センゴクの孫   作:はむらび

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冬島の春に

 悪魔の実を食べてから、2年が経過しました。私は今、偉大なる航路の冬島、未来国バルジモアに居ます。原作ではフランキーがバーソロミュー・くまに飛ばされた、世界一の科学者、Dr.ベガパンクの出生地です。あの後、私の能力の都合Dr.ベガパンクと話す機会があり、その後の交渉の末来ることになったのがこの島です。

 

 暖かい風が髪を撫でます。春の風です。この冬島にはありえないはずの春の風は、島に建造されたベガパンクの巨大暖房装置によって賄われているものです。この島には、春が来ていました。

 

 かつて、Dr.ベガパンクが発明好きのベガパンク少年だったころ、彼はこの島を温かくする夢を抱き、それを可能とする機構を考案しました。……ですが、それはできなかった。少年の持つ資金では、少年の持つ技術力では、その機構を実現できなかったのです。

 そして、Dr.ベガパンクが世界一の科学者になっても、それはできませんでした。彼の発明の一端ですら巨額の金を出すものはいくらでもいますし、その技術力は世界最高にまで達していましたが、冬島に春を齎すことはできませんでした。

 

 そう。だから私が呼ばれたのだ。足元から放出された洪水の如き莫大な量の油は、ベガパンクの機構に吸い上げられ、蒸留され、複数種のタンクに送られていく。いくつもの触媒を通して無害化された油は、炉心に吸い上げられ、燃焼する。その熱は、地下パイプを伝って島中に送られていく。そうして、この島は春になる。

 

 当然のことながら、こんなことは私無しではできなかった。ただ、『燃料が足りない』という理由で。

 

 いくらベガパンクが金持ちだとはいえ、それは常識の範囲内の金持ちです。島一つを丸ごと温め続ける燃料など、工面できるわけがありません。それ以前に、仮に無限の金があっても不可能です。ここは偉大なる航路。島と島を移動するだけでも一苦労です。大量の物資の移動などそれこそとんでもない難易度になります。近場に大規模な油田や炭鉱があるわけでもありませんし。それにこの島は年中分厚い流氷に覆われています。砕氷船でなければ出入りも不可能です。そもそもの話、島一つを温める燃料を毎日運んでくることが不可能と言えるのです。

 

 だけど、私は、いや、私のギトギトの実はそれを可能とする。どこにでも移動可能な油田だからね。それに、いくら出しても尽きることのない無限の油田だ。『バルジモアから資源が出てしまえばいい』という単純かつ強引な解決法をとることができます。無限リソース万歳! 

 

 え? 海軍の養成所はどうしたと? 飛び級で卒業してますとも?

 私の頭脳だと軍学校の士官養成コースの筆記はどうにでもなるし、そもそもこの世界で求められる筆記レベルが低いので。

 士官には強さの方が求められる戦乱の世だからね。実技の方はゼファーさんにしこたま怒られたし、戦闘面はまだまだ粗削りではあるけど、まあそれでも卒業レベルには能力抜きで(入学当初から)達してたので強引に抜け出してきました。こっちもまあ、軍学校卒業レベルでそんな高いハードルは課せないってことなんだと思う。

 物理攻撃を無効化する自然系なので最悪体術無くても覇気が使えない相手には無双できるし。覇気か六式のどっちかだけでも覚えたかったんだけど、ゼファーさんですら覇気を覚えたのは34歳と言うし*1、まあ気長に練習するしかないね。

 

 で、Dr.ベガパンクの部下の技術班に採用(ヘッドハンティング)ということに(書類上は)なっており、彼との取引でバルジモアに春を齎し、かわりに石油精製施設が使い放題と。精製された超・高品質ベガパンク印のガソリンや灯油、軽油は流氷の溶けたバルジモアの港から輸出されて利益(原価0なので丸々利益だ)は私とベガパンクさんの懐に半々で入る、と。

 楽な人生すぎて大義を忘れてしまいそうだ。公務員の副業が認められている世界で良かった。

 

 ええ。やることはもう一つあるんですけどね? 

