愉快犯?イタズラっ子?が人造人間になりまして 作:五十鈴暮月
私は一般的な…強いて言えば少し泥沼化した家の長女として生まれた。泥沼と言っても別に大した事じゃない。ただ両親それぞれに愛人がいてその間に子供もいるというだけの事だ。離婚しないのは私がいるから。両親はそれぞれの仕事で成功していて、結婚したのも子供を作ったのも周りがうるさいからだ。彼らにとって私は邪魔者で、愛を捧ぐ存在ではない。それは幼い頃から気付いていた事だった。
だから私は彼らの都合のいい存在を演じた。
テストでは毎回学年一位を取り、運動会ではリレーのアンカーを務め、委員会にも入った。それでも、彼らは私に憎悪しか向けなかった。
「お前さえいなければよかった。」
「アンタの所為で私はあの人と…あの子と一緒に暮らせないのよ。」
何をしても罵倒され、嘲られる日々。…じゃあ何で産んだの?何で私だったの?私じゃ無くても良かったでしょ?
何で■してくれないの。
「○○ちゃんはすごいね!!」
「○○に任せれば安心だな。」
「○○さんは本当にいい子ね。」
うるさいな。
すごいのはそれと相応の努力をしているからだ。
任せれば安心?お前の仕事だろ。お前がやれよ。
いい子?ああそうだろうな。そういう風に振舞ってるんだから。
「アンタのせいで母さんが苦しんでる。なのに何とも思わないの?」
私を産んだあの女のせいだろ。
「お前がいるから父さんはあの女と離婚出来ないんだ!!」
私を孤児院に預けるか殺すかすればいいだろ。
私のせいじゃない。私は悪くない。
「何で生きてんの。」
私が死んで困るのはアンタらだろうが。虐待の証拠も遺書も揃えてあるんだよ。
「困った事があったら何でも言ってね、力になるから。」
だったら今すぐ私を殺して下さいよ。
「○○さん、大丈夫?」
同情すんな。私をお前の自己満足に付き合わせるな。
「ねぇ○○は…」
「何でもかんでも私に聞かないで!!!」
初めて怒鳴った、初めて叫んだ
結果、学校に居場所が無くなって…私は不登校になった。
学校に通わなくなってからは趣味に打ち込んだ。手品や発明、ハッキング。かなり高スペックになっていたと思う。イタズラをし始めたのもこの頃からだ。
小学校ではそれなりにいい成績を修めていたから、受験にはあまり支障はなかった。不登校になっていたのだって一年程だし、趣味に走った事で精神的に余裕も出来た。学校としても私の存在は惜しいらしく、何度も復学するよう担任が訪問して来た。その度に私は
「内申を上げてくれるなら。」
と答えてきた。卒業式には参加したし、嘘ではない。
中学はそれなりにいい女子校。偏差値もそれなりに高いがそんなに真面目なわけでもなく、ノリもいい。私がイタズラしても褒められるくらいには。
部活は強制だったが、苦ではなかった。部員は10人いるかいないかだったけど成績がいいので廃部の心配は無い。上下関係も先輩に対して呼び捨て+タメ口が当たり前で、かなり居心地が良かった。
ただ困った事に、類は友を呼ぶを体現したように問題児しか集まらない。部長は生徒会書記で何故か先生方(理事長含む)の黒歴史や秘密を知っているし、会計さん(風紀委員長)は事あるごとにイベントを企画して勝手に開催してしまう(バレても部長のお陰でお咎めは無い)、書記ちゃん(保健委員長)は数々の論文を発表している天才だけど本性はただのマッドサイエンティストで、私自身何度実験台にされかけたかわからない。かくいう私も入学式で校長のヅラをついうっかり落とし、全クラスの黒板にそれぞれの担任のプロフィールを事細かに書いて反省文を書くはめになった問題児である。多分ブラックリスト載ってる…。
ハガレンを知ったのも部長から無理やり押し付けられた単行本が原因だった(ついでにオカルトにもハマった)。
「私の推しがラストの姉御なんだがね、○○にはエンヴィーがおススメじゃのう。」
「部長、その口調と顔のせいで全体的におっさんみたいなんだけど?」
ちなみ部長はウヘヘっな感じの顔をしていた。まるでエロ本を読む時のオヤジのように。
結果…秒でハマった。部長の予言通り、エンヴィーに。
それは、なんとなく自分と似ていたからかも知れない。もし私がハガレン世界で生きていたならこうなっていたかも、なんて妄想するくらいに私と彼は似ていた。ただ、私なら人間を憎悪してもただ殺すだけでは済まさないだろうな、と思う。多分たくさんイタズラして、自分のオモチャにして、用済みになったら捨てるんだろう。事実、その通りになったしね。
朝起きて、学校に行って、帰ってハガレンを読んで宿題をやって寝る。そんな私にとって平和な日々は呆気なく終わりを告げた。
理由は簡単。義妹がよりにもよって私と同じ中学に入学して来たからだ。ちなみに血は繋がっていない。彼女は私を産んだ女の愛人の男の子供だからね。義妹というのも変だと思うが、…どうなんだ?
