カラテだいおうの弟子、チャンピオン目指します!   作:左回りの変態

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第4世代で止まっていた筆者はサンムーンを買いました。5世代以降のポケモンは全部、新しいポケモンという認識です。ゾロアーク、お前伝説じゃなかったのか・・・


タマムシシティ

場所は、ヤマブキシティのとある道場。ぱっと見の外観はポケモンジムに似ているし、ジムと隣接しているのでジムに挑戦に来たトレーナーが道場破りと間違えられてしまい、痛い目に合うというのはヤマブキシティでは冗談としてよく聞く。特にヤマブキシティのジムリーダーはエスパー使いであることから、あくタイプのポケモンを引き連れて挑みに来たトレーナーにとっては悲惨な結果が待っている事は容易に想像がつくだろう。そんな道場を旅立つ1人の少年と1匹のポケモンがいた。

 

「もう10歳か、速いな……」

 

からてだいおうはしみじみと言った。

 

「6年間ありがとうございました。必ず、チャンピオンになって帰ってきます!」

 

「楽しみにしてる。リルもライトの事を頼むぞ」

 

コクリと頷くリルと呼ばれたリオル。少年ライトと一緒に旅立つポケモンであり、兄弟のような存在だ。

 

「では、行ってきます」

 

そう言ってライトは道場を後にした。まずは、ナツメと両親に挨拶しなくてはいけないので、早足でヤマブキジムに向かう。ワープ装置という最先端技術で挑戦者を惑わすジム。ライトは正解のルートを覚えてしまっているが、初見の挑戦者は絶対に迷う。ワープ装置なんて技術があるならリニア鉄道の計画なんていらないのではとライトは思うが、もしかしたら短距離ワープしか出来ないのかもしれない。それかナツメの超能力。

 

「ナツメ、こんにちは〜」

 

「挑戦?それとも挨拶?」

 

「聞かなくてもわかってるよね!?」

 

「ふふ、からかっただけよ。このジムを最後にするのね……効率悪くないかしら」

 

ライトは計画がバレてることには驚かない。相手はエスパー少女だ。効率に関しては余計なお世話だ。ジムリーダーは挑戦者のジムバッジの所持数に応じて使用するポケモンの強さを変える。ジムとはあくまでもトレーナーの力量を測る場であるからだ。ライトはジムバッジを7個所持した状態でナツメと戦いたいと思っている。だから、効率は悪くても譲れないのだ。

 

「私、ライトになら本気出すよ?」

 

「(私では相性が悪い、勘弁して欲しい)」

 

リルが波導で語りかける。ナツメはエスパーでその声を聞き、ライトは波導でその声を聞いた。

 

「リルの言う通りだ。これからの冒険で新しい仲間を探して万全の状態で挑むよ」

 

「そうでないと困るわ。今のままだと私の勝つ未来しか見えないもの」

 

「それは煽りか?それともほんとに未来見てんの?」

 

「さぁ、どうかしら」

 

ナツメはエスパーで未来を見たりも出来るが、自分である程度の線引きをしている。例えば、ライトがチャンピオンになるかどうか見ようと思えば見る事は出来る。しかし、それでは面白くない。何気無い会話をする時もそうだ。相手の返す言葉がわかるなら会話をする必要がない。会話を楽しむという事を覚えたナツメは一歩大人になったのだ。

 

「じゃぁ、俺らはもう行くぜ!バッジを7個集めたらまた来るから、そん時はよろしくな!」

 

「ええ、楽しみに待っているわ」

 

「(では、ナツメ。失礼する)」

 

ライトとリルは両親に挨拶すべく家に帰った。道場に住み込みで修行をしていた為、家に帰るのは久しぶりだ。とはいえ、定期的に家には帰っていたので、そこまで久しぶりというわけでは無いのだが、家にいた母は

 

「ライト、リル、おかえりなさ〜い!お母さん寂しかったわ〜」

 

と言いながら2人に抱き着く。十分に2人を堪能した母は父に電話をかけていた。

 

「すまんなぁ、息子達の旅立ちだっていうのに仕事休めなくて」

 

「 気にしなくていいよ。父さん」

 

「ありがとなぁ、父さん嬉しいよ。2人とも気をつけて行ってくるんだよ」

 

「そうよ、何かあったらいつでも帰ってきていいのよ」

 

「ありがとう。じゃぁ、行ってきます」

 

