カラテだいおうの弟子、チャンピオン目指します! 作:左回りの変態
おぎゃぁ、と産声を上げて1人の子供が生まれた。両親は悩んだ末にライトという名前を付けた。例えどんな暗闇でも周りを明るく照らし、自ら道を切り開いて生きて欲しいという願いからだ。少年は愛され、健やかに育った。
父はヤマブキシティにあるシルフカンパニーで働いている。そんな父が会社の同僚からポケモンの卵を貰った。ただ単に、知人から卵を貰って困った同僚が父に押し付けただけなのだが、そんな事はつゆとも知らず、父は喜んだ。息子にポケモンの孵化という貴重な経験や、共に育つ事で良い勉強になると考えたからだ。
ライトが2歳くらいの時、その卵が孵った。
「これでライトはお兄ちゃんだぞー」
「あら、リオルの卵だったのね。かわいい〜」
産まれたリオルはじーっとライトを見つめていた。
「リ…ル……?」
「リオルよ〜、ライト。リ、オ、ル」
「リルっ!」
リル、リルと喋りながらリオルに抱き着くライトに両親はメロメロであった。俗に言う親バカと言えなくもないが、このくらいの子供は皆可愛いと感じるだろう。
「お前の名前はリルに決まりだな!今日から、うちの家族だ!お兄ちゃんと仲良くするんだぞー」
「僕がリルを守る!」
「あらあら、もう立派なお兄ちゃんね」
リルとライトは両親の愛情をたっぷりと注がれすくすくと成長した。そして、ライトが4歳の時、事件は起きた。
初めてリルとライトは大喧嘩をしたのだ。遂に殴り合いにまで発展した喧嘩はライトが怪我を負った事で終息がついた。リルはこの時にポケモンの力は人間の力よりも強い事に気が付いた。殴り合ったらライトを傷付けてしまう。
両親はリルに特別な事は何も言わずに喧嘩両成敗と言って2人を分け隔てなく叱ったが、リルは自分が責められている様な気持ちになった。絶対に両親が言わないような言葉を、頭の中の両親は浴びせてくるのだ。
この事件の後、怪我が治ったライトは道場に行きたいと両親を説得していた。なんとか両親の了承を得たライトは笑いながら「次やるときは絶対に負けないからね」と言ってリルを連れて道場に弟子入りしに行った。
リルには訳がわからなかった。自分に負けないようにするならば1人で修行を積めばいい。自分が一緒にレベルアップしたら結果は目に見えている。しかし、ライトはあくまでも自分と一緒に修行をしたいと言った。
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ライトは弱い自分を恨んでいた。弱かったせいでリルに余計な心配をかけてしまった。喧嘩した事がトラウマになって戦う事が出来なくなってしまったらどうしようと不安になった。そんな時に名案が浮かんだ。ここヤマブキシティのジムは道場だ。リルと戦えるくらいに強くなりたい、そして、リルには全力で戦って欲しい。その一心で親を説得し、からてだいおうに頭を下げて弟子にしてもらった。
最初は厳しく感じた修行も段々と慣れていった。精神的余裕が出来たライトは自分の内に秘める波導と呼ばれる力に気付き、こちらも並行して鍛える事にした。
何度かリルと組手をしたが、リルは手を抜いているようだった。時々、波導を纏って攻撃すると、リルは一瞬、本気で受けるが、また手加減をする。ライトは一層に不甲斐なさを感じた。リルの本気を出させるにはまだ足りないのだ。いつしか、リルを超える事がライトの目標になり、修行に明け暮れた。
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時は少し遡り、ライトが3歳の時、家族旅行でシンオウ地方に足を踏み入れた。きっかけは母がソノオの花畑に行きたいと言ったことからだ。父もシンオウにちょっとした用事があったので丁度いいという事もあり、トントン拍子で話が進み今に至る。船で来た彼らは、ミオシティで一泊し、次の日から観光をする計画を立てた。
父は長い船旅で疲れた母とライト、リルの3人を宿に残し、用事を済ませてくると言って出て行った。母は行ってらっしゃいと告げ、ライトとリルを抱きしめてエネルギーを補給していた。
