金術錬錆のヒーローアカデミア   作:島村共数、

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今回からUSJ編


USJ編
第7話 だいたい分かった


 雄英に入学してから一週間が経った。

 カリキュラムが普通科に比べ一限多い故に忙しい事を予想していたヒーロー科だったが、最初の一日に度肝を抜かれた所為か割と普通に感じてしまう。いや、むしろ授業が云々というよりクラスメートの顔と名前と個性を一致させるのに割と神経を割いていた。人の顔と名前を覚えないとよく親から言われるが、全くその通り。否定するつもりはない。だが自分を含め、僅か20人のクラス。小中時代に比べ少人数規模の為、それを直ぐに覚えないというのは問題だ。なので割と細心の注意を払ってこの一週間をやり過ごした。そうして19人分の顔と名前を一致させる事に成功したのは割と偉業だと思う。

 そしてその日はやって来た――――

 

 

 

「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、そしてもう一人の三人体制で見る事になった」

 

 なった、という言葉に若干引っ掛かりを感じる。だが平常時において気になった事でも秒で忘れるレベルの気持ちの切り替え速度を誇る錬錆にとっては直ぐにどうでもいい事に変換された。

 

「今日君たちに学んでもらう内容は、災害水難なんでもござれ。人命救助(レスキュー)訓練だ」

 

 相澤先生は『RESCUE』と書かれたプレート掲げてそう述べた。前回のオールマイトの時と言い、どこでそんなプレート売ってるんだろう、と非常にどうでもいい事に関心が寄せられた。そんな余りにもくだらない事を考えている傍ら、他の皆は未知の経験への興味に湧き上がっていた。

 

「レスキュー……今回も大変そうだな」

「バカおめー、これこそヒーローの本文だぜ!? 鳴るぜ!! 腕が!!」

「水難なら私の独壇場ケロケロ」

「おい、まだ途中」

 

 相澤先生の注意で一斉に静まり返る。まだ一週間しか経っていないのにこの統一性……随分躾けられたされたもんだ(まぁその方が授業も円滑に進むので、そういう先生であればあるほどありがたいものは無い)。

 

「今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を制限するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上、準備開始」

 

 

 

 

 

 で、ここから閑話休題――

 

「こういうタイプだったか、くそう!!!」

「イミなかったなー」

 

 現在バス移動中……

 バスに乗る前に、スムーズに乗り降りが出来るよう席順に整列するよう飯田が指示を出していたが、当のバスは左右に2座席ずつになっているのは後列のみ前方はお互いに向き合う座席配列のタイプだった。張り切っているのはよく分かるが、どうも飯田はそれが空回りするタイプの様だ。投票制を呼び掛けた癖に他人に票入れたように。

 そして移動中やれる事も限られている所為か、車内は自然と雑談タイムへと流れていった。

 

「私、思ったことを何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」

「あ!? ハイ!? 蛙吹さん!!」

「梅雨ちゃんと呼んで。あなたの“個性”、オールマイトに似てる」

 

 おっと、割とみんなが思ってたことに突っ込んだよこの子。

 すると明らかにキョドる緑谷を傍目に話題が個性の方へ移っていった。全身を硬化させる個性の切島はシンプルな増強型個性を羨ましがっているが、緑谷も言う様に“硬化”という性質は対人戦かつ近接戦闘で有利に働く個性だ。また見た目の派手さからか、爆豪と轟にも話題が向かう。途中梅雨ちゃんが「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそ」とつぶやいた時に激しく同意すると同時に(キレるから人気出ないwwwクソワロタwww)と隠キャの如く内心草塗れになった事はここだけの話としておこう。

 そうして周りにキレ散らかしている爆豪を見て、錬錆はある疑問を不意に思い出した。

 

「緑谷、その個性が発現したのっていつだ?」

「えっ?」

 

