風花雪月 ー白蛇の学級ー   作:ユキユキさん

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第14話 ~婚約に向けて。

ールージュー

 

マリアンヌちゃんがエドマンド辺境伯の養子となる、彼女がそう決めた。その決意を聞かされた俺は彼女の成長を嬉しく思い、それと同時に寂しく思った。槍を教える相手がいなくなるというのもあるが、それ以上に妹のような…家族だと思っていた娘が巣立つのだ。そりゃあブルーにもなる、けれど顔には出さん。常にマリアンヌちゃん、リシテアやヒルダちゃんの前では強くあれ! …ってね。

 

 

 

 

 

 

…しかしながら、そんな俺でも今回ばかりは本気で驚いた。まさかマリアンヌちゃんから婚約の話が出てくるとは、しかもマリアンヌちゃんが俺に申し入れたんだぜ? まぁ彼女が淑女になったらっていうのが前提だけど。

 

その前提も今のマリアンヌちゃんなら達成出来るだろう、エドマンド辺境伯の下で淑女となる筈だ。それがいつになるかは分からない、…がそれではダメだ。何故なら俺は貴族、それも名の売れている優良物件だ。引く手あまたの男…らしい、義父上の話によると。よって長くは待てんのだよ、マリアンヌちゃんの申し出は嬉しいんだけどもさ。

 

…だから俺は努めて冷静に、

 

「有難い申し出だけど、…条件を付けてもいいかな?」

 

マリアンヌちゃんにそう返した。俺の言葉を聞いて瞳に不安の色が宿るも、彼女は大きく頷いて俺を真っ直ぐ見る。俺も彼女の目を真っ直ぐ見て、

 

「…2年、2年で何かしらの成果を上げてくれるかい? 私は2年後、ガルグ=マクの士官学校へ行かねばならない。その時までに立派な淑女…それに準ずる君となって会いに来てくれ、条件をある程度満たしていたのなら私の方からマリアンヌ…君に婚約を申し入れよう。」

 

そう伝えた。

 

 

 

 

 

 

今は1176年、正確に言うなら後2ヶ月で1177年。2年後、1179年に俺はガルグ=マクの士官学校へ入らなければならない。今更という気持ちがあるけれど、貴族としての顔つなぎをせねばならんのだ。更にそこで婚約を結んでいなかった場合、その相手を探す…という側面もあるようでね。

 

士官学校へ行く前に相手を見付ければいいのでは? と思うだろうが、暇そうに見えて俺はいつも忙しなく動き回っている訳で出会う暇もなし。例え義父上の言う引く手あまたの男だとしても、暇がなければ女性と会えないのは必然というわけなのだよ。

 

だからこそ、マリアンヌちゃんからの申し出には驚いたし嬉しかった。本音を言うならこのまま婚約を結びたい、なれど彼女の淑女になる…という目標をないがしろにするのはね。変な所で生真面目さを出す俺、…我ながら難儀なものだと思う。

 

 

 

 

 

 

2年という条件を聞いたマリアンヌちゃん、賢い彼女はそれで色々と察してくれたようだ。

 

「…2年。…それまでに目標とする淑女になれば、…ルージュ様から私に? ………頑張ります!」

 

察した上でやる気に満ち溢れている。そんなに俺と婚約したいの? …何かこう、…本当に嬉しいね。俺も宣言したようにこの2年間、ないとは思うが婚約話があったとしても断るようにする。

 

一応義父上にも話しておかねばならない事案だ、俺とマリアンヌちゃんの決意を。…反対されるかな? って思ったんだけど、反対されずにぎこちない笑顔。何故にぎこちない笑顔? …何て思っていたんだけど、数時間後に理由が分かった。

 

 

 

 

 

 

その夜、自室にてこれからのことを考えていた時、

 

コンコンッ…

 

という控え目なノックが部屋に響いた。こんな夜更けに誰だ? そう思いつつドアを開けてみれば、そこにいたのは寝間着姿のヒルダちゃんだった。自分の部屋へ戻るよう言おうとしたのだが、

 

…ボスッ

 

と俺に抱き付いてきたかと思ったら、

 

「うぅ~…、うえぇ~………。」

 

と泣き出してしまった。この状態で戻るように言えない俺は、泣き止むまで面倒を見ることに決めた。

 

部屋へ招き入れたヒルダちゃんをベッドの縁に座らせ、俺は椅子へと座って対面する。隣に座って慰めるべきかもしれない、…が妹みたいだとはいえそれはダメだろうと考える。マリアンヌちゃんとの約束もあるし、2年間は女性と親しくならんようにしないと。…っていうか、部屋へ入れた時点でアウトか? と考えている内に泣き止んだヒルダちゃんは潤んだ瞳を俺へ向けて、

 

「…ルージュ様がマリアンヌちゃんと婚約を結ぶ、それに向けて行動すると聞きました。………本当ですか?」

 

そう聞いてきた。義父上にでも聞いたのかな? …ヒルダちゃんが聞いているのであれば、我が愛する義妹であるリシテアも聞いているであろう。…またあの下品なしたり顔で周りをうろちょろしだすな? …何て考えつつ、頷いて肯定し説明しようとしたのだが、

 

「…何故? …何故ですか!? …あたし、あたしの方がルージュ様のことを知っているのに! …共に過ごした時間が長いのに! …ずっとずっと、…ルージュ様のことが好きだったのに。………うぅ、…どぉしてぇ~………。」

 

俺を遮ったヒルダちゃん、その心の内を吐き出した。その吐き出した訴えを聞いた俺、…俺はどうすればいいのだろうか?




因みにこの話の中の淑女とは、そのままの意味の他に戦闘能力は勿論のこと、戦闘時にパートナーの補助を冷静に出来る女性のことをいう。
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