それはさておき、皆さまお待たせしました。特にもう書く事ない体育祭はキング・クリムゾンして職場体験編へと入ります。
第12話 ヒーロー名
赤イ――――
アアッ、赤イ――――
眼前に広がるのは何もない、ただ全てが赤く染まった世界だった。
ここはどこだろうか……。
そんな事を思っていたところで空間に異変が生じる。
足元で蠢いている何かは徐々に人の形へと変わった。そしてそれは形を成した瞬間、上半身に当たる部分が突如とはじけ飛んだのだった。
ビチャッ、と生々しい音と共に赤々とした液体がべったりと顔にへばりつく。
キモチワルイ――――
ああっ、ホントウにキモチワルイ――――
そんな感情が渦巻いた瞬間、世界が暗転した――
目をあけると見慣れた光景が眼前に広がる。
ああっ、知っている天井だ――
体育祭の疲れがまだ残っているのだろうか? とても変な夢を見た。
しかし何故だろう?
何故か、とても、どこか懐かしいような感じした。
体育祭の翌週――――その週初めは体育祭の代休として当てられた為、次に登校する事になったのは実に週の半ば――水曜日だった。
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えっ? 前回体育祭の予選が終わったばっかじゃないかって? ぶっちゃけ本戦の流れは原作とほぼ同じで単なる解説回になるだけだからな。そんなもん最初の戦闘訓練だけで十分だ。書ける内容はあるにはあるんだが、正直蛇足にしかならないし少ししたら分かるような内容だし、そもそも本当その先出てこないような奴の為に割く尺が勿体ない。 まあそんなこんなで大した見せ場もない体育祭の事を態々話にする必要も無かったので、さっさと次の話に進むとしよう。
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で、いつものように教室の中に入るとやはり話題は体育祭での周囲からの反応に関する事で持ちきりだった。
やはり全国中継されている事だけあり、皆通学途中に声をかけられてチヤホヤされたようだ。ヒーロー候補生とはいえ、まだ高校一年生。思春期真っ最中だ。そうでなくとも人に称賛されるのは気持ちがいいものだ。浮足立つのも無理はないだろう。
淡々と席に座ると案の定真後ろの上鳴があいさつがてら登校中の事に関して訊ねてきた。
「よっ、金術。お前はどうだったよ?」
「どうだったって何が?」
「とぼけんなって。全国中継された体育祭の後だぜ? 声かけられなかったってのはねぇだろ」
「…………ずっと気配殺してたから誰からも声かけられなかった」
「それはそれで逆にスゲェ!?」
葉隠でも声かけられたのに、と言われたが余計なお世話だと言いたい。
っとまぁそうこうしていたら予鈴が鳴り響き相澤先生が教室に入って来る。その途端先ほどまで騒がしかったのがピタリと止んだ。これはもはや調教なのでは、と疑問すら思うが口に出すと怖いので心の奥に閉まっておこう。
「今日のヒーロー教育学、ちょっと特別だぞ」
と、何やら前置きを出して来た。何かあり気な口ぶりに「小テストか何かか~?」と後ろからビクビクとした小声が漏れ聞こえたのもあり、緊張が増してくるの感じる。が、その内容とは――
「コードネーム名の考案だ」
「「「「「胸ふくらむヤツきたああああ!!」
ヒーロー科らしいといえばらしい割と普通なものだった。
だからみんなそれいつ合わせてるの? 何か仕込んでるの????
