金術錬錆のヒーローアカデミア   作:島村共数、

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もう少し話数かけるのが筋なんでしょうが確実にぐだるので、職業体験編は本話含めてあと2~3話の予定です。

オリジナル展開書くの難しいけど割と楽しいですね。

では本編再開します。


第14話 ヒーローの在り方

 前回の簡単なあらすじ

 職業体験に来たらいきなり実践稽古始める事になりました……

 

 

 

 言われるがままにコスチュームに着替え道場へと足を踏みいれた。

 ちなみに白衣はあらかじめ脱いどいた。だってあれ絶対邪魔になるもん!!多機能性(とカッコよさ)求めてロングコート調の注文したけど、師匠なら先のとこ踏んだりとか絶対してくるし。なので今回は軽装モードである。

 ちなみに師匠はというと元より機能性重視にしているのか上下黒で統一したライダースーツ調のコスチュームに身を包み待ち受けていた。

 軽い準備運動でもしてからでも、と思いきや当の師匠はとんでもない事を言ってきた。

 

「お前がどれだけ成長したかみたいからな……好きに打ち込んでいいぞ」

「いや、好きにって……」

 

 正直に言えば、錬錆は戸惑っていた。

 いや、そりゃまぁ準備運動してからやるもんだと思ってたのにそんな事言われたら驚くのも無理ないが……それ含めてもだ。

 基本錬錆の戦闘スタイルは受けて返すカウンタータイプ。吹っ切れた時という例外を除けば、相手が動いてから行動を起こすタイプである。

 それ故に「好きに打ち込め」と言われてもどこから攻めればいいか判断できないのだ。

 そんな弟子の様相を見逃す程、この師は甘い存在ではなかった。

 

「その迷いが」

 

 言葉を終えるよりも先に身体が動く。

 否、言葉だけを置いて動いていたというのが正しいだろう。

 

「命取りになるぜ――」

 

 次の瞬間には身体が宙を浮いていた。

 その後を追う様に衝撃が全身を駆け巡る。

 気が付いた時には道場の壁際まで飛ばされており、あわや全身を叩きつけられる寸前であった。

 それを目にした師匠はまるで嬉しそうな笑みをこぼした。

 

「なるほど……躱せないと判断するや否や両手でガードしつつ、俺の動きに合わせて半歩下がって威力を軽減したか。前だったらガードだけで精一杯だったが……こいつは関心関心」

(その言い方絶対関心してないだろぉ!?)

「それだけ出来るなら手加減し過ぎは無用だな。こっからは、3割で行くぜ」

(ひぇっ――)

 

 その後はあんまり語りたくない。

 何故かって? 普通にボコられたからだよ!!

 っとまぁ稽古が始まったのが昼前だったのだが、終わった頃には既に日が傾く頃合いになっていたのだ。一応顔とか目立つところは傷にならない程度に加減していたが、それ以外は容赦ない。いや、でも容赦ないと言ってもこれで全力の3割なんだよな……我が師匠恐ろしや。

 まぁそんな感じにボコられ続けたので終わった時には半分延びた状態で道場に倒れ込む羽目になった。

 

「この程度でバテるなんて俺の弟子なのに情けないぞ」

「あんたと……一緒に、スンナや……」

 

 最早声は枯れ、息もまともに続かない。

 こんな時こそ全集中の●吸を、とか言うがそんなん出来るわけがない。

 そもそも初日から6時間ぶっ通し実践稽古とかホント正気の沙汰じゃないわ。

 本来ならばヒーローの活動補助だったり簡単な指導が職場体験の主なのに。馬鹿なの、ウチの師匠は。

 そんな俺を他所に、師匠はというと軽い足取りで道場を出つつケロッとした表情で言葉を続けた。

 

「明日は全日外出予定だからしっかり休んでおけよ。疲れが残ってるから、なんて言い訳はこの業界通用しないからな」

(もし残ったらそりゃあんたの責任だろ!?)

