ザンザス氏を可愛がっている家光氏がお邪魔している世界。
おかしな夢を見る。
夢の中で、俺はリボーンの野郎や他のアルコバレーノに師事を受けている。
強くなる事に貪欲な生き方をしているガキの俺は好ましかった。俺が感じた裏切りは、このちっこい俺には自分に与えられた慈悲に感じられたようだ。あの女に金で売られたくせに、女を探していた。
見つけた女は、死んでいた。俺はざまぁみろと思っていたが、ガキの俺は泣いていた。女の遺した手紙を読んで泣いていた。
どうやら、夢の中の女は俺を愛しているらしい。惚れた男の子のザンザスに豊かな暮らしをさせ教育を与えたいが為に、ボンゴレにザンザスを預けた。聡く慈悲深いドン・ボンゴレなら、実子でないと解っていても、引き取り育ててくれる。ザンザスは大丈夫。ボンゴレファミリーが守ってくれる。後は、ザンザスの将来に陰をおとしてしまう自分を消すだけ。そうして、女は簡単に自分を殺した。
夢の中の俺は、女に、母親に愛されていた。
無いとわかっているが、俺も女の行方をカス共に探させてみた。
生きていればいい。売った金で今も生きていて、俺を見て金蔓ができたと笑えばいい。そうすれば、所詮は夢だと俺は笑える。笑って女を殺せるはずだった。そうしたかった。
…俺の母親は、夢の中のガキの母親と同じだった。手紙の内容も同じだった。俺を売って得た金は使われていなかった。埋葬されていた墓所で年老いた神父が手紙と小切手を渡してきた。
「貴方のお母様は、貴方が来たら渡してほしいと仰ってました。主の祝福が貴方と貴方のお母様にありますように」
そうして、同じ日に、ガキの母親と俺の母親は冷たい河に飛び込んだ。けして足掻かぬように重石を抱いて。
…泣いた。カス鮫は黙って雨を降らした。マーモンは深い霧を出した。他のカス共も俺を見ないようにしていた。…カス共、次のボーナスには施しを加算してやる。
夢の中の俺は、ジジイをお父様と呼んでいたが、くだらない誓いを立ててからは、かたくなにジジイを九代目と呼ぶようになった。夢の中のジジイは悲しそうにしていた。悲しそうな顔が、現実のジジイの顔に重なり苛ついた。
恋人になったカス鮫にも、夢の内容は話してある。
呼び方の事を話したら《健気だ。小さいボスさんが優しくて健気で尊い。うちのボスさんは尊大さと傲慢さが最高にいかしている。たまに見せる優しさが良い》と言って泣いた。腹が立ったので、カス鮫を一日俺の膝上に置いて甘やかした。顔を真っ赤にして恥ずかしがってやがった。ざまぁみろ。
ジジイと沢田に招かれた食事会に参加した。最後、ジジイと沢田に向かって《おやすみなさい、お父様と十代目》そう言ってキスをしてから退出した。阿鼻叫喚になったらしい。歩みよりは嬉しいがいきなりは止めてほしいとジジイと沢田の守護者達から苦情がきた。知らねえな。
カス鮫は他のカス共に、俺の夢の話をしたらしい。…恋人同士の秘め事とかは、鮫には理解できなかったか。難しすぎて解らなかったか。そうだな、人間の俺様が教えなかったからわからないままだな。すまん。
ベルが一番に、俺のものになったことを歓喜していた。はしゃぎ自慢しまくる姿は可愛いい。
夢の中の俺は、純粋にこいつを弟として可愛がっている。カスの守護者も可愛がっていたな。確かになついてくる奴等は特別に施しをしてやっても良いと思える。
で、カス鮫は落ち込んでいる。
勿論、他の奴等も落ち込んでいるし、ボス、俺の・私の・僕の出番はまだかと聞いてくるが、夢はガキの俺の話ばかりではない。
しかし、カス鮫の落ち込みようは凄まじいな。
