どれほどの月日が流れただろう。
……あの時の情熱を思い出すために、私は今筆を取った。
さあ、刮目せよ
これが新たな妖怪伝説の二話目である!(遅めの厨二病)
「で、どういうことか話を聞かせてもらいましょうか」
前回のあらすじ。
何やかんやあって、妖怪ポストで鬼太郎を呼び出し無事に事件解決を見守ったとっても賢いまなちゃんは、その後、鬼太郎を自室へと連れ込み、友人になることに成功した。やったぁー!
鬼太郎親子の天然発言に、ムカついちゃったまなちゃんは、鬼太郎のマウントを取り、恐怖のくすぐり攻撃を開始、これにはさしもの鬼太郎も叶わず、ただただ情けなく悲鳴を上げるしかなかった。
傍から見ればキマシタワーなイチャイチャをしているようにしか見えない二人。……そんな空気を切り裂くかのごとく、一人の人物が、まなちゃんの自室の窓からこんばんw間違えました、おはようございますしたのである!
「鬼太郎、鬼太郎。……このごいすーでビューティーな人、誰?」
「ごいすー?……彼女は、ボクの友達で仲間の猫娘だ」
猫娘。
昔からの鬼太郎の友達であり仲間である妖怪の少女である。
スラッとしたモデル体型に、短く切りそろえられたショートヘアーが印象的なクールビューティーで、白いブラウスに赤い吊りスカートを身に着け、頭には濃いピンク色のリボンが結んである。……鬼太郎が綺麗可愛い系ならば、この人は綺麗カッコイイ系だろうかとは、まなちゃんの感想である。是非ともお友達になりたい。
そんなスーパービューティーである猫娘は不機嫌そうに腕を組んで仁王立ちしている。……それはまるで旦那の浮気現場を目にした妻の如く。
「猫娘、何を怒っているんだ?」
「何をしらばっくれてるのよッ! き、鬼太郎がその娘と、え、ええ、えっちな事しようとしてたんでしょッ! わ、私というものがありながらぁ!」
「……確かに猫娘は大事な友達だけど、何か関係があるのか?」
「うにゃあぁぁぁぁぁ!」
取り敢えず怒っている様子の猫娘をなだめようとする鬼太郎。……だが、猫娘は更にヒートアップして、髪を振り乱しながら怒り狂う。若干、涙目になっているのは気のせいではない。
「あっ(察し)」
「やれやれじゃ」
その二人の様子を見て、何かを察したまなちゃんと、首を振る目玉おやじである。
まなちゃんは猫娘が鬼太郎をどう想っているのかを何となく察し、目玉おやじはこんなにも想われているのに気付けていない鬼太郎の鈍感さに呆れ返っていた。
「猫娘さん、猫娘さん」
「な、何よ」
「それ誤解です」
「え?」
「鬼太郎にからかわれた腹いせに、こちょこちょしてただけです」
「こちょ、こちょ?」
首を傾げて、まなちゃんの言ったことを繰り替えしちゃう猫娘である。……何だこのビューティーお姉さん可愛いな。
「はい、こちょこちょです。……あ、それと猫姉さんって呼んでいいですか?」
「え、あ、う、うん」
何だかよく分かっていない間に、納得させられた感が強い猫娘、改め猫姉さんである、ちょろい。……まなちゃんは将来詐欺師になれるかもしれない。それもかなり凄腕な。
「い、いきなり取り乱して悪かったわ」
「全くだ」
「お主は反省せい鬼太郎!」
「そうだよ鬼太郎! 綺麗で可愛くても鈍感はダメだよ!」
「……解せぬ」
怒られた。
「鬼太郎が全然帰ってこないから、皆で探してたのよ」
「何かごめんなさい。私が鬼太郎を無理矢理引っ張ってちゃったから心配かけたみたいで……」
「……貴女のせいじゃないわよ。この鈍感がカラスでも何でも使って知らせてくれればそれで解決した事だもの」