 しまった、声に出てた――――

 緑谷の個性はご存知の通り、自らの肉体すら破壊する超リスキーパワー。個性というのは何の個性も持たない“無個性”でない限り、例外なく4歳前後までに発現する。もし4歳にあれを発現させていたのなら、この10年以上もの間どうやって生きてきたのか。平時は感じるよりも考えるが主体で、かつ探求心が刺激された錬錆にとっては非常に気になる議題である。

 故に自分の失策に一瞬思考が停止したが、すぐに思ったがままの言葉をつなげた。

 

「いや、あっ、そのさ……爆豪の言ってた無個性って事が引っかかってな。話したくない事だったら無理に聞きはしないけど」

「そ、そんな秘密にする事でもないよ。半年ぐらい前に突然変異的なアレで目覚めて、医学的には無い話じゃないらしいんだけど」

「半年前……なるほど、中学3年の時に……第二次成長期の終わり頃か……。第二次成長期……子供から大人への身体の作り替え……一撃振るうだけで体を壊す程のリスキーパワー……つまり未熟な体であれば命の保証はないって事か……。なら第二次成長で基盤ができた今だからこそ、リスクはあれど使えるように……いや、だがそうなると4歳前後で生える一般理論は……そういうことか……この理論なら一理ある……となるとやはり……ボソボソボソボソ」

「か、金術……」

「なるほど、だいたい分かった」

「分かったのか雷電!?」

「金術な」

 

 上鳴とのテンプレとも言えるやり取りを終え、一息入れてから己が抱いた解答――正確には推測だが――へと言葉をつなげる。

 

「人間の身体は常時100%の力を引き出す事が出来ない構造になっている。理由は単純に【体そのものが100%の負荷に耐えきれない】からだ。だから人間ってのは必ず自分の力を制御するように出来ている。だいたい20~30%ぐらいにな。恐らく緑谷の個性も同じで、【4歳の時に使ったら命の危険が伴う。だから最低限の損傷でする大人の身体――第二次成長期を終えてから発現した。そうなるよう脳が無意識のうちに蓋をしていた】。何事にも例外というのは存在する。だから俺はそう思うだけど……」

「そ、そうだよ! そんなことを言われたよ!」

「なんかすごいね。金術って学者でも目指してるの?」

「学者目指してたらサポート科か経営科に行ってるよ。単に雑学が好きなだけ。今言った人体の力の制御論だって確固たる証明もされてない学説の一つでしかないんだし、あくまで考察レベルだよ」

 

 そう解説を終えると同時に相澤先生がタイミングを見計らったかのように、もうすぐ着くから静かにしろ、と皆に注意した。注意が入るや否や口をそろえて「ハイ!!」と返事を返すと同時に雑談を終了させる辺りクラスの一体性、というか相澤先生の指導力がよく分かる。

 以上、閑話休題――

 

 

 

 

 

 そしてバスを降りたA組一同の目に飛び込んできた光景というのは――

 

「「「「すっげぇーーーー、USJかよっ!?」」」」

 

 水難事故、土砂災害、火事…etc。あらゆる災害・事故を想定した施設がこれでもかと詰まっている。未知の訓練への好奇心も相まって、傍から見ればそれは確かにテーマパークのアトラクションにも思えた。

 

「ここは僕が演習場です。その名も…ウソの災害や事故ルーム(USJ)!!」

((((本当にUSJだった……))))

 

 施設の説明をしながら現れたのはスペースヒーロー『13号』。災害救助などで活躍するヒーローだ。ヒーローオタクな緑谷は勿論の事、麗日も一緒になって興奮している。

 そんな生徒の傍らで相澤先生と13号先生が何やら話し込んでいる。何かあったのかと思っていたら、相澤先生の溜息が聞こえてきた。

 

「仕方ない、始めるか」

「あれ、オールマイトはどうしたんですか?」

「出勤中にトラブルがあったようで、少し遅れるようです」

 

 ヒーロー基礎学(ごごのじゅぎょう)に遅れるとか、そんなんで大丈夫なのかよ新任教師(オールマイト)ェ…。

 実態は知る由もないが、理由だけは鮮明だけにもう相澤先生が不機嫌になっているのがよく分かる。

 

