールで酩酊した頭で、ぼんやりと明日やる事を決めた後は酔いに身を任せた。
それからは覚えてない。
翌日、俺は果てなしのミラーズに向かった。
世界線移動なんて此処でしか出来ないからな…多分。
まあなんとかなるだろ。偶然咲ちゃんがいる世界に行けたらラッキーって事で。
結界の中に入り、魔法少女達のコピーに追いかけ回されながら目に付いた鏡にダイブした。
鏡はすんなりと俺の身体を受け入れ、そして…。
気が付くと、目の前には燕尾服を着た華奢な女の子がいた。こちらを見て驚いた様な表情を浮かべている。無事だったか…良かった。
女の子の顔を見て思い出す。そう言えば手料理食べる約束してたな。折角来た事だし頂くか。
俺は笑顔で彼女に言った。
「やあ、咲ちゃん」
「という訳で、これで1.5章は終わりだ。ここまで読んでくれてありがとうな」
「お疲れ様でした!」
「本当は此処で色々語りたい所だけど、下手すると本編より長くなっちゃうから簡単に済ませるよ」
「ではまず…先輩、コラボありがとうございました!」
「こちらこそありがとう。シリアス多めだったがまあ…新鮮だったよ」
「先輩と魔法少女は日常物だからね…ここの作者はやりたい放題やれて満足したらしいけど」
「にしてもめちゃくちゃな話だったよな。なんでこうなったんだか…」
「あはは…でも、無事に終わって良かったです」
「まあ、そうだな…」
「ボク達があとがきを務めるのはこれで最後だけど、これからも『先輩と魔法少女』と『ある少女の物語』をよろしくね!」
「そのうちまたコラボするかもな。というかこっちの作品では咲ちゃん度々出てるし」
「世界線も何度も超えてますしね…」
「それではそろそろお暇しようか。詳しいあとがきは活動報告の方に上げる予定だからそっちを見てね」
「ではまた。こっちの作品も是非見てくれ」
「次回以降もよろしくお願いします!」
登場人物
琴音咲…事件の後、思い詰めていたがミラーズで先輩と再会する。その後は…ちゃんと手料理を振舞ったらしい。
先輩(コラボ)…二週間で退院できた。その後ミラーズでもう一回世界線を超えた。そんなに世界線を超えて大丈夫なのだろうかと心配になるが実はちょくちょく世界線を超えていたりする。本当に何者なんだ…。先輩が立てた仮説の答えは「先輩と魔法少女」のとあるエピソードに答えが隠されていたりする。
キュゥべえ(コラボ)…後書き要員にして作者の代弁者。本編に出す案もあったがボツになった。コラボ完結の影の立役者かもしれない。お務めご苦労様でした。