「……やめろ、頭をポムポムするな」
鬼太郎の頭を手の平でポムポムと優しく叩きながら、まなちゃんへ手をひらひらさせる猫姉さんまじクールビューティー。
「でも安心したわ、見た感じ怪我はしてないみたいね」
「鬼太郎カッコよかったんだぁ! こうシュビッ! バシュッ! ドカーン! ってあのホモォみたいな妖怪をギッタンギッタンにしたんだから!」
「ほ、ホモォって(苦笑い)」
身振り手振りで鬼太郎が如何にカッコよかったかを力説するまなちゃんである。やっぱり可愛い。……そして、まなちゃんのとある発言で苦笑いを隠せない猫姉さんである。
猫姉さんはスマホを携帯している。そのため、他の妖怪の面々に比べると現代のネットスラングなどに明るい。……当然、ホモォなる奇妙な生物のイラストなども閲覧した事がある。
「父さん、ボク達蚊帳の外ですね」
「いいか、鬼太郎。こういう時、男は話を振られるまでは決して話しかけてはいかんぞ」
「どうしてですか?」
「……世にも恐ろしい目に遭う」
「ひぇっ」
具体的には集中砲火を受ける。……良くも悪くも。
「鬼太郎どーん怪我はないかんね〜?」
「一反木綿、お前はどうしてボクを見つけると手を渡ってくるんだ」
「鬼太郎どんの手ってば、シルクんごとすべすべしとるばい、気に入ってるとね〜」
「お前は何を言っているんだ」
いきなり窓から入ってきて、そのまま流れるように鬼太郎の手を取ってさすりまくっている変態。
彼は一反木綿、猫娘と同じく鬼太郎の友達であり仲間の妖怪の一人である。まるでトイレットペーパーの化身の様にヒラヒラとした混じり気のない純白の布のような姿をした妖怪であり、自由自在に空を飛び回る事が出来るのだ。
見ての通り変態。……というより、無類の女好きであり、隙きを見ればこうしてお触りしてくる困ったちゃんである。しかし、それを補うほどに面白い性格で場を盛り上げるのが得意で気の良い妖怪だ。
鬼太郎は男なのに、何でセクハラみたいな事をしているのか。……それは鬼太郎の容姿がそこいらの女顔負けに整っていて可愛らしい上に、肌がスベスベで綺麗だからである。お前はそれでいいのか一反木綿。
「鬼太郎! そのひらひらしたの誰?」
「あーこげな可愛い子が鬼太郎どんの新しいお友達ばい? 鬼太郎どんの友達なら友達も同然、ほーら握手、握手。……あんたの手もすごいスベスベしとってシルクみたいとね〜」
鬼太郎の手を堪能したばかりか、まなちゃんの手まで堪能できてご満悦の一反木綿。……この野郎馬鹿野郎。
「この色ボケふんどし! その娘から離れんか! チューするぞ!」
「鬼太郎ー無事だったかー?」
続いて入ってきたのは、着物を来た小柄のお婆さんと、そのお婆さんと同じくらいの身長の小柄のじいさんである。
「砂かけ婆に、子泣き爺まで」
「おぉー二人も来おったかぁ!」
砂かけ婆。鬼太郎の仲間の一人であり、何かと世話を焼いてくれる鬼太郎にとってはお婆さん代わりのような存在であり、面倒見が良い妖怪だ。……名前の通り砂を扱った行動を得意としている。
その実力は折り紙付きで、老婆の姿をしているがかなりの実力者でもある。鬼太郎が不在の時は、他の皆を取りまとめるなどの確かなカリスマ性も有しており、非常に頼りになる自慢の仲間である。
子泣き爺、鬼太郎の仲間の一人であり、鬼太郎のおじいさん的な存在で、のんだくれのジジィである。しかし、いざというときには、その石化する能力を存分に活かして、鬼太郎の手助けをする、やる時はやるを地で行く妖怪だ。
蓑に腹掛け姿で、片手には酒瓶を持っていることが多い。……うん、ただの飲んだくれかな?
