騒動喫茶ユニオンリバー The novel 異端たる双眸 作:級長
GBNにおけるギルド的なもの。大きな拠点、フォースネストを構えることが出来るなどフォースに入る恩恵は大きい。
「うん、こんな感じかな……」
陽歌はプラネッツシステムを集め、それを組み替えてコアガンダムをカスタムしていた。アースリィがベースだが、脚部と肩部はジュピターヴ、両腕にはマーズフォーのクロー、バックパックはマーズフォーをベースに二本の剣をジュピターヴのスラスターへ換装している。ライフルもガトリングへ変更した。
「ほう、そうなったか」
七耶はそろそろ陽歌がオリジナルの機体を持つ頃だと考え、カスタマイズを薦めた。一応、それなりにミッションは熟していたので「こうした方が戦い易い」という考えはあった。
「でももうちょっと念入りにデータ集めた方がよかったかな……? 半ば八つ当たり的に暴れてたし」
「何も意識してない時の方が素が出るんだよ。これでやってみてダメならまた組み替えればいいし」
陽歌は悩んでいた時期にそれを振り切ろうとひたすらミッションをしていた。その際に感じたことなので正確性に不安はあったが、七耶に言わせればそれでいいらしい。
シールドは思ったより使わなかった。癖なのか、シールドで防ぐよりも回避を優先してしまう。そのため、全体的に機動力重視のカスタムになった。銃も単発では当てにくいので連射出来るガトリングへ変更。クローと大剣はもしもの備えだ。サーベルがあるので格闘戦には困らないだろうが、ビームが通じない環境や相手はいる。
「しかしガンプラが手に入りにくい時期にわざわざ取り置いてもらってありがとうございます。店長さんも……」
最近は妙にガンプラが手に入りにくく、このプラネッツシステム一式もおもちゃのポッポで取り置いてもらったものを購入した。ビルドダイバーズリライズが年明けから人気沸騰なのだ。
「ガンプラが手に入りにくい、ってのがそもそも異常なんだよ。それに転売屋に渡るより作ってもらえる奴に買ってもらえた方がいい」
陽歌は詳しくないが、長らくガンプラと付き合っている七耶にすれば今の状況がおかしいのだ。ガンプラは余程のものでなければいつでも好きなものが手に入る。
「んじゃ、とりあえずやってこい!」
「うん、やってみる」
あとはデータを取って修正するだけ。早速陽歌はGBNへダイブした。
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パーシヴァルはGBNの古参ダイバーでもある。そんな彼には、GBNでも思い出が多い。テルティウムを初めて組んだ時、ルイと一緒に試験飛行をした。彼女をコクピットに乗せ、共に架空の空を飛ぶ。この世界が空想の産物でも、ここで積み上げた想いや記憶は本物だ。
「テルティウム、とっても速いね」
普段は後方支援の機体に乗っていることが多いルイは興奮しつつも、その高度とスピードに少し脅えていた。
「少しくっついていい?」
「ああ」
パーシヴァルにしがみつき、二人の時間を楽しむ。幼馴染で昔からよく知る間柄の二人は、他人なら躊躇う距離でのふれあいに躊躇がない。
目的地は、丘の上にある教会だ。中世風の街が広がるエリアに小高い丘が一つあり、周囲から隔絶された様に教会が建てられていた。
標準サイズのモビルスーツなら降下する余裕があり、そこにテルティウムを下ろす。この教会はNPDの発言によると、二人きりで訪れた男女は将来必ず結ばれるらしい。教会は特別な外観をしているというわけではない、ごくありふれた煉瓦作りのものだ。
「入らないのか?」
ルイはその入り口で立ち止まる。GBNの建築物は全て入ることが出来る。入口が飾りのオブジェクトは無い。つまりこの教会も入れるはずだ。
「ねぇ」
彼女はあることを切り出した。
「大人になって気持ちが変わらなかったら……まだGBNが続いていたら……またここに来てくれる?」