まぁそれも相澤先生の眼力ですぐ収まるのだが……。
で。相澤先生の説明曰く、プロヒーローからのドラフト指名に関係するというものだ。
指名が本格化するのは経験を積んだ2年生以降からで、今回のは所謂『試用期間』。将来性への興味であり、それが無くなれば一方的にキャンセルされるらしい。わざわざそんなネガティブなこと言わなくっても……。しかし相手に気に入ってもらえれば関係は継続するという事でもある。お試しだからと言って気を抜いていい理由にはならない。
で、その肝心な指名はというと――――
轟:4,123
爆豪:3,556
常闇:360
飯田:301
上鳴:272
八百万:108
切島:68
麗日:20
瀬呂:14
金術:1
という事になった。
例年はもっとバラけるらしいのだが、No2の息子というネームバリューがある轟と予選から常時大暴れした爆豪に見事に指名が集まってしまっている。よくよく見ると本戦に出た芦戸や青山、緑谷は指名すら入っていない。偏ったからってここまで大きく出るか……と考えていた思考がある一文字により一瞬にして停止を迎えた。
金術:1
なんだろう、見間違いかな? なんか見覚えのある名前が一番下にあるぞぉ。うん、見間違いに違いない。そうだ。もう一度見てみよう。
金術:1
金術:1
金術:1
「ンンンンンンンンンンンンンンンンンンっ!?!?」
なんか指名入ってるううううううううううううううううううううううううううううう!?!?(※大事な事なので合計3回書きました)
「ちょ、金術お前指名入ってんじゃん!?」
「アハハ……ソウダネー、ナンデダロウナ」
後ろから肩を掴まれユラユラと揺らされるが、最早自分自身でも「どうしてこうなった」と言いたい。
やはり他の人間から見ても疑問に思ったのか、芦戸がストレートに「なんで予選落ちの金術に指名入っているんですか」と訊ねる。止めてくれ芦戸、それは俺自身自覚してるからちょっと傷つく。
「本戦はあくまで“個人でアピールする機会を増やせる”ってだけだからな。上位に行けば行くほど注目は集まる。ただし事務所の方針、個性の共通性、その他諸々の理由でヒーローの目に留まれば予選落ちでも十分指名はありえる話だ。現に例年は予選落ちでも指名を受ける者は数名いた。だが先程も言った通り、今年は注目が偏った。その影響で予選落ちからの指名は金術だけだった、って話だ」
なるほど、と周囲は頷く。それでも芦戸と青山はどこか納得していない様子を見せるが……。
で、何でそんな話になったかというと、再来週から1週間の間指名の有無問わずヒーロー事務所のへの研修――所謂職場体験に行くという話だからだ。
体験とはいえ、一時的にヒーロー事務所に身を置きある程度の活動を行う事は予想される。その為に自身のヒーロー名を決める必要があるという事だ。
相澤先生が、仮ではあるが適当な名前は、と言いかけた所でまた教室の扉が開いた。
「適当な名前付けたら地獄を見ちゃうよ!!」
その声の主は、腰まで伸びたロングヘア……。女王様を思わせるボディコン……。そして素肌の上にそのまま着ているだけとしか思えない体系が丸わかりな極薄タイツ……。こんな特徴的なコスチュームする人他にいねぇよ。
「この時の名が世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!!」
体育祭で1年審判を担当したことでお馴染、18禁ヒーロー:ミッドナイト先生だ。
なんで担任でもないこの人が、と思った矢先に「ヒーロー名の査定なんて俺にはできん」とか言っていつもの寝袋に入っていく相澤先生が見えた。だから担任がそんなんでいいのかよ。
でも寝転がる前には、
「将来自分がどうなるか、名付ける事でイメージが固まりそこに近づいてく。それが“名は身体を表す”って事だ」
と大変ありがたい言葉を残して眠りについた。
やっぱ担任は相澤先生以外ありえないは。