「庭の方には、ぬりかべもおるぞ」
「ぬりかべぇー、鬼太郎、怪我ないかぁー?」
ぬりかべ。鬼太郎の仲間の一人であり、仲間思いの巨漢。純真な性格で、友情に厚く。仲間の悲しみを我がことの様に受け止めてしまうほど思いやりが深い妖怪だ。
壁と、言われている通り、壁の様に固く、どんな攻撃も仁王立ちで防いでしまうほどの圧倒的な防御力を持っており、これまで鬼太郎達を狙うあらゆる攻撃をその身を持って防いできた最高にクールな男の中の男だ。
「あ、あはは、いつの間にか私の家が妖怪テーマパークになってる」
「……何か、ごめん」
「すまんのぅ、朝から騒がしくしてしまって」
「いいよいいよ、楽しいし。……あ、自己紹介がまだだったね! 私、犬山まなっていいます! さっき鬼太郎の友達になりましたっ!」
「まな、ね。覚えたわ。私の事はさっき貴女が言ってた猫姉さんで構わないわ。……まなとは仲良くなれそうね」
「一反木綿って言うんよ。よろしゅうねぇ〜」
「砂かけ婆という、何か困ったことがあったら遠慮なく頼ってもええぞ」
「子泣き爺じゃ、わしと会う時は酒を用意してくれると嬉しいのぅ」
「ぬりかべー」
元気よく片手を上げて挨拶するまなちゃんに応じて、鬼太郎の仲間たち、通称鬼太郎ファミリーの面々も笑顔で自己紹介し、親睦を深めていく。……アットフォームだねぇ、しゅきぃ。
「って!? 嘘、もうこんな時間ッ!?」
今日、まなちゃん日直、オーケー?
「私学校あるから今日は此処でお開き! 帰ってからまた会おう!……あ、そうだ! 猫姉さん! レイン交換しときましょう!」
「あ、うん、別に良いけど」
ぴろりんとレインのアドレスを交換する。
「学校終わったら連絡しますッ!」
そのままカバンを持って部屋から飛び出していってしまった。……おい、着替えなさいな。
「……驚いたわ、嵐みたいな娘ね」
「はぁ、昨日からずっと振り回されてる。……正直、疲れたよ。帰って寝る」
「っ!? き、鬼太郎!?……あ、あれ? ね、寝てる?」
鬼太郎が猫娘の方に倒れ込む。
すぅーすぅーと穏やかな寝息を立てている様子から、眠ってしまったようだ。
「随分と疲れとったみたいとね〜」
「鬼太郎は昨日から休み無しだったからのぉ」
「ほれ、猫娘。鬼太郎と触れ合うチャンスじゃぞ」
「これ子泣き爺、茶化すではないわ!」
「俺が運ぼうかぁー?」
鬼太郎ファミリーは茶化したり、誰が運ぼうかと和気あいあいとしている。
「し、仕方ないから、わ、私が運ぶわよ。……き、鬼太郎も私に運んでもらいたいみたいだし?」
「無理せんでもいいんだぞ猫娘? わしでも運べんことはないしな」
「ま、まぁ……わ、私は嫌だけど、鬼太郎が倒れたのは私の方だし? これは鬼太郎が私に運んでもらいたいって言っているのと同じよね? し、しょうがないわね鬼太郎、私がしっかりと家まで、は、運んであげるわ」
「ダメじゃ、聞いとらんわい」
最早、砂かけ婆の声も猫娘には届いていなかった。
猫娘の頭の中は鬼太郎の事で一杯だった。……鬼太郎が、自分の方に倒れてきたということは、それだけ仲間達の中でも私の事を信頼してくれている証(※一番近かったからです)。ということは鬼太郎は内心では私の事が好きなのではっ!?(※今の所、恋愛感情はありません)。そ、それにこれは合法的に触れ合うチャンスっ! ふ、普段は素直になれなくてついつい強く当たってしまうけどどど、鬼太郎の意識がないいまならちょっとくらいは素直になれるるるかももも(※ツンデレ乙)