そう言ってライトとリルは旅だった。最初に向かう場所はタマムシシティだ。ヤマブキシティと凄く近く、偶に家族でデパートに出かけたりもするので、旅の初めに最適な場所だからだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ヤマブキシティから少し歩けば直ぐに着く場所にタマムシシティはある。近すぎて旅という感じはしない。ヤマブキシティと同じく都会という雰囲気が漂っている。

 

「旅というよりお使いみたいだな」

 

「(ならば、お使い程度でジムに挑めばいい)」

 

「随分と余裕そうだな、リル」

 

「(6年間、道場で鍛えたんだ。バッジ未所持のレベルに合わせたジムなど勝てぬ道理は無い)」

 

「それもそうだな。サクッとバッジ貰ってくるか」

 

完全にジムを舐めていた2人。この時の2人は、タマムシジムに入った時に発狂せざるを得ない状況に陥るなんて思いもしていなかった。

 

「こんにちは〜、ジムに挑戦しにきました。ライトっていいます。よろしくおねがいします」

 

「ようこそ。わたくし、タマムシジムのエリカと申します。あなた方が来るのは3年前から存じておりました」

 

「ちょっと待ってくれエリカさん。どっかで聞いた事ある言葉なんだけど」

 

「はい、ナツメちゃんから「リオルを連れた男の子がタマムシジムに挑戦しに来るけど、バッジの所持数に関係なく本気出していいよ」と言われたので、本気を出させて貰います」

 

「(くっ、あの女……)」

 

「あのやろー!ぜってぇ許さねぇ」

 

「本当は3対3の形式で行うのですが、所持しているポケモンはリオル1匹とナツメちゃんから伺っているので1対1でどうでしょうか?」

 

「それでお願いします。リル引き締めろ!こんなとこで躓いてたらチャンピオンなんて夢のまた夢だぞ!」

 

「(ああ、わかってる。それに、ジム戦というのは初めてだからな。少し楽しみだ)」

 

ジムリーダーエリカはモンスターボールを1つ取り出し所定の位置につく。ライトもリルと一緒に反対側のエリアに移動した。

 

「ラフレシア!おねがいします」

 

エリカが出したポケモンはラフレシア。どく・くさタイプのフラワーポケモンだ。かくとう技が、どくタイプに対して効果が今ひとつとライトは苦戦を強いられるのが予想される。かくとうタイプのリオルしか持っていない挑戦者に対して、どくタイプのポケモンをジムリーダー側が出すというのは鬼畜にも見えるが、きっと偶々である。実際ラフレシアはエリカの手持ちポケモンの中でも主力メンバーの一体。おしとやかなエリカがそんな鬼畜な訳はない。

 

「(リル、聞こえるか?)」

 

ライトは波導でリルに語りかける。

 

「(ああ、聞こえている)」

 

「(よかった。ビルドアップしといてくれ)」

 

「(もうしている)」

 

そして、ここにも1人、否、2人鬼畜と思われる行為を行っている者がいた。ビルドアップは攻撃力と防御力を上げる補助技だが、この世界では補助技について詳しく知る者はほとんどいないので、強くなるなぁ程度の認識だ。そんな技を対戦前に行っていた。実際、バトルの準備と言ってしまえばそれまでなのだが、補助技という概念が一応ある以上グレーな行為と言わざるを得ない。しかも、波導での会話が他人に聴かれない事をいいことに意思疎通し放題である。

 

「では、これよりポケモンバトルを開始します。エリカ様に勝とうだなんて100年早いわ!」

 

「すいません。審判に公平性を感じられないのですが」

 

ライトの意見はもっともだが周りにはタマムシジムの関係者しかいないので、その声は虚しく消えていった。完全にアウェイである。

 

「始めっ!」

 

審判の声とほぼ同時にリルはラフレシアに一気に距離を詰める。繰り出す技は【はっけい】。修行を積んでも相手を麻痺にさせる確率は40%か50%程度だが数を打てばいつかは麻痺になるだろう。リルの拳がラフレシアを捉える。ラフレシアは粉を巻きながら吹き飛ばされるが、なんとか耐える。

 

「すごい一撃ですね。鍛えられているのがわかります」

 

「ありがとうございますってリルの代わりに礼を言っときます」

 

「ですが、あなたのポケモンは体が痺れているのではないですか?」

 

