スモーカーさんが海軍の命令をまともに聞くようになってたった2年で大佐から中将まで行ってるの見るに、「覇気の使える」「自然系能力者で」「ある程度実績があり」「海軍の意向に表向き従順」が揃ってるアスカちゃんは割と中将まではすぐ行けるんじゃないかなという考え。バルトロメオにあっさりやられる追撃のメイナードとか居るし、新世界で名のある海賊相手してやってけるレベルなら全員中将なれるんじゃないかなぁ
「言ったろサンジ!
そこに居たのは、金髪にぐるぐる眉毛の男と、もじゃもじゃの黒髪に長鼻の男。麦わら海賊団のクルー、サンジとウソップだ。
「ところでよ。なんか変な臭いしねェか?」「変な臭いなんかじゃねェ。甘くて刺激的なレディの匂いだ」
あー、うん。やっぱ臭うか。さっきまで戦ってたもんな。人間体に戻れば体から石油の匂いは出なくなる。だけど、気化しちゃったものはもうどうにもならないし……
「ところでレディ、お名前を聞くのをすっかり忘れていた」「あー、名前ね。アスカ。ただのアスカだ」「麗しい名前だ。
そう。そのまさか。1週間前とは……
「そうだ。このアスカちゃんはウチの船に乗っていた」「
石油臭で気付かれたってことか。でも言い方がちょっと気持ち悪いです。
「で、アスカちゃん」「なに?」「ウチの船に乗っていた理由を教えてくれないかい? わざわざ海賊旗を掲げてる船に密航するってなると、まぁそれ相応の理由があるんだと思うんだ」
まぁ、そうくるよな。彼らは善人だ。海賊でありながら、海軍である私とは比べ物にならないほどに善良さに満ちている。私が例えば、切羽詰まった理由による密航者だったとしたなら、密航や食べ物をちょろまかしたことくらいは大目に見てくれるだろうし、なんならその切羽詰まった理由まで解決してくれたりするだろう。
だけど、私にはそれ相応の理由がない。海賊と敵対する海軍だ。密航もちょろまかしもまず許されない。
だけど、なぁ……理由は考えてなかったからなぁ……
「いや、言えない理由なら無理には聞かない」「お、おいサンジ! コイツが危ない奴とかだったらどうすんだ!」レディファーストのサンジに、警戒心の強く勘の鋭い男、ウソップ。「レディは危険なほど魅力があるものさ」今回はウソップが正解かな。
「理由は言えない。だけど、目的は教えておいた方がいいかな。《金獅子のシキを倒す》。それが私の目的だよ」
「「ッッ!」」
私が海軍であることは言えないが、私が海軍としてやろうとしていることは彼らの目的と合致する。共闘の構図だけは最初から作っておきたい。最後の最後に金獅子のシキの身柄さえ確保できれば良いのだ。
「実は、おれ達もアイツを倒そうとしてるんだ。それは、おれ達に任せておくことはできない事情なのか?」サンジが問う。
おそらく彼の中では復讐譚の図式が成立しているのだろう。できればレディを危険にさらしたくはないが、レディが戦い自分の手でケリをつけるならそれを尊重しようとする。レディファーストの鑑のような男だ。いや、まぁ、別に私が手を出さずに何とかしてくれるならそれでもいいんだけどさ。
「無理だね。戦力が足りない」「おいおい、このウソップ様が居る麦わらの一味で戦力が足りないって?」
ウソップが驚く。否。それも嘘であろう。彼は名前ほど嘘をつく人間ではない。だが、軽口を叩いている間も敵の戦力を的確に分析し、その戦力差に怯えることができる、賢く臆病な男だ。だけど、今回ばかりは戦力分析が甘い。
「ああ。足りない。そもそも、麦わらの一味が全員束になってきても、まず間違いなく私一人にも勝てない」「おいおいそりゃいくらなんでも」直後、咆哮! 餌の匂いを嗅ぎつける改造猛獣が、こちらを認識したのだ。迂闊に立ち話もできない魔境。それが金獅子のシキの根城、メルヴィユ。
それは六脚の虎であった。「やべっ」サンジとウソップは気付いていなかったようだ。まぁ、いくら嗅覚や視力があっても私に対して警戒心を向けてる状況で見聞色が使えないとなるとね。私? 気づいてたよ?見聞色の覇気って便利ね。
そう。気づいていたうえで、遠隔のガス制御で刺激臭を鼻に叩き込み、意図的にこの段階で叩き起こす。そして、叩き潰すことである程度の戦力を見せつける。
話を手短に進めるためのマッチポンプ。
手を出す必要もない。足を出す必要もない。振り向く必要さえ存在しない。『
