ザンザスが、殺し屋を目指すお話。   作:黄色いうちわ

4 / 21

  端から見ると、微笑ましい兄妹。





 憤怒、料理を教える。

 

   ディーノが俺と同じリボーン先生の弟子になった。

 

   ディーノとは、通う学校が当然ながら違う。だから、学校が終わったら駆け足で帰る事にした。同居生活の翌日からの日課だ。女性をあんなふうに泣かせてはいけないのだ。

 

   ディーノは家事ができない。というよりは、する必要がなかったのだ。使用人やメイドを束ねる執事に命令をする。その事だけができれば構わないことをゆるされていた。

 

    キャバッローネファミリーのボスが愛妻家なのは有名な話だった。マフィアのボスとしては、複数の愛人を持つのは当然だった。だけど、彼は恋人=妻で、妻だけを深く愛していた。なかなか子供が授からなかったけど、周囲が進める愛人を受け入れる事はけしてなかった。

 

   年老いてから授かった一人娘のディーノ嬢を、文字通りに溺愛した。盲愛といってもよかった。

 

   好きな食べ物、甘いお菓子に甘い紅茶。望む物をねだられる前にすべてを与えた。

 

   …そう、なんというか…娘が可愛くて可愛くて、だからこそ娘が望む家庭教師に最高峰の人材を用意してしまったのだ。

 

   リボーン先生は無茶振りはしない人だ。これくらいはできるだろうと思い、ディーノと俺に先に帰った方が飯を作っておけと言った。

 

   俺が帰宅したら、ディーノは途方にくれて泣きそうになっていた。

 

   父親と母親からはカードと多額の現金を渡されていた。だけど、その意味すらも教わっていなかった。電話はアパートにはなく、携帯電話は俺は本邸に置いてきたから所持していない。ディーノは持ってはいたが電池切れを起こしていて充電の意味も理解していなかった。

 

    ディーノは、知らない事だらけだという事を、生まれてはじめて知った。そしてそれを恥じてしまい、それでも両親を責める事が出来ずに、ただ、自分の無知を恥じて責めていた。

 

 

   そうして、俺にたどたどしく謝って謝りながら泣くまいと必死に耐えていた。

 

   俺は、泣いていいよと言った。泣いて、気が済むまで泣いていい。泣き止んだら、わからない事を一から全部説明してあげる。泣いたのは君が生きはじめる合図の産声だ。君も君が愛するご両親も、ファミリーの人達も誰も悪くないよ。ただ、与える愛が導く愛を上回ってしまっただけだと。

 

 

   泣くディーノの背中をずっと撫でていた。

 

   ディーノは泣きつかれたのか眠ってしまった。痩せて髪を切ってしまい口調を変えても、本質は変わっていなかった。

 

 

   足を引っ掛けられて転倒した少女。わざとらしく頭から浴びせられたジュース。滴る水滴を拭うよりも父親から贈られた新しいドレスの染みをなんとかしようと思い、でも自分では対処出来ずに泣いていた少女。

 

   ディーノをソファーに寝かせてから夕食を作り始めた。

 

   暫く経ってから視線を感じたので、ディーノをみたら恥ずかしそうにこちらを見ていた。手招きをしたら、早足できた。

 

   「じゃあ、今日から少しずつやっていこう。手を洗って、このレタスをこうやって洗いながらちぎります。洗い終わったら軽く水気をきってね。そしたらこの大きめのお皿に入れて。プチトマトを乗っけてツナ缶を開けて中身を上にかけます。はい、サラダの完成です。キュウリとかハムとかを切って乗せてもありです。包丁やナイフの使い方は、サラダを一人でできるようになったらね」

 

   ディーノはきらきらとした目で自分で作ったサラダを見ている。

 

   「こ、これなら私にも一人でできそうっ。お父様とお母様、皆に作ってあげられるっ」

 

   …っ。この感じはなんかヤバイ。こそばゆい。きっとこの感じは、先生方が俺に抱いている感じと似ているんだ。だって上手く出来て喜ぶと、先生方は俺の頭を撫でてくれる。今、ディーノを誉めてあげて頭を撫でてあげたいもの。

 

    「…ごほん。ザンザス、ありがとう。あのさ、充電って途中でも電話できるかな?おかあさま…マンマにサラダ作れたって報告したいんだ」

 

    「良いよ。どうせならディーノがサラダを作っている所を動画配信してあげよう。タッパーに入れて、護衛と送迎をしてくれているマルコさんにお願いして、ディーノのご両親に届けてもらおう」

 

    「あ、ありがとうっ。俺、頑張るからっ」

 

    ディーノは言葉通りに頑張った。サラダだけよりはと思い、卵を大量に割らせて砂糖を入れてかき混ぜて、スクランブルエッグを作らせてみた。火加減は俺が担当した。

 

 

