憤怒は後悔している。
アパートの子供部屋で目覚めた。
撃たれた麻酔の効果は消えても、頭の痛さと体の怠さは消えてくれないか。寝返りをうってうずくまる。ディーノとベルが居ない。俺が夜間訓練時は、たいていはキャバッローネファミリーでお泊まりだから、今日もそうなのだろう。
ディーノ大丈夫かな?泣いていた。頬を腫らして破かれたシャツ…人間って怒りで記憶がなくなるんだな。あ、自制心も消えていたな。
クレアさん、よく殺人衝動に耐えられたな。流石大人だ。俺が最初にあの泣いていたディーノを見てしまったら、きっとディーノ以外の人間を証拠隠滅で消す。うん。それができてしまえて、その事に痛みを抱けないのが俺だ。
ディーノは、ディーノなら違うんだろうな。自分を辱しめた相手だとしても、その命を奪わない。許せてしまえるのだ。ああ、なんて甘いんだ。唾棄すべき甘さなのに、こんなにもいとおしい。ディーノがボンゴレファミリーの姫として生まれてくれば良かったのに。そうしたら、俺は兵隊として喜んでディーノの為に生きて死ねるのに。
俺が殺し屋になっても、ディーノは俺に笑顔でお帰りと言ってくれるのだろうか?言ってくれると嬉しいけど、泣いて殺し屋を止めてくれと言うのかもしれない。
泣かれて言われたら、俺はもう従うだろう。今日の一件で思い知らされた。うん、傷つけられて泣く姿を見たくないと思ってしまったんだ、俺の行動が原因で泣くのなら…従うな。俺のベルとレヴィを連れて、ひばり君の護衛に雇ってもらうしかないな。…護衛とか誘拐された被害者を助ける会社でも創ろうかな。そうだな、そうしよう。なんとなくだけど、オッタビオさんも俺が会社を創ったら着いてきてくれる気がするし。マスコットキャラをモスカにするのも良い。
…気分が浮上してきたな。よし、それでは本日の反省会を始める。そう、俺が一人でいられるうちにだ。先生達に叱られる前に、自分で反省をしないとならない。ディーノとベルに《ザンザス・ボスは悪くないよ》と甘やかされてしまう前に、レヴィとオッタビオさんに《ザンザス様は正しい事をなされました》と行為を肯定されてしまう前に。家光さんとおじ様から《ザンザス・君の戦闘能力はキャバッローネファミリーでこそ輝くよ!後、愛する女の為にキレたのは男としてなら当然だ!》と称えられてしまう前にっ。自分の良心と良識と常識よ、甘言に惑わされないでくれっ。
俺は既に制裁(過剰に)を受けていた年下の少年を、更にフルボッコにしてしまったのだ。これは、あれだ。クールな男がする事じゃない。ディーノと同じ年じゃないか。
…穴があったら入りたい。
教師陣よ、何故俺を止めない。止めろよ止めて下さいっ。大人が止めろよ。止めに入ってくれたのが、俺のベルとレヴィだけって、ヤバイだろ。
先生達が、俺に監視をつけていてくれて助かった。監視が先生達を呼んできてくれたから、俺は止めてもらえた。
スクアーロだっけ?ごめんな。明らかにやり過ぎた。悪かった。マジキレした成人女性(戦闘民族)の逆鱗を撫でて報復を受けていたのに、更なる追い討ち。ごめん。お詫びとしてだが、おじ様に無理だろうけど助命嘆願してみるから。…まだ生きているよな?魚の餌とかになっていないよな?