で、それから数分が経過したのちに各々が決めたヒーロー名の発表が始まった。
先陣切った青山が英語とフランス語ごっちゃにした名前をだしたり、続く芦戸が某地球外生命体な名前にしようとしたり、梅雨ちゃんが某山梨の王様みたいな名前の会社のマスコットの一人みたいなかわいい名前にしたりと(爆殺というド直球にヒーローとしてアウトな名前を入れようとした爆豪を除いて)終始賑やかな雰囲気に包まれていた。
とはいえ、他人の発表ばかりにうつつを抜かす訳にはいかない。錬錆もまた自身のヒーロー名を思案しなければならない。
もっとも、既にいくつかあった候補2つまでに絞り終えており後は周りの雰囲気を見てどちらにするか決めるだけなのだが……なんか後ろがうるさい。
「上鳴…さっきからウンウンなに唸ってんだ?」
「いや、俺ってこういう考えんの苦手なんだよ……。何も考えてねぇ」
まぁ分からなくもないが候補ぐらい考えておけよ。梅雨ちゃんみたいに子供の頃から決めてる子もいるんだし。
そう呆れていると話を聞いていた耳郎さんが輪に加わって来た。
「じゃあウチがつけてあげようか? “ジャミングウェイ”ってのはどう?」
「おっ、「武器よさらば」のヘミングウェイもじりか!? うん、インテリっぽくってカッケェ!!」
いや、それよりももっと理由になりそうなものがある気が……。
「いやっ、折角強いのに、ブフッ、すぐ…ウェイってなるじゃん…」
「ンンンンwwwwwwwwwwww」
我、予想通り過ぎて腹筋大爆発。
当然お前ふざけんなと上鳴は怒るが、耳郎はそんな事を気にも留めず自分のヒーロー名を発表する為に壇上へ向かっていった。
そんなやり取りの中、上鳴のヒーロー名に関してティンときたものがあったので先の会話を続ける事にした。
「それだったら、“ライトニングウェイブ”なんてのはどうだ?」
「ライトニングって確か稲妻を意味する言葉だろ? 稲妻の波、うん! 俺の個性ともかみ合ってるし、カッケェな」
「いや、それもあるけどお前個性使った後『ウェ~~~~イ…』ってなるだろ? 昔やってたヒーロードラマの主人公の叫び声も『ウェイ』だったし、必殺技に電気を使うからさ。それにチョットひっかけた」
「お前もかぁぁぁぁぁ!!」
上鳴、再び絶叫。
そんな事を他所に元々絞っていたヒーロー名をどれにするか、それが決まった錬錆は壇上へ上がり己のヒーロー名を口にした。
「錬金ヒーロー:ヨルムンガンド! それが俺のヒーロー名……です」
ヨルムンガンド――
北欧神話に登場する巨大な毒蛇。巨狼フェンリル・死の女王ヘラと並び「いずれ世界を滅ぼす」と予言された『世界蛇』と称される大蛇。
その偉大さ故、錬金術のシンボルとされるウロボロスと同一視されている存在の名だ。
「ウロボロス、ってそのまんまなのも味気ないから少し捻りました」
「名前の由来もハッキリしてるし。うん、問題ないわね」
正直言ってNG食らわなくって安心した。由来が由来だけに再考食らうと思っていた。
その後もヒーロー名決めは(再考食らいまくる爆豪を除いて)順調に進んでいき、無事全員の発表が終わった。……緑谷が蔑称である『デク』をヒーロー名にすると言ったときはクラス中が騒然としたが。
で、元々の本題である職場体験に話は戻る。先に発表されたプロヒーローからの指名数だが、指名を受けた者はその中から、指名の無かった者は受け入れ可能な全40の事務所から選択するとの事だ。
で、問題が一つ……
「せんせーい。俺指名一つしかないんですけど、その場合って……」
「無論、自動的にその事務所がお前の職場体験先になる。本来あった体験先決めに使うはずだった時間、合理的に過ごすんだな」
マジか……。
この時、錬錆の心は諦め4割:恐怖6割で占められていた。
唯一錬錆を指名したのは断罪ヒーロー:ブラッドサーティーン。
彼の、師匠の事務所であった。
ブラッドサーティーンは本作オリジナルのヒーローです。
と言っても、私の過去作に出てきたキャラのセルフリメイクですが。