「猫娘の奴め、口元がにやけておるぞ?」
「ホントは嬉しいと思っとるばいね」
「楽しそうでー何よりだー」
「どうやらわしはお邪魔みたいじゃのぉ。……一反木綿よ、済まんがわしを運んでくれぬか?」
空気を読んで鬼太郎から離れる目玉おやじである。
「親父どんは、おいが運ぶばい、後は若い二人に任せるんとね」
「う、五月蝿い! ほら、早く行くわよ!」
鬼太郎を逆お姫様抱っこの形で抱え、まなちゃんの家を後にする猫娘。……あ、鬼太郎軽い。まるで羽の様だわ。
何故だろう、男女逆転している筈なのに、これ以上ない程にしっくりしている光景だった。小柄で綺麗に愛らしい見た目完全に美少女しか見えない鬼太郎と、その鬼太郎を優しく抱き上げ駆けるスレンダーで長身の美少女。……き、き、キマシタワァァァァァ! 偶々その光景を目撃した、全国の百合豚達が歓喜の叫びと共に、赤い噴水を撒き散らし、その意識を消失したのは言うまでもないことだろう。
「ビッビッビビビのビー……はぁ、どっかにうまい儲け話でも落ちてないもんかねぇ?」
一人の男がゲゲゲの森のとある小道を歩いていた。
男、名をねずみ男という。妖怪と人間との間に生まれた、俗に
灰色に近い色合いの不潔で少々、いや、うん……な小汚いマントを被っており、ねずみ特有のヒゲが誇らしげに両頬に生えている。
他の妖怪たちに比べると、半妖ゆえにかなり戦闘能力は劣っているが、その代わりに中々に生命力が高い。
金銭欲が強く、儲け話に目がない。商才はそれなりにあるらしく、これまであらゆる金儲けに手を出しては成功しているが、引き際を誤っては失敗して借金を作り、その度に命からがら借金取りから逃げ続けている。
「カァッー! 世知づれぇ世の中だぜ全く」
道の脇で用を足す。見事な弧を描いた黄金の汚ない水が、物陰に隠れていた石に直撃する。
「ふぅーあぁースッキリした」
「おい!」
「ん?」
「こっちだ!」
「えっ?」
足元から声がする。
不思議に思ったネズミ男が足元を見下ろしてみれば、そこには……
「あらぁ〜、また、ちっこい妖怪だな?」
小さなひとつ目の妖怪がネズミ男を見上げていた。……一応、念の為言っておくが、目玉おやじではない。
「小便で流してやろうかぁ? へっへっへっ!」
調子に乗って、その妖怪の周りに小便を撒き散らす。……心無しか、ひとつ目妖怪の眉間にはシワがより、青筋が立っている気がしないでもない。
「わしはちっこい妖怪ではないぞ──」
息を大きく吸い込んだ妖怪。……その身体が急激に巨大化していく。
「──わしは見上げ入道だ」
見下ろしていた筈のネズミ男が逆に見上げる程の巨体。まさに名前の通りの大入道。
「ひぃ〜!? い、いのちだけはお助けを! 見上げ入道様ぁ〜!」
そんなとんでもない相手に喧嘩を売るような真似をしてしまったネズミ男は必死で命乞いをする。
「よくぞ封印を解いてくれた!」
「おた、おたすけ……へ?」
「よくぞ封印を解いてくれた!」
喜べ野郎ども、どうやら助かるらしい。……九死に一生を得るとはまさにこのこと、やはり日頃の行いが良いからだろう(←)
「その礼はせねばならん……ほれ、好きなだけくれてやろう」
「ファーーッ!?」
ネズミ男の目の前に落とされたのは、美しく光輝く長方形の羊羹。……地面に叩きつけられて金属音を鳴らすそれは、まさにまさにまさにっ! ネズミ男が常より欲しているっ!
