ユダ、教師に懺悔と懇願をする。
私は、物心ついた時から、漠然とした不安に苛まれて生きてきた。私がお仕えする主を失うという不安に。それが嫌でがむしゃらに働いた。そうした結果、私は若くしてボンゴレファミリーの最高幹部まで登り詰めた。
そうしなければ、私の最愛の主を守れないからだ。戦闘能力を持たない私は、知力や謀でしか主の力になれない。モスカ・シリーズを内密で造り、将来の主の為に備えていた。
ほんの少しだけ祈っていた。
私の愛しい年下の少年王が、マフィアにならないで済む事を。
だけど、運命は残酷だった。
どれほど神に祈っても、裏切り者のユダである自分の祈りは、天には届かなかった。
会議の席で九代目が言った。
「私の息子を連れた女性に会い、息子を引き取る」と。
ザンザス様だと確信した。
隣にいた家光が呻くように言ったのを聞いた。
「…ザンザスっ。貴様なのか?糞っ。ボンゴレも九代目も綱吉も俺が守るっ…俺は今、何を言った?候補者は多いい方が暗殺に備えられるだろうに」と。
これはいけない。これは私と同じモノだ。こいつは、家光はザンザス様と敵対する。…何がザンザス様と敵対だ。ザンザス様を敵視する家光と、ザンザス様を裏切った自分。どっちも同じではないか。違う、私は違うザンザス様を愛していた愛している守りたかったから止めたかったから死んでほしくなかった私の前から消えてほしくなかったから。
…記憶が蘇り絡まる。激しい頭痛に襲われて、耐えきれずにその場に蹲る。医務室にへと運ばれる間に、付き添ってくれたアルコバレーノのリボーン氏に自分の罪を話していた。間違った。間違ったんだ。完全に間違った。ザンザス様を裏切ってしまった。間違った間違ったんだ。忠誠を誓い愛していたのになぜ裏切ってしまった?なぜ私は穏健派などを選択した?ボンゴレを解体?馬鹿がっ。なんてことをしたなんてことをしてくれた。伝統を歴史を軽んずるな甘くみるなっ。マフィアとしか生きられない、マフィアとしか存在できない人間だっているのにっボンゴレファミリーが在ることで生活できる弱き人びとがどれだけいると思っているっ…許さない許さないっ。九代目に家光、お前らの選んだ後継者はボンゴレを完全に潰したのだぞ。潰した潰すくらいならザンザス様がお継ぎになっても良かったではないかっ。違う違う。私が裏切ったからだ。ザンザス様ザンザス様貴方が正しかったっ。貴方こそが真理を理解していたっ。最強でなければ守れやしない。償わないと償わないと私の命をかけて、いや私は貴方の為だけに生きる生きて貴方の幸せだけを祈りその為だけに尽力いたします貴方を愛しています貴方だけに永遠の忠誠を捧げます。だから、だからお願いします。リボーンさん私が狂ったらザンザス様を裏切る前に私を殺してくださいと。残酷な事実を十六歳という幼い年齢で知らずに済むように私と一緒にザンザス様を守ってくださいと。
「ずいぶんと重いもんを抱えちまったな。…家光もそうか。家光とは真逆か。九代目の友人である俺に恥も外聞もなく頼みやがって。わかった。俺もお前の主を見守ってやる。だからもう眠ってしまえ」
その言葉に安堵して気を失った。
リボーンさんは、九代目にも家光にも、誰にも、私の話した事を話さなかった。
翌日に、私は九代目に願い出た。私をザンザス様の主治医にしてほしいと。主治医と家庭教師、側仕えの使用人にしてほしいと。
九代目はとても驚いていた。
当然だろう。私の出世欲や向上心は皆が知るところだった。三人の御曹司に媚びを売らずにいた私。三人の御曹司と家光につぎ、五番目の後継者と呼ばれていた私だ。
「オッタビオ、君はその…」
