ある少女の物語〜マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝より〜   作:転寝

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事象の探求

「僕は森岡誠司…小説家志望の、一般人だ」

 

 いきなりの自己紹介に一同が呆気に取られる。

 場が白けたのを意に介さず青年―森岡誠司は椅子に座り、鶴乃にラーメンを注文した。それで我に返ったのかもう一人の男が森岡にツッコミを入れる。

「…おいセージ、なんだよあの自己紹介」 

「なんだよって…そのままだけど」

「いやおめー初対面の人に小説家志望の一般人とかドヤ顔で言うか?お嬢ちゃん達引いてるぜ?」

「だって他に言うことないし」

「ダメだコイツ…」

 男は呆れた表情になった後、鶴乃にラーメンを注文した。それで漸く皆の呪縛が解けた。

「あ、オレは皆本慎也(みなもとしんや)ってんだ。よろしくな」

 男―皆本慎也が名乗ったのを皮切りに皆が名乗り、最後に咲が自己紹介をすると皆本は咲をまじまじと見つめて訊いた。

「お嬢ちゃんがセージの知り合いか?」

「はい、そうですけど…」

 皆本はニヤリと笑う。

「セージも隅に置けないねぇ。神浜にこんな可愛い幼妻がいるとは…」

「え…ち、ちが、わたし達は…そんなんじゃ…」

「……慎也、琴音君に失礼だろう。謝れよ」

 森岡が皆本を睨みつけるが彼はニヤニヤと笑ったままで何も言わない。咲は既にオーバーヒート寸前である。

「え、咲ちゃんと森岡さんってそういう関係だったの?」

 鶴乃が訊いた。こちらは純粋な驚きからの質問である。日夜戦う魔法少女とはいえ、彼女らは思春期真っ只中の少女だ。いろはもさり気なく興味を示している。フェリシアは首を傾げていたが。

「そ、そんなわけじゃ…森岡さんはわたしなんかよりももっといい人を好きになるだろうしその…」

 咲は完全にテンパっている。固有魔法(鎮静)を使おうと思っても上手くいかない。それくらい取り乱していた。

「琴音君と僕はそんな関係じゃないよ。ただの知り合いさ。大体僕は成人してるし琴音君はまだ中学生だ。下手すれば犯罪になりかねないだろ」

「いいじゃねえかセージ。愛の前では法律なんて意味を成さないんだぜ!」

「…お前何言ってるの?」

 完全に冷めた様子の森岡と盛り上がる皆本が対照的過ぎて面白かったのか、いろはがクスリと笑う。そしてまだ真っ赤になっている咲に言った。

「森岡さんと皆本さんって面白い人達だね」

「…うん、本当に仲が良さそう」

 なんだか羨ましいなと咲は呟いた。その目には何か遠い過去の事が映っている様だった。

 

 

 皆本は運ばれてきたラーメンを光の速さで平らげ、カウンターに千円札を置くと立ち上がった。森岡はまだ食べているがお構い無しである。

「じゃあセージ、オレは先に戻ってるわ!」

「何かあったのか?」

「さっき思い出したんだ。仕事の予約が入ってたから行くわ!お前も適当に戻って来いよ!」

「おい、慎也…」

 森岡が呼び止めようとするが、それより先に皆本は店を出ていった。森岡は溜息を吐き、麺を啜った。

「全く…」

「皆本さん、これから仕事なんですか?」

 咲が訊くと、彼はやれやれといったふうに首を振って、

「違うよ。アイツは中央区で美容院をやってるんだけどこの前の神浜大災害であの辺りは立ち入り禁止になったから無職だ。仕事の訳が無い…大方、変な気でも利かせたんだろう」

「気を利かせた?」

「ああ…折角だから、アイツがいない時に出来る話をしようか」

 森岡が言いたい事を察し、咲は頷いた。皆本がいない時に出来る話―魔法少女関連の話の事だ。

「それで、やっぱり神浜の魔女は強いのかい?」

 咲は神浜に引っ越してからの事を森岡に話した。時々いろはが補足し、森岡は時折頷きながら話を聞いていた。

 