「な、何と!? こ、これは金じゃありませんか!?……い、いただけるんですか?」
「フッフッフッ、好きなだけくれてやろう」
大事なことなので、二度繰り返すのが入道クオリティ。
「その代わりとは言っては何だが……わしに協力してくれぬか?」
「へ、へへっ、俺はアンタに着いていくぜ見上げ入道様よ」
「わしに協力してくれるなら、その程度の金いくらでもくれてやろう」
「……先ずは靴でも磨きましょうか? 先生」
「そこまではせんで良い」
「ではでは、肩でもお揉みしますぜ」
「そこまではせんで良い」
ゴマすりゴマすり、金の魔力に囚われてしまったネズミ男は、いっそ清々しさすらも感じるほどにへりくだっていた、その姿にはプライドなど一切感じ取れない。……金の力はいつだって偉大である、古事記にもそう書かれてる。
「三日ぶりのキタロニウムを摂取だよぉ〜♪」
「まな、暑いから離れて欲しい」
三日ぶりに鬼太郎を発見したまなちゃんは、早速、キタロニウムを摂取するために思いっきり抱き締めていた。
一度知ってしまったら、定期的に補給しないと発狂してしまう。それほどの中毒性を誇るのがキタロニウムだとまなちゃんは語る。……さりげなく、この広い町の中から鬼太郎を探し出したまなちゃんの探索力が恐ろしいところ。
「それよりも、何でボクの居場所が分かったんだ? 何処にいるかなんて教えてない筈だけど?」
「あぁ〜こころがキタキタしゅりゅのぉ〜」
「お願い、話聞いて」
「うへへぇ〜聞こえなーい!」
まなちゃんつおい。
ちなみに、まなちゃんが鬼太郎を見つけ出した理由はにほいである。
鬼太郎を着せ替えしながら遊んでいた時、彼のグッドスメルを鼻で覚え、どんな微かなにほいからでも居場所を特定する程度のほんの些細なまなちゃんパワーなのである。はいはい、イミフイミフ。
「ぐぬぬ」
鬼太郎が他の女に抱き締められて面白くないのは猫娘である。
何せ鬼太郎は、自分の想い人なのだ。他の女とベタベタイチャイチャとされると胸がムカムカしてしまうのは当然である。
でも、素直に言葉に出せない。……自分の想いを鬼太郎に知られてしまったら、恥ずかしさで死んでしまう自信がある。
第一、素直に口に出せるなら、今頃自分と鬼太郎は結ばれて、大家族の一つや二つこしらえていただろう。や、やだ鬼太郎ったら、そんなにいっぱい産まされたら私、壊れちゃうよぉ……彼女もお年頃、妄想したくなる時だってある。
「ほらほら、猫姉さんも混ざりましょう! いや、それより私にネコネェニウムを摂取させてくださいよ!」
「え、ちょっとまな!?」
「むぐぅ!?」
「あぁ〜キタキタのネコネコで幸せ空間なのぉ〜♪」
遂には猫娘の腕を力強く掴んで引き込む始末である。やだ、本当にこの人間の娘強いわ。
くぁわぁいぃくてキュートな鬼太郎と、ごいすーでビューティーな猫姐さんを両方一辺に抱き締めることが出来るなんてっ! わ、私今此処で死んでも良いっ!
「ちょ、何してるの!? き、ききき鬼太郎も離れなさいよっ!?」
「……まなに言ってくれ、がっちり掴まれててボクの力でも動けない」
妖怪のパワーでも振りほどけないとは、これ如何に?
