ザンザスが、殺し屋を目指すお話。   作:黄色いうちわ

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  泣き叫ぶ姿を見て猛省したが、説教がまた始まった。


 憤怒、説教される。

 

   「ザンザス、お願いがある。明日、俺の家で行う式典に出席してほしい。…俺の変化を見届けてほしいんだ。ダメか?」

 

   「出るよ。でも、本当にしてしまうのか?後悔しないのか?今までの自分を捨ててしまうんだぞ?慣れて生きはじめても、結局は元に戻るんだ。なら変わらなくても良いだろう。俺がディーノを守る。だから変わらなくて良い」

 

 

   「ザンザス、あのな、ありがとう心配してくれて。ははっ。お父様とお母様と同じ事を言っている。うん、ファミリーの皆からも止められた。

 

  ロマーリオなんて「虐められていたから、弱かった自分を消したいから男になるのか?弱いなら強くなればいいだけだ。俺達部下がディーノお嬢様を支えるし守る。女のままでもボスになれる」…ズバズバと言われたよ。

 

   …ロマーリオの言ったこと、あってる。だけどな、男として生きたい、男として生まれてきたかったと思った事が何度もあったんだ。

 

   男だったら、もしかしたらお父様は、俺をあまり甘やかさないでいてくれたのかなとか?古参幹部に、お嬢様が若様であったのならと言われなかったのにって。虐められることもなかったのかなって。 

 

   必ず今の身体に戻れるんだから、それまでは男を満喫しようと思う。

 

   お父様とファミリーの皆、先生達とザンザスとたくさん遊びたい。仕事をしたい。支配地域の民間人の為に働きたい。ちゃんと、俺がお父様のファミリーを継いで次代に繋げていきたいんだ。俺達キャバッローネファミリーを民に愛されるマフィアにしたいんだ。

 

   最初は慣れないし、ザンザスや皆に迷惑をかけてしまう。確実に泣いてしまう。だけど、後悔だけはしないから。ザンザス、君に側にいてほしい」

 

   「…ディーノ、お前が覚悟を決めたのなら、俺はお前の側にいる。だけどな、リボーン先生達の訓練内容、俺と同じ…内容に近くなるぞ。そっちの覚悟はできたのか?」

 

   「 …だ、大丈夫だよっ。たぶんっ?一週間は寝たきりになるから、その間に覚悟はつけておく。あ、あのさ。もしも話だけど、自転車の乗り方レッスンに例えると?」

 

   「俺がしたディーノへの教え方がお子様カレーの甘口カレーとする」

 

   「うん。分かりやすかった。ありがとう、ザンザス。補助輪つけて、乗り方のコツを口頭と文章、イラスト付きで教えてくれたよな。膝と肘にサポーターをつけてくれてヘルメットを被って、後ろから支えてくれたよな。慣れたら片側ずつ補助輪を外していったよな」

 

   「俺は山頂に連れて行かれた。マウンテンバイクに跨がれと言われて、怖々と股がったら山頂から山肌いや崖をGOだったよ。半袖短パンだったな。防具がそれで武器はサバイバルナイフ。連続婦女暴行殺人犯と切り裂き魔が逃げたとされる山で、おまけに、くーまさーんとか野生の猪が出る山だったよ。会わないと思うだろ?でもな、二人と三匹・群れに遭遇したよ。マウンテンバイクさ、俺の身体に、知らない間に固定されていてさ。乗りながら戦闘になったよ…もうね、最後の方はマウンテンバイクとサバイバルナイフに愛着が湧いて相棒になっていたよ。《ベスター》と《憤怒》って名前をつけていたね。一週間のサバイバル生活を送ってやっと下山した時には、バラバラになってしまったふたつの相棒を抱えて泣いていたみたいだ。

 

   リボーン先生とコロネロ先生が、風先生とヴェルデ先生に「やりすぎ・だ・ですよ」と注意されていたのが最後の記憶だった。ベスターと憤怒の残骸を離さないままで気絶したって。夜中に《壊れないでくれっ!》《折れないでくれっ!》《お母さん、ベスター、憤怒、俺を置いていかないでっ》泣き叫んで大変だったって。俺はその修業の後から、物をすごく大切に扱おうと決めた。

 

   うん、唐辛子入りの激辛カレーだったな。泣くなよ。訓練が一緒なら俺が助けるから。妹が弟になって親友のままなんだから守るよ」

 

 

    「ぜ、ぜったいにっ。俺はザンザス君おいていかないからねっ!」

 

 

   「うん。俺はその言葉が嬉しいよ。ありがとう」

 

   この二つ年上の初恋の君は、私が想像も出来ない様な辛い経験をしてきた人だ。だからこそなのだろう、彼はザンザスはとても優しい。優しいのにとても強い人なのだ。

 

 

   …男になる事に不安がないわけではない。でも、男にならなくてはザンザスの隣には立てない。ザンザスの妻になりたいと強く言えば、私の立場上なら受け入れてもらえる。でも、それでは真の意味でザンザスには愛されない。愛してくれて大切にしてはくれる。だけど妹に向ける家族愛や友愛だろう。それも愛だ。だけど、私はザンザスに私に恋をしてから愛してほしいのだ。

 

 

   無謀で叶わぬ望みだ。わかりきっている。だけど、あの周囲からの侮蔑と嘲笑の中で、彼だけが唯一、私に近付き手を取ってくれた。優しい言葉をかけてくれてスーツの上着を脱いで肩にかけてくれた。赤い、赤い目がとてもとても綺麗でずっと見ていたいと思った。欲しいと、強く思った。

 

 

   その想いは、あの時から日増しにどんどん強くなるばかりだ。

 