実際のところ、泥の巨神を動かしているのは私だし、猛獣の位置の認識のために見聞色を強めに使っているし、果ては(同じ黒だから一見してわかりづらいが)巨神の腕には武装硬化さえ全力でかけている。本来私のギトギトの実は破壊力が低め(自然系の中での比較)だからこういう小手先の技術に頼らねばならないのだ。割と疲れる。
だが、彼らの目にはそうは映らない。麦わらの一味全員を相手して勝ちうる強大な存在に見えてもらわねば困る。
……実際勝てるのだが、それは単に自然系の防御性能によるものだ。ギトギトの実の能力者たる私への有効打は武装色の覇気を帯びた攻撃、海楼石による攻撃、もしくは炎のみ。
麦わらの一味全員が覇気を知らず習得もしていない前半の海編において、彼らから私への有効打はサンジの悪魔風脚とウソップの火薬星、フランキーのフレッシュ・ファイアとその派生技しかない。で、サンジは女である私を蹴れない。そのためまず彼らには勝ち目がないが、それは誇れるものかと言われると悩む。多分誇れないと思う。
それでも、私は強きものである必要がある。仲間を取り戻そうとする麦わらの一味に、組むことによる絶大なメリットを見せつけねばならない。
「だけど、それでも
「わかった」
「おい待てよ! コイツがどんな奴で何を考えてるかわからないのに組むのかよ!? しかも俺たちが束になっても敵わない相手が? 戦って勝率が3割!? シキって奴はどんだけ強ェんだよ!? ここはもう少し考えてだな……」
「考えてる時間なんてねェよ。ナミさんが捕まってんだ。仮にいくら勝率が低かろうと、逃げるって選択肢はねェ」
「わーったよ! やりゃいいんだろ!? この勇敢な海の戦士にして、8000人の部下のいる大海賊ウソップ様が味方に」
「そういえばシキにも3000人の部下が居るけど……8000人か。正面から轢き潰せるね」
「すんません嘘つきました」
「で、こっからどうするんだ?」
「ナミさんを助けるため今すぐ突撃……と行きてぇところだが、どう考えても戦力が足りねェ。少なくともルフィとクソマリモとは合流しとくべきだ」
「と、なると当然この島は出た方がいいね。この島に他に人がいる感じはしなかったし、今後この島にやってくるのを待つってのも流石に気長すぎる。人がいる村とか君たちの船とか、あるいはいっそのことシキの集めた海賊たちの中に紛れ込むとか。ある程度目印になる場所に行くしかない」
「おいおいおいちょっと待て! この島を離れるって
そう。ここは天空に浮かぶ島の集合体、メルヴィユ。シキとその仲間はフワフワの能力で船でも浮かべればどこにでも行けるから橋を架ける必要などなく、間にあるべき海が無いから強引に泳いで渡ることもできない。いや、私は悪魔の実の能力者だから海があっても泳いで渡るのは無理なんだけどね?
だから……方法は1つしかない。
「下りるしかないでしょ」「は?」「え゛」
突如、大地が傾いた。私たちの立っていた場所は、そもそもが断崖絶壁の上だ。先ほどの泥の巨神の一撃でその崖と島の間に亀裂を入れた。島本体が浮いているとはいえ、島と離れてしまえばフワフワの能力による浮遊も切れ、地面ごと垂直落下だ。
だって、これしかないのだ。私のギトギトの実による飛行は燃焼ガスの大量噴出により速度を出している。つまり、発光する。夜であればガッツリ目視可能だし、昼であっても天候に気を配り望遠鏡などで監視を続けるシキたちには容易に捕捉される。異常現象だからね。だから、取りうる手段は怪しまれない自然落下のみ。
でも、今から降りるからお前たちも落ちてくれと言って初見のウソップとサンジが聞いてくれるわけないし、とりあえず一緒に落とすしかない。そのためには、地面ごと叩き落すのが一番早い。
原作映画でも彼らは改造幻獣による環境破壊で地面ごと落下してたからね。つまり、この島における島の一部の落下は
……落ちるのが遅いな。『
「まぁ、大丈夫だと思うけど、死なないように気を付けてね」「「んなアホなぁぁぁァァ!」」
大丈夫だって。下は湖だし、原作映画でも割とすぐ復帰してたから。
……あれ? 下は湖? 能力で飛行したら捕捉される? 私は能力者だから湖に落ちたらまず死? あれれ? 一番不味いの、まさか私じゃない?
『
自然系能力による人型の操作は今のところメタメタの実(ドラマティックステージ限定の海軍中将グレイドルの能力・液体金属人間)でしか行われていない上人間サイズですが、ドクドクの実が