暗躍していたディーノパパ。
あてられた殺気に対応などできなかった。動いたら終わる。それがあの場での真理だった。
リボーン先生の殺気を感じられたのは、ある意味幸運だ。俺は暗殺者として生きる上で、一番恐ろしい生き物の殺気を感じたのだ。あれ以上にはそうそう遭うこともないだろう。あれ以下に対しては、直ぐ様対応できる。…いや、油断大敵だ。慢心したら、俺は死ぬ。俺が生きる事を決めた世界は優しくもなまぬるくもない。もっと強くならなければ。日本の武術を色々と見てみたいな。
国技の相撲を観たいとディーノが言っていたから、相撲を観に行くのも良いな。間近で力士を見れるかな?ガイドブックにある日光江戸村とかなら忍者ショーがあるかも。京都とかの撮影村に行けば役者の扮した侍が見れるかもっ。今回が駄目だったとしても、またディーノと来れば良いよな。
楽しい予定を考えながら眠りについた。
夢の中で、家光さんが忍者や侍になった先生に攻撃されているのを、ところてんという食べ物を食べながらディーノと見ていた。
朝起きて、思った事は、そうだ、ところてん食べようだった。
リボーンさんの殺気にびびっちまった。
…だが、良いものを見れた。
殺気にびびっちまって固まったのは俺達五人だ。だけど、俺達よりも先にザンザス坊っちゃんがディーノ嬢坊っちゃんを庇うかの様に背に隠したのだ。
尊いったらない。
あれで、弟妹と大親友を護るとか言っちまうのが魔王ザンザスクオリティー。ヾ(・д・`;)違う。世間ではそれを愛と呼ぶから。惚れた人を護りたいラブだからっ。
…ザンザス坊っちゃんのお鈍さんを嘆く前にしないといけない事がある。
それはザンザス坊っちゃんに携帯を持ってもらう事だ。
ザンザス坊っちゃんは、ディーノ坊っちゃんの所持している最先端の携帯を扱える。そもそも、説明書を読んでディーノ坊っちゃんに操作方法を教えたのはザンザス坊っちゃんだ。
持っていないんだ。
ボンゴレファミリーから、父親である九代目から与えてもらったもの。その全てを置いて家を出ていった少年。
ボンゴレファミリーの専属暗殺者を目指しはじめた御曹司。父と異母兄弟の為に、華やかな生き方を棄てて荊の道を、ファミリーの暗殺者と成ることを選んだ。
…ザンザス坊っちゃんの選択に馬鹿が煩く言ってくる。
《キャバッローネファミリーの総領娘であられるディーノ嬢には、ファミリーの次代を約束された御曹司の方が相応しいのではないでしょうか?ボンゴレファミリーの次代継承権を持たぬ子息よりうちの息子の方がディーノ嬢を幸せにできます》と。
…相応しいって、お前んとこのチンピラファミリーがか?寝言は寝て言え。お前のクローンみたいな双子のバカ息子とバカ娘は、あの事件の時のディーノお嬢様の事を指差して馬鹿にしていたぞ。地獄への招待状は、配布者が多すぎて配達遅延しているだけだからな。ディーノお嬢様が痛ましいくらいに痩せてしまった後に優しくしたって、うちのボスの報復からは逃れられないし、俺達も絶対に許さない。
ザンザス坊っちゃんに敵う婿養子候補なんざいねーよ。
《ザンザス様がいい。ザンザス様以外の方のお嫁さんには絶対になりたくありません。なるくらいなら、神様にお仕えするシスターになるか、神様に謝罪をしてから死を選びます》
もうね、控えめで大人しく気弱で優しいディーノお嬢様が目に涙をたたえて宣言したら、逆らえる人間はキャバッローネにはいないのよ。
ボス自身は、ディーノお嬢様からの初のおねだりに舞い上がった。愛娘が生まれた瞬間、いや、奥様の妊娠がわかった時から、将来の婿と嫁を探していたから。そして、ボンゴレの子息は既にリストにあがっていた。
