センゴクの孫   作:はむらび

6 / 7
これよりFILM STRONG WORLD編です


天空の島メルヴィユ

 桜が散っていた。空には雲一つなく、非常に過ごしやすい天気だ。それもそのはず、ここは雲の上なのだから。

 

 此処はメルヴィユ。空飛ぶ大海賊、金獅子のシキの能力で天空に浮かぶ、偉大なる航路の秘境。中将になった私は、その伝説の大海賊を狩るために此処に居る。

 

「ホント、天気だけなら過ごしやすいんだけど、ね!」小山の如き威容を誇る獅子がそこに居た。獅子は、3つの頭と6つの脚を持ち、その瞳を爛々と赤く輝かせていた。

 

 わたしは、その瞳から目を逸らさない。それは、状況を客観的に描写する限りは、怪物の威迫に懸命に立ち向かう少女に見えるのだろう。だが、実体は違う。獣は、私の()()()の覇気を受けてなお懸命に私に立ち向かおうとしているのだ。

 

(……いやいや、なんなんだよ、この島は)私の覇気がいくら付け焼刃であるとはいえ、なんで野生の獣畜生が覇王色の覇気を普通に耐え、果ては戦力差を理解させられてなお立ち向かおうとしてくるんだよ。明らかに生存本能が欠けている。

 

 答えは分かっているのだが。野生の獣畜生ではなく、金獅子海賊団により遺伝子改造を受けた野生のミュータントだからだ。生存本能すら放棄した、完全に戦うためだけの戦闘生命。《こんなもの》作りやがって。非常に効率的で素晴らしいと思います。私こういうの合理的で大好き。

 

 

 そう。今回の私の目的は2つ。「海軍()()として、空飛ぶ大海賊金獅子のシキを拿捕しインペルダウンに叩き込む」という表の目的と、「人類の発展のために金獅子海賊団の生物改造薬SiQおよびその関連研究成果の奪取を行う」という裏の目的だ。

「だけど、ねぇ……」片手間に数十発の拳を叩き込まれ、改造された魔獅子は白目をむいて失神。直後、肌にめりこんだ幾十の拳の跡が異常赤熱、爆発する。魔獅子はまるでペットボトルロケットの如く「下の島」までコントロール不能の飛行もとい墜落をしていった。

「同じ獅子でも、金獅子はこうはいかないよね」かつて、ロジャー、白ひげ、ビッグ・マムと肩を並べた原初の四皇、金獅子のシキ。原作での描写を見るに老化や両足の切断、頭蓋に突き刺さった舵輪と10年の船腹によるブランクがあり、全盛期の見る影もなく衰えているはずだ。()()()()()()()()()()()()

 

 だから、倒す方法は考えなければならない。例えばそう。原作をなぞってルフィたちと共闘するとか。

 

 と、いうかそれしかない。金獅子のシキは弱点でも突かねば倒せない。しかし弱点が「悪天候や強風で能力の制御が効かなくなる」の一点しかない。そして、私には、というか大抵の人間には、偉大なる航路でどこに悪天候があるかなどわからない。わかるはずもない。台風とか起こすのも無理だしね。

 故に、金獅子のシキを倒すために、麦わらのルフィではなく、泥棒猫ナミこそが必須なのだ。いや、強大な敵を倒すにあたり、(今回のシキを倒すという目的に限っては)信用でき信頼できる戦力であるルフィが居てくれるに越したことはないのだが。

 

 と、いうわけで、「麦わらの一味が金獅子のシキと戦闘になる世界」を意図的に作り上げてみた。いくら尾田栄一郎監修とはいえ、劇場版はパラレルなので起きません! ってことになってたら困るからね。金獅子のシキによる東の海襲撃事件はニュースにもなってるから多分麦わらの一味は(映画通りにいかずとも)金獅子のシキを打倒しに来ると思うが。東の海は麦わらのルフィはじめ数人の出身地である。故郷の危機を見逃すなんてルフィらしくないからね。

 

 具体的には、海軍の艦隊をいくつか差し向けて追い立ててみた。私の部下もそうだし、私の最終目標と同じ方向を向いて協力してくれる海兵だって多い。

 金獅子海賊団のナワバリにさえ侵入させてしまえば、完全に無視されて素通りと言うのはまずありえない。金獅子のシキほど警戒心の強い海賊もそうはいない。どう考えても察知されるし、察知さえされれば大筋は劇場版のルート*1に入るはずだ。

 

 と、いうか、入った。なんでわかったかというと、その場に居合わせていたからだ。そう。私がここに来るための手段。異様なほどの警戒心を誇る金獅子のシキを欺き、天空の島までたどり着いた方法。

 

 それは、当然相手から招き入れてもらうことである。

 

 いやぁ、大変だった。樽の中に入ってサウザンド・サニー号の備蓄に紛れ込み、船の中に載る。途中ウソップに武器庫の樽の中に居るのを見つかったりもしたけど、見聞色の覇気も持たない人間には樽の中に入った私は油にしか見えない。おなかが減ったら食堂に行けば冷蔵庫の中に食ベ物も揃ってたし。鍵付きだろうが液体1滴入るスキマがあれば侵入して食べれるし。なんなら暗証番号が7326*2なのは原作知識から知ってるし。海賊からの盗みは通報できないから実質犯罪じゃないし。見聞色の覇気があるからクルーが近づいてくるのも察知して逃げられるし気づかれることもない。大変だったか?

