ザンザスが、殺し屋を目指すお話。   作:黄色いうちわ

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  ザンザスの初任務。





 憤怒、日本旅行をする。4

 

 

   大人の人と誘拐されていた。

 

   その人は眠らされていたけど、泣きながらずっと謝っていた。起きたから元気付けてあげたら、息子さん(推定養子)を可愛がっていたのだけど、実子が生まれてから、可愛がれなくなってしまってつらく当たってしまうのだと話してくれた。

 

   

   あまりにも泣いて悔やんでいたので、可哀想に思った。可哀想だから、何とかして群れに返してあげようと思った。群れに返しても攻撃をしないであげようと思った。武器のトンファーと靴を取り返せれば、でもどうやろうかと考えていた。

 

   「大切な人質の皆さん、ご飯ですよ。さあさあ、殺されたくなければ大人しく食べろよ。まったく向こうの二人は、俺達が用意した飯は食いたくないとよ。王子だなんて言っているけど、現状は人質だっつーの。若獅子、暴れんなよ。お前が暴れたらそのガキか王子のひとりを殺す。わかるだろ?俺達は帰属場所を、守りたかった全てを滅ぼされた人間だ。無くすものは何一つないし命乞いなんてするわけがない」

 

   「大人しくしている。頼む、誰も殺さないでくれ」

 

   「…丸くなったもんだな。ガキが生まれると変わるもんなのかね?なんだ、ガキ?嫌いな食いもんか?」

 

   「あなたはこのひとのしりあいなの?しりあいなのにとじこめるの?」

 

   「ガキ、知らなくて良い。大人しく食べて寝ちまえ。お前の親が身代金を払えば返してやるからよ。…そうだ、俺達はあいつらとは違うちがうんだやくそくやくそくはまもるだからころさないでころさないでくれなんでなんでころしたぼすはかねをよういしてくれたなんでなんでやさしいぼすやなかまがしんでいたちがうちがうおれはころしてないころしてないはんにんはべつにいたんだしんじてくれよ…」

 

   「刺激しない方が良い。良い子はしぃーだ」

 

   「…わかったよ」

 

   この人間は、もう、どんな言葉も届かない場所にいる。きっと、僕の両親が身代金を払っても僕の死体を届ける。いや、そもそも身代金を要求したのかさえ怪しい。誘拐犯人達は、日本人に見えるけど違うのかな?

 

   わかじしさんが僕を隠すように背に庇ったので、僕は口を閉ざした。

 

   男の人は、頭をかきむしりながら、何かを呟きながら部屋から出ていった。僕達の他にも人質に、誘拐された人がいるみたいだ。二人って言っていた。一緒にいられていれば良いのに。

 

   「…ごめんな。おじさんはお前と他の人質を絶対に守るから。今は飯を食って身体を休めていてくれ。…おじさんには最強の仲間がいるから、探して…ないな。うん。可愛がっている息子で愛弟子な存在を監禁暴行殺害計画を企てている危険人物を探さないよな。そもそも俺がこいつらに誘拐されたのも、ディーノとザンザスの夢を踏みにじったから、護衛に人身売買のブローカーに売られてそこからさらにこいつらに横から拐われた。あ、詰んだわ。ごめんな、おじさん一人でも頑張るからな」

 

   …殺されてしまう前に、わかじしさんが何をしでかしたのかを、詳しく聞きたいと思った。

 

 

   …眠っていた。だけど揺すり起こされた。

 

     美しい朱を見た。

 

   朝陽の希望の色、夕陽の鎮魂の色。その二つよりも尚鮮やかな朱を見た。

 

   「…助けに来ました。あなたの他にも人質はいますか?」

 

   「ふたり。わかじしさんは?」

 

   「すみません。家光さんは俺を見るなり、『ザンザスっ!やっぱり貴様が黒幕か』と叫び殴りかかってきたのでカウンター攻撃をしてしまいました。気絶したので、最初に運び出して来ました。…ご自分で歩けますか?歩けなければ、俺が運びますが」

 

   「あるけ…ない。いたい。くじいたみたい…」

 

   「わかりました。じゃあ、抱きあげますね。二人いる人質を救出しに行きます。その後であなたをお家に送って行きます」

 