正妻の産んだ御曹司ではなく、愛人の産んだ御曹司。後ろ楯のない少年。だけど、ザンザス少年には華があった。覇気があった。ボンゴレファミリーの代々のボスが宿している炎があった。接して話し合った人間を惹き付けるカリスマを持っていた。誰もが目を奪われ惹き付けられる漆黒の黒髪に赤い紅い瞳。美しい容姿だけでなく、強さと賢さを備え、残酷なほど優しかった。
ディーノお嬢様の惨状に駆けつけたザンザス少年は、ディーノお嬢様しか見なかった。優しい言葉をディーノお嬢様だけにかけて優しく立ち上がらせる。ハンカチで濡れた頭や顔、肩を拭うと、来ていた上着を脱いでディーノお嬢様にかけて、パーティに招待された子供達専用の会場から退室した。その間、ディーノお嬢様しか見ないで、ディーノお嬢様だけと話していたという。ひたすらに話し掛けている他の御曹司とご令嬢には反応しなかった。
完全に切り捨ててしまったのだ。視界に入れる価値なし。言葉をかわすに値しない無価値なモノだと。子供とはいえ、仲良くしていなくてはならないはずの同盟ファミリーや中立ファミリー同士での虐め。正しく優しくあれと教えるボンゴレファミリー九代目、尊敬している父親からの教えに反する行動。ザンザス少年には到底許せない事だったのだろう。
傲慢で不遜。冷酷で残忍。味方以外に見せる顔は、子供ながらも恐ろしかったと同僚は語った。
無言で見てみぬ振りをして退室をしたボンゴレ子息より、ディーノお嬢様を助けてくれたザンザス少年。ボスの感動と感謝は色々なものをぶち抜いた。ボンゴレファミリー九代目から、ザンザス少年の事を執拗に事細かく聞き出し、ついには血の繋がらぬ他人である事を聞き出していた。執念深さとしつこさにひいた。
「俺の最愛の天使ディーノちゃんを見てみぬ振りをして見捨てた奴等と血が繋がっていないんだ。ふーん。良いねー良いねー最高だよっ。ふふっ後ろ楯とか後見人がまだいないんだー。そっかー。じゃあ、君の親友のおじ様が立候補しようっと。つーか、なったから。婚約者もまだいないんだってねぇ。オッケーオッケー。うちの地上に舞い降りし最後の天使ディーノちゃんにも婚約者がまだだからさあ、君の最近発覚した隠し子のザンザス君をうちの婿養子にくれるよねっ。してくれたら、君の三匹がうちの地上に舞い降りし最後の天使の愛娘ディーノちゃんを見てみぬ振りをして見捨てた事をチャラにしてやるよ。あ、断るという選択肢はないよ。ま、あったとしてもここを完全に更地にしてからザンザス君を連れ去る事もうちには簡単だって君ならわかるだろう?まあ、ザンザス君からは君とボンゴレに関しての記憶が綺麗に無くなるけど、お母さんと一緒に死にかけていたところを俺に救われた記憶を持って生きていくわけだから平気だよね。えっ、司祭様にご報告にいく日の都合を俺に合わせてくれるの。ありがとう親友よっ」
…遅くにできた愛娘を幸せにするためなら手段を選ばないその姿勢に憧れます。話がそれた。
携帯を持って頂きたい。
「うわああん!ザンザスと話がしたいようっ。何時もなら一緒に夕御飯を一緒に作っている時間じゃんかっ。話したいいいぃっ。ザンザスとおしゃべりしたいようっ。観光の打ち合わせしたいのにできないなんてっ。リボーンっなんで俺とザンザスを離ればなれにしたんだよっ。今の俺は男なんだから、俺が女だった時にお父様が唆してきた大人の仲良しは出来ないんだからいいじゃんかっ。あと十年は待つと神様と司祭様に誓ったんだから俺をもっと信用してくれよっ」
…出来ます。出来るんですよ。男同士でも。むしろ子供ができないぶん色々と出来ちまうんです。清童同士だから病気にかかるリスク少ないですし…言えない。つーか、ボス。男親の貴方が推奨してはいかんでしょうに。十歳と八歳では無理です。同性同士でも異性同士でもだめです。
「坊っちゃん、ザンザス坊っちゃんと風呂に一緒に入ったり一緒に寝たりしていて鼻血をだしたり気絶したりしているうちは…いや、今の方が安全だよな?坊っちゃん、坊っちゃんからザンザス坊っちゃんに、一緒に風呂に入ろうと言ったのか?」