「えー、始める前にお小言を一つ二つ…三つ…四つ…」

((((増える…))))

 

 小言は言えば言うほど増えるものだと言われるが、始まる前から既に増えていく事に生徒一同不安と恐怖に煽られていく。

 

「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性は“ブラックホール”。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」

 

 おっと、ここで緑谷先生お早い解説だ。麗日さんも同意するように激しく首を上下に振っています。

 

「しかし簡単に人を殺せる力です。皆の中にはそういう個性がいるでしょう。この超人社会は個性の使用を資格制にし厳しく規制する事で一見成り立っているようには見えます。しかし一歩間違えれば容易に人を殺せる“行き過ぎた個性”を個々が持っている事を忘れないでください」

(一歩間違えれば…か)

 

 皆が息を飲み清聴する。これは個性に限らない。普段便利と思って使える物でも、使い方を誤れは一瞬にして凶器に変わる。そんな凶器に早変わりする個性を持っている13号先生だからこそ、言葉の重みも変わっている。

 その重みが錬錆の心に深く突き刺さった。

 

「金術、ちょっと顔色悪そうだけど大丈夫?」

「あっ、いや……」

 

 隣に立っていた耳郎の声にハッと我に返る。思い出したくもないばかりは簡単に思い出す事ができる……その事実を呪いながらも、周りを心配させまいと錬錆は平静を保とうとした。

 

「なんでも、ない……」

「そう……ならいいんだけど」

 

 いけないいけないと軽く額を小突き、気持ちを改めて13号先生の話に耳を傾けた。

 

「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めてる可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では心機一転! 人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つけるためあるのではない、助ける為にあるのだと心得て帰って下さいな」

 

 昔読んだヒーローの自伝でもこんな言葉があった。『大いなる力には、大いなる責任が伴う』と。個性を公的に使用可能となるヒーローには、そういう責任が付きまとう。その事を改めて教えられた。

 皆13号先生の言葉に感銘を受けたのか、一斉に拍手が巻き上がる。まぁ感動するのは分かるが、飯田お前はうるさい。

 13号先生もお小言を終えたからか、進行を相澤先生へバトンタッチする。

 

「そんじゃあまずは――」

 

 その時だった――

 それらが襲来したのに13号先生はおろか、相澤先生ですら視認するまでそれが何たるか判断が遅れた。だがこの時、錬錆は殺されそうになった経験があるが故に(・・・・・・・・・・・・・・・・・)、生徒の中で唯一それの出現、発せられる敵意に反応できた。

 

「一塊になって動くな!!」

 

 錬錆の顔が引き攣るのと相澤先生が叫んだのはほぼ同時であった。

 皆は何事かと反応に遅れる。しかしその間にもそれは中央広場に突如として出現した黒モヤの中から蛆のように湧き出てくる。

 

「13号、生徒を守れ! あれは敵だ!!」

「13号にイレイザーヘッドですか…。先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが……」

「やはり先日のはクソ共の仕業だったか」

 

 黒いモヤが一つに収束し人型を形成すると、それはまるで殺意を覆い隠すような丁寧な口調でオールマイトの不在を悟った。その傍らにいた全身に手が括り付けられた気味の悪い男が不機嫌そうにブツブツとつぶやく声が聞こえ。

 

「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…。オールマイト…平和の象徴がいないなんて…、子供を殺せば来るかな?」

 

 殺す…。ころす…。コロス…。殺す…?