それは兎も角、彼女は凄かった。何がというと、私への嫌がらせが。しかも要領が良い上、成績は学年三位(私は一位だがなm9(^Д^))、性格も先生にウケがいい典型的な優等生(だが生徒達からは嫌われる系)の猫を被っているから評価はうなぎ登りだ。大人ってチョロいな〜(嘲笑)。
で、そんな彼女がある日突然私に突き飛ばされたと言ってきた。ご丁寧に青アザ作って。当然、私に事情を聴く事になるわけだが…私、アリバイ無いんだよね。調理室で人間の目玉(チーズ)作ってたから。マズイな〜と思ってたら…部長がキレた。
「あのさ、○○を嵌めたいならもっとまともな嘘ついたら?無理だろうけど。これで風紀委員、保健委員は確実に敵に回ったし。生徒会には私が話すから今後君に何があっても嘘だと思われて相手にされない。…うちの部に手ェ出してタダで済むと思った?ご愁傷様、てめーの学校生活はここで終了したんだよ。明日から五体満足で居られると思ったら大間違いだ。」
「えっと部長、私のアリバイ無いんですけど…」
思わずツッコミをいれた私に部長は衝撃の事実を告白した。
「ごめん、発信機つけてたから○○が何処にいたかわかるんだ。最近○○の事嗅ぎ回ってるヤツがいたからさ、ちょーっと用心しとこうかなーって。」
「………何やってんだアンタアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!!!」
思わず叫んだ私は悪くない。
その言葉に校長はマヌケ面をさらし、教頭は顔面蒼白、義妹の担任は
「さすが映画研究部…。」
と呟いていた。そうそう、私が所属しているのは映画研究部…略して映研…ってちがぁう!!!私は発信機仕掛けたりしてないし!!ただイタズラしてただけだから!!!
「部長!!そういう時は事前に連絡してっていつも言ってるじゃん!!何勝手につけてんの!?ねえ!!!」
「え?だって○○が嵌められそうだから証拠用意しといて信じた連中にプギャーしようと」
「性格悪いな!!!」
いやうちの部で性格いいやつなんていないか。イイ性格のヤツならいるけど。
結局、義妹は部長達の働きにより自主退学を余儀なくされたらしい。そして私は次の日から…母(と呼びたく無いが仕方ない)とその愛人から暴力を受けていた。学校に行けば母()に買収された教師から何かと難癖をつけられ、中間テストではやってもいないカンニングをしたと言われて別室でテストを受け直す羽目になった。
唯一部活だけが、心の支えだった。心を許せる友達なんていなかったし、信頼出来るのは部の仲間だけで…彼女達にも迷惑は掛けたくなかった。でも、私の限界はとうに超えていて…
春休み。気がついたら学校の校庭で満開になった桜の木を見上げていた。
「死んじゃおうかなぁ…。」
不意に、口から漏れた。
頭に霧がかかったような感覚で、何も考えられなかった。守衛さんに春休み中にイタズラを仕掛ける許可は貰っていたから体育館倉庫の鍵を借りてロープを取り、脚立を使って桜の木に結んで首に掛ける。…私が死んだら、きっと家も捜査の手が入るだろう。そうすれば両親も、その愛人も全員…。
「ざまぁみやがれ、ってな。」
その言葉を最期に、私は足場になっていた脚立を蹴飛ばした。