リルは殴った時に吹き出した粉で逆に麻痺状態になってしまった。これはラフレシアの特性[ほうし]によるものだ。攻撃を受けると近くにいる敵に[ほうし]を撒き散らすという特性だ。ビルドアップをしていたリルの【はっけい】はかなりの威力だったが、どくタイプのラフレシアには威力が半減した為、少しキツそうだが、まだ戦えるといった表情だ。

 

「(くっ、体がうまく動かない)」

 

「(リル、麻痺になっちまったもんは仕方ねぇ。一発の【きあいだま】に全てこめろ!ぜってぇ外すなよ)」

 

「(無茶いうな!こんな状態で撃った【きあいだま】なんて当たる訳がない!)」

 

と、喧嘩してる間にラフレシアの【ギガドレイン】でリルは体力を吸われた。エリカはラフレシアのダメージを少しでも和らげようと【ギガドレイン】を多用する作戦に出る。リルが麻痺状態とはいえ油断はしない。

 

「(リル!動くことは出来ないのか?)」

 

「(多少は動ける。少し動きづらいだけだ)」

 

「(おーけー、じゃぁ、今から俺が言う事を実践してみてくれ)」

 

リルはライトの作戦を聞いて、そんな事出来るものかと思ったが、現状やるしかなさそうだと悟った。集中力が必要な事なのでリルは【めいそう】に入る。その間にラフレシアの【ギガドレイン】で体力を吸われていく。

 

「どうしました?もしかして諦めてしまわれたのですか?」

 

エリカは煽りではなく純粋に失望していた。ナツメが本気を出していいと言うから期待していたが、状態異常で何も出来ずに負けるなど、初心者同然ではないか。そもそも、ライトはバトルが始まってから一言も喋っていない。ただ、リルをみて表情を変えてるだけだ。ジムリーダーの立場として挑戦者を力量を測らないといけないので、【ギガドレイン】を多用し様子見をしていたが、もう必要ないだろう。

 

「ラフレシア!トドメです【はなびらのまい】」

 

「(いまだ!リル!!)」

 

「(くらえっ!!)」

 

リルの手から放たれたのは【きあいだま】なのだが、それは信じられないくらいの輝きを放っていた。あれを食らっては不味いと思ったエリカはすぐさま回避行動をとるようにラフレシアに指示する。間一髪で回避に成功したラフレシアは、リルにトドメを刺すべく【はなびらのまい】をもう一度リルに放とうと試る。

 

「ラフレシアっ!だめ、後ろよ!」

 

エリカの声がラフレシアに聞こえた時には既に【きあいだま】がラフレシアの背中に直撃していた。ラフレシアには理解出来なかった。さっき交わした筈の攻撃が何故、後ろから飛んでくるのか?そんな事を考えてる間に自分の体は挑戦者側の壁に叩きつけられ意識を刈り取られていた。

 

「ラ、ラフレシア戦闘不能……よって勝者…ライト」

 

「よっしゃぁぁぁああ!!!」

 

「(ふう、疲れたな)」

 

「お疲れさん!ポケセンに連れていくからモンスターボールに入っとけよ」

 

「(体も痺れてるしな、助かる)」

 

無事にジムリーダーに勝利したライトの下にエリカが近寄り、当然の疑問を投げかける。最後の技はなんだ?という質問だ。エリカはまだ若いが、それなりに冒険をしてジムリーダーという地位についた。そんなエリカが見た事無い技だったからだ。

 

「最後の技ですか?他のトレーナーに内緒にしてくれるって言うならいいですよ」

 

「当然、心得ております。わたくしの中に留めておきます」

 

「えっと、なんて言ったらいいのかな……【きあいだま】を波導で包んで放ったみたいな?」

 

「波導…ですか?」

 

「そうです。多分リルぐらいにしか出来ない技だと思います。【きあいだま】でさえ結構な集中力が必要なのに、そこに波導で包み込むなんて芸当が出来るのはね」

 

「なるほど…鍛錬の賜物というわけですね」

 

「咄嗟の思いつきですけどね」

 

「まるであなたが考えたような言い方ですね。戦闘中は一言も声を発していなかったと見受けられましたが」

 

「あー、波導を使ってリルと会話してたって言ったら信じてもらえます?」

 

「また、波導ですか……まぁ、ナツメちゃんのお友達という事で納得致しましょう」

 

「凄く不服なんだが……」

 