 

 そう叫びたかったが最早叫ぶ元気すら湧いてこない。

 そんななんやかんやで職場体験初日は地獄の様に終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 で、翌日――――

 

「おい……」

「なんだ、錬錆」

「これはどういう事ですか……」

 

 思わず言葉を失う。

 全日外出と言うから遠出したりするのかと思ったら、車で10分という近場。しかも眼前に広がるものに驚きを隠せずにいた。

 何せそれはというと――――

 

「どういう事ってそりゃぁ……孤児院だけど」

(だからなんでだよ)

 

 顔の皮膚半分が吹っ飛んでる強面寄り二枚目にちびっ子がたくさん群がっている。

 ナニコレ……俺は夢でも見ているのだろうか。師匠がこんなに子供に好かれるわけ――

 

「お前いま失礼な事考えたろ」

「イエ、ソンナ事ナイデスヨ」

 

 やっぱ怖えよ、この師匠……。なんで考えてること分かるんだよ。

 

「うちはヒーロー活動で得た報奨の何割かをこの孤児院に寄付してるんだ。で、俺も紫も子供好きだから、こうやってたまに訪ねてチビ共の相手をしてるって訳」

 

 なるほど。しかし師匠が子供好きなのもそうだけど、寄付してるってのは意外だ。

 ――――などと考えていたらノールックで放られたボールが脳天を直撃した。もうこれ以上余計な事は考えないようにしよう。

 

「それよりも錬錆。お前がヒーローになろうとしてる理由、なんだったか?」

「えっ――、そりゃあたすk――――」

「『助けを求める人に手を差し伸べる為』、だったな」

 

 訊いといて自分で答えるなや!?

 てかそれよりなんでこのタイミングでその話題が出てくるのか。

 そう思っていると彼は更にこう続けた。

 

「それは結構。ヒーロー以前に人として立派な思いだ。ヒーローの中にゃ『敵をぶっ飛ばしたいから』『みんなにチヤホヤされたいから』しか考えてない奴もいるしな。でもよ、『子供たちの笑顔を守る』。俺自身が子供好きってのもあるが、そういうの抜きにしてもその思いをヒーローが忘れちゃいけない。俺は思うんだよ」

 

 『子供たちの笑顔を守る』――――その言葉が深く突き刺さる。

 ああっ、そうだ。なんでこんな何でもない言葉が心を震わせるのか。思い出したよ。

 子供の頃にハマっていた、というか現在進行形で続く憧れのヒーローたちの放った台詞の中にこんな言葉があった。『子供たちの夢を守り、希望の光を照らし続ける。それが■■■■■■だ!!』って。

 人助けがしたい、って漠然としか考えていなかったせいで肝心な事を忘れていた。

 

「まぁお前がこれを聞いてどう思うがそれは勝手だ。とりあえず今日の課題は『子供を笑顔にしろ』、それだけって話さ」

 

 そう言うと師匠は一緒に来てた紫さんを残して院長らしき人と一緒に室内に入っていった。

 そこ監督しないのかい、とは思ったが【課題】と言った事を踏まえると一人で何とかして成果を見せろという事なのだろう。幸いパトロールを始めとする戦闘とはかけ離れた内容だ。であればヒーローがわざわざ監督しなくても良いという事なのだろう。

 しかし笑顔、と来たか。

 錬錆は困惑していた。笑顔にしろと言われても既に子供たちは笑いながら野をかけ回っている。あの中に見ず知らずのお兄さんが入っても却って委縮してしまうものだ。

 そもそもここは既に笑顔で溢れている。そこに今更誰かを笑顔にしろと――――と思いかけていた。その時ふと目に入ったのだ。笑顔にあふれた世界の中、ただひとり輪に入らずうつむく少女の存在に。

 

(もしかして――――)

 

 師匠は言った。

 『子供を笑顔にしろ』と。何も”子供たち”とは言っていない。

 まったく、意地の悪い言い方をするものだ。

 それが真意である確証はない。けれど少女の瞳にはどこか放っておけない気を感じる。であればやる事は、やるべき事は、やりたい事は分かっていた――――

 

 

 

 

