一か月一万円で生活するアルトリア・ペンドラゴン   作:hasegawa

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プロローグ

 

 

『――――お忘れですか? この身は一国の王であったのですよ?』

 

 モニターに、セイバーの姿が映し出されている。

 

『ブリテンを治めしこの私に、たかが一人暮らしの金銭管理など……。

 企画した者達には申し訳ないが、果たしてこれは試練と呼べる程の物なのか。

 鎧袖一触と言わせて頂きましょう――――』

 

 今セイバーは椅子に座り、「フフン♪」と自信ありげにカメラに目線を送っている。その姿は王の風格が漂う。

 

『加えて私はシロウのサーヴァント。それに恥じぬ戦いをする事を誓う。

 ……見ていて下さい、シロウ。

 貴方が想っていてくれる限り、私に敗北はありません』

 

 そんな彼女の様子を、現在モニターを通して見つめている一同。

 現在この衛宮家の居間には、第五次の戦いに参加した仲間たちが集っていた。

 

「……えっと、これが今回の企画に挑む前のセイバーだよ。

 わざわざアインツベルンの応接室を借りて、インタビューを撮ったんだ」

 

「私も現場にいたけど、まさに威風堂々って感じだったわね……。

 士郎に熱い視線なんか送っちゃってさ? ちょっとイラッときたもの私」

 

 いったんVTRを止めて、本日の司会役である士郎と凛が説明を行う。それを聞くこの場の一同。

 

「……つかよ、なんで俺達ぁわざわざ集められてんだ?

 セイバーがなにやら面白ぇ事してるってのは、話には聞いてたがよ?」

 

「セイバーの雄姿を皆で鑑賞しよう、って事なの?

 私いちおう忙しい身なのだけど……」

 

「同居人ではありますが、これはセイバー自身が招いた事なのでは?

 自業自得なのですし、無関係である私達が観る必要は……」

 

 今この場には、ランサーキャスターライダーといったサーヴァントの面々が集まっている。

 ちなみに小次郎は門番があるので残念ながら欠席。狂化状態にあるバーサーカーも欠席している。……というよりも身体がデカくて部屋に入れないのだが。

 

「まぁそう言うな。まがりなりにもセイバーは、第五次を競い合った戦友だ。

 一応私達はそれぞれ現世に適応し、働きに出ている者さえいるだろう。

 ……しかし、それでも決して充分に馴染んだとは言えまい?

 一人暮らしという環境の中で奮闘する彼女の姿を見ておく事も、

 我々にとっては良い勉強となるだろうさ」

 

 現在は冬木に住んでいるとはいえ、それもまだ日が浅いサーヴァント達。

 いくら聖杯からの知識があるとはいえ、まだまだ現代には知らない事や学ばなくてはならない事が沢山あるだろう。

 そんなアーチャーの言葉に凛は満足そうに頷く。士郎の方は言いたい事を取られてしまったと感じたのか、少し渋い顔をしているけれど。

 

「まぁ知らない仲じゃないし、暇だったから別に良いんだけどさ?

 カメラマンだのなんだの協力してきた以上、結果は気になる所だね」

 

「わたしもいろいろお手伝いしましたよ♪

 なんだか楽しかったです、この一か月間♪」

 

 慎二と桜が頷き合う。二人は今回の企画の為に、裏方として尽力してくれたのだった。

 

「場所の手配やその他のもろもろは遠坂、映像の編集は俺がやってみたよ。

 完成したのを観せるのは今日が初めてなんだ。

 せっかくだからみんなで一緒に観ようって事になってさ?

 上手く出来てたら良いんだけど」

 

「えれぇ本格的にやったもんだな……。

 まぁここまでやられちゃあ、観ねぇワケにはいかねぇか……」

 

 照れ臭そうにしている士郎を見て、ランサーがため息を吐く。

 まぁたまにはこういうのも悪くないだろう、それがこの場の総意であるようだ。

 

「でも……坊やはよく許したわね? あれだけセイバーに甘々だったのに。

 彼女を餌付けして甘やかすのが生きがいなのかと思ってたわ」

 

「もうペットそのものでしたよ、以前のセイバーは。

 慈愛に満ちた顔でおかわりをよそうシロウの方にも、問題はあったかと思いますが」

 

「……いや! 俺はそんなっ!?

