ある少女の物語〜マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝より〜   作:転寝

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再会、相対、そして惨劇

「…なぜ、私達を殺すの?」

 美雪が緊張感を纏った声で訊いた。その手に握られている拳銃は、何かが有れば直ぐに秕に向けられる様に構えられている。

「あなたも魔法少女なんでしょ?なら、協力し合って魔女を倒した方がいいと思うけれど」

「誤解しているようだが、別にあたしは魔女を倒したい訳じゃない…魔女を支配したいだけだ」

 秕はなんでもない様に言った。

「支配する?」

 倒すならまだしも、支配するとはどういう事なのか。咲がそれを訊こうとすると、秕が苛々した様子で鋭く言い放った。

「どうでもいいだろ…アンタらはこれから死ぬんだからさ…咲とそこの男、それに咲が背負ってるヤツは殺した後魔女の餌にするからそのつもりでいろよ」

 咲と安藤、そして詩季は未成年だ。子喰いの魔女の食料にはうってつけだろう。だからといって殺されるのは厭だ。

「秕ちゃん…そんな事言わないでよ…わたし達を殺しても何も変わらないし、何も無いよ?」

「あたしにはあるんだよ。それに…咲、アンタはどのみち殺すつもりだったしね。あたしを裏切ってくれた礼…たっぷりしてやるよ」

 その言葉に、咲の心臓がズキリと痛む。

 やはり、秕にとって咲は憎悪の対象なのだ。

 咲が秕を裏切った事は彼女にとっては事実だし、それを否定する気も無いのだろう。

 向き合うと決めた筈なのに、ここまで憎悪をぶつけられるとその決意が揺らいでしまう。

「なら、わたしだけを殺せばいいでしょ…なんで皆を巻き込むの?」

 咲は震え声で訊いた。自分達の問題に皆を巻き込む訳には行かない。最も、森岡は既に事情を知っているから巻き込んでしまっているのだが…それでも、自分に関わった人を傷付ける訳には行かない。

 最悪、死んでも皆を護らなければ―咲はそう思い、秕を確りと見た。

「邪魔だからだよ。それにあたしが殺したいから殺すだけだ」

 もういいだろとっとと死ねよ―秕はそう吐き捨てて、両手にダガーを出現させた。

 咲は夏々子の方に目を向ける。するとテレパシーを通して夏々子が申し訳なさそうに言った。

(こうなったらコイツは止まらないよ…何とか隙を作って逃げてくれ)

(そう言われても…)

 いざとなれば自分を犠牲にする事も厭わないつもりだが、それでも出来れば戦いたくはない。咲はかなり消耗しているし、それは美雪達も同じ筈だ。対して向こうは(恐らく)体力が有り余っているだろう。

 どうしようかと思っていると、美雪と目が合った。直ぐにテレパシーが飛んでくる。

(私があの子を撃つから、それを合図に逃げて)

(でも、美雪さんは…)

(私一人なら何とかなるから、咲ちゃん、済まないけれど皆を任せるよ)

 美雪は一方的に会話を打ち切ると、目にも留まらぬ速さで発砲した。

 不意打ち―という事になるのだろう。普通なら反応出来ず、対応が遅れる筈だ。

 然し、魔法少女という存在は普通ではない。

 

「…えっ」

 

 美雪が驚いた様な表情をする。

 美雪が放った弾は、横から飛んできた別の銃弾によってルートを強引に逸らされ、秕に当たることは無かった。

 銃弾が飛んできた方向を見ると、先程バイクに乗っていた少女―水無月霜華が大型の拳銃を構えていた。秕が霜華に言う。

「…流石だ。そこらの黒羽根よりは使えるな」

「そりゃどーも」

 霜華は自分の固有魔法―既視感の魔法で美雪の銃弾を察知し、防いだのだが咲達はそれを知らない。故に目の前で起こった事象に驚き、一瞬だけ反応が遅れた。

 その隙を逃さず、秕が動いた。一番近くにいた安藤に向かって突撃し、手に持ったダガーを振り回す。

 血が飛び散り、安藤は少し顔を顰めた。然しパニックになる事はなく秕から距離を置くように飛び退く。すかさず美雪が秕の前に立ち塞がり、発砲する。

 秕はそれを回避し、接近戦に持ち込んだ。

 美雪はそれを器用に捌きながら叫ぶ。

「皆、早く逃げて!」

 その言葉に咲達は直ぐに踵を返した。然し秕はニヤリと笑い、一度飛び退いてからポツリと呟く様にして言った。

 

「……… ()()()()()()()()

 

 その言葉に、安藤が反応した。

 彼は直ぐに引き返し、秕と美雪の間に割り込む。その目は虚ろで、光が無かった。

 美雪が驚いたような顔をする。タイミング悪く、彼女の指は拳銃のトリガーを強く引いていた。

 

「…一人目だ」

 

 そして―銃口から放たれた魔力弾が、安藤の胸を貫いた。

 

 咲が状況に気付いた時には、安藤は地面に倒れていた。

 びくりとも動かない。胸からは血が流れていて、それが地面に血溜まりを作っていた。

「なんで…」

 その一言を絞り出すのがやっとだった。

「アンタは知らなくていい」

 秕はそう言い、安藤をわざと踏み付けてから美雪に接近した。

 誰も動かない。

 否、あまりにも突然過ぎて動けないのか。

 視界の隅で、美雪が拳銃を取り落としたのが見えた。

 彼女の唇は小さく震え、目を大きく見開きながら荒い息を吐き出していた。

 秕が恍惚の笑みを浮かべながら彼女に近付く。

 だが美雪は動かなかった。

 逃げようともせず、目の前の現実を受け止めようとするのに精一杯だったのだ。

 そこで漸く我に返り、咲は秕を止めようと走った。

 森岡も咲と同じく、何かを叫びながら秕に向かっていく。

 だが、間に合わない。

 秕の凶行を止める事は出来なかった。

 

「―二人目」

 

 ダガーが、美雪の喉笛に突き刺さり、荒々しく引き裂いた。

 赤色が視界に飛び込む。

 喉から血を噴出させながら、美雪が力無く崩れ落ちる。

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

 誰かが叫んだ。

 言葉にならない絶叫。

 それが自分の喉から出ていた事さえ―咲は気付かなかった。

 

「予定とは違うが…まあいい」

 

 赤い液体を纏った秕が此方を向き、魂が抜けたかのように立ち尽くす森岡とまだ意識を失ったままの詩季、そして打ちのめされたかの様に崩れ落ちる咲を見る。

 その口元が釣り上がり、嗜虐心に満ちた言葉を吐き出した。

 

「―残り、三人だ」




書いている途中に話が変わりまくった結果、こうなりました。
次回はいつ投稿出来るか分かりませんが、気長にお待ちいただけると幸いです。
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