「まーなー!」
「えぇ〜? 分かりましたよー……猫姉さん、満更でもなさそうだったくせに」
「〜〜ッ!? 悪いことを言う口はこの口ね!? この口なのね!?」
「ふぁんふぁらふぇもふぁふぁったふふぇにぃ〜(満更でもなかったくせに〜)」
「こ・の・娘・わぁー!」
まなちゃんのもっちりとしたスベスベほっぺを引っ張りながら猫娘が怒る。対するまなちゃんは流石の態度、目が吊り上がって恐ろしい顔をしている猫娘に怒られていても何のそのである。
むしろ、次は何して遊ぼうかな〜などと、暢気に次の悪戯を考える始末である。……この短時間でまなちゃんは気に入った妖怪に対してはとんでもない悪戯っ子になってしまっていた。
可愛いあの子の困惑する顔や、カッコイイあの人の慌てふためく顔を見たいがために、バイタリティ溢れる、度胸の塊になってしまったのである。
「父さん……やっぱりまなって」
「皆まで言うな、分かっておる」
かつての自分の育ての親を思わせる滅茶苦茶っぷりである。
もしかしなくても、犬山まなという人間の潜在能力は、自分が想像しているよりも遥かに高いのかもしれない。……今の今まで一般人として暮らせてきたという事実に軽く戦慄する。
「仲直りのぎゅぅ〜♪」
「こ、こら! まだ説教は終わってないわよ!?」
猫娘の拘束を振りほどき、真正面から猫娘の胸に顔面から突っ込んだまなちゃんがアグレッシブ過ぎて草しか生えない。
ガッチリとしたホールドは、例え妖怪であっても逃げ出せないほど強固なものだ。鬼太郎と猫娘二人でも抜け出せなかったのだ、一人になってしまった猫娘では抵抗も何もできないだろう。
──ぴろりんぴろりん♪
「あ、レインだ。……うぅ、名残惜しいけど、この猫姉さん大好きホールドを解く時がきてしまった」
「た、助かった」
「お疲れ様、猫娘。……止められず、ごめん」
「い、良いのよ。止めようとしたら、さっきの二の舞いだっただろうし……まなちゃん、本当に人間?」
「……多分」
レインの通知を確認するためにホールドを解いたまなちゃん。
漸く抜け出せた猫娘は、まさに疲労困憊といった様子で、がっくりと床に手を着いていた……途中から割と本気で抵抗していたのに、一ミリも抜け出せなかった。
やはり、まなちゃん。やはり、まなちゃんであった。
「何々、あかりちゃんからで……ふぇっ!? 蒼馬と大翔君が行方不明!?」
「どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたも! 友達が兄弟して行方不明になってるみたいなの! 電池組ってアイドルのコンサートに行ったきり連絡がつかn」
『緊急速報です。……こちら中央ドーム前です、今夜電池組のコンサートが行われておりましたが、現在会場内にいます、およそ五万人の観客とまったく連絡が取れない状態が続いています警察関係者の話によりますと、すべての入り口が中から封鎖されており、会場内に入ることができないとのことで、目下ほかに入場手段がないか、建設会社に確認中とのことです』
「……そういうことみたいなの!」
セリフ遮られてもまなちゃんめげません。……顔真っ赤でプルプルしてても、めげません。まなちゃんは強い子なのです。
「これは明らかに人の手による手口ではないのぉ」
「何やら嫌な予感がします。……父さん、取り敢えず現場に向かいましょう」
「鬼太郎、私も一緒に行くよ!」
「まな、危ないから此処にいるんだ」
「私も一緒に行くよ!」
「いや、だから」
「私も一緒に行くよ!」
「まn」
「一緒にッ! 行くよッ!(目がキラキラ)」
「……はい」
「鬼太郎」
「何も、何も言わないでくれ、猫娘」
まなちゃんには勝てなかったよ、というか無理だったよ。言論の自由なんて何処にも無かったんだよ。
「大丈夫、分かってる、分かってるから」
「ボクは、無力だ」
優しく頭を撫でるその手が、今は何より有り難かった。
「此処があの妖怪のハウスね!」
「ちょっとまな、声が大きいわよ」
「本当に元気が良い子じゃのぉ」
「此処まで来ると異常だと思うのは、ボクだけでしょうか?」
まなちゃんがパパさんの部屋のパソコンから盗み出した設計図により、塞がれている入り口以外の場所から侵入することに成功した鬼太郎御一行。
まなちゃんだけ無駄にテンションが高い。いや、今なおテンションが上昇している。……まなちゃん、今生二度目の妖怪退治である。
妖怪退治なんて、普通に生きているだけでは絶対に体験できない。これにテンションが上がらない乙女がいるだろうか、いや、いない(強調線)!