オンラインゲームはいつか終わるもの。そんな現実を知らない二人の子供は、それよりも遥かに脆い日常さえいつまでも続くと信じて疑わなかった。
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「おまたせ」
GBNのアスクレピオスサーバーロビーではヴィオラがモルジアーナと待っていた。プラネッツシステムの組み立ては手伝ってもらったが、カスタマイズの時間にはヴィオラの話し相手を任せていた。
「新しいコス? 似合ってるじゃない」
ヴィオラは陽歌の新しい服に注目する。心機一転ということで、ミッションで貯めたコインでコスチュームを一新した。ノースリーブの赤い中華ロリータという思い切ったスタイル。普段は義手を隠す為に袖を長くしているため、その反転ということだろう。
「ファッションセンスに自信ないけど……」
ユニオンリバーは女所帯なだけに、男のファッションでは参考になるものがない。外見のこともあり、思い切った決定となった。義手とオッドアイを晒すこと以外に抵抗はない。
「今日は友達に来てもらったんだ」
「前言っていたダイバーさんですね」
試運転のミッションに行くべく、ヴィオラは知り合いを呼んでいた。
「おーい」
「あ、イーグル」
イーグルは彼らに合流する。以前一人でヴィオラがミッションに行った時知り合ったのだ。自分がいない時でもうまくやれているようなので、陽歌は少し安心した。
「ん? というかアスクレピオスって普通に入れたっけ?」
ふと陽歌はアスクレピオスサーバーの特異性を思い出す。ここは普通のダイバーが入れる場所ではない。病院の所有する実験サーバーであり、患者とその関係者のみがアクセスできる。
「ヴィオラとフレコ交換したし、ボランティアで松永病院行ったことあるからアクセス権貰えたんだよ、こいつも一緒にな」
イーグルの傍にはヴェンもいた。予想外の再会に陽歌は驚きを隠せない。
「ヴェンさん!」
「呼び捨てでいいよ。あんだけの経験したならここの世話になってるかなって思ってな。フレコ見せたら通してもらえたぜ。向こうが私らのリアル知ってるってのもあるが」
結構な人数が集まったものである。これならフォース結成も視野に入る。
「なぁ、お前らフォース組んでるか?」
そこでフォースの話を切り出したのはイーグルである。
「入ってないけど」
「うん」
「私も」
全員入っていない。初心者の陽歌とヴィオラはともかく、ヴェンも入ってないのである。
「なんだ、お前入ってないのか?」
「いやお前なんかとっくに入ってるもんだと……」
イーグルとヴェンは長い友人なのか、互いにフォースなど入ったものと思っていた様子。今彼がフォースの話題を出したのは、ある事情がある。このゲームではフォースでなければ味わえない要素が多々ある。それが目前に迫っているということだ。
「今度フォースフェスあるんだけど、それがSDガンダムワールドでな、ぜひ行きてぇんだよ」
「それで」
SDガンダムはダイバーたちの中でも好みが分かれる分野であり、野良で行くにはハードルが高い。案外食わず嫌いなだけな層もいるのだが、硬派ぶってる層は毛嫌いしてそうだなぁと陽歌はぼんやり思っていた。だいたいGガンダムとターンエーを経由すれば何が起きても受け止められるものだが。
「確実に行きたいなら自前でフォース持ってる方がいいかもね。んじゃ、フォースを結成しようか」
イーグルはフォースの恩恵を受けるべく、結成の打診に乗る。ヴィオラや陽歌も賛同した。
「うん」
「そうだね」
こうしてフォース結成の話がまとまる。深雪は既にフォースに入っているので陽歌は誘うことはしなかった。フォース同士の連合も出来るのであまり気にする必要はない。
「名前どうする?」
「四字熟語にしようぜ」