夢の中の俺が、跳ね馬と婚約者で保護者の様に優しく接しているのが不満で不安らしい。…だが、夢の中の俺は自分の気持ちに気づいていねぇよ。鈍すぎて逆にいたたまれない。夢の中の跳ね馬とキャバッローネの九代目に対して申し訳ないくらいだ。周りの奴等、真剣にガキの俺のけつを蹴ろ。跳ね馬を馬鹿にされてキレたあいつは、俺がカス鮫やカスを馬鹿にされた時と同じ顔をしていたぞ。マジで惚れて愛しているじゃねぇか。
「ボスさんの恋人は俺。ボスさんの愛人は俺。ボスさんの一番の忠臣は俺。ボスさんの一番の剣は俺。小さいボスさんの俺、早くボスさんと出会えよっ。ボスさん剣に興味を持っちまったぞおおぉ…」
カス鮫は、暗い顔暗い声で呟いている。
はぁ…。こいつはほんとうに使えないやつだ。夢の中の話だというのに。現実で跳ね馬に当たるんじゃねぇよ。家光の野郎にも殺意を向ける…つーか、あの馬鹿マジで家光に切りつけやがった。ヒステリックに泣き喚きながら切りつけたから、周りからは加害者なのに被害者扱いだ。家光、被害者はお前だ。謝るな。
沢田、落ち着け。何が、
《スクアーロの髪に勝手に触るなんてセクハラだよっ。恋人のザンザスに捧げた忠誠の証の髪に勝手に触るなんて酷すぎるだろっ。泣いちゃっただろっ。ヴァリアーがこの件でうちに協力してくれなくなったらどうするんだよ!》だ。
家光の身内はお前なんだから、家光の味方をしろ。
家光は家光で、俺にかまうようになってきたよな。理解できん。隙有れば俺の殺害や失脚を常に企んでいたくせに。
沢田をかまえよ。沢田を釣りに誘え。沢田を息抜きに遊びに連れ出せ。沢田の仕事を手伝ってやれ。沢田と呑みに行け。沢田の仕事にアドバイスをしてやれ。沢田に珈琲を煎れてプリンをおやつに与えてやれ。沢田に夜食を作ってやれ。沢田の為に資料を揃えてやれ。沢田に添い寝をしてやれ。沢田の服にアイロンをかけろ。沢田と風呂に入れ。沢田と奈々と旅行に行け。沢田がお前の息子だっ。俺はお前の息子じゃないっ。うちのカス共の仕事を取るなっ。俺のお母さん間違えたルッスリーアが、お前に対して激おこだぞ。
もしかして、お前も俺と同じ夢を見ているのか?
だけど、夢に振り回されているんじゃねぇよっ。夢は夢だ。
沢田に《性転換弾を撃てばザンザスと結婚できるぞ》なんてほざくな。
《ザンザス、綱吉と結婚しよう。ああ、わかっている。本妻で最愛の伴侶はスクアーロで良いから。綱吉とは仮面夫婦で大丈夫だ。結婚すれば、娘婿としてだけどボンゴレで権力を持てる。だからキャバッローネファミリーには行かないでくれ。ディーノ、察してくれるよな。まあ、お前がどうしてもというなら、ザンザスの二番目の愛人なら許すぞ。一番は綱吉だ》だ。
…正気に戻れ。息子を大切にしろ。俺と打ち合わせをしていた沢田とディーノの前で言うな。気まずいだろうが。可哀想に二人とも無言で項垂れているぞ。俺の嫁が務まるのはカス鮫くらいだ。撃つならスクアーロに撃つ。弾をよこせよ。
お前はヴァリアーの幹部から隊員事務員使用人にメイド全員から危険人物扱いされているから気をつけろ。ヴァリアーの本部やアジトに来るなよ。お前の為だからな。
…夢の中の俺のトレーニング内容を丸っと真似をしたら、驚きの効果が表れた。
…これをガキの頃からしていれば、確かに強くなれるな。正直、夢の中の俺が羨ましい。今さらだが、リボーンの野郎に師事を受けてみるか。
マーモンを夢の中のリボーンに例えて、頭の上に乗せたり肩車をしたり、腕に抱き上げていると落ち着く事が判明した。夢に振り回されている。だけど、仕事の効率も上がるし的確な判断が出来て良い。驚くほどに効率が上がる。素晴らしい。マーモンが大きくまではこのスタイルで事務仕事をしたいものだ。
一日の仕事を逐えて、部屋に向かう。カス鮫がいた。仕事後は恋人として過ごすのだから居るのは構わない。だが、マーモンのコスプレをしていた。またしても、馬鹿な事を言い始めたのでキスで酩酊させてから抱いて完全に黙らせた。