「なるほど…」

 話を聞き終わると、森岡は満足げに頷いた。

「琴音君は前に進めたんだね。それもこれも環さん達のお陰…か。安心したよ」

「森岡さんは咲ちゃんの過去の事知ってたんですか?」

「大まかな事なら聞いていたよ。でも僕じゃ駄目だった。救えないって分かってたんだ。でもそれで良かった気がするよ…」

 森岡は心底安心したように呟いた。

 

「そういえば…咲ちゃんから聞いたんですけど、森岡さんは魔女や使い魔が見えるとか…」

 いろはが訊いた。

「ああ、見える。何回か結界に入った事もあるよ。というかこの体質の所為で魔女に追いかけ回される羽目になってるから必然的に入っちゃうんだけどね」

 軽い感じで言われたが、言っている事はかなり衝撃的である。

「魔女の結界に入って無事だったのか!?」

「まあ怪我はするけどね、死んではいない…大体通りすがりの魔法少女が助けてくれたりするし、そうでなければ走って逃げてるからね」

 フェリシアは目を輝かせながら「お前すげぇな!」と興奮している。鶴乃は鶴乃で開いた口が塞がらないといった様子だ。

「でも、神浜は特に魔女が多いのに…大丈夫なんですか?」

 その言葉に、何故か森岡は頭を搔いた。困り顔になって言う。

「一応、知り合いの魔法少女にボディガードを頼んだんだけど着いて早々何処かに行ってしまったんだ…彼女なら無事だろうけど」

「その魔法少女の名前は?」

「水無月霜華」

 森岡の口から出た名前に咲がハッとなる。

「それって、『亡霊狩り』ですか?」

 森岡は頷いた。

「亡霊狩り?」

「かつて、様々な魔法少女が彼女に挑んだんだけど尽く返り討ちにされてね。その魔法少女は亡霊みたいに急に現れて敵を狩るって噂が広まって、そこから付いた渾名だよ。何故ただの『亡霊』じゃないのかは判らないけどね」

 まあ渾名なんてそんなものかと森岡は呟いた。

「そんな魔法少女が…」

「神浜の何処かにいるんだろうけど連絡しても繋がらないんだよね。テリトリーの侵犯でトラブルになってなきゃいいけど…そうなったら大体僕も巻き込まれるし…」

 森岡は心配そうに言った。彼女の身を案じているというよりも、面倒くさい事に巻き込まれるのが嫌という様子だ。

「やちよさんに聞いてみます」

「やちよさん?」

「西部地区の代表です」

「へえ…確りしてるんだね」

 現在の神浜市の勢力図を大まかに分けると七海やちよが纏めている西側、和泉十七夜が纏める東側、そしてもう一人のベテラン魔法少女である都ひなのを中心とした南側に分かれる。大都市ならではの勢力分布と言えるだろう。因みに咲が以前居た冬天市は魔法少女数が少ない事もあり、個人ないしはニ、三人程度のグループで動く事が多かった。そのため大きな勢力というものは無く、個人間での争いが集中している状態であった。

「魔女が強いと勢力図も確りするものなのかな…兎に角、纏まってはいるみたいだね…」

 森岡が呟いて、それから思い出したかのようにいろはに訊いた。

「…そういえば、何故神浜市には魔女が多いんだい?他の町からは魔女が消えているのに此処には集中している」

「…それは」

 何故かいろはの顔が曇った。見ると鶴乃やフェリシアも複雑そうな表情を浮かべている。

「…何か、あったの…?」

 咲が訊くが誰も答えない。暫く鉛のような重い静寂が続いた後、いろはが徐に言った。

「ここに魔女が集まってしまう理由は…」

 

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次回、魔法少女の真実が明かされる(予定)
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