問題は名前決め。ビルドダイバーズとかはまだしも、調査兵団や鬼殺隊なんてフォースは溢れかえっている。オリジナリティがほしいところだ。
「四字熟語だと初期メン固定になりそうな印象じゃね? 滅亡迅雷的な」
「あー……」
色々な案があるのだが、陽歌はロビーに飾られたマークを見る。このサーバーの由来となったアスクレピオス。医神の持つ蛇が巻き付いた杖だ。
「蛇……」
「蛇?」
彼に視線に気づき、ヴィオラはその方を見る。
「ヴァイパースクワッド……」
「え?」
そしてポツリと呟いた名前、それがイーグルのセンスに響いた。
「いいじゃないか、ヴァイパースクワッド」
「え? そんな適当な感じでいいの?」
「こういうのは閃きよ。いいじゃない」
ヴェンも納得する。名前というのは悩めば悩むほど沼。いい名前がぴこんと閃いたところですっぱり決めるのがベストなのだ。
「よし、今から俺達はヴァイパースクワッドだ! サーペントテイルとかスースクみたいでいいなこれ!」
「うん、僕達にぴったり」
陽歌もこのサーバーで出会った仲間達の総称としてヴァイパーは適していると感じた。
「とりあえず当面の目的はどうする?」
「新規フォースがフェスに行くにはある程度実績を積む必要がある。とはいっても少しミッションすればいいんだけどな」
ヴェンがフォースの目標を尋ねる。イーグルによれば少しは活動する必要があるので、簡単なミッションを受けることにした。
「んじゃミッションカウンターだ」
「そうだね」
ミッションカウンターでミッションを選ぶ。せっかくなのでフォース限定ミッションに挑戦したいところである。
「どれにする?」
「えー、そう言われると迷うな……」
「というかまずフォース申請出しません?」
気が急いていて、重要なことを忘れていた。フォースの設立申請を出さねば。モルジアーナに指摘され、やっと気づいた。
「あ、リーダー決めないといけないやつじゃん」
カウンターでヴェンが操作していると、フォースはリーダーを一人選出しないといけないことが判明する。まぁ当然なんだけど。
「これは譲り合いの予感……」
「よし、サイコロで決めよう」
イーグルが互いに譲ることを予想したのでヴェンがトーク番組で使う様な大きなサイコロを取りだす。それも人数分。
「よし行くぞ! 運命のダイスロール!」
「なんだか懐かしいノリ。何が出るかな、何が出るかなっ」
陽歌はこの空気に心地よささえ感じていた。彼の人物像からは想像できない一面にヴィオラは戸惑いつつ安心する。
「よかった、歳相応な部分もあるのね」
ヴィオラがサイコロを転がすと、数字ではなくトークテーマが書かれていた。これなんのサイコロだっけ?
「いや数字じゃないの?」
「あ、今日の当たり目だ」
各々がサイコロでトークテーマを出す中、陽歌が当たり目を出す。
「では当たり目が出たナクトがリーダーってことで。はい当たり目の洗剤」
「このゲームで使う場面ある?」
ヴェンからリーダー任命ついでに箱に入った洗剤のギフトセットを貰ったが、使い道がイマイチ分からない。
「はいヴィオラ、『どうでもいい話』」
「え? どうでもいい話? そうね……なんかここの醤油ラーメンが醤油の味していないとかってよく聞くけど気にならない様な……」
GBNのプログラムでは完璧な味覚の再現には至らず、醤油ラーメンを筆頭に微妙なものがちょくちょくある。飲み物やスナックは改善されていくがGBNでビルドコインを消費してまで醤油ラーメンを食べるダイバーは少ないのか、寄り道要素なこともあり積極的に改善される部分ではない。
「たしかに微妙な感じはあるな。カップ麺やインスタントとも違う、かといってサービスエリアのあの感じでもない……」
「ラーメン屋って気にはならん」
イーグルとヴェンも気にはしていた部分ではある。
「僕は……醤油ラーメンに馴染みがないからぼやけてるのかな基準……」