ああ、気が重い。転入初日に問題行動を起こしてしまった事を、本邸に行って報告しないとだ。絶対に気持ち悪くなる。やだなあ。九代目にまた悲しい顔をさせてしまうんだ。
「ザンザス、起きれるか?」
「おい、リボーン。ザンザスはショックを受けているんだ。まだ寝かせておいてやれ」
「ですが、少しでもお腹に物をいれた方が良いですよ。ザンザス、お粥を作りましたよ」
「落ち込んでいる時こそ好物の肉を食わせてやれよコラッ」
ああ、お父さんだなぁ。風先生はお母さんが入っているけど。泣きそうだけど、起き上がった。
「起きれます。今、そちらに行きます」
リビングに行くと、九代目がいらっしゃったので驚いた。
「き、九代目っ。あ、すみませんでした。自分を抑えられずに年下の少年を傷つけてしまいましたっ」
慌てて頭を下げたて謝罪をした。
「?話しはリボーンから聞いたよ。ディーノ君を心配して、ディーノ君の教室に向かって、クレア君の暴行を止めようとしたが、振り払われて床に倒れて気を失ってしまったと。頑張ったねザンザス」
「えっ?ち、違います!」
「そうなんですよ、ザンザス。貴方はちょっと寝ぼけているのです」
「クレア嬢ちゃんのブチギレに負けたのは、お前が子供だからだコラッ。気にするんな」
「く、クレアさんはどうなります?」
「特別賞とボーナスを貰ってディーノに甘えてもらえて今頃は添い寝をして鼻血を流しているだろうよ。キャバッローネファミリーがあの女傑を手放すわけがねぇ」
「す、スクアーロ君は?」
「お前の忠臣が助命嘆願したからな無事だ。オッタビオが躾をして、お前の部下にする事で報復を免れた。聞いたぞ、オッタビオの他にも忠誠を誓われたって。お前のカリスマが父親としても師匠としても誇りに思うぜ」
「ザンザス、大丈夫ですよ。貴方は子供で、相手も子供。しかも、相手の子供が最初に手を出した。婚約者を守ろうとした貴方を責める者はいません。いたら、父親の私達が相手をしてやりますよ」
涙腺が壊れたかの様に泣いた。なんか申し訳なさとか不甲斐なさで泣いた。優しさが嬉しくて泣いた。スクアーロ君とクレアさんに申し訳なくて泣いた。
泣き疲れて、子供部屋のベットに逆戻りしてそのまま朝まで爆睡した。
夕御飯は朝御飯になった。
九代目からだと、マウンテンバイクと剣がプレゼントとして渡された。
「弾倉が尽きたらそいつで戦え。そいつが折れたら拳と蹴りで戦え。憤怒の炎はお前の最後の手段にしておけ。生きる事に帰ることに貪欲になれ」
「剣帝が基本を教えてくれるそうだ。…お前の忠臣がな、スクアーロってガキを連れて剣帝に差し出して剣を振るわせたら気に入っちまってな。そいつに剣を叩き込むから基本をお教えしますだとよ。あのガキは大丈夫だから、次にあったら悪かったなと言えば大丈夫だ」
「基本っつても、剣帝からの教えだからな。後はお前が独学で学んでも道場破りでもして力にしていけばいい。…どうせなら俺の作ったプラズマソードとかはどうだ?切れば当たれば必ず相手を感電(死)させられるぞ」
「「「それはなんか美学に反するから却下だ・です」」」
「そ、そうか」
プラズマソードに心ときめいたけど、先生達の却下によってプラズマソードはもらえなかった。残念だ。
※※※
奈々に無性に会いたかった。
久し振りに帰宅したら、奈々に泣かれてしまった。綱吉は、突然現れた俺を警戒して泣いてばかりだ。
記憶が混乱している。
綱吉はボンゴレを継いで十代目になっていたはずだ。九代目の三人の子息は亡くなってしまって、ザンザスは暗殺部隊の長になっていた。
で、忙しい綱吉の代わりに奈々に親孝行として旅行に連れて行ってくれているんだよな。
問題児の部下を抱えているのに、優しい良い奴だ。
…なんでこんな事を考えているんだろうな?まだザンザスはたったの十歳だ。綱吉は赤ん坊だ。
「あなた?どうしたの?」
「あ、ああ。大丈夫だ。ちょっと時差ボケだ。悪いな、奈々。最近はどうだ?困った事があったら、この電話番号にかけてきてくれ」