「ああ。私はボンゴレにはまったく興味がないのです。ただ、昨日お話に上がったザンザス様のためだけに有りたいのです。私の全身全霊をかけてお仕えすると決めてあります。…この事はリボーンさんにも伝えてあります。九代目、何卒お許しくださいませ」
「おいおいっ。お前、オッタビオ。頭を下げるくらいしろよっ。おい、なんだよその《何、馬鹿な事言ってんだこの馬鹿。あ、馬鹿だったな。絶対の忠誠を捧げた主君がいるのになんで単なる雇い主に頭を下げる必要があるんだよ》な目はよっ。なんなんだよ、冷静で野心家なお前はどこに行っちまったんだよ。ボンゴレのボスになりたくないのかよ!あんだけ努力していたじゃねぇかっ。だからっ《沈む船にはお前ら親子と偉そうに座っている耄碌人でなしジジイの三人で好きなだけ乗ってろよ脳筋禿げ》な目でみるなっ!」
「家光に九代目。そいつは決めた男だから好きにさせてやれ。そいつの主に危害を与えない限りはボンゴレに有益を与えてくれるからよ。認めてやれ」
「…リボーン。何かを知っているのかい?」
「何にもしらねぇよ。俺は言っただろう危害を与えない限りはボンゴレに有益を与えてくれるって。反対に、危害を与えたらそいつはボンゴレに牙をむく。実質的なNo.3で頭のキレすぎるこいつがボンゴレに牙をむくんだ。ボンゴレを守りたいんだろ?なら、こいつの提示した条件はのんだほうが良い」
「わかった。オッタビオ、ザンザスを頼む」
「おい。オッタビオ。《何を偉そうに。この血筋馬鹿が》の目をやめろ。オブラート買ってこいよっ。昨日までのお前はどこに行っちまったんだよっ」
「家光、もう私に話しかけてくんな。お前と一緒にいると大概不快でしかありません。…ザンザス様が傷付かれない限りは、ボンゴレにも有益を出すと誓います。リボーンさん、ありがとうございます。貴方のお仕事でかかった経費は私にお任せ下さいね。家光、貸した金を今すぐ返せ。後、二度と貸さない。九代目、二度と貴方の子息の側近になれとの話はしないで下さいね。正直、不愉快でした。貴方の子息で、貴方から無条件で愛されている存在だというだけで殺してしまいたくてならない。一番に殺したいのは九代目、お前と家光だ。家光の息子っ。あの方が望んだ全てを得ながらあっさりと捨てやがったっ。殺す。ガキのうちに殺す。ああ、そうだ。あの子達を早く探さないと。ザンザス様の守護者達を。もう私達はザンザス様だけの存在ですから痛いっ」
「落ち着け。家光も九代目もお前の放った殺気で気を失ったからな。…どんだけ愛していたんだよ。ほら、迎えに行く時間だぞ。お前が気を失った間にばんばん情報が集まったぞ。どんだけボンゴレを掌握済みなんだよ」
「リボーンさん。ツッコミ役として私の肩に乗っていてくれませんか?掌握…九代目、家光、九代目の守護者、家光の部下以外の弱みを握り恩を売ってありますけど…クーデターは起こしませんから安心して下さい。《ゆりかご》《指輪争奪戦》を成功させるための布石…いえ、私はザンザス様とともにあるのですから。何もしませんよ」
「…ザンザスってやつが可哀想になってきたぞ。なあ、ザンザスがお前の知るザンザスと違っても忠誠を捧げるのか?」
「捧げますよ。私の全てを捧げます。資料を見ましたが、ザンザス様以外のなにものでもありませんでしたよ。さて、今ならこの二人を痛いっすみませんリボーンさん。行きます、ザンザス様をお迎えに行きますから私の本体(眼鏡)を取らないで下さいっ」
「オッタビオ、お前、弱くなんかないだろ?弱かったらお前の放った殺気でこの二人が倒れるわけがねぇ」
「…それはその…えっとですね、弱いです。ぶっちゃけヴァリアー幹部…私のいた世界のザンザス様の組織で一番に弱いです。私ではザンザス様を守れない。盾にもなれない。剣になんてどれだけ望んでも努力しても成れやしなかった。だから、造りました。企業機密ですから詳しくは話せません。造った相棒は、とても頑丈でとても強いです。そいつと私の肉体の一部と心を融合してあるんです。私の殺気プラス相棒の殺気だから気を失ったのですよ」
