ーマリアンヌー
私は呪われた紋章を宿す呪い子、存在自体が世に不幸をもたらす者。…そう思っていました、…そう思わされていました。けれどその呪いはまやかしで、紋章自体は関係なくて…。
存在を消された紋章が故に何もかもを押し付けられて、元々の性格から否定も出来なくて…。いつしか私自身も周囲の言葉を信じ込み、目に映るモノが灰色に変わってしまいました。
私を癒すのは鳥と動物、身近な人では父様と母様だけです。…そんな日々の中で灯った暖かな炎、太陽のようなルージュ様に出会うことが出来ました。出会った日から私は、私の目には色が戻ったのです………。
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自身に紋章が宿っていると知った時、…その時はとても嬉しかった。父様と母様、両親もきっと喜んでくれる。使用人達や領民達も喜んでくれる、そう思っていました。…けれど運命とは残酷で、…私の紋章は呪われているモノらしいのです。獣の紋章、その異質さの為に存在を消された紋章。宿主は勿論のこと、周囲の者達に不幸をもたらす呪われた紋章と言い伝えられています。 …私の紋章が判明した瞬間、私が思い描いていた明るい未来は音を立てて崩れ去りました。
…紋章が判明した日を境に私は腫れ物を扱うが如く、周囲の者達から距離を置かれるようになりました。何かが起これば全て私のせい、商売に失敗したことも、不作になったことも、怪我をしたり亡くなったりしたことも私のせい。否定しても否定しても否定しても否定しても否定しても、全ての不幸は私のせいになりました。小さな領地故に私のことは知れ渡り、領地に不幸を撒き散らす厄災…呪い子と皆が口にします。人々の怨嗟の声が私を責める、私は…自身の殻へ閉じ籠る他に為す術がありませんでした。
…紋章を宿して唯一良かったと思えること、それは鳥や動物と話せることです。私の苦しみを親身になって聞いてくれるのは彼等だけ、いえ…父様と母様も聞いてくれます。苦しみを吐き出してもそれは消えることはなく、ああ…私はこれからどう生きていけば? 自らを死に追いやることは出来ません、私は臆病者だから。…だから私は祈ります、祈ることしか出来ないのです。…
自身に宿った紋章を憎み、
この家を出される前に両親と色々なお話をしました、…縁切りは私の勘違いだったようです。父様と母様は、私に幸せを感じて欲しいからこそ家から出すそうなのです。私が預けられるのはコーデリア伯爵家、同盟領で知らぬ者がいない程に有名な白蛇のルージュ様を有する名家。件のルージュ様は2つの大紋章を宿していながら驕ることなく、そして差別を嫌うが故に受け入れてくれるだろうという希望。藁にもすがる想いで私を預ける、…よって断じて縁切りをするわけではないと抱き締められました。…ごめんなさい、父様…母様。…そしてありがとう、私を愛してくれて。
私に希望はありません、何せ呪い子なのですから。両親の願いは成就しないでしょう、私はきっとコーデリア伯爵領でも…。そう思っていたのですがそれは良い意味で裏切られて、コーデリア伯爵家の方々も領民達も私を温かく受け入れてくれました。特にルージュ様、この方は常に私を気に掛けてくれます。普段の生活から自己鍛練まで面倒を見て下さり、時には私の目を見て叱ってくれるのです。…それがどれ程嬉しいことか、私をきちんと見て下さるルージュ様には感謝しかありません。
ルージュ様の他に妹であるリシテアさん、ゴネリル公爵家のヒルダさんとも仲良く出来ました。お友達が出来るなんて夢のよう、…一生出来ないと思っていましたから。それに信仰しているセイロス教、虎の子であるセイロス騎士団に所属しているカトリーヌさんとも知り合えました。この地に来てから全てが上向きに、
…しかし調子に乗ったからでしょうか? 私に経験を…とのことで、ルージュ様率いる白蛇騎士団の方々と共にパルミラ戦へ。小規模な戦闘で終わる筈が戦争へと変わり、私を庇ってルージュ様がお怪我を…! …私のせいで! そう思い嘆いてしまったけれど、ルージュ様はそれを否定しました。それを証明する為に、…私に勝利を捧げると宣言してからの突貫。極めて不利な戦況をひっくり返して優勢へ転じ、そしてパルミラ勢の
…全ては私の為に、ルージュ様の姿は太陽のようでした。私を照らして導いてくれる光、陰鬱な私を陽の下へと連れ出してくれる。…いつしか私は真っ直ぐに前を向き、ルージュ様のお役に立てるよう努力を惜しまぬようになりました。
…紋章は関係なく、全ては自身の気の持ちよう。ルージュ様のお陰で見えなかったモノが見えました、私にも守りたいモノ…尽くしたいモノがあったようです。
それはルージュ様で、きっと私は…ルージュ様のことが………。