屋根が飛びませんように!!
ールージュー
1175年、今年の白蛇騎士団はある意味大変な年となるだろう。とある小領主の娘であるマリアンヌちゃんを預り、セイロス騎士団からはあのカトリーヌが出向してきている。俺のミッションは2つ、マリアンヌちゃんのネガティブ思考を正すこと。そして要注意人物であるカトリーヌ、彼女をどう扱うか。俺が試される年、…つってもどうにもならんからいつも通り過ごす予定。カトリーヌに注意すれば何とかなるだろう、…
騎士団の見習いとして傍に置いているマリアンヌちゃん、色々とあって自分に自信を持てないでいる娘である。その原因が紋章であり、その為にネガティブ思考のやや引きこもり状態になっていたらしい。その弊害で暗い、運動不足で非常にどんくさい、関係ないけど部屋が汚い。こうなったのも育った環境が悪い、…とはいえ生活能力が低いな! このまま成長したら嫁の貰い手がいないんじゃ………!?
俺の中の妹愛が疼きだした、そして謎の使命感を抱く。彼女を正常な貴族令嬢にする、ネガティブ
謎の使命感を抱いた日から、ウザイと思われようがきちんと指導することにした俺。それはもう自分の子供に構う母親のように、時には頼りがいのある父親のように。ぶっちゃけ義妹のリシテア以上に構う、妹のようなヒルダちゃん以上に構いまくった。…それからというものリシテアは俺を見る度したり顔、それは貴族令嬢がして良い顔じゃないから止めなさい。そしてヒルダちゃんは何故か此方を見る度にガクガク震えている、目に涙を溜めてマリアンヌちゃんを凝視する。…何故に?
敬虔なセイロス教徒らしいマリアンヌちゃん、そこを突いて俺は指導する。女神様は常に信徒を見守っている、その女神様にその姿を見せ続けていいのか? …と。苦手であるなら多少の努力を、出来なくともその姿勢が大事。下を向かずに上を…前を向け、見守る女神様に笑顔で感謝を。自身の全てを女神様は見ているのだから、常に良い姿を見せられるよう心掛ける…等。そう言い聞かせながら時には優しく、そして時には厳しく指導した。
その結果、マリアンヌちゃんのネガティブ思考が少しずつ改善されていく。纏う陰気な雰囲気は徐々に明るく、諦めの表情も希望が見え隠れする微笑みに変わっていった。運動不足も日々の鍛練で改善されていき人並みに、そこで知った槍の才能。槍は俺の得意な得物だからね、それを知った時は嬉しかったさ。俺が彼女の部屋へよく訪れることから羞恥心を覚え、少しずつではあるが整理整頓をするようになった。うんうんそれでいいんだよマリアンヌちゃん、もう君は立派な貴族令嬢だ!
明るくなってきたマリアンヌちゃんだが、一時期再び暗くなりかけた。その原因はパルミラ戦の時、俺が彼女を庇って怪我をしたことがあった。俺の不注意というか、パルミラの将の一人が切れ者だったというか。
…ナデルという名だったか? 奴が他の部隊を囮にして本隊に奇襲してきたんだ。…で狙ってきたのがマリアンヌちゃん、そこを一点集中してきた点は評価出来る。彼女は見習い、当たり前だがまだまだ未熟。故に普通であれば戦場へ連れてくることはない、だが戦場の空気に慣れさせる為…今回は連れてきたんだ。いつもと同じ小競り合い程度の戦い、ゴネリル騎士団共々そう思っていたから。…だが今回は奴等の大攻勢だった、それを読めなかった自身の浅慮に腹が立つ。
そんな奴等の奇襲、その部隊の将であるナデルの攻撃からマリアンヌちゃんを庇った。左目下に傷を負い血だらけの俺を見て泣くマリアンヌちゃん、
「…私はやっぱり不幸を呼ぶ者。…私に関わると、……だからルージュ様が! …ごめんなさい、………ごめんなさい!!」
そんな彼女に俺は笑いかける。
「これは私の油断が招いたもの、断じてマリアンヌのせいではない! あっはっはっはっはっ!! 見ていろマリアンヌ、不幸なんぞ私が断ち切ってくれる! その証明に奴等の大攻勢を押し返し、君に勝利を捧げよう!!」
槍を掲げて宣言すれば雄叫びを上げる白蛇騎士団、泣く彼女に向かって何をやっているんだか。ただ…抱き締めて慰めるのは違うと思った、目に見える形で不幸ではないと彼女に見せたい。
マリアンヌの周囲を手練れで固め、俺は単身躍り出る。血だらけの俺を手負いと見てパルミラ兵が殺到するも、俺は瞬時にオーラを唱えて出鼻を挫くことに成功する。手負いの蛇は暴れるぜ? 頭を潰さぬ限りな!
「私自身の不手際は自身の手で! パルミラ兵の諸君、運が悪かったな! 今回は加減無しで槍を振るおう!!」
グラディウス片手に突貫、今回は…視界に入ったパルミラ兵は何人も逃さん! 我らに圧倒的な勝利を、大攻勢に出たことを後悔させてやる!!
この日を境に俺は、マリアンヌちゃんのいる戦場では鬼神が如き槍働きをするようになる。圧倒的な武勇でパルミラ兵を討ち払い、血まみれになることから『鮮血の白蛇』と呼ばれ畏怖されるように。そんな俺の姿を見てマリアンヌちゃんも変わった、ネガティブ思考は無くなり前を向くように。そして何故か『白姫』という異名で呼ばれるように、うん………いいね。前向きになればマリアンヌちゃんは美人さんだから、姫という言葉が良く似合う。
俺がきっかけで変わったのなら、これ程嬉しいことはない。…しかし何故『白姫』という異名が彼女に?…分からん。