カラテだいおうの弟子、チャンピオン目指します! 作:左回りの変態
一泊した忘れおやじの家を出たライトはすぐ隣にあるポケモンセンターにリルを受け取りに行った。ジョーイさんにグレンじまに空路で行きたいと相談したところ、街の西側でオニスズメが出現すると言うことを教えてもらった。しかし、オニスズメは獰猛な為あまりお勧めしないとのことだった。
「野生のポケモンを倒して捕まえるってのはトレーナーの誰もがやってる事だけどさ、なんか違う気がするんだよね………いや、違くは無いんだけどさ、もっと運命的な出会いをしたいというかさ」
「(カビゴンとコダックは運命だったのか?)」
「コダックはビビッときたね。カビゴンは事故だけど」
「(何にせよ、捕まえるか捕まえないかはライトの決める事だ。俺はオニスズメを倒すだけだ)」
言葉通り遭遇したオニスズメ達を次々と薙ぎ倒すリル。ライトはリルを仲介し、オニスズメにグレンじまに連れて行ってくれないかと頼んだところ「(俺達、飛ぶのが苦手だから無理)」と断られた。ライトは「ジョーイさん!話が違いますよ!」と叫びたくなったがジョーイさんは決して悪くないので言葉を呑み込み、次の案を考える。
「お前ら、ボスとかいねーの?」
「(いるけど……ボスは大の人間嫌いなんで、絶対に無理。人間なんて連れて行ったら、俺達ボコボコにされちまうよ)」
「うるせー!連れてけ。ボコすぞ!」
「(酷いっ!)」
渋々、ライト達を案内するオニスズメ。茂みをかき分けた先に居たのは、大量のオニスズメの群れと1匹のオニドリルだった。オニドリルがライトとリルを見て声をあげた。
「(なんじゃぁ、おのれ)」
「どーも、ライトっていいます。こっちはリルです」
「(名前など聞いておらんわ人間。それに使役されて喜んどる家畜め)」
「リル、自分で訳しててイライラしないの?」
「(一言一句違わず、正確に訳しているだけだ。多少は腹が立っている)」
「(ふん、非力な癖に家畜を使って、さも自分が強いと思いこんどる人間が、儂は気に食わん。そういう奴を見ると殺したくて堪らなくなるわ)」
「そうか、じゃぁ、タイマンだ。リルには手出しさせねぇ。俺とお前のサシで勝負だ」
流石に、飛行タイプのポケモンと戦った事はないライトだが、負けてやるつもりも無かった。何よりもリルを馬鹿にされた事がライトの怒りのボルテージを上げていた。
「(タイマンだと?笑わせる。人間如きに負けるはずがないわ)」
「御託はいいからかかってこいよ。ビビってんのか?」
その瞬間、オニドリルは静脈がはち切れんばかりに青筋を立ててライトに【ドリルくちばし】で突っ込んで行く。
ライトは間一髪で躱すが、オニドリルは旋回して、もう一度【ドリルくちばし】を仕掛けてきた。一度見た攻撃。ライトはタイミングを合わせ後ろに飛びながら腰を捻り、波導を込めた左足の回し蹴りをオニドリルの頭に叩き込む。
まさか蹴られるとは思っていなかったオニドリルは、その勢いのまま墜落し、地面を転げ回る。木の幹にぶつかるまで転がったオニドリルは負傷に耐えながら立ち上がりライトを睨む。
先程とは違う静かな怒りがライトに伝わってくる。オニドリルはライトをとるにたらない人間ではなく敵として認識した。
「いい目になったじゃねえか!ほら、かかって来いよオニドリル!」
ライトは挑発するが、オニドリルは先程のようには飛び込まない。空を飛べるというアドバンテージを活かし、ホバリングしながら【かげぶんしん】をしてライトを囲む。そこから【でんこうせっか】を繰り出し、四方八方からライトに攻撃を仕掛ける。
ライトは今までの修行で身に付けた体術と波導を駆使してオニドリルの猛攻を受け流していたが、【こうそくいどう】を併用してどんどん速くなるオニドリルの攻撃に、次第に着いていけなくなってきた。
致命傷は避けているが、ギリギリ回避が間に合わなかった攻撃が服や表皮を切り裂き、傷だらけになる。
最初のようにカウンターを狙っていたライトは本気で防御する事だけを考え始めた。そうしなければならないほどオニドリルの素早い攻撃は苛烈になっていった。
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オニドリルは焦っていた。これ程の攻撃を凌ぐ人間など今まで一度も会ったことが無い。傷だらけになりながらも決して倒れない姿に畏れを抱いてきた。他の人間とは違う何かをこの男は持っている。オニドリルはそう感じた。
