愉快犯?イタズラっ子?が人造人間になりまして 作:五十鈴暮月
私はどうするべきだったんだろう。
ヒュウ、と少し肌寒い風が通り過ぎる。
「…確かに、アンタの復讐は果たせたよ。あの家の連中は一人残らず逮捕されたさ。でも…アンタが死んだら意味ないじゃん…。」
アイツが死んだのは、アイツの誕生日だった。十日前に卒業式が終わって、部活は任せたからなって…嘉苗とアイツに言って…。もうすぐ誕生日だって聞いたから、家に帰ってすぐ何をプレゼントしようか考えて…。選んだのは結局、簡易的な防犯、護身具詰め合わせセットだった。
盗聴器や発信機、スタンガンにカラーボール、ペン型ビデオカメラ、小さい防護盾、センサーライト、手錠、盗聴器と隠しカメラ発見器、逆探知機器、トンファー、催涙スプレー、グレネード、ガスマスク、レザービリー、フラッシュライト、エアガン、麻酔銃、スチール製の特殊警棒、クボタン、タクティカルペン、メリケンサック、居合刀、サイ、鉄扇、十手、鎖鎌、棍棒…他にも色々。
全部、部活でアイツが使っていたものだ。
私達映画研究部員は映画を作ったりはしない代わりに、使う映画を完璧に再現しなければならない。セリフや舞台セットは勿論、それぞれのキャラクターの性格もアクションも全て。アイツは天才だった。一度見た映画のキャラクターはどんなモブであろうと完璧に再現し、本物かそれ以上のリアルさを感じさせた。でもそれは、アイツがただ望まれた自分を演じているに過ぎなかっただけで…その事に気付いたのはアイツが入部して半年が経った時だった。
バタン、と突然アイツが倒れた。顔は赤い上に息は荒く、身体は明らかに不調を訴えているのに、アイツは謝って練習に戻ろうとしていた。
「何やってんの!!!早く保健室行かないと…そ、そうだ嘉苗ちゃん、保健委員だよね、早く○○を」
「大、丈夫…です…。すぐ、れんしゅ…戻ります、ね…。」
「何言ってんの!!明らかに熱あんじゃん!!!」
結局キレた当時の部長が手刀落として保健室にぶち込んだんだけど…アレは凄かった。イケメン過ぎて惚れたわ〜。
で、後で○○について調べたら出るわ出るわ虐待の証拠がたんまりと。ああこれはほっとけねーって事で人目も憚らず全力で甘やかしてたら嵐もそれに乗っかってあっと言う間に愉悦コンビ結成。なんでこうなった。あと嘉苗ちゃんからめちゃくちゃ睨まれた。呼び出されて遠回しに○○にあんまり変な事教えてんじゃねーよ的な事言われたりもしたっけ。あの時は帰ってすぐ信者コワイってgkbrしてたな。今ではいい共犯者だけど。
知ってるか?○○の戸籍上両親となってる奴らを捕まえたの、嘉苗なんだぜ?嘘のハガキで呼び出して主に精神的にズタボロにして証拠も添えて自白させてその様子を隠しカメラで録画して警察に突き出して無事豚箱行き。いやー、恐ろしい程手際が良かったよ。私や嵐も微力ながら協力させていただきました。
でも、さ。アンタが死なない未来だってあったんじゃないの?勿論、限界だったっんだろうとは思う。でなかったらアンタは死んだりしないだろうからね。でも…
「はぁ、たらればなんて考えても仕方ないっつーに。私はアンタが死ぬのを止められなかった。それだけだ。」
悔しい、虚しい。後悔と共にそんな想いが込み上げてくる。口ではそう言っても、感情との折り合いが付かない。何をすればよかったか、なんて。
「くそっ…。」
口の中に鉄の味が広がる。
なぁ○○、何であの時…また高校でなんて言ったんだよ…。
「あんな事言われるくらいなら!!いっそ別れの言葉の方が良かったッ…!!」
感情のまま、思い切り桜の木を殴る。持って来た赤い花の茎は…私の手の中で折れていた。
_____________________________________________
「ふーむ、部長達がこんなに悩んでいたとは…。」
悪い事しちゃったなぁ、なんて苦笑いしながら私は桜の木から手を離した。
新しく分かった事。
私は、桜の木を通して私の死後何があったかを知る事が出来る。…と言っても、それが出来るのは私が幽霊になる前の1ヶ月に起きた事だけなんだけど。
というか、しーちゃん怖すぎ。嵐はまぁ、…うん。部長は抱え込み過ぎだよ。私が死んだのは誰のせいでもないのに。
「あーあ、何で死んじゃったんだろ。」
もっとやりたい事はあった筈なのに…誰にも相談せずに首吊ってバカみたいだ。
一言、助けてって言えばそれで済んだのに。
でもね、それだけじゃないんだ。私が死んだの、イジメとか虐待とかじゃなくて…ああ、もう何て言ったらいいのかわかんないけど…。
それは、私が死ぬ前日の話。
