ーレアー
その少年の名を聞いたのは2年程前、アドラステア帝国フリュム領にて内乱が起きたとの報告で知り得たのです。その内乱は帝国全体を巻き込み、同盟のコーデリア領にも飛び火しました。私達セイロス教は内乱ですので静観という形を取ろうとしたのですけど、コーデリア領をも巻き込んだと聞いた時には動かざるを得ないと思いました。
これを見逃してしまえばフォドラ全体をも巻き込んでしまう、さすれば敬虔なセイロス教徒も巻き込まれ心を痛めてしまう。哀しみがフォドラを覆ってしまう、…そうなる前に納めなければならないと考えました。セイロス騎士団を編成し、いざ救済へと思った矢先に立ち上がる者がいたのです。コーデリア領にて単身戦う少年がいる、その名をルージュと言い快進撃を続けていると。
ルージュという名の少年は単身で戦い続け、脅威に晒されている人々を救っている。救いの道には犠牲があれど、それでも彼は戦い続けている。そんな彼に追随し戦う者が増えていき、遂には大きなうねりとなってコーデリア領を守り切った…と。本来であれば私達もセイロス騎士団を派遣し、共に戦うことが早くに争いを納める術だったのかもしれません。
ですが不幸にも別件が絡み、セイロス騎士団はそちらの方へ。悔やんでも悔やみきれませんが、あの少年がコーデリア領での争いを納めたと聞いた時は心から安堵しました。…安堵と共にある想いが生まれます、少年…ルージュに会ってみたいと。…どのような理由でガルグ=マクへと招待しましょうか? …悩んでしまいます。…セテスにも相談してみましょう、妙案が浮かぶやもしれません。
招待の理由をセテスと共に考えていましたが、呆気なくそれが叶いました。件のルージュがリントヴルム傭兵団として活動し始め、それを聞き付けたアロイスが賊徒の討伐依頼を出したようでこのガルグ=マクへと訪れるようです。
帝国内での争いが続いていますので、フォドラ各地にて賊徒が多数現れていますからね。その対処にセイロス騎士団の殆んどが出払い、ここ最近は深刻な人手不足に陥っていました。その為に依頼を出したのでしょう、アロイスは良い仕事をしましたね。
ガルグ=マクへと訪れたリントヴルム傭兵団、傭兵と義勇兵の寄せ集めと聞いていましたが…見事ですね。それぞれが誇りに満ちた表情、そしてきちんとした統率。これは最早…傭兵団とは呼べません、騎士団と言った方が良いでしょう。
統率された彼等の先頭に立つ者、あれが団長である件の少年ルージュですか。まだあどけなさが残っていますが、纏う気が常人を上回っている傑物ですね。奇妙な髪型、そして白を基調とした勇ましい鎧姿。遠目で見ればなるほど、炎を吐く白き怪蛇に見えるやもしれません。白き怪蛇…リントヴルム、翼無き竜の伝説。…何と言いますか、他人とは思えませんね。
会って話をしてみれば気持ちの良い少年、そして彼を筆頭にセイロス騎士団と並び評しても良いぐらいの実力ある傭兵団。このガルグ=マクから出奔したジェラルトに勝るとも劣らない、そう思わせる程の武勇であるとアロイスも熱く語る。それほどの武勇ですか、一度拝見してみたいものです。…ですが大司教という立場がそれを許しません、世知辛いものです。
…と思っていたのですが、手塩をかけて育てたカトリーヌがルージュに勝負を挑んだとの報告が届きました。これ幸いと場所を提供し、その実力を拝見させて貰いましょう。カトリーヌはカロンの紋章を宿し、
勝負を終え、彼等も依頼を完了しましたので帰還することに。彼等の帰還前にセテスが提案した紋章の有無について、その結果は驚くべきものでした。ルージュには2つの紋章が宿っている、ダフネルの紋章とラミーヌの紋章。小紋章ではなく、本来の紋章を宿していたのです。
この結果を見る限り、ルージュとは良い関係を築き親しくなることが重要であると結論付けました。…彼の本拠はコーデリア領でしたね? …直ぐ様コーデリア伯爵家に使者を! 彼を野に埋もれさせるわけにはいきません、…セテスはもう分かりますね? …使者はアロイスにしましょう、彼と親しいようですしね。