愉快犯?イタズラっ子?が人造人間になりまして 作:五十鈴暮月
もしもし、私エンヴィーさん。今リゼンブール行きの列車に乗ってるの。
……メリーさんいいな、今度のイタズラで使お。まあそれはそうと、マルコーさんとラスト姉さんのエンカウントを奪った私はなんとか賢者の石を
兄弟を助けられる可能性が格段に増す…?
「よし、やろう。」
リスクは少ない方がいい。マルコーさんを信頼できるとは思わないけど、それはお互い様だ。必要なのは彼が持つ賢者の石。…ラスト姉さんが殺されるのはヒューズ中佐が死んだすぐ後。あまり時間が無い。ま、ヒューズ中佐を生かす事は決定してるし、その為の仕掛けは完璧。大佐に話してもいいけどそれがお父様にバレたら割とガチでヤバいからなぁ…。いや、主人公組に入ってもいいんだけれども!!死亡!!フラグが!!多い!!!
エンヴィーも大概だけど、エルリック兄弟は…何で生きてるのかが奇跡ってレベルだから…ハッ、これが主人公属性ってヤツか(違…わない)。
まぁ、いいや。敵対しようが何しようが、兄弟である事に変わりは無いし、私が彼等を助けたいというこの想いは本物だ。誰が何と言おうと、兄弟に殺され掛けようと、それだけは否定させない。そうと決まれば、早くマルコーを勧誘しないと。
その時だった。
「ドクター・マルコー!!」
その名が聞こえたのは。
「…よし。」
大丈夫、なるようになる。
そんな思いを胸に、私は列車を降りた。
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鋼のお兄さんとアームストロング少佐がマルコーさんの家から出、マルコーさんが二人を追いかけて出ていったのを確認した私は一応ノックをしてドアを開けた。田舎だからなのか、鍵どころか鍵穴さえ無い扉を閉じ、机上にある資料に目を通す。
「…仮死薬…?」
これは、思いもよらない収穫かも知れない。幸いな事に私の無駄にハイスペックな頭脳は計算だらけのゴチャゴチャした資料を正確に読み取った。その直後にマルコーさんが帰って来たのは…まぁ、お決まりかな。
「久しぶり、ドクター。それともはじめまして?」
「君、は……。」
まぁ、今の私は14歳くらいの少年だし、わからないのも無理は無い。
「鋼のお兄さんを見張ってたら思わぬ収穫でびっくりしちゃった。あ、安心してよ、別に連れ戻しに来たんじゃあ無いし。ドクターが居なくても後を継いだ人がよくやってくれてるからさ。」
いきなりお願い…っていうのもキャラじゃないし、まず私悪役だからね、仕方ないね。
「まさか…まだあんな物を作り続けているのか!?」
うん、そう。なんて言えるわけ無いね!ってか知らねーよ!!私の管轄じゃないし!!?
「あのさぁ、アレを造る方法を教えたのは私達だよ?人一人と資料が消えた所で止まるワケ無いじゃん。あとドクターが持ち出した研究資料、別に見られてもいいけどまだ時期じゃないっていうか…まぁ、別に?私としてはさっさと見て真相に気付けってカンジなんだけどね?むしろ好都合だし…。」
「どういう、事だ…?あの子をどうしようと」
「どうもしない。私は、ただ兄弟を死なせたくないだけだ。」
そう、私はただ兄弟と一緒にいたいだけ。ただ、当たり前のように平凡で平穏な日々を過ごしたいだけ。
「それとも、人間じゃない私達にはそれすら許されないの…?」
私は、私達は、エンヴィーは子供だ。愛を、幸福を、平穏を奪われた子供達の魂の集合体。それが私。
私がエンヴィーになって真っ先に試したのは
私は私達に。
…もしかしたら原作の
ふと、そんな考えが頭をよぎる。そして、それはきっと…、いや、やめておこう。私は私だ、彼じゃない。でも、それで堕ちてしまった彼はきっと…とても優しかったんだろう。だからこそ…。
ふっ、と笑いが零れる。
「私は兄弟が大好きだよ。」
きっと彼もそうだった。
「私は兄弟を失いたくない。」
きっと彼も同じだった。
「その為なら何だってできる。」
きっと彼も必死だった。
「私は、私達は…アイツを倒したい。でも出来ないんだ、私達はアイツから造られたから。だから、だからね…あの兄弟を利用するの。私達の従兄弟とも言えるあの二人を、利用する。…勿論、手助けはするけど。」
「いと…こ…?エルリック兄弟と、お前達が…?」
うん、と私は肯く。ヴァン・ホーエンハイムはお父様の分身みたいなモンだし、間違ってはいない…筈。多分。きっと。
「ドクター・マルコー、お願いします。私の共犯者になってください。…そうすれば、この村の事もあなたの事もお父様には報告しない。何なら契約書を書いてもいい。」
こういう時はやはり土下座が効果的だ。こちらの誠意が伝わるからね。
「……。本当に、この村に何もしないんだな?」
顔を伏せたままニヤリと笑う。ここまでくれば、あともう一押し。
「ええ、勿論。」
結論から言うと成功。マルコーさんは無事私の共犯者になった。いやチョロ過ぎない?まぁとにかく…
ドクター・マルコー、ゲットだぜ!!