   ディーノ、多分リボーン先生が俺達の夕御飯を買ってきてくれる。サラダとスクランブルエッグはもれなく君のご両親とファミリーが食べる。

 

   この部屋、いや、君が盗聴されている。でなきゃ、アパートの外から叫び声と制止の声が聞こえる訳がない。

 

 

    「優しいディーノちゃんっ。パパの罪を許しておくれっ。放せっ!俺は愛しいディーノちゃんに裸でジャンピング土下座をして謝罪をするんだっ。地上に舞い降りし最後の天使のディーノちゃんの作ったサラダとスクランブルエッグのご相伴に預かるんだっ!そんでもってザンザス君を何としてでもディーノちゃんの婿にするんだっ」

 

    「だ、駄目だっ。ボス、今あの部屋に入ったら間違いなくディーノ嬢のご機嫌を損ねてプライドを傷つけちまうぞ!《おとうさまのバカっ。きらい。だいっきらい。おとうさまをとめてくれなかったみんなもきらい》なんて言われちまったら確実に自殺一択だ。明日っ、明日には食べれるからっ」

 

    「奥様からも叱られますよっ。ディーノ嬢様の動画で我慢ですよ!ほぅら!満面の笑顔なんてひさしぶりでしょうがっ。ディーノ嬢様の真剣な表情のなんという尊さと健気さっ」

 

    「か、可愛いっ。頑張っているねディーノちゃんっ。ザンザス君に圧倒的感謝っ。ボンゴレの血を引いてなくても絶対に婿にしたいっ。くそっ。なんで俺は通いの家庭教師で頼まなかったんだっ。ディーノちゃんの泣き声なんか聞きたくなかった!そうだっ。家光の野郎に落とし前ををつけさせなきゃ!あんの男っ。俺の天使を侮辱しやがった!罵りやがった!俺が馬鹿で愚かだった結果でディーノちゃんは悪くないのにっ。野郎ども戦争だ!」

 

   「おおっ!家光との戦争なら喜んで従うぜ!」

 

   「俺達の姫様を侮辱したからには死ぬ覚悟なんて出来てますって。望み通りにブッ殺してやりましょう!」

 

 

   …武闘派のマフィア達が吠えまくっていて怖い。殺せ、血祭りだ、臓物を引き摺り出してやれ、見せしめだ、侮辱には死で報いてやれなんて公道で叫ぶ言葉じゃない。

 

    …家光さん、さようなら。

 

 

    賢明な貴方ならご存知ですよね?ディーノ嬢に意地悪をしたご令嬢達とそのご両親達、ファミリーが何故か一夜にして全滅をしてしまったと。お義父様、いえ九代目が青ざめたお顔で報告をうけて、ご友人夫婦に急ぎ会見の申し込みをしていた事を。

 

 

   …もしかしたら、俺のした行いはボンゴレファミリーの役にたったのかもしれませんね。

 

    俺が貴方の代わりにボンゴレを守りますからね。ボンゴレを巻き込まないで下さいね。奈々さんに迷惑をかける前に離縁してあげて下さいね。

 

 

    「ざ、ザンザス様っ。私、ぱ、パンケーキを作れるようになりたいですっ。執務中のお父様に差し入れをしてみたいですっ」

 

 

   口調が変わっている事に気づいていないのが可愛い。

 

    「いいよ。今日作ってあげよう。たぶん、無茶苦茶運動をして疲れるから甘いパンケーキの差し入れがあったら泣いて喜ぶと思うよ。うん、料理初心者が頑張ったよ。それに愛娘の初の手料理だ。喜ばない両親はいないよ(*´ω`*)」

 

    「そ、そうですか?そうだといいのですけど(≧▽≦)」

 

 

   「(もう、お前ら二人結婚しちまえよ。…なんて今はまだ言えないな。十歳と八歳じゃあな)ただいま。ピザとケンタッキーを買ってきた。ザンザス、レディに優しくはイタリア男として正しい。その調子だ。ディーノ、護身術と一般知識から教えていくからな。お前はお前のペースで良い。じゃあ、ザンザスの作ったサラダとピザとチキンを食べるぞ。いただきます」

 

 

    「「いただきます」」

 

 

   …人数の増えた食卓は幸せだ。

 

 

 

 

   必死で逃げてもあいつらは何処までも追いかけてきたし、回り込んできた。

 

   しっているかえる。しにがみはりんごしかたべない。

 

   訳 知っているか、ザンザス。キャバッローネの九代目な、俺がディーノにしていた事を録画していやがった。で、日本の奈々に焼き増しした映像を送っていやがった。俺が父親になった日に、産院に来てな《昔、君が私の愛娘にした事の録画映像をみて感想を述べたまえ( ´_ゝ`)》とネチネチと言ってきてだな。おじさん、つらたん。

 

 

 

 




  

   ちなみに、俺達アルコバレーノはザンザスを盗聴している。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。