 あの敵は確かに、「殺す」と言った。それも爆豪が日常的に使うそれとは異なり、明確な殺意を持った言葉。

 それを聞いた瞬間、錬錆の中で何かがはじけた。幸いだったのは皆の注目が敵に向いていた事だろうか。この時、錬錆の顔は獲物を見つけたと言わんばかりの狂気の入り混じった笑みを浮かべていた。無論、その事に関して錬錆すらも無自覚であったが……。

 

 

 

(ヴィラン)ンン!? バカだろ、ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

「先生、侵入者用センサーは!」

「もちろんありますが…」

「センサーが反応しねぇなら、向こうにそういうこと出来る“個性”がいるってことだな。校舎と離れた隔離空間、そこに少人数が入る時間割……バカだがアホじゃねぇ。これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」

 

 困惑に包まれる状況下で冷静な分析を轟が入れる。

 

「13号避難開始。センサー対策も頭にある(ヴィラン)だ、電波系の“個性”が妨害している可能性もある。上鳴、お前も“個性”で連絡試せ」

「っス!」

 

 明らかに異常事態。所謂デンジャータイムという奴だ。それでも相澤先生はヒーローとしての経験からか、あるいは教師としての責任からか冷静に、的確な指示を送りつつ自らは(ヴィラン)と対峙しようと動き出していた。相澤先生――イレイザーヘッドの主要戦闘スタイルは個性で相手の旨味を消しつつ捕縛布を使い一瞬で仕留める奇襲型。あの数では個性を消す数も限度があるし、一対多はよっぽど当人のスキルが整っていなければ個が圧倒的不利である。その事を知っていてか、緑谷は明らかに狼狽していた。

 しかし相澤先生は――

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん」

 

 ――そう言い残し、単騎突撃を仕掛けた。そこからの戦闘はある種一方的であった。第一波である射撃系の個性の集団は抹消で動きを封じ、動揺が走った隙を突き一瞬で撃破。続く第二波の異形型に対しては攻撃を与える隙すら与えずこちらも一瞬で片を付けた。

 

「すごい…。多対一こそ先生の得意分野だったんだ……ブツブツブツブツ」

「いや、これはむしろ傾向と対策……。旨味も苦味も熟知した上で練られたスタイルなのかもしれない……ボソボソボソボソ」

 

 で、冷静さを取り戻した当の主人公とはというと本家主人公と並んで戦闘の分析に勤しんでいた。

 この一大事にそんなアホみたいな事をしていたので、当然のように飯田から誡められた。もう少し見学したかったが、と命の危険が迫っている中で呑気な事を考える一面を抱えながら皆と合流し避難を開始しようとした。そう、しようとしたその時、眼前を黒い霧によって覆われた。それはあの(ヴィラン)達を此処に転送したと思わしき、あの黒いモヤの本体たる(ヴィラン)だった。

 相澤先生の個性『抹消』の弱点である、使用中でも瞬きをする一瞬だけ個性が解除される――その一瞬のチャンスを利用したのだ。

 

「初めまして、我々は(ヴィラン)連合。僭越ながら…この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに事息絶えていただきたいと思ってのことでして」

 

 丁寧な口調ながらも、それはあまりにも衝撃的で予想外な宣戦布告であった。殺人予告などと言うには生々しい。そりゃヒーロー教育機関に襲撃でも駆けるともなれば何かしらの思惑はあるだろう。だが誰もが認める平和の象徴であり、そして(ヴィラン)にとっては恐怖の象徴であるNo.1ヒーローを殺すなど、まず誰も考えないしやろうともしない事だ。それをこの(ヴィラン)は平然と宣言した。

 例えブラフだとしてもこの現状、ヒーローの卵たちの動きを止めるには十分すぎる言葉だ。

 しかしそれでも物怖じせず立ち向かうものはいる。皆が動けずにいる中、爆豪と切島だけが前へ乗り出し黒モヤのへ攻撃を仕掛ける。だが実態を持たないのか、攻撃が当然のようにすり抜けていく。

 

「危ない危ない……。生徒と言えど、優秀な金の卵……」

「ダメだ、どきなさい。二人とも!」

 

 13号先生が警告した時には全てが遅かった。四方に黒モヤが展開され逃げ道が失われる。そして金術錬錆の視界もまた黒に支配された。

 




もう気づいている方もいるかもしれませんが、タイトルは基本的にその回に出てくる台詞から取っています
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