陽歌はあまりラーメンを食べたことがないので判断に困る状態。
「あ、じゃあ私もそんな感じなのかな。なんかピンと来ないの、ナクトの言う感じな気がする」
記憶を失い、現実へ帰還出来ないヴィオラも状況は似ているといえる。
「ん? 記憶喪失ってエピソード記憶の消失が主なんだけど、意味記憶も消失してるのか?」
「なにそれ?」
イーグルの発した言葉にヴィオラは馴染みが無かった。記憶というのは思い出を指すエピソード記憶、言葉や計算などの知識を指す意味記憶に分かれる。
「ヴィオラは過去にどこかでラーメンを食べた記憶が無くなってると思ってたけど、そうじゃなくて醤油ラーメンという存在自体を忘れている……つまりいくつかの基本的な知識も欠落している?」
陽歌は状況を整理する。一見、単なるエピソード記憶の欠落と思われたが状況は深刻そうだ。
「話してみるとどうでもよくはなかったわね」
「他人の目線は大事だな。んじゃ俺は……」
凄く重要な話だったが、気を取り直してイーグルの出目。モルジアーナは先ほどの話をメモに記録している。
「『美味しい話』。せーの、おいしいぞ!」
「これやるの?」
突如どこぞのリュウソウ族みたいなアピールを始めるイーグルについていけないヴィオラ。
「いや実は関係あってな。最近母ちゃんが俳優目当てにニチアサ見て、そのソーセージとか買ってくるんだよ。ああいうキャラモノってオマケや絵で釣って味は足したことないし値段もほぼ版権料だと馬鹿にしてたさ。がねぇ、いやぁ、これが味わい深かったって感動した」
「実際あの年売り上げ上がったんだよね、さすがリュウソウ族」
キャッチーなフレーズのおかげかはさておき、リュウソウジャーの年は恒例であるタイアップのソーセージが売れたとか。
「んじゃ私だな。『腹の立つ話』。あーこれね」
今度はヴェンの目である。
「最近マナーの悪いダイバーが増えてて、どうもその多くが配信者らしいのよ」
「配信者?」
「ゲームの様子をリアルタイムで撮影して動画投稿サイトに流して、それでお金を貰う連中ね。なんでもGBNが来ているとかの情報を流して炎上系を引き入れてる奴がいるみたい」
陽歌はネットに詳しいとはいえない。ユニオンリバーも生放送はやっているが、音声チャットの様な雰囲気で配信とはまた異なる。
「情報商材を売りに出した時はもう下火ってそれ」
「商材で売ってるってより、なんかたくさんのブログとかで『GBN配信ブーム来てる!』とか言ってるみたい」
「んん?」
陽歌はこの話に違和感を覚えた。この手の商売はブームで一儲けし、それが落ち着いたらブームで儲けていた様子を見ていた人に商売のノウハウを売るというのが転売にしろ基本である。当然、ノウハウを買った頃にはブームの沈静化と参入者の増加で儲けは出ない。売った側の一人勝ちである。だが、今回はタダで情報が配られている様だ。
「妙だな……エヴァリーに調べてもらおう」
陽歌は仲間の協力を得て調査しようと頭の片隅に情報を置いておく。考えてみれば、ブレイクデカール、マナーの悪い配信者、ダークの様なGBNを破壊すると公言する存在と繋がっているようなそうでないようなものが同時多発している。
「んじゃ、ミッションはと……」
一通り用件も済んだので、イーグルはミッションを選ぶ。ミッションはフォース専用のものでランクが低めのコレクトミッション、『爆弾を処理せよ!』。ガンダムAGEキオ編の一幕を再現したものだ。
「んじゃ、行くぞ。まずはフォースネストにっと……」
ミッションを決定したのでイーグルはウインドウを動かし、全員をフォースネストの格納庫へ移動させる。そこには全員の機体が待機していた。改造されたコアガンダムを見上げると、その代わり映えが目覚ましい。
「んじゃ、行こうか。ヴァイパースクワッド、出撃!」
陽歌の号令で全機が発進する。ロビーの入っているタワーから飛び出し、空中に浮かんでいるゲートへ入る。ここからミッションの場所、他のサーバーへと向かうのだ。