______________________________________________________________________
その日は私の(戸籍上での)両親が珍しく二人で一緒にランチを食べに行っていた。私は二人がどんな話をするのか気になって、つい盗聴器を仕掛けてしまったんだ。犯罪だとは解ってたけれど部活でよく使ってたし…感覚が麻痺していたんだろうね。特に罪悪感も湧かなかった。
もしかしたら心の何処かで期待していたのかも知れない。三人で一緒に暮らせる未来…なんて、今から思い返すとバカバカしいにも程があるけど、どうしても諦めきれなかった。
結論から言うと、私は邪魔だから事故に見せかけて殺そうって話だった。孤児院に入れたら世間から何と言われるか分からないし、家から追い出したりなんてしたら報復が怖い。だから殺す事にしよう、と。
「報復、ね…。そういう事をされる覚えがあるんだ。」
自分でも驚くほど冷たい声が出た。というか、殺した方が後が怖いって思わないの?そう考えたらなんだかおかしくて、私は数十分間狂ったように笑い続けた。
「ああ、そうだ。どうせなら盛大にバラしてやろう。ふふっ…私を殺そうとしたんだから…自業自得だよ。」
その時はまだ、死ぬつもりなんて無かった。私を殺すように命じられるのはクソ教師だろうから、そいつらの秘密を暴露しようとしただけで。
……でも次の日校庭で見た満開とまではいかないけれど蕾と花が混ざり合っている桜がとても幻想的で…ここでなら、死んでもいいって思ってしまったんだ。
遺書や虐待の証拠はトラップだらけの私の部屋の中。部活仲間以外に突破されるなんて事は億が一にもあり得ない。だから、安心して逝ける。
不運なのかはわからないけれど、私が部活で身につけた経験と自分自身の才能が自殺の後押しをしたのは確かだ。私が死ぬ事で悲しむ人がいるなんて、その時はこれっぽっちも思わなかった。…自分勝手だったと思う。私は結局友達を…紫苑を、嵐を、李音さんを信じられなかった。その結果がコレだ。
愛されたかった。母に、父に一度でいいから褒めて欲しかった。ただそれだけだったのに……。
私は忘れられる。ここで何をしたのかも、記録からも記憶からも消されてしまう。そうなったら、私は………。
「やだ…そんなの、やだよ…。」
出られないのにガンガンと校門を叩く。その度に結界のようなものに弾かれるとわかっていても。
「出して…。出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出してええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
悲しくて、ただただ泣いた。忘れられたくない。嫌われても、憎まれても…忘れられるのだけは……。
「やだ…母さん、父さん…。こっちを見てよ…。私を…私を忘れないで!!!!」
それは紛れもない、幼い頃の私の叫びだった。ずっと目を逸らし続けていた、私の…。
ふと、赤い花の側にある紙袋が目に入った。
「!!アルバムに…防犯、護身用グッズ…?」
パラパラとアルバムのページをめくると一枚の紙がひらりと落ちた。それにはただ一言だけ。
『また会おう』と書いてあった。
「…忘れないで、くれるんですか…?」
その一言がとても嬉しくて、私はまた泣いてしまった。
それからおよそ五年の月日が流れた。
私はまだ学校から出られず、ずっとイタズラをしている。そのせいで学校はお祓いをする事になったので、私は思い切りハデにおもてなししようと思い、ハガレンに出てくる人体錬成の錬成陣を校庭に描いていた。
そして。
なぜか触る事も出来ない筈のただの石に躓き、いつもは貫通するだけの地面に手をつき、…私は光に飲み込まれた。
「よう。」
「え…どゆこと?何でハガレンの真理的なヤツが目の前にいんの?」
「いや、それ本人に言うか?」
私の頭、ついにおかしくなったか?白い変なヤツが見える、とその時はとても混乱した。まあ現実だったんだけれども!!!
「えー…と、つまりアンタは世界で宇宙で神で真理で全で一で私自身って事?」
「ああ。」
正直認めたくなかった。でも本能が告げているんだ、これは紛れも無い現実だって。だから…
「で、私は何を持っていかれるの?」
潔く諦める事にした。納得はしてないけど。納得はしてないからな!!!
「話が早くて助かる。お前から貰うものはお前自身だ、
「そ。まぁ、こっちは既に死んでる身だし。別に何でもいいけどね。」
その言葉を言ったすぐ後、私は真理の扉に吸い込まれたんだ。
そして。
私は
赤い花…ネリネ(赤)
花言葉
また会う日を楽しみに、幸せな思い出、輝き、華やか、忍耐、箱入り娘
真理のお前自身を貰うというのは転生させるという意味です。名前も思い出せなくなるし、自分が自分だと証明できるのは前世の記憶だけです。それも本物かどうかわからないのに正気を保っている時点で少女Aは普通の人間ではありません。