 わたしは、このせかいがきらいだ――

 ここには【だれかからひつようとされなくなった】ひとたちがあつまる。そういわれた――

 みんなここにいるりゆうはみんなちがったけどみんなはなかがよかった――

 けどわたしはちがった――

 わたしはみんなとなかよくなれなかった――

 わたしがみたもの、みえたものをはなすとげんじつになる――

 いやなみらいがげんじつになる――

 みんなはきみわるがった――

 みんなはわたしをこわがった――

 そうしてわたしはひとりになった――

 だからわたしは、このせかいがきらいだーー

 つねにめにもやがかったような、うすぐらいせかいがきらいだ――

 

 そんな世界に、光が差し込むとすれば――――

 

「こんにちは」

 

 それは一人の少年(ヒーロー)がもたらすのだろう――――

 

 

 

 

「こんにちは」

 

 少し明るめ意識して声をかけてみた。

 が、返答がない。声をかけられた少女はただただこちらをジーっと関心あるのか無いのかよく分からない目で見つめるだけ。

 あれ?自分から声かける事に不慣れ過ぎて声裏返っていたか?

 いやいやいや、そんな事気にしてる暇はない。

 こちらが挙動不審になっては相手に不安を与えてします。そうだKOOLだ、KOOLになれ金術錬錆。こういう時は年長者として余裕あるところを見せなければ。

 

「こんなところで一人、なにしてるのかな?」

 

 しかしへんとうがない。こまった。

 いや、マジで困った!? 自分が出来るうる限りの笑顔を浮かべながら声をかけたのに何の反応もないという成果なしの現状に早くも心が折れかける。あれ、俺ってこんなにメンタル弱かったっけ?

 

「あのぉ……」

「3秒後……」

 

 返答、反応があった!?

 その事実に少し浮かれてしまった。そう、浮かれてしまったのだ。

 そのせいで続く言葉に反応できなかった。

 

「右に避けて」

 

 この子なにを言っているんだ?

 そう頭の中がクエッションマークで埋まりかけたその時、後頭部に地が割れんばかり激痛が走った。

 不意の一撃を受けると頭が割れる様な痛みがするってよく聞くけど本当にそんな痛みが……てか実際割れてるわ!? ちょこっとだけだけど血出てるし。

 

「すみませ~ん。トンカチ落としちゃいました~」

 

 野郎ぶっころしてやる!?

 ――――じゃなくじゃなくて。落ち着け、落ち着け俺。

 いくら相手が気の抜けた誠意のない謝り方をしたとしても俺はヒーロー科の学生だ。そう簡単にキレてしまうのは良くない。そう、大変よろしくない。

 そうだ、こういう時こそ素数を数えるんだ。素数を数えて落ち着こう。1,3,5,7,11,13,17,19,23,29……よっし、これ以上はめんどくせぇ。これで落ち着いたな。(この間僅か0.1秒)

 

「っ~~~~~たく、気を付けろよな!!俺だからよかったけど子供たちに当たったら大事だぞ!!」

 

 いや良くねえけどな!? 本当良くないけどね。

 大事な事だから2回言いました。

 まったく、子供たちが外で遊んでる時に屋根の上で作業してるとはなんとも不用心な職員もいたものだ。

 それよりも――

 

「きみは大丈夫だった?」

 

 問題ないとは思うが、一応確認するのが筋だ。

 落ちてきたものがそのまま彼女に向かっていく、というのも無くは無い。

 まぁそれは直ぐに杞憂であると判明したが。

 

「わたしの事よりじぶんの心配したら?」

 

 この素っ気ない返答で。

 ンンンンンンン、なんかどこかで心当たりあるぞ。この子供らしくない対応は。

 しかしこの程度で狼狽えてはいけない。

 ここは極めて明るく、そして自然に相手に安心感を与える様に笑って答えよう。

 

「心配いらないよ。ヒーロー科の訓練はもっと痛い事あるし、これぐらいヘッチャラさ」

「そっ……」

「……………………」

「……………………」

 

 しまった。会話が続かない。

 あまりの素っ気ない返答にこれ以上言葉が這い出て来ないぞ。

 元々自分自身があまりお喋りじゃない、寧ろなんで上鳴みたいな陽キャといつもつるんでるのか分からないぐらい隠キャだ。

 こういう時どう会話を成り立たせればいいだ、教えてくれ上鳴。――――などと藁にも縋ろうとしていたらある疑問がわいた。

 