このままでは体力が尽きる。オニドリルは【かげぶんしん】をやめて上昇し、激しい光に包まれる。放とうとしているのは飛行タイプ最強クラスの技【ゴッドバード】だ。人間に遠距離攻撃は無い。故に、隙を晒しながらも力を溜める事が出来る。
オニドリルが【ゴッドバード】をしてくるのがわかったライトは身体中に波導を纏い防御の態勢に入る。受けるのをミスれば大ダメージは免れない。最悪、死すらあり得る。
両者共に睨み合い、力を溜める。
オニドリルはその静かな間を切り裂く様に急降下しライトに突っ込む。対するライトも波導を飛ばしてオニドリルの速度を落としクチバシを掴む。
まさに力と力のぶつかり合い。土煙が辺りに吹き荒れ、爆音が広がる。
吹き飛ばされないように踏ん張っていたリルが見たのは、オニドリルのクチバシをガッチリと掴み、木に叩きつけられているライトのボロボロの姿だった。
「ど…う……だ………み…た……か…………」
ライトが小さな声で呻くように呟いた。
吹き飛ばされつつも自分の最強技を止めたこの男は、今まで見てきた人間とは違う。オニドリルにはライトに対して最初に抱いていた敵意はもうなかった。そこにあるのは敬意。口だけでなく、その身体で強さを証明したライトへの敬意だけがオニドリルの中に刻まれた。
リルはオニドリルの思いを訳して伝えようとしたが、すでにライトの意識がなかった。リルはオニドリルに再開を誓い、ライトをポケモンセンターへと運んだ。
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目が醒めた。病室の知らない天井ではなく、ライトの顔を覗き込むリルの顔が見える。
「(見た目ほど大怪我では無いらしい。波導のおかげだな)」
「リルか…………いやー、危なかった。あの野郎、【ゴッドバード】とか洒落にならねーわ。つか、ここで起きたっつーことは負けたのか?」
「(いや、負けた事には変わりないが………この辺の説明はオニドリルに会った方が早い)」
「どゆこと?負けたんしょ?また追い払われるんじゃね?」
「(安心しろ。ライトをここに連れて来る前に再開の約束をしている)」
「ふーん。まぁ、このまま挨拶無しってのもアレだしな」
リルと会話していると、部屋のドアがノックされジョーイさんが入ってきた。
「体の方は重体では無かったですが、まさか病室で独り言を大きな声で言うほど頭がやられていたなんて……申し訳ありません。私がオニスズメの生息地を教えたばかりに……」
「いえ、ジョーイさんは何も悪く無いですよ!あと、頭は昔から何で大丈夫です」
「(何が大丈夫なんだ?)」
「というわけで、退院します。治療ありがとうございました!」
そう言ってライトはベッドから出て荷物をまとめて、ポケモンセンターから飛び出して行った。ジョーイさんが二、三日は安静にして欲しいみたいな事を言っていたが聞く耳をもっていなかった。
「やっぱり、頭がおかしくなってしまったのね……」
ジョーイさんは悲しそうに呟いた。
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ライトはオニドリルに再開するために街の西側に再び訪れていた。
「(来たか人間)」
「よう、オニドリル。敗者の俺に何の用だ?」
「(儂は勝ったとは思っておらんわ。儂の大技止めるとは貴様、人間の癖に根性あるのう)」
「なんだよ急に……まぁ、ありがとな」
ライトはオニドリルに会いに来た理由を伝え、相談を持ちかけた。
「(グレンじまに行きたいだと?そんなん、ひとっ飛びやわ)」
「マジかっ!?助かるぜ」
「(だがのう、お前の事は認めたが、お前の家畜の事を儂はまだ認めてはおらん)」
オニドリルの申し出にリルの口角が上がる。リルとオニドリルのバトルが始まった。結果を言うと、最後に立っていたのはリルだったが、ガッツポーズをしたところで倒れた。飛行タイプのポケモンと相性の悪いリルだが、流石だとライトは思った。
傷だらけのオニドリルとリルを抱えてポケモンセンターを訪ねてきたライトを見るジョーイさんの目はとても優しかった。
世の中やっぱり拳よ!