鮫にはそろそろ正式に指輪でも贈るべきだろうか?最近情緒が不安定だ。再生医療の発達や科学に幻術で心臓の再生はなった。左手も再生させて指輪を贈ろう。右手の手袋を外して、俺の指輪を填めてやった。婚約指輪を施すまでそれをつけていろ…ブカブカとまではいかないが緩いな。チェーンもつけるか。この鮫は繊細そうな美しい外見だが、中身は杜撰で可愛い生き物だからな。
※※※
僕の格好をして、ボスの寝室に向かうスクアーロを見てしまった。
…明日から連続で有給休暇を取るから、ボスと旅行に行くのかなと思っていたけど、コスプレプレイからのイチャイチャパラダイスか。
…僕が羨ましかったのかい?だけどね、子供、赤ちゃん扱いだからね。ボスから守られるなんて、君には耐えられないだろう。君はボスの特攻切り込み隊長で一番切れ味の良い剣だからね。
僕の夢の中のボスの家庭教師参加はまだかな?でも、ボスには幻術とかは似合わないよね。曰く付きの場所に、肝試しに行っても、ボスが一歩踏み出したら綺麗な空気の場所に早変わりしたもの。マフィアを廃業しても、退魔師で食べていけるね。
ボスの部下になるのでもかまわないけど。出会いの順なら、やっぱりスクアーロかな?…あれ?だいたい夢の中の小さいボスはおこりんぼうじゃないよね?ボスの怒りに惚れたスクアーロは小さいボスに惚れないんじゃあないかな?
「だめよ、マーモンちゃん。あなた、考えていた事が全部口に出ていたわよ。あのこの耳に入ってしまったら泣いちゃうじゃない」
「ごめん。でも、僕の考えていた事って正しいよね?会っても惚れなさそうじゃない?」
「泣き虫のディーノちゃんにスクアーロがカチンときてドカンでディーノちゃんが泣いたところで魔王様なボスが現れてスクアーロの投了よ。ほら、惚れた。パラレルワールドだとしても、人間の本質は中々かわらないわよ。そうそう、夜食に焼きおにぎりを作ったから良かったら食べてね」
「ありがとう。スクアーロの分は僕がもらうよ。僕の格好を勝手にする慰謝料代わりだよ」
「あらやだ。あの子ったら家族にまで嫉妬するなんてね。困った子だわね」
「…跳ね馬の様に髪を金にを染めたりしてな。ルッスリーア、旨かったぞ」
「ししし。王子の口にもあったからな。あいつ、カラコンのカタログを真剣に見ていたから眼の色を変えるかもよ」
「「「で、ボスに呆れられると」」」
四人で笑いあった。
まったくもって、うちの作戦隊長殿は可愛い。ボスが一番大好きで、ボスの為に何時だって全力だ。だけど、何故か空回りしてしまう。だからこそ、家族であり仲間の自分達が、彼の恋を応援して支えるのだ。
そう。鈍いボスがまったく気づいていない、ボスを狙う《馬に蹴られてしまえ集団》から二人を守る。
ボスへ。あなた、夢の中の小さいボスの鈍感さを笑えませんからね。
九代目からの親の愛はまだ良い。拗れてしまったけど、お母さんを想って泣いたあなたは、父親とも解りあえます。
だけど、沢田綱吉、綱吉のファミリーに守護者達。跳ね馬や他のファミリーのボスまで魅了するだけしておいて、まったく彼らの恋心に気づかないんだもの。ま、気づかないで良いんだけどね。最近、穏やかに笑う姿なんか見せるから、横恋慕している輩が増殖して困る。
「…ボスさんいねぇな。シャワーか。うん?なんだぁ?」
傍らにあるはずの人がいなかった。ちょっと寂しく思っていたら、指に違和感があった。
慌てて、確認の為に指を見たら、ザンザス愛用の指輪が嵌められていた。
「起きたか。ほら、これに繋いで首にかけていろ。お前が俺のもんだという証だ。今日買いに行くがそれまではそれをつけておけ。…朝メシまでには泣き止めよ」
首を縦に振ることしかできなかった。
接続しているザンザス氏は穏やかになっております。