「そういえば、なんでさっき物が落ちてくるって分かったの?」

 

 そう思ったときには既に口に出ていた。

 いきなりそんなこと聞かれたものだから彼女もジトっと少し睨むように見つめてくる。

 しまった、またやってしまったか。と思いきやそれは意外な反応となった。

 

「………たから」

「えっ?」

「落ちてくるって、視えたから……」

 

 『視えた』――――

 確かに今そう言った。

 

「それが、君の個性なのか?」

 

 そう聞くと彼女は静かに頷いた――――

 

 

 

 

 

 そこからわたしははなした――――

 わたしの“個性”について――――

 

 わたしの個性は『未来予知』

 よんでじのごとく、っていうのかな? おとながいうにはそうらしい。これからおきる『みらい』をみるちかららしい。

 

 けどわたしはこのちからをうまくつかえない。

 いちねんぐらいまえからきがついたときには“みえるように”なってた。

 けどそれは“すこしあと”のときもあれば、“ずっとさき”のこともある。

 “みえる”のもわたしのみたいときにはみえない。いつもとつぜんやってくる。

 

 それで“みえる”ものはみんな“だれかがきずつく”ところだった。

 それいがいのことが“みえる”こともある。

 だけど“だれかがきずつくところ”がおおかった。

 そのたびにちゅういした。

 いたいことがおきるっていった。

 

 だけどだれもきいてくれなかった。

 だれもみみをかたむけてくれなかった。

 そしてみんな、わたしがみた『未来』とおりになった。

 

 そうしていつからかわたしはきらわれた。

 みんなからきらわれた。

 

 「災いをもたらす悪魔」「疫病神」…………そんなことをいわれた。

 ともだちも、ともだちのママも、ともだちのパパも……

 そして――――わたしのパパとママも…………

 

 そしてわたしはすてられた

 そしてわたしはここにすてられた

 そしてわたしはいま、ここにいる――――

 

 

 

 

 

 彼女の話は壮絶の一言に尽きるのだろう……。

 未来を見る個性を持ってしまったが故に周囲から蔑まされる。

 異形型個性に対する偏見、というのは授業でも聞いた事はある。しかし未来を見てそれが現実に起こるからという理由でそこまでとは……。

 

 しかしだ。

 なぜ彼女が初対面の俺にここまで話してくれたかは分からない。

 いくら自分より大人でありヒーロー候補生とはいえ、俺は一介の学生だ。師匠やここの院長程の人生経験は積んでない。誰かを導くような力も頭も持ち合わせていないものだ。

 もしからしたら直感的に俺にシンパシーを感じたのだろうか? であれば理由は何となく納得できる。

 だとしたらそれは――――?

 

 なんだ今のは? なんなのだろうか、この違和感は?

 今、俺は何で“シンパシー”などという言葉が出たのだろう? いくら中学時代周囲から蔑まされたからといって、彼女ほどでは……。

 

 いや、今はそんな疑問どうでもいい。

 今やるべき事、俺のやりたい事は分かっている。

 この子を笑顔にする。

 その為に今俺はここにいる。それだけを考えればいい話だ。

 それに、たかが未来が見えるだけで女の子を泣かせていい理由にはならない。

 だからここからは、俺のターンだ。

 

「けどさ、それってすごい個性じゃん」

 

 そういうと彼女はきょとんとした。

 まぁそりゃそうだ。これまで自分を否定されてきた個性(もの)をおそらく生まれて初めて肯定されたのだから。

 

「……どうして?」

「だってさ、未来が視えるだろ? って事は誰かを危険から救えるって事だろ?」

「でも……」

「『誰も聞いてくれない、みんな無視する』。確かにそうだろう。君はまだ幼い。だから幼子の戯言、って真剣に捉えないだろうさ」

「…………」

「でも俺から言わせれば、未来が視える君の言葉を真に受けた連中が悪い!! ただそれだけだ」

「でも、みえたものは……」

「そもそもそこが間違っている。君の個性は視えた未来が現実に起こる【未来予知】じゃない。これから起きる未来の可能性を視る【未来視】だよ」

 