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「ここは…」
「
えー、鋼のお兄さんの監視を切り上げて勝手にマルコーさんをお化け屋敷(仮)に匿った私はコントロールルームでお化け達や罠の動かし方を説明していた。
「これがエリア8のコントロールバーね。下に下げればお化けが大量放出されるから。隣の赤いボタンを押したら終わらない廊下のトラップが発動、階段に登ろうとすればセンサーが感知して平らになるし扉は開かなくなる。隠し扉を見つけないと天井が落ちてきてペシャンコになっちゃうよ。」
「ここまで徹底する必要があるのか?」
いや、ない。というか、コレは私の趣味で作ったモノで(あとグリード兄さんのオシオキ用)需要が全くと言っていい程無い。それに私が作ったカラクリ屋敷って一つじゃないし…。ザ・神社っていうここよりも古びた洋館の方がマルコーさんも過ごしやすいんだろうけれども、あっちは時々プライド兄さん達が遊びに来るから…。他は近未来の研究所風とか学校とか昭和レトロな邸宅とかだし…。因みにぜんふ私の趣味だよ!
まぁ、そう言うわけにもいかないからね、適当に誤魔化すしか無いよね。
「別に徹底はしてないよ。罠とかは思いついたのを適当にセットしただけだし、隠し通路とかも本気で隠してるわけじゃない。これはね、ゲームなんだ。彼らがこの迷宮をクリアして君を仲間に加えるのが先か、死ぬのが先か。…命を賭けたデスゲームなんだよ。ま、私は鋼のお兄さんならクリアできると信じてるけどね。もしかしたら意外な人がここに辿り着くかも知れないし。」
実際、彼をここから逃したのはスカーだった。
「兄弟の事はどうやって助けるつもりだ?」
「落とし穴を使う。そこの、緊急用ってボタン。それを押したら兄弟の中にある石を感知して、床が抜ける仕組みになってるんだ。落ちてきた兄弟は隣の部屋にある巨大クッションに受け止められる。チャンスは一瞬。ドクターが緊急ボタンを押すのが一秒でも遅れたらアウトだ。合図は私が出す。」
確実なのは盗聴器をつけてタイミングを図るのだけど、その為には主人公勢の誰かと接触しなくちゃいけない。一番マシなのはアルフォンスか。中尉と大佐はどちらかに気付かれればアウトだし。
「あと、ヒューズ中佐が危ないから助けたいんだよね。」
「そいつもお前らの仲間か?」
いや、ただ彼はいい人だから助けたい。あと彼が死んでいなければ私の死亡フラグが減る。炎で何回も殺されるのは勘弁だからね。それに…
「恩があるんだ。」
そう、ヒューズ中佐には恩がある。ペドのストーカーを逮捕してくれたという恩が!!
「だから、絶対に助けたい。」
もうね、軍にロリショタコンが多すぎて軍人見るとイライラがやばかったんだ。ラースが話しかけてきた時に反射で急所狙ってしまう程やばかったんだ。そんな時にペドのストーカー!!ストレスで死ぬかと思った。いやマジで。そんな時にメシアのごとく奴をしょっ引いたヒューズ中佐。推すしかないでしょ!!?かっこよすぎかよ!!!まあその後ラスト姉さんが迎えに来てくれてヒューズ中佐とまさかのエンカウント。私と姉さんの間でヒューズ中佐はお父様に命令されても殺さない事が決定した。だからこの件に関しては姉さんも共犯になってもらうんだ。まぁ死体準備してもらうだけだけど。
「マルコーさんには検死時に何処を見るか教えてほしいんだ。」
こういうのは専門家に聞くのが一番だし、と続ける。
あとは、私の力量次第か。