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「……架空の世界、虚構の人々、NPD……」
GBNの宇宙空間に、目立つ純白の機体が佇んでいた。デブリ帯に紛れ、まるでこの世界を値踏みする様な視線を向ける。その機体、バルギルはモノアイ越しに宇宙を見つめる。
「これは清算だ。プログラムに心は宿らないと、無知の知を持たぬ愚かな人間……その負債はここにて決済を迎える」
GBNの広大な空間に、一つの陰謀が潜み始めていた。
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「楽勝なんだけど時間制限あると焦るな」
「場所固定だから覚えちゃえばいいんだけど表示されるとね。ヴィオラのおかげ」
イーグルと陽歌はミッションを終え、一息ついていた。ヴィオラがこのミッションを過去にしたことがあり、その記憶を元に手分けしたのでかなりの余裕があった。
「でもこのアーマー、バランスいいじゃん」
「換装するのが大変であんまりコアガンダムの機能を活かせそうにないけど……」
陽歌は義手のため、地味に大変なコアガンダム系の換装ギミックに煩わしさを感じていた。手足はともかく、アーマーの付け外しが大変なのだ。
「ギミックは付けりゃいいってもんじゃない。俺もSDだけどギミックはないしな」
イーグルのジムプリミティブはクロスシルエットの拡張性や共通性を活かしているというだけで、SDガンダムに有りがちなギミック類はない。カスタマイズとはつけるだけでなく引き算も重要なのだ。
「え? 所属不明機?」
話をしているとヴェンの機体センサーに機影が引っ掛かる。難易度の低いミッションではボス機体の乱入はまずありえず、ましてや他のプレイヤーの介入などもってのほか。これは襲撃ミッションではない。
「NPDじゃなくてプレイヤーみたいだけど……」
ガンプラは五機編成。無改造の機体でありまとまりもなく、ガンダムAGEとの関連性も薄いので乱入ボスでないのは確かだ。そもそもヘビーアームズにデスサイズがいてウイングとサンドロックがいない、ユーラヴェンとアルスアースリィが仲良く一緒にいる、締めはインフィニットジャスティスとなんかなんとも言えない組み合わせだ。
『おいおい、新規フォースと聞いたがとんだキッズだぜ』
『二匹がSD、装備の無いコアコアガンダムが一つ、実質二匹だぜ。配信の盛り上がりに欠ける』
敵対ダイバーはそんなことを好き勝手に言う。これが噂のマナー悪い配信者なのか。同時にマナーの悪い初心者でもある様だ。
『少しは盛り上げてくれよ? 俺達の喧嘩凸配信をな! ブレイクブースト!』
ヘビーアームズが初手からブレイクデカールを使用し、小さなミサイルハッチから大量の巨大ミサイルを放つ。本来乱入出来ないはずのミッションに乱入し、攻撃出来ない相手に攻撃する為にもブレイクデカールを使っていると思われる。
「な、素組みのヘビーアームズでこれ?」
陽歌は咄嗟にガトリングと頭部バルカンの掃射で数を減らそうとするが、あまりに数が多い。
「任せろや!」
そこへヴェンが機体を真っすぐに飛ばす。一応大剣で防御しているが、ほぼ直撃だ。
「消し炭になったか……」
ヘビーアームズのダイバーは撃墜を予想したが、煙の中からほぼ無傷の状態で飛び出してくる。
「何?」
そのまま大剣で真っ二つにされ、爆散という悲惨な結果となった。
『ぐわあああ! プレミア価格だぞ? こんな弱いわけ……』
ダイバーは転売屋から高値で買ったから強いと勘違いしていた様だ。ただ残念なことに強ければ高値で取引されるのが基本のカードゲームとは違い、プラモの制作技量を反映するガンプラではそうもいかない。
『クソ、このチート野郎が!』