   「ま、まって。ぼくをだっこしていてあなたはたたかえるの?ひとじちだってまだふたりもいるんだよ?あのこわれたひとつよいよ。あなたはぼくよりもおにいさんだけど、まだこどもでしょう?」

 

   「ああ。大丈夫です。完全に制圧済みですから。全員拘束したので、自由に歩いて大丈夫です」

 

   お兄さんの言っていた事は全部本当だった。僕を誘拐した人達も、壊れてしまっている人も全員倒れていた。

 

   「す、すごいねっ。あなたはとてもつよいんだねっ。あ、あなたときたほかのひともつよいの?」

 

   「?俺一人での任務です。俺しかこの場所には来ていませんよ。まあ、先生達が何処かで見守ってくれているはずですが」

 

   この綺麗な朱を持っている人は、群れないと言った。綺麗で、強い生き物なんだ。なんか、良い。孤高の、赤い肉食獣。聞いてみようかな?

 

   「ね、おにいさんはすきなたべものってなに?」

 

   「肉ですね。肉大好き。肉があれば生きていけると思っています。だけど、俺もあなたもまだ子供、未成年です。身体を作っている最中です。好き嫌いなくいろんな食べ物を食べて、たくさん運動をしてたくさん眠らないといけません。強くなれません。親孝行とか師に恩返しするのには、一人で生きていける力を付けて、群れから巣立つ事だと思います」

 

   「ぼくも、おなじかんがえだよ。むれるのはうつくしくないとおもう」

 

   お兄さんはやっぱり赤い肉食獣だった。好き嫌いはやっぱり良くないみたいだ。僕も気をつけよう。

 

   「そうですね。でも、種に…生き物毎に生き方は変わります。群れない孤高の強い生き物がいれば、群れて生物として繁栄を選ぶ生き物もいます。否定してはいけません。それは理解し、共存共栄できるという選択肢を潰してしまいます。(そうしないと、俺の大切な友人が悲しむ…ああ、糞っ。ディーノの顔が見たくなってきた。さっさと要人を見つけて帰らないとっ。でも、ほんとこの子は風先生にそっくりだ。はは、なんていうか、風先生の子供みたいだな。ていうことは、俺の弟妹か!なら弟妹は守ってあげないと)」

 

   こんな人間には初めてあった。

 

  誰も僕にどうして駄目なのかまでは答えなかったのに。頭ごなしに否定しないで、お兄さんなりの答えをくれた。うん、嬉しい。

 

   「ね、ころしたの?」

 

   「殺してはいません。気絶をしているだけです。ただ、気がついてから襲って来ないように、関節を外したり片手か片足の骨を折りましたが。暗殺の指令は出ていませんから」

 

 

   このお兄さんは、強すぎる。

 

   殺してしまう方が早く楽に済むのに、この大勢をたった一人で戦闘不能にしてしまった。

 

   「しれいがでていたら?」

 

   「暗殺指令がでていたら、その通りに実行します。俺は殺し屋ですから。…誘拐されていた間の事はなるべく話さないで忘れて下さいね。あなたを誘拐した奴等は、此方側の世界でも不可解な事件の被害者達なのです。ああ、仕留め損ないが人質にナイフを突き付けていますね。はい、制圧終了っと」

 

    突然の浮遊感に驚いた。

 

  僕を抱き上げているお兄さんが跳躍して、誘拐犯人達の中で一番威張っていた男の人の顔面に蹴りをいれたのだ。

 

   威張りんぼは、無言で倒れて動かなくなった。

 

   僕よりもちょっと上か同じ年の子供達もびっくりとしていた。

 

   「要人確保。助けに来ました。三人いますから、一人おんぶで二人抱っこで撤退します」

 

   「おにいさん、できるの?おもくない?ゆっくりでいいなら、ぼくはあるくよ?」

 

   「…だきあげることをゆるしてやるっ。だからころすなっ。ほうびならいくらでもやるからころすな」

 

   「かっきー。もにたーでみさせられてきたけど、あんたちょうつえーじゃんっ。いふうどうどうとしているしおうさまだった。まじすげえよっ。なあなあっあのきれいなほのおってだせるのいちにちいっかいなの?おうじ、もういっかいみたい。みせてよ!みせてくださいっ!」

 

   「べるっやめろっ。そいつまおうだからかかわるなっ。ころされるぞっ」

 