「うん。ザンザス猛反対したけどな。《今は男でも、ディーノは女の子なんだから、もっと自分を大切にしなさい》《頼む。好きな男とかおじ様と先に入ってからにしてくれ》《止めなさいっ。いいかっ。七歳をすぎたら男と女性はわかれて生きるべきなんだっ。同衾なんか絶対に俺はせんぞっ。殺し屋たるものクールで女性に対しては紳士でなければならないんだ》《くそっ。ディーノ、俺はお前の為に言っているんだ。頼むからわかってくれ》《ホームシックだな。わかった。送っていく。今日は実家に帰ろう》
もうな、リボーンやコロネロはお腹をかかえてゲラゲラ笑うし、ヴェルデは笑わない様にしてくれているけど、肩が小刻みに揺れているし、風は俺の肩を優しく叩いて《ディーノ。女の子の方が早く大人になるのです。ザンザスを見守って下さい》なんて言うしで。
ま、四人の父親と俺のお父様とお母様から説得をされてやっと折れてくれた。…鼻血とか気絶はさ、なんていうかその…ザンザスが色っぽいのが悪い。セクシーすぎて、なんか筋肉のつきかたが俺と違いすぎて羨ましくて、傷のある体がかっこよくて、見惚れた赤い瞳がすっごく綺麗で、毎日誰にも気兼ねしないで見られて幸せで。なんか虐められてて辛かったけど、対価でザンザスの近くにいられる権利を得られたのなら、俺って世界一ついているラッキーな人間なんだなって思ったら気絶したり鼻血出ちゃったりして~《寝落ちまで続くザンザスラブな自慢話》~………みんな、おやすみ…もっと…きいてほしいのにな……(-_-)zzz」
なんか、俺達三人は和んだ。
幼い恋ばなを聞くのって癒されるわ。
青コーナーは、全身全霊全力投球でザンザス坊っちゃんに愛を伝えるディーノお嬢様。対する赤コーナーは夢はアルコバレーノクラスの殺し屋になりたい魔王ザンザス。恋心に気づかない鈍さも魔王クラス。…むしろ、ディーノお嬢様を娘扱いしていて逆に不安になったのだが。
※※※
最近の俺はおかしい。
あれほど可愛がっていたザンザスに酷い事を考えてしまう。ザンザスの事は可愛いと、可愛そうな子だと今も思っている。娘が生まれたのなら、婚約者にして、俺が後ろ楯に、後見人になってやりたいと思っている。だけど、あの赤い瞳が、別の男に重なってしまう。九代目をボンゴレファミリーを傷つけた孤高の王に。ないはずの記憶だ。それなのに、その記憶が俺を駆り立てる。焦燥感に陥らせる。
《早くザンザスを拘束しないと。閉じ込めて牙を抜いてしまわないと。あいつは必ずボンゴレに牙をむく。恩を仇で返す。ボスを傷つけないうちにお前がザンザスを倒せ。…綱吉を守れるのは父親のお前だけだ》と。
囁くな。囁かないでくれ。あいつはまだ何もしていない。真実を知っても、誰も、何も恨まずに妬まずに消えようとした優しい子供だ。あのリボーン達がいとおしみ育てている子供だ。これから先に道を誤ることはない。
《本当にそう思うのか?スラム育ちの猛獣が、そんなしおらしいたまかよ。あの狂犬達や悪魔を従えた男の本質がそうそうたやすくかわるかよ。なあ、今は最強達から教育を受けているんだ。いいのか?今度はゆりかごで九代目を殺すぞ?リング争奪戦であいつは綱吉を殺すぞ?…守れるのは、お前だけだ》
ちくしょうっ。お前はもう黙れっ。黙ってくれよ。
「…ないているの?だいじょうぶ。ぼくのなみもりでのはんざいしゃはぼくがかみころす」
「…っ。すまねぇ。おじさんがお前を守るからな」
「とんふぁーさえとりもどせれば。ざんざすって、おじさんのこども?ねているあいだ、ずっとなまえをよんでいた」
「…ああ。息子だよ、可愛い息子なんだ…」
泣き出した人の背中を撫でてあげた。
門外顧問、風紀委員長に慰められました。