「大丈夫よ。貴方のお仕事はちゃんと理解していますから。貴方の上司のボンゴレさんが定期的に人を寄越してくれていますから大丈夫です」
「そうか。良かった」
「あ、でもザンザス君とディーノちゃんに謝罪できなかったのが残念だわ。具合が悪くなってしまって急遽帰国してしまって。…ね、ちゃんと二人と二人の保護者の方に謝罪をしておいてね。クレアさんとオッタビオさんには特に念入りにお願いね」
「…奈々、オッタビオは死んだはずなんだ。あれ?いつ死んだんだ?そもそもディーノは男だよな?ザンザスの恋人はスクアーロだよな?でもって綱吉とディーノや他のファミリーのボスがザンザスに横恋慕していて……疲れたから眠るわ。自然に起きるまで眠らせてくれ。奈々、愛している」
「おやすみなさい、貴方。私も愛しているわ」
寝室に行って、睡眠薬を飲んでから寝た。今は夢は見たくなかった。
※※※
《ザンザスが気に病む案件が生じたから、全力で揉み消せ》
リボーンさんからのメールに、慌ててザンザス様の元へと向かった。
教師に案内をされた教室は、ザンザス様の教室ではなく、ディーノお嬢様の教室で、これだけでなんとなく察した。教室の前の廊下には、うちの可愛い子供のベルとレヴィがいた。
「遅いよオッタビオ。つーか、お前知っていたくせに王子に黙っているとか酷くない?一発ぶん殴らせろよな」
「そうだぞ。ボスと再会できたのなら、ボスを独占していないで俺達を探すべきだろう。オッタビオ、俺にも殴られろ」
「…あ、思い出したか繋がるかをしましたか。チッ。蜜月終了ですか。お手柔らかにお願いします。あ、ぐーではなく平手打ちですか。ありがとうございます。では、速やかに状況を説明して下さい」
「あんたがスッゴく苦しんで悲しんでいたから手加減してやったんだよっ。王子とレヴィの優しさに感謝しろっーの」
「お望みなら、俺達が大人になってから思いっきり「ごめんなさい。ありがとうございます。内容を詳しくオッタビオお兄さんに話して下さい。お願いします」
久し振りに会えた子供達が愛しくて、ついついからかってしまった。
「…なるほど。で、ザンザス様はスクアーロに報復をしているところをリボーンさん達に眠らされたと。ありがとうございます。とりあえずはスクアーロの助命嘆願をしてきます。レヴィはスクアーロに付き添って病院に行って下さい。ベルはディーノお嬢様のケアとスクアーロの助命嘆願をお願いします」
「わかった。姫にスクアーロを許してと伝えて命を助けてとお願いしておくよ」
「俺はスクアーロの護衛をすればいいのか?」
「交渉は必ず成立させてみせます。…そうですね、魘されてザンザス様に怯えているようでしたら、手を握ってあげてザンザス様の素晴らしさを布教してあげて下さい。ディーノお嬢様は将来、ザンザス様の奥様になられる事も囁いておいて下さい」
「わかった。オッタビオ、お前がいてくれると助かる。…今生は、今回は最後までザンザス様と俺達といてくれ」
「そうだよ。あんたが死んで、ボスと俺達は寂しかったんだから。あんたがいないからスクアーロは剣だけで生きられなかったんだからな。適材適所、あんたは俺達やボスに必要な人なんだからなっ」
「…ありがとう、レヴィにベル。ただいま」
「「お帰り、オッタビオ」」
駆けていく二人を見送った。
ザンザス様とあの子達と、今度こそは最後まで生き続けよう。
交渉を成立させて、眠っているザンザス様をお送りした。ザンザス様を、アパートの子供部屋のベットに寝かせた時に、寝惚け声のザンザス様に声をかけられた。
「…オッタビオか?…カスが勝手に死にやがって……かえってきたんなら、もう、かってにいなくなんなよ。カス…さめたのむ…………」
アパートを後にして、車に乗り込むまでは、声を押し殺して泣いた。
ザンザス様の命令を遂行するために移動中の車の中では大声を出して泣いた。運転手さんは引いていた。
…家光が正常に戻って、俺に掴みかかってきだが、奈々に後ろからスーツケースで殴られた。でもっておかしい家光が継続している。ちっこい俺よ、交渉係りのオッタビオを俺に貸してくれ・・・(;´Д`)