 よく考えたら別にそうでもなかったです。

 

 で、サニー号と一緒にメルヴィユにきちんと落とされた……までは良かったんだけども、金獅子のシキは私の存在を見聞色の覇気で察知してたらしい。劇場版に覇気の仕様描写が無かったから甘く見てたけど、そらあれほどの海賊が覇気も使えないわけないわな。わたしが海軍だということまではわからなかったようだけど、船の外に樽ごと吹っ飛ばされて今に至る。

 

 で、ここどこ? 

 

 迂闊に「飛ぶ」とおそらく察知されて(気配を消していて察知されるのだ。人間体で近づかれたらまず海賊でない(=麦わらの一味の仲間でないので生かしておく理由がない)のがバレる)シキ直々に撃墜されるし、さもなくばどこに行けばいいのかわからない。

 私は別にゾロみたいな方向音痴じゃないけどさ、そもそもこのメルヴィユ、金獅子のシキが十数個の小さな島を浮かべ集めたものだ。総面積はかなり大きい。しかも島々の位置関係は立体的だから一度下りると飛ばない限り戻れない。飛ぶと察知される。絶望か? 

 

 一応海軍コートは脱いで体内に仕舞った。今の私はデニムジーンズにジャンパー姿で完全に私服だ。街に居てもおかしくない。怪しいところなど「街に居てもおかしくない格好の女が危険地帯に居る」ところくらいで。

 

 まあ、とりあえずご飯でも食べてから考えよう。イメージするのは、濡れ髪のカリブー。体内を底なし沼にして、無限の物体を収納できる能力。底なし沼でない私の場合容積は無限ではない。

 だが、私の身体は油田だ。「油田として存在しうる容積」までならできて当然。具体的には前世における最大の油田の埋蔵量、19兆8000億L。ほぼ無限じゃん。

 

 無い胸の谷間に腕を突っ込む。谷間は黒く波紋を描く。取り出すものは……まあ小鍋と食材と調味料でよかろう。ライオンは島の下まで吹っ飛んでしまったし、そもそも文明人としてネコ科動物を食べるのはちょっと気が引けるのだ。

 

 取り出すものは2つの箱と1つの小型冷凍庫。原油の臭いが付かないための2段構えだ。まずは冷凍庫からバターを1箱取り出し、小麦粉と蜂蜜と砂糖とシナモンシュガーで作った衣で包む。そして溶ける前に加熱した油の入った小鍋に投入。健康に気を使ってオリーブオイルだ。膝の上に小鍋を置くだけで加熱可能なのはサバイバルでは非常に便利だ。だけどそもそもサバイバルなんてしたくないんだよ文明人だぞ? 

 

 で、揚がったものをバットに上げて完成。世界で最もクリエイティブな料理、揚げバターだ。美味しいものは脂肪と糖で出来ている。健康? やだなー、(わたし)(揚げ物)食べて太るわけないじゃん。非常においしいです。

 

 揚げ油まで飲み干した時、私は煙に気付いた。私の調理に伴うソレではない。私は焚火とかしてないからそんな大規模な煙は出さないし。火を扱う改造獣によるものとかでもないはずだ。見聞色の覇気を向ける限り、多分人だ。遠くて誰なのかとか人数はわからなかったが、あちらから近づいてくる動きはわかる。調理の火が見つかって獣から逃げているとかだろうか。

 

 数分後、私はその過ちに気づくことになる。「言ったろサンジ! あっちに人が1人居る(・・・・・・・・・・)って!」「いやすまねェウソップ。疑っちまった。こんな美しいレディがこんな危ない場所に1人で居るんだ、光の速度で飛んでくるべきだった」

 

 見聞色の覇気無しでこの距離から森1つ間に挟んだ私を見渡す規格外の視力を持つ狙撃手ウソップに、この距離を改造獣の根城の森を突っ切って戦闘しながらこの速度で通過できる規格外の脚力を持つ料理人サンジ。

 主人公の仲間であり、圧倒的な能力を持つ男たち。麦わらの一味。そんな男たちを、逢いもせずに過小評価していたことに。

 

 

*1
能力の弱点を潰すため超優秀な航海士であるナミを誘拐・麦わらの一味はナミの心を折るためにあえてメルヴィユに落として目の前で潰そうとする。

*2
ナミ・サンジ・ロビンの誕生日7/3、3/2、2/6より。誕生日を暗証番号にするのやめた方がいいと思う。




考えれば考えるほどシキへの勝ち筋が無い 弱点突かない1対1の正面衝突だと現段階の原作ルフィ(94巻時点)でも勝てるか怪しいのでは?って疑惑すらある
能力の発動規模だって現時点でトップクラスだし……それこそフワフワの実、覚醒してない?
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