「海軍特殊科学班SSG所属、アスカです。研究所の警備は大丈夫ですか?」「問題ありません」

 そう。Dr.ベガパンクの生家の管理である。若かりし頃のベガパンク少年が考案した、時代を100年200年は先取りした技術の数々。秘匿されているとはいえ、これが悪しき輩に渡っては問題があるので関係者以外は立ち入れないよう海軍が管理していたと。

 しかし、原作で「たかが」懸賞金4400万ベリーのフランキー1人に奪取されていたように、その警備はいささか心もとない。海軍も人材不足なのでそこまで手が回せないということらしいが、私がバルジモアに駐在しているならついでにそちらもやれということになったわけだ。

 

「まあ、そうでもしないと鈍っちゃうしね」施設に立ち入ろうとするゴリラに拳をぶつける。鉄を殴ったような感触が、否。事実この島に跋扈するは、サイボーグアニマル。Dr.ベガパンクが若かりし頃に労働力として作り、野放しにした野生化・機械化生命。あろうことかかつての主人の家にまで侵入してこようとする不届き者たちを修行相手に、今日も私は戦闘技術を磨いていくわけだ。

 

 ゴリラの拳が私の頬をかすめる。血の代わりに黒い油がつぅっと頬に垂れる。本来なら避けるべくもない攻撃だが、これは未来、覇気使いを相手するときのための近接格闘術の練習だ。故に、触手も泥の巨神(タルタロス)も使用を縛っている。

 踏み込み、サイボーグゴリラの顔面に拳を叩き込む。鉄の硬さを感じるが、痛みは一切ない。そのまま殴りぬけると、鉄に覆われた3~4mほどのゴリラの莫大な重量が宙に浮いた。だが、それだけだ。私の拳は、その反動を受け完全に原型を残していない。肩口から噴き出した油が固まり、一瞬後には元に戻る。自然系の隠れた長所だ。自分にかかる衝撃を無視できるが故、相手がどれほど硬くとも『全力で』殴ることができる。*2そして、ゴリラにはさほどダメージが入っていない。鋼鉄で強化された偉大なる航路(グランドライン)の生物に、鍛えているとはいえ14歳の少女の拳でダメージが入るわけないといえばそうなのだが。

 

 

 だから、こうする。

 

 

 イメージするのは、『ゴムゴムのピストル』。もしくは、シャーロット・カタクリの『焼餅』。後ろに引いた腕がちりちりとした熱を帯びる。立ち上がり、襲い来るゴリラを迎え撃つかの如く、力を籠め・籠め・籠め……

 

 そして、発射する。銃砲身(バレル)』!! 

 

 握りしめた拳が、多量の燃料を爆発させた勢いで吹き飛んでいく。それはゴリラの鋼鉄の鳩尾に激突し、そして、そのまま吹き飛ばす。鋼鉄の鎧は凹み、そのままゴリラの体内まで衝撃が送り込まれる。そして、爆弾の如く拳そのものが爆散し、ぎりぎりで残っていたゴリラの意識を刈り取った。

 原作でMr.3のドルドルの実、カタクリのモチモチの実、シーザーのガスガスの実などの可燃物の能力者が『自身の身体を加熱する』ことを(過熱が本来の能力に含まれていないにもかかわらず)行っていたことから思い付き、実際にできてしまった必殺技。燃料の燃焼噴射により遠距離相手にでも全力以上のパンチを叩き込める、文字通りのロケットパンチ。

 

「うん。なんとかなった。これで邪魔者がいなくなったわけだし、今日も入っていいよね?」「はい。問題ありません」

 

 そして、最後の報酬だ。私は、Dr.ベガパンクの部下(関係者)であり、この家の管理を任されている。と、いうことは、「ベガパンクの技術を垣間見る権利を持つ」わけだ。100年~200年先の技術の山の中、ひとかけらですら理解できるものは多くない。だが、それを学び取る。世界を100年進めるためには、これほどに良い学習環境は無いのだから。

*1
逆にコレは遅すぎるとは思うけども

*2
なおこれは我らが麦わらのルフィのゴムゴムの実の長所でもある。衝撃を吸収できるので殴ったときの反作用が無視できるのだ。




なんでこの主人公は3話目にして金策に精を出しているのだろうか
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