「…化学者、マッドサイエンストでもあるのかよ。俺の親友と意気投合しそうだな。…なあ、ザンザスが平凡な生き方を望んだら叶えてやれよ」
「もちろんですともっ。私はザンザス様に傷ひとつつけたくないですからねっ。目指せ、ボンゴレの脛かじりで生きる道楽息子なザンザス様の一の家臣っ。ぐはっ…ザンザス様の一番最初の家臣で部下で忠臣で下僕っ生きてて良かったー転生万歳っ神様ありがとうございますっ。カス鮫ざまぁっむっつりスケベざまぁ守銭奴ざまぁリボーンさんを見習え糞生意気な王子ざまぁこの世界で一番尊く高貴なのはザンザス様ですよ。サイコなカエルざまぁオカマあなたは早く馳せ参じなさいっぐぇっ………」
「うるせぇ、だまれ」
またしても電波を受信したオッタビオに麻酔弾を撃ち込んだ。
結果としては、こいつが警戒していた十六歳よりも早い段階で、ザンザスは知っちまった。
十歳のガキの泣きながらの告白は、知っていても胸に突き刺さった。
オッタビオの不在時に、残酷な事実を知っちまったザンザスを、俺は保護した。約束していたからな。
オッタビオがなんで不在だったのかは未だに謎だ。あの男の事だ、ザンザスの敵を暗殺しに行っていたかザンザスの為に修行に出ていたかだ。
ザンザスを保護した、俺の隠れ家のアパートに、オッタビオも押し掛けてくるかと思った。いや、むしろ一軒家を用意して引っ越しを勧めてくると思っていた。
奴は斜め左からせめてきた。
「リボーンさん、ザンザス様の保護をして下さってありがとうございました。話が纏まりました。ザンザス様の将来の花嫁であるディーノお嬢様が一緒にお住みになります。ザンザス様と一緒に貴方に師事を受けます。まさか、こちらの世界では跳ね馬ディーノが女性で、ザンザス様をお慕いしているとは……。くくくっ。ボンゴレファミリーがザンザス様を否定するのなら、キャバッローネファミリーや他のファミリー、いや、ザンザス様のザンザス様によるザンザス様だけのファミリーを作ればいいだけ。あれ?リボーンさん?いない?」
オッタビオの野郎は自動でザンザスの為だけに動くので、俺は奴を放置する事にした。
ディーノの忠臣と結託してしまうとわかっていたら放置はしなかったがな。
あいつらときたら、共通の敵を家光と認定しやがった。絶対に、現在進行形で行方不明になっちまった家光の事を知っている。つーか、主犯グループだ。
家光の家で、執事服とメイド服を着て主夫妻の来訪をスタンバってんな。奈々に何を言っていたんだ。俺達が謝りに行ったら、俺達に泣いて謝罪を繰り返しているだけだったぞ。
「ええっと、私のザンザス様への忠誠と愛を語り、ザンザス様とディーノお嬢様がいかにラブラブかを話しただけです」
「ええっと、私のディーノお嬢様への忠誠と愛を語り、ディーノお嬢様とザンザス若様がいかにラブラブかを話しただけです」
「「それと、家光がいかに残虐非道で幼い恋人同士の純愛を真っ向から否定し貶め辱しめる悪意の固まりでザンザス様/ザンザス若様を一方的に憎み殺害しようとしているかをイライラしながら説明しただけです。事実を述べたら泣いただけですよ」」
アカン。こいつら、もうザンザスとディーノが結ばれる事と二人を守る以外に人の優しい心を持てなくなってやがる。駄目だこりゃ。
執事とメイドは、私達は悪くないと供述しており、当局は余罪があるとみて調査を続けるそうです。
なんかオッタビオ(様)がいないとわかっていてもムカつく。byザンザス様大好きなヴァリアー隊一同。