エスパーと波導を一緒にしてもらいたく無いと思ったが、はたから見れば同じようなものなのかもしれないと思い、ライトはこれ以上何も言わなかった。

 

「これがレインボーバッジです。あなたの機転とリオルの胆力に評して贈呈致します。それと、初めての挑戦という事で、こちらのバッジケースも差し上げます」

 

「ありがとうございます!なんかニヤけてしまいます」

 

「初々しくて可愛らしいですね」

 

「かわっ!?……コホン、では対戦ありがとうございました」

 

「はい、こちらこそ〜」

 

こうして、ライトは初めてのジム戦を勝利で飾る事が出来た。ナツメが余計な事をしなければもっと楽に勝てたのだが、勝利の余韻に浸っていたライトはそんな事をすっかりと忘れていた。

 

ポケモンセンター、通称ポケモンに入ったライトはリルの入ったモンスターボールを受け付けのジョーイさんに預けて、自分もポケセン内の部屋を借りた。旅をするトレーナーを援助するためにポケセンでは無料で宿泊出来るのだ。 さらに、風呂と飯付きである。ただし、あくまでも旅をするトレーナーに限るので一泊という制限がある。

 

ライトはベッドて仰向けになり今日の戦いの反省をしていた。公式の対戦ルールでは、戦闘中のトレーナーによる道具の使用は禁止されているが、戦闘前に1つだけポケモンに持たせれば、その道具は使っていいというルールだ。つまり、状態異常対策するのは当たり前。草タイプ使いのジムとわかっていたのだから最低でも、ねむり、どく、まひに対して対策をするべきだった。今日、苦戦を強いられたのは、自分達は他のバッジ未所持トレーナーと違って強い、そいつらに合わせたジムリーダーのポケモンに負けるわけがないという驕りが招いた結果だ。あの時、エリカはジムリーダーとしての様子見で【ギガドレイン】を使っていた。そのお陰で、【めいそう】し、集中力を高めて波導で包んだ【きあいだま】を放てたが、フリーバトルだったら御構い無しに【はなびらのまい】を使ってきただろう。そしたら結果は逆だった。

ナツメはこの未来が見えていたのだろうか。俺達が驕り、勝ち進み、そしていつか取り返しのつかなくなる未来が。

きっと、浮ついた心で旅をする俺達に警告をしたんだろう。

 

「まぁ、文句は言わせてもらうけどな」

 

呟いた声は天井へと消え、目蓋が世界を黒く染めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方、ヤマブキジムからエリカに電話し終わったナツメは悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。

 

「ふふ、ライトの叫ぶ顔が目に浮かぶわ。見なくてもわかるもの」

 

ナツメはライトの未来など全く見ていなかった。それは、あとでエリカから結果を聞いた方が面白いと思ったからだ。エリカが本気を出せばきっと出鼻を挫かれて敗走してくる。そこでナツメが盛大に煽る。完璧な作戦だった。ライトは自分のためだと思っているが、ただ、ナツメのSっ気が発揮されただけであった。しかし、数時間後にかかってきたエリカからの電話でナツメの作戦は失敗に終わった事を知る。

 

「えっ、ライトが勝ったの!?」

 

「はい、とても強いトレーナーでした。ナツメちゃんが本気を出して欲しいと言ったのがわかりました」

 

「そ、そう……当然ね!私の幼馴染だもの」

 

「はい、彼もエスパー使いだったなんて驚きました」

 

きっと波導の事を言っているのだろうと察したナツメは何も言わなかった。

 

「エスパー少女ナツメちゃんも可愛いのに、幼馴染にあんなに可愛いエスパー少年ライトくんがいるなんて……」

 

妙に声が色っぽくなったエリカの言葉で薄ら寒いものを感じたナツメはすぐに電話を切った。幼馴染の貞操の危機を感じたナツメはライトの未来を少しだけ見た。そこに映ったライトはセキチクシティに向かうため徒歩でサイクリングロードに行こうとしたところ、ゲートの警備員に止められて説教されていた。

 

「何してんのよ…ライトは」

 

幼馴染の馬鹿な行動に呆れて未来を見るのをやめた。なるべくライトの旅の先を見ないようにしようと自分の中で決めているので、それ以上はやめておいた。帰ってきた時の旅の話を楽しく聞きたいと思っているからだ。




波導のリオルで「はどうだん」を使っていたのでリルくんにも使わせました!特別なんです(白目)
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