家を出た父は聞き込みを始めた。以前、同僚に教えてもらった「ゲン」という名前の人物を探すためだ。しばらく聞き込みを続けていると、いつもは「こうてつじま」に修行に行っているらしいが、たまたま帰ってきている事がわかった。さらに聞き込みを続けようとすると不意に声をかけられた。
「あなたが、わたしを探している方ですか?」
「…え?もしかして、あなたが……」
「はい、わたしがゲンです。あなたは?」
ゲンは青いつば付き帽子に青いスーツという身なりで、好青年という雰囲気を醸し出していた。父は自分の名前を伝え、改めて挨拶をした。ゲンは何故、自分を探しているのかを父に尋ねた。
「以前、卵を頂戴した同僚から卵を譲りうけました。今は私の息子共々、元気に育っているという報告をしたいと思いまして。これはつまらない物ですが」
と言ってお菓子をわたした。
「これは、ご丁寧にどうも。これはカントーのお菓子ですか?遠いところからわざわざ、ありがとうございます」
「いえいえ。それともう一つ、聞きたいことが御座いまして」
「なんでしょうか?」
「実は、息子がリオルの喋っている言葉がわかるそうなんです。最初は子供の言う事だからと聞き流していたのですが……」
「成る程……もしかしたら、あなたのお子さんは波導使いなのかもしれません」
「波導…ですか?」
聞いた事があるようで聞いた事の無い単語に父は首を捻った。
「はい。波導とは、万物が有している振動そのものを指します。気やオーラと言い換えても差し支えないでしょう。波導使いはそれらを操り、ルカリオと意思疎通する事が出来ます。ですから、お子さんは病気でも何でもありませんよ。むしろ、波導を使ってお子さんと意思疎通を図っているリオルの方が興味深いですね」
「うちのリル……リオルの方が特異なんですか?」
「ええ、通常リオルはそこまで波導を使う事に長けていません。感じとるくらいしか出来ない個体が大多数です。一般的にルカリオに進化してから波導を使いこなせるのですが、あなたのリオルは波導を使う才能が非常に高いようですね」
リルを息子同然の様に育ててきた父にとっては、才能があるというのはとても誇らしい事だった。息子が特異だったのは違いなかったが、病気ではなくて安心した父の気分は旅行前とは違い、晴れやかになった。
「もしよろしければ、お子さんとリオルに合わせて頂けないですか?」
「是非!家内にも紹介したいです。今、宿に泊まっているので案内しますね」
「ありがとうございます」
父はゲンを宿に案内した。家族に、同僚の知人で、リオルの卵をくれた人という紹介をするとライトが不安げな顔になったのは、ライトを初めて見るゲンにもわかった。
「(大丈夫。リルを連れて行ったりはしないよ))
「(え!?おにーちゃん、リルとおんなじことできるの?)」
「(出来るよ。わたしも波導使いだからね)」
「(すごーい!じゃぁ、リルとお話し出来るね!)」
「(僕とお話し出来るのライトだけだと思ってたから……なんか不思議な気分)」
無言なのに楽しそうな3人を見ていた母は、父から波導の説明を受けたが「つまり、2人は凄いってことね!流石わたしの子達」といって勝手に納得していた。これ以上説明しても無駄だと感じた父は何も言わなかった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、そろそろゲンが帰るという時間になった。父はわざわざ時間を割いてくれたゲンに御礼を言った。
「今日は、ありがとうございました」
「いえいえ、わたしも楽しい時間を過ごさせて頂きました。それと、彼らの将来が楽しみになりました。御礼としてはなんですが、これを貴方に渡しておきます」
「これは……?」
「来たるべき日にお子さんに渡してください。きっと役に立ちますから」
そう言ってゲンは父に「おくりもの」を渡した。父は、ゲンから「おくりもの」の説明を受けた。確かに、今のライトとリルには早すぎると思った父は、来たるべき日の意味を理解し、改めてゲンに御礼を述べた。
「おにーちゃん、もう行っちゃうの……?」
「ああ、君が冒険をすれば、また会えるかもしれないね」
そう言ってライトの頭を撫でたゲンは宿を去っていった。
その後、一家は明日行くソノオの花畑に備えるために、夜飯をサッと済ませて寝る事にした。
筆者の中では第4世代が黄金時代です。
ちなみに筆者は論者です。知的な喋り方を抑えて投稿しております。