 ただ……あんまりにも美味そうに食ってくれるもんだからさ?

 なんか俺、うれしくなっちゃって……」

 

 今回の発端の原因は、半分くらい士郎にもある。

 ただ悪気があっての事ではなく、いつも頑張っている士郎であるからこそ情状酌量の余地があったのだ。セイバーには無い。

 

「遠坂やみんなに言われて、“これは良くない事なんだ“って初めて気づいたよ。

 だから今回は俺の方からも、やってみないかってセイバーに勧めたんだ。

 帰って来たら、ご馳走作ってアイツを迎えてやろうって――――」

 

 甘やかすばかりが愛に非ず。今回の事で士郎も学んだのだ。

 セイバーが精一杯頑張ってこの試練を乗り越え、それによって彼ら主従の関係がより良き物となるなら、それは皆にとっても喜ばしい事である。心から応援したいと思う。

 

「ま、そういう事だから。じゃあ改めてVTRを再生するわよ。

 この一か月、セイバーがどんな風に頑張って来たか、みんなで観てあげましょう」

 

 

 リモコンの再生ボタンが押され、映像が再開される。

 姿勢を楽にし、心構えをして。改めて皆はモニターへと視線を向けた。

 

 

 

 

 

………………………

………………………………………………

………………………………………………………………………………………………

 

 

『 我が名はアルトリア・ペンドラゴン!! ブリテンの王ッ!! 』

 

 

 気迫の声と共に1LDKの部屋の扉が開けられ、そこからセイバーことアルトリア・ペンドラゴンが姿を現す。

 その手に、一羽のニワトリの入ったカゴを持って(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「――――んぼッ!!」

 

「――――ごぶッ!!!!」

 

 思わず口から飲み物を噴出する一同。衛宮家の居間が水浸しだ。

 

『 見て下さいシロウ! このニワトリを!!

  今朝、農家のおじさんから1000円で譲り受けたのです!! 』

 

 カゴの中で「コッコッコ」と呑気に鳴いているニワトリさん。それをズイッとカメラの前に突き出すセイバー。モニターの向こうの士郎に語りかけるが如くに。

 ちなみにこのカメラは、部屋のちゃぶ台に設置された固定カメラである。

 

『ニワトリが1000円! エサ代が500円!

 たったこれだけの出費で、これから毎日たまごが食べ放題ッ!!

 どうですかシロウこのアイディアは! 我が名はアルトリア・ペンドラゴン!!』

 

「「「 バカ野郎ぉぉぉおおおおおーーーーーーッッッ!!!! 」」」

 

 モニターに向かって一斉につっこむ。対してセイバーは満面のドヤ顔。士郎は白目を剥いている。

 

「たまごはスーパーで買えよッ!!

 8コ入りのが100円くらいで売ってんだろうがよッ!!」

 

「1500円あれば、140個くらいたまご買えるッ!!」

 

 それに対してニワトリは、どんなに上手くいこうとも一日ひとつしか産まない。この一か月生活なら、最高でも30個である。

 

「知らないのだセイバーは……。

 彼女は買い物なんてしないし、スーパーに入った事などない!!」

 

 ゆえに物の値段など、彼女が知っているワケが無いッ!! アーチャーはタラリと冷や汗をかく。

 

『あぁ……それにしても、なんと雄々しきニワトリなのだろうか……。

 今日よりこのニワトリを“ランスロット“と名付け、そう呼ぶ事としましょう。

 よろしく頼みましたよ、友よ――――』

 

「 雌だよその子!! たまご産むなら雌鶏だよその子!! 」

 

「 アンタも『コケー!』とか返事してんじゃないわよッ!!!!

  ペット禁止なのよあのマンション!? 鳴いちゃダメだったら!! 」

 

 

 届くワケも無いのに、そう叫ばずにはいられない一同。

 今もモニターの中では、セイバーが満足そうにニワトリの背を撫でている。

 

 

 セイバーこと、アルトリア・ペンドラゴン。そしてニワトリのランスロット(雌鶏)

 

 今、二人の“一か月一万円生活“の戦いの火蓋が、切って落とされた――――

 

 

 

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