ある少女の物語〜マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝より〜   作:転寝

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真奈の魔法少女ストーリーです。


木本真奈編 第1話『戻れなくなる少し前』

 妹が、死んだ。

 その報せを受け取った時、躰から力が抜け、その場に崩れ落ちた。

 涙は出なかった。その代わり、頭が真っ白で何も考えられなかった。

「うそだ」

 口から出たのは、普段の自分とは掛け離れた、弱々しい声。だがそれを気にする余裕は無い。  

 頭が嫌でも状況を理解し、空っぽだった思考が活動を始める。

 妹を殺した犯人は分かりきっている。だが、自分がソイツに勝てる見込みは無い。

 そんな時、心を壊さない為に責任転嫁をするのは当然の事といえる。その例に漏れず、内側から溢れた怒りはある人物に矛先を向けた。

「…殺してやる」

 思わず口から溢れた本音に、然し冷静な自分が異議を唱える。

 殺すのではない。

 自分の無力さを、嫌という程味あわせてやるのだと。

 

 それが自分から妹を奪い去った原因である男が受けるべき、罰なのだから。

 

*   

 

 高校への進学は、周りの顔ぶれが変わっただけの変化でしかなかった。

 元々社交的とは言い難い性格だし、誰かとつるむ事に興味も無かった。ひとりでいる事は苦痛では無かったし、面倒な人間関係に縛られる必要も無い。

 唯一話せたのは双子の妹…木本美奈だけだったが、運悪くクラスが別になってしまった。こればかりは仕方が無い。

 入学式の後のホームルームで何人かのクラスメイトに話しかけられたが、適当に受け答えをしていたら自分への興味を失ったらしく別のヤツに話しかけていた。別にどうでもいい事ではある。どうやってもこんな生活から抜け出す事は出来ないだろうし、抜け出そうと思った事も無いのだから。

 それより、問題は美奈だ。何処でどう変化したのかは分からないが美奈は自分と違って社交的で、友達も多かった。ちなみに、両親もどちらかと言えば美奈と同じ様な性格なので、真奈が例外だといえる。

 だが、いくら社交的といってもクラスの連中が厭なヤツばかりだったら無意味だ。美奈のクラスにどんなヤツが居るのかは知らないが、少し心配だった。

(あたしは別にいいけど、美奈は中学の連中と一緒の高校にした方が良かったんじゃないか?)

 時折、そう思う事がある。そもそも、美奈がこの高校に来たきっかけは真奈がこの高校を受験したから一緒に受けて合格したというだけであり、他の高校も選べた筈なのだ。

 それを指摘すると、美奈はいつもこう言った。

「友達と別れるのは寂しいよ。でも、お姉ちゃんと別れるのも寂しいから…お姉ちゃんは、みんなと同じ高校に行くつもりは無いんでしょ?」

「ないよ。でも、あたしとアンタは家族なんだから何も学校まで一緒にしなくてもいいじゃないか」

「…お姉ちゃん、私と一緒の学校だと嫌なの?」

「いや、そういう意味じゃないけど…」

 こうなると、美奈は聞かない。嬉しかったけれど複雑でもある。

 もし、いじめにでもあっていたら…そう考えるだけで、憂鬱になった。

 最も―その不安は、直ぐに消える事になるのだけれど。

 

 

 入学から一週間後、初めて美奈と昼食を食べた。

 ふたりとも同じ弁当で、それを自分のペースで食べながら話をする。

 美奈と話すのは久しぶりだった。二人共部活には入っていなかったが美奈は友達と遊んでいるのか、真奈よりも帰りが遅い事がしばしばあった。真奈は真奈で課題に追われていて、ゆっくり話す機会が無かったのだ。

「どうよ、クラスは」

 真奈が訊くと、美奈は微笑みながら「楽しいよ。友達も出来たし」と答えた。

「そりゃよかった」

 心中に安堵が満ちるのを実感しながら、卵焼きを口に放りこむ。

「お姉ちゃんは…?」

「訊くか?分かりきってると思うぞ」

 真奈が言うと、美奈は表情を曇らせて「お姉ちゃんも、友達作った方がいいと思うけど」と呟いた。

「あたしはひとりでいいんだよ。アンタが無事に過ごせてるなら、それでいいんだ」

「……」

 美奈は何を言っても無駄だと思ったらしい。ひとつ溜息をつくと、デザートのキウイフルーツを食べた。

 真奈も黙々と弁当を食べ、綺麗に完食してから片付けた。

 そして教室に戻ろうとした時、

「お姉ちゃん」

「どうした?」

「実はね、私のクラスにもお姉ちゃんと同じ様な男の子がいるんだけど…」

「へぇ…ま、別に珍しい事じゃないだろ」

 そう言ってから、もしかしてコイツはその男子生徒を助けてあげたいとか考えているのかなと思った。

 美奈の性格ならありえない話では無い。

「あんた、ソイツに同情してるのか?」

「同情というか…友達だから」

 今度は真奈が溜息をついた。

「構う必要は無いと思うけどね。ソイツもあたしと同じ…誰かと居るよりひとりでいる方が楽だと思ってるタイプなんだよ」

 寧ろ、誰かにくっつかれる方が迷惑なんだろうよとぶっきらぼうに言って、持っていた紙パックのジュースを飲み干す。

 美奈はそれを聞いて、困った様な顔になった。

 優しいヤツだと心中で呟き、「教室戻るわ」とだけ言ってその場を後にした。

 

 …この時はまだ、その男子生徒は美奈の友人というだけの存在に過ぎず、このまま何事も無く毎日が続いていくと思っていた。

 だが…姉妹の前に現れた魔法の使者によって、運命はねじ曲がっていく事になる。

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