「さっきも言ったけどさ、きっと今まで誰も君のいう事を聞かなかった。だから君自身も誤解していたんだ。けど違う。未来ってのは常に変わっていくものなんだよ。あくまで君が視た光景は可能性の一つでしかない。それだけなんだよ」

「おにい……」

 

 彼女が顔を上げようとした時、かすかな異変が起こる。

 まるで怖い夢を見た、そんな引き攣った顔だ。

 それだけ見れば、今の俺には十分だった。

 

「お兄ちゃん、よけ――――」

 

 言い終わるよりも先に身体が動いた。

 頭の上に落ちてこようとしたそれは、地から急激に生えた植物の蔦に貫かれ空中で制止する。

 串刺刑(カズィクル・ベイ)――――少しばかり安直すぎるネーミングだが、これ以上に似合う技名は無い。植物の種を個性である錬金術で異常発達させ操り、対象を貫く技。少し殺傷性が高いのが難だが、飛び道具の足止めには石壁と並びぴったりな技だ。

 技の紹介はここまでにしておいて――――っと。

 

「何が視えた?」

「お兄ちゃんの頭に、ハンマーが落ちてくるところ……」

「けど今は?」

「落ちてこない……」

 

 こういうのをご都合主義とでもいうのだろうか?

 まさかこうも証明したい事がやって来るとは思わなかった。

 けど言える。だからこそ伝えられる。

 

「ほら、未来は変わっただろ?」

 

 なんでもない、ただただありふれたこの言葉を。

 

「でもなんで……」

「なんで分かったかって? そんなのさっきの話を聞いた以上、君の眼を見れば分かったさ」

 

 そう言い終えると彼女の眼には涙が溢れ出していた。

 諦めていた。ずっと諦めていた事を覆してくれた。それが嬉しかったのだろう。

 そんなこの子をあやすように優しく頭をなでつつ、もう片方の手で小石を拾い上げた。

 女の子の顔が涙だけってのは御免だ。

 だから、今できる精一杯のものを錬成した。

 

「女の子はいつも笑顔でいなきゃだよ」

 

 小さな花を錬成し彼女に手渡す。

 涙は止まらない。

 けど、その顔は笑顔で溢れていた。

 

 

 

 

 

「上手くやったな、あいつ」

「ええっ、そのようね」

 

 二人の様子を夜上夫妻は静かに見守っていた。

 暫しの静寂の後、不意に翔が心の内に秘めた本音を零した。

 

「俺はな、錬錆(アイツ)がヒーローになるっては反対だったんだ」

「あら、意外ね? かれこれ5年は面倒見てるのに」

「…………そうだな」

 

 いつもに比べてどうも潮らしい。

 その心中に秘める思いは当事者にしか分かりえない事だろう。

 

「あんな風に子供の世話して、敵と縁も所縁もない平穏な生活……。そんな未来を俺は願っていた。それがアイツ自身の幸せでもあるって……」

「それで予定になかった訪問を?」

「ああっ……」

 

 錬錆が笑顔にした少女、未来(みき)はこの孤児院に来ていたい一度も笑ったことが無い少女だった。

 彼女の来歴はあらかじめ知ってたが故に、翔は敢えて錬錆と鉢合わせになるよう仕組んでいたのだ。良くも悪くもお互いに影響を受けるだろう。その思惑は見事功を成したようだ。

 

「このままヒーローになるのも諦めてくれりゃいいんだがな」

「あの子が諦めが悪いの、貴方も知ってるでしょ?」

「そうだけど……」

「そんなになってほしくないなら弟子に取らなければよかったじゃない」

「…………それは出来なかった。あの時、俺は間に合わなかった。それが原因でアイツの人生を狂わせたようなもんだ。それが負い目になってんのか分かんねぇが……アイツが決めた事を頭ごなしに否定できなくなった……。ヒーローになる事が辛い事だって、分かってんのによ」

 

 そこから先は何も言えなかった。

 おそらく言葉に詰まったのだろう。これ以上は夫自身も筆舌しがたい感情が渦巻いていたのだろう。

 紫はその事を誰よりも理解していた。

 

「今は見守りましょう。それが私達大人にできることよ」

「ああっ、そうだな……」

 

 




やりやがったデップー……
(ネタバレ:Extra epにデップー出します)
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