「で、入り口の前でウロウロしてたってことは、今回の騒動、またお前が仕組んだんだなネズミ男」
「へ、へへへ、いやー俺はちょっと手伝ってただけなのよーイデデデデデ!?」
「あんたのせいで皆困ってんのよ! ちょっとは反省しなさい!」
「み、耳がちぎれるぅぅぅ!?」
絶叫しているのは、我らの守銭奴。三度の飯よりお金が大好き、ネズミ男である。
入口前でせっせとバリケードを作っていたネズミ男は、あっけなく鬼太郎達に捕獲されたのである。……その際、猫娘によって行われた制裁は、目も当てられぬ恐ろしさだったと此処に記載しておく。
「へぇー鬼太郎のお仲間さんなんだぁ」
「なんだ、この娘っ子は」
「あ、私犬山まなって言います! 友人の兄弟が行方不明なので、原因の妖怪を退治しにきました!」
「それはどうもご丁寧に……」
「主にグーで殴ります!」
「おい、鬼太郎、この娘っ子、何かヤベェぞ、俺のヒゲがビンビン反応してやがる」
「ちょっと元気過ぎるだけなんだ。……多分」
笑顔で拳を構えたまなちゃんに恐怖するネズミ男。……え、何でそんな笑顔で殴るって言うの? 下手に可愛いせいで、余計に恐いんですがそれは。
「シュッ! シュッ! シュッ! こう見えて、運動得意なんです!」
「ひと呼吸の間に13発のジャブッ!?」
通称『フラッシュ』とか言われていたりするとか何とか。
空気を切り裂く、まなちゃんの拳がその威力を物語っている。……コレで殴られたら、例え妖怪でもただでは済まないだろう。まなちゃん恐ろしい。
「……鬼太郎、今回はマジで俺が悪かったぜ」
「今度からはもっと迷惑掛けないようにしような」
「分かった。……ま、まだ死にたくねぇ」
ネズミ男の恐怖リストのトップが更新された瞬間だった。ちなみに元トップは猫娘だったりする。
「ん?……ちょうどいいところに来たな」
そんなやり取りをしているうちに、見上げ入道の元へと辿り着いた。……すでに見上げ入道は巨大化しており、強力な妖気を身に纏っている。
「見上げ入道! 五万人の人間をどこにやったんだ!」
「全員、霊界送りにしてやったわ!」
天を指差して言った。
「五万人も行方不明になって、大騒ぎになっているんだぞ、皆を返すんだ!」
「年間八万人が行方不明になっておる。なのに、誰も騒いでおらんではないか。……今更、五万人消えた程度で誰も、人間は誰も他人のことなど気にしないのだ」
「それは、間違っているぞ見上げ入道。必ず誰かが気に掛けている。……それが人間ってものなんだ」
「ちなみに、私は鬼太郎たちの事を気に掛けています!」
「まな、今大事なところだから黙ってて、ね」
「もがもが」
後ろで何やら騒いでいるが、鬼太郎は今良いことを言った。……まなちゃんぇ。
「こほんっ、見上げ入道……そんなたくさんの魂で何を企んでいる?」
「全部で四万九千九百九十六だ。後四人で五万……五万の魂を霊界に送れば、わしは無限の力を手に入れ、日本に君臨することができる!」
そう、見上げ入道の恐るべき目的とは、霊界に五万人の魂を捧げることで、無限の力を手に入れること。……そうなってしまえば、誰も見上げ入道を止めることなど出来はしない。
「後少しで満願成就というところで、お前たちが来てくれたというわけだ。……スゥー──カァーッ!」
「ッ!?」
空気を吸い込み、それを圧縮して放つ。
放たれた空気が地面に着弾し、コンクリートを吹き飛ばす。……当たったら一溜まりもないだろう。
「気をつけろ鬼太郎、見上げ入道は空気を自由に操れるのじゃ!」
「カァーッ!」
「指でっぽう! 乱れ打ちっ!」
連続して放たれる不可視の空気弾が、鬼太郎を襲う!