   唯一になれなくても、親友で弟妹の座は手にいれた。正妻は無理でも恋人や愛人にはなれる。もちろん一番は正妻を狙う。

 

   《与えられる》事だけだった私が、生まれて初めて欲しいと思った。

 

   …だからな、ザンザス。俺が男から女に戻ったら覚悟はしてくれ。

 

   俺の方はとっくの昔にお前を諦めないと決めているからな。

 

   キャバッローネファミリーは割りと民衆に愛されている。だけどボンゴレファミリーと同じくらいの歴史を持っているんだ。裏側の世界で生き抜いてきたんだ。欲しいと思ったら時間をかけてでも必ず手にいれてきた。お父様だって、お母様との結婚を決めたのは俺と同じだった。お母様の美貌を受け継いだけど、性格はお父様に似てこれと決めたら一途に一直線らしい。

 

 

   ああ、楽しみだ。ザンザスとこれから出逢う全ての恋敵達。お前達の最大の脅威はもうザンザスの親友で弟妹ポジションだ。おまけにザンザスとは秘密の共有者だ。ザンザスの一番はボンゴレで、父親で教師のアルコバレーノには勝てないけど、その次の大切に俺はなっている。だから、傷が浅いうちに諦めた方がいい。

 

 

           ※※※

 

 

    式典は厳かだった。

 

   キャバッローネファミリーの全構成員、キャバッローネファミリーと同盟を結んでいるファミリーのボス夫妻と最高幹部と門外顧問が勢揃いしていて、俺は気後れしていた。

 

   「ザンザス、のまれるんじゃねーぞ。これがお前が数年後に生きていく世界だ。…中心にいて王の如く振る舞える道もある。それでも、俺と同じ暗殺者の道を選ぶのか?」

 

   「はい。俺は暗殺者になる道を選びます。憧れだったんですよ。父親の職業を継ぐのって。暗殺者で軍人で武道家で研究者って最高にカッコいいじゃないですか。…俺が九代目の血を引いていたとしても、お兄さまや弟が継ぐべきファミリーですから。こんな特別な式典には参加しませんよ」

 

   「そ、そうか。なら、父親として息子が誇れる様な仕事をしてくるか。ザンザス、司祭様の祝福が終わったら俺を壇上に連れていけ」

 

   「はい。あ、あの《性転換弾》を撃ったら、数十年後には本当に元の性別に戻れるのでしょうか?キャバッローネファミリーの九代目の慟哭を聞いていると無茶苦茶不安になるのですが」

 

 

   「し、司祭様っ。お父様いえ、父の言葉はお気にしないで下さい。続けて下さいっ」

 

   「し、司祭様っ。やっぱり止めます辞めますっ!ごめんなさいごめんなさいっ。寄付金も礼拝も今までの倍いたしますからっ。お願いします!私のお姫さまを王子様にしないで下さいっ。司祭様の祝福と許可がないとこの先の儀式には進まないのです。許しませんの一言で私の天使はディーノちゃんは女の子のままなんです!ディーノちゃんっ、お父様はやっぱり反対だよおおおっそ、そうだっ。お父様とお母様もう一回がんばるからっディーノちゃんの弟が生まれるまでがんばるからっ女の子のままでいてよおおおおっ」

 

  「司祭様っ。申し訳ありませんっ。つ、続けて下さいっ!」

 

  「…まあ、溺愛している愛娘が息子になるのを喜ぶ父親はいないだろうからな。(妹を心配している兄貴の目しかしてねぇな。ディーノ、頑張れ。超頑張れ)」 

 

   「そ、そうだっ。ディーノちゃんだけではなくて私にも祝福と許可を下さいっ。ディーノちゃんの指針となるべく女ボスに私もなりますっなんだロマーリオっ司祭様の前で失礼だろ!神聖な儀式の邪魔?なぜ私を連れ出す?止めろおおおおっ」

 

 

   「ロマーリオか。アイツはディーノのいい部下になるな」

 

   「ええ。じゃあ、壇上にお連れいたしますね」

 

   司祭様の祝福と許可を戴いたディーノは、俺を見ると少し困ったような笑顔を浮かべた。

 

   ディーノだけに聞こえる様に小声で「後少しだから頑張れ」と言った。

 

   「ああ。頑張るよ。リボーン、頼む」

 

   「わかった。ディーノ、俺はお前のしたファミリーを守る為の決意を誇りに思う」

 

   「ありがとう。さあ、俺を撃ってくれ」

 

   リボーン先生がディーノを撃った。

 

 

   煙幕がディーノの姿を隠した。そうして煙幕が晴れたら小柄なディーノの身体は少し大きくなっていた。

 

 

   「…ああ、これが。これが俺の男としての姿なんだな。ははっ。説明通りだ。体が痛いっ。…声も低いや。リボーンにザンザス。ありがとう見届けてくれて。これからもよろしく頼む。とりあえずは一週間後に帰るから、待っていて………」

 

   気絶し倒れかけたディーノを慌てて抱き止めた。

 

 

   駆け寄ってくるディーノのお母さんにメイド達、キャバッローネの九代目とロマーリオさん達。

 

 

   ディーノの身体を渡そうとしたら、部屋までお姫さま抱っこをして運んであげてと懇願された。

 

   「男になったけど、女の子なんだからそれは失礼ですよ。おじ様かロマーリオさんがするべきです」と断ったのに、「君以外にいないんだ!」と式典参列者全員から言われた。

 

 

   リボーン先生と司祭様からもお説教された。解せぬ。

 

 





  ザンザス(少年)の鈍さについ。byリボーン&司祭様。

  お父様にも、私とお母様でお説教した。byディーノ。

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