   そっくりな顔の双子の、お兄さんに対する態度は真逆だった。怯えているのもなついたのも、なんかムカついた。…モニターに、お兄さんが闘っている姿が映っていたのか。見たいな。

 

   「…あ、先生達からの電話だ。失礼します…はい、制圧して要人確保しました。家光さんと一緒にいた方もご無事、足を挫いていましたがそれ以外は健康です。えっ?モニターにある俺の画像をヴェルデ先生の研究室、リボーン先生と風先生とコロネロ先生とおじ様とボンゴレファミリーのパソコンに送れ?わかりました。後、直接依頼人の代理の方が此方に向かえに来ると?はい、待機しています」

 

   「おうさまっ。がぞうおくるならさ、おうさまのゆうしをおうじにみせてよっ」

 

   「ぼくもみたいっ」

 

   「おれはみたくないっ。あんなばけものじみたたたかいかたはにんげんじゃねーよ」

 

   「…お言葉ですが、俺は弱いですよ。まだライオンの群れで狩りの仕方を教わっている最中のひよっこです。…そういえば、自分が闘っている時の姿を見る事はないですね。…見ましょう。弱点を見つけて無くすチャンスです」

 

     上映会が開かれた。

 

   僕とべるからみたら、お兄さんは肉食獣そのものの美しい戦い方をしていた。圧倒的な強さは見ていて惚れ惚れとするものだった。

 

   そうして、僕は美しい炎を見た。

 

   美しい炎は、お兄さんが生み出した美しい炎は厚い壁を一瞬で消し飛ばした。

 

   『…人質はどこだ。早く答えろ。俺は気が長くない。お前も壁と同じにかっ消してやろうか?』

 

   『キャバッローネのキモブスメス豚よりも良い女をやる?よし、死ね。お前は俺を完全に怒らせた。人質を確保した後で望み通りに殺してやる。命乞いしたって、俺やディーノが許したからっておじ様とキャバッローネファミリーが許さない。…ほらな、おじ様からだ。はい、わかりました。ここに放置しますからご自由にどうぞ。今のディーノの写真を見せてから殺害して下さいね。ディーノは天使で王子様ぞ。無礼者め。…携帯電話って便利だよな。やっぱり持たないとだな』

 

   なんていうか魔王(だけど携帯電話持っていない)がいた。

 

  僕とべるには楽しい映画だったけど、べるの兄弟にはホラーアクションだったようだ。お兄さんがディーノという名前の人を馬鹿にされて怒った時点で気絶をした。

 

   お兄さんは一人反省会をしていた。

 

   「…ぜんぜんクールじゃない。だめだっかっこ良くない。ベラベラと喋るなよ初任務だからってはしゃぎすぎだ。こうして、改めて見ると隙だらけだ。もっと早く動けないと簡単に捕まえられてしまう。蹴りにも威力をつけたいな。下半身強化に力をいれないと」

 

   真面目な魔王様みたいだ。勇者が町から出た瞬間に自分で殺しにやってくるタイプだ。物語りが開始して直ぐに終わるシナリオだから採用されない。

 

   「…あのさ、おうさまにひばり。おうじたちにむかえがきたら、むかえがおうさまとひばりにぶれいなことをいう。だからさきにあやまる。ごめんなさい。おうさま、たすけてくれてありがとう。ひばりもおれのとなりにすわってくれてありがとう」

 

   …突然謝って御礼を言ったべるの言葉の意味は直ぐにわかった。

 

   べるはいらない存在として、差別されて生きていた子供だった。

 

   お兄さんも、僕を向かえにきた両親も怒っている。それに気づく事なくべるを馬鹿にした言動をとる代理人。

 

   そして、お兄さんは代理人の顔面を殴った。倒れた代理人に構う事なく、べるに向き合った。

 

   「べる、泣け。今、お前は死んだ。美しい死体のお前を報酬でもらった。お前は俺のもんだ。生き返ったお前も当然俺のものだ。お前は俺が連れて帰って育てる。魔王の王子なんだから胸を張って生きろ」

 

   べるは声をあげて泣いた。

 

   ちょっと羨ましいと思った。

 

 

 

 

 




   

   愛弟子の初任務は盗撮&盗聴していた。

   ザンザス君、ディーノちゃんへの気持ちがラブだとそろそろ自覚して?
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