それに対抗して、鬼太郎が繰り出したのは、指でっぽうの乱射である。貯めがないぶん、通常の指でっぽうには大きく威力が劣るが、空気の弾を相殺させるくらいの威力はある。
「髪の毛針ッ! リモコン下駄ッ!」
「ぬぅ! 鬱陶しいわ!」
鬼太郎の連続攻撃を、空気弾の連射と、その巨大化した身体で防ぐ。……一番厄介なのは、やはり鬼太郎。
「先ずは厄介な貴様から霊界送りにしてくれるわ! 秘技ッ! 霊界送rぐわぁ!?」
突如として、悲鳴を上げて崩れ落ちる見上げ入道。
「足元が!」
「お留守だよ!」
見れば、足元には猫娘とまなちゃんの姿があった。
猫娘はその猫の本性を顕にすることで発揮される鋭い爪で見上げ入道の足を切り裂き、まなちゃんはその身から溢れている圧倒的なポテンシャルで見上げ入道の足を叩き折った。……明らかにまなちゃんの方がヤバイ。
「ま、待てお主本当に人間か?」
「失礼な! 私はこれでもちゃんとした人間だよ!」
「「……」」
「あ、あれ? 何で皆黙っちゃうの?」
「まな、ちゃんとした人間は妖怪相手にグーで殴るとか言わない」
「そもそも、ちゃんとした人間はこんなところに態々来ないわよ」
「本当に元気の良い子じゃな!」
「あ、あれぇー?」
可愛い顔して首を傾げても駄目なものは駄目である。
「で、どうするんだ見上げ入道?」
「此処まで追い詰められては、最早何もできん潔く負けを認めるわい。……というか、もう人間と関わりたくないぞ」
今日のMVPはまなちゃん、ハッキリ分かんだね。
その後、鬼太郎御一行(主にまなちゃん)によって心を砕かれた見上げ入道は、遠い遠い山奥へと消えていった。……立ち去るときの彼の背中は、余りにも小さかったという。
彼が消えていったと同時に生贄にされた人間たちは元に戻り、集団行方不明による大騒動は幕を閉じたのであった。
事の発端となったネズミ男は、怒られるのを恐れ(主にまなちゃん)、迷惑を掛けた各所へ謝罪に行き、借金全額を返済し、暫くは真っ当に生活しているそうだ。
「あぁ〜今日のキタロニウムが美味しいんなぁ〜」
「鬼太郎も大変ね」
「……ボクが終わったら、次はお前だぞ猫娘」
「用事を思い出したから帰ってもいいかしら?……鬼太郎、手を離してちょうだい」
「……一人だけ逃げるのは許さないぞ」
「ね・こ・ね・ぇ・さ・ん♪」
「ニャアァァァァァ!?」
本日最大の謎は、まなちゃん。まるで何処かの世界線の基地外を思い出させる滅茶苦茶っぷりを見せつけた、まなちゃん。妖怪を殴り飛ばすポテンシャルを披露し、鬼太郎と猫娘の二人を翻弄し続ける、(多分)人間の女の子。
彼女がこれから先、鬼太郎達と何をやらかしていくのか。……それは、誰にも分からない。
かくたのぉ!
書くために一話から見直して、当時の興奮とか色々思い出していた。
そうしたら筆が乗ること乗ること。……やっぱり充電期間とか、そんなのあると思います。長すぎるけど。
博麗伝説の方も続き書いてるけど、ネタをまとめるの難しい。……いっそ、何も考えないで指を動かせば、話も進むのでは?(ボブらしき人の構え)
何やかんや、銀だこのたこ焼きって美味しいよね。明太子チーズとてりまよマジ大好き。……カロリーの暴力ぅ!