他のメンバーが慌ててブレイクバーストする。デスサイズは全く姿を消してしまうほどの効果。
『これで終わりだ!』
ユーラヴェンが棒立ちのまま狙撃姿勢に入る。ヴィオラのアルスコアを狙ったがその周囲を陽歌のガンダムが飛びまわり、視界を阻害する。
『邪魔だ!』
集中力を削がれ、苛立つユーラヴェンのダイバー、しかしその隙にプリミティブが接近していた。
「な……」
「バーンナックル!」
プリミティブの拳がユーラヴェンの腰に直撃する。腰パーツやジョイントが分解し、ユーラヴェンは爆発四散。その様を見て、陽歌はふと思う。
「あー、コアガンダムって腰のパーツ外れやすいから補強しないと」
「貴様!」
仲間を即座に二人始末され、インフィニットジャスティスがリフターを背負ったまま強襲をかける。しかし、五人中三人をノーマークにしていたツケというのは重くのしかかった。
「ガンドラゴンイレース!」
以前の陽歌がしたのと同じ、モルジアーナの武装を使用した合体攻撃でインフィニットジャスティスは撃破される。
『ば、バカな……SD如きに!』
SDでもコアガンダムでも一機は一機。同じ作り込みならば出力の面でリアルタイプに劣ることはシステム上ありえない。その二機が合体した攻撃などまともに受ければいくらブレイクデカールの恩恵があっても雑魚同然。せっかくのブレイクデカールも大元のガンプラが弱ければブーストの恩恵は微小。
(こうなれば……俺だけでも!)
透明になっていたはいいが、仲間が瞬殺される様を見て足がすくんでいたデスサイズのダイバー。透明ならまず攻撃されないだろうと思い、攻勢に転じた瞬間であった。
『は?』
なんと迷いなく陽歌のガンダムがビームサーベルを抜いて見えないはずのデスサイズを切り裂いたのだ。彼は幼少期から理不尽な暴力に晒された経験から、敵意や害意に敏感なのだ。故に見えなくてもそこからなんか感じる、くらいのノリで察知が出来る。
『ふざけんなー!』
透明も全く活かせず、闖入者は全滅した。
「これ配信されてたんだろ? ヴァイパースクワッドの初陣にしてはイケてたんじゃないか?」
「あ、そうだった」
ヴェンに言われて配信に気づく陽歌。あの五人が全滅した時点でもう放送画面は切り替わっているだろうが、不意に名前が売れる切っ掛けになりそうだ。
「さて、帰るか」
帰還しようとしたイーグルのコンソールに警告が表示される。モビルスーツを超える大規模な熱源反応だ。
「なんだよ!」
また乱入かと思い、熱源の方を見たイーグルであったが、そこにはなんと勝手に集まる敵の残骸があったではないか。コアガンダムⅡとアルスコアを中心とし、残骸がアーマーとなって装着される。四本脚の巨大なモビルスーツが姿を現したが、パテで無理矢理繋げた様な歪な存在である。
「これは……」
「チートツールの影響か?」
右腕にはガトリング、左腕には一体化した大鎌という異形の化け物。とりあえず陽歌は射撃で様子を見る。ビームガトリングであちこちを撃ってみるも効いてはいるがすぐに再生されてしまう。
「再生? まるでDG細胞みたいな……」
攻撃しても再生されてしまうのでは、倒しようがないのではないか。しかしイーグルとヴェンはその様子を見て即座に飛び掛かる。
「つっても再生する前にやっちまえばいいんだろ、それにコアがあるはずだ! 雲雀!」
「見えたのか、小鷹」
「え?」
聞こえた名前を陽歌が処理するより先に、イーグルが敵に接近する。ガトリングの攻撃を受けて一番再生が早かった場所、それがコアのある場所だ。
「胸部か頭部か、って思ったがこことはな! ひねてやがる」
イーグルが狙いを付けたのは四本脚のうち右後ろ脚。一見すると守りが弱い様に見えるが、頻繁に動く場所かつ再生速度を上げれば攻略されにくいだろう。
「Cランク以上のダイバーに解放される、これが俺の必殺技だ!」
マフラーが赤い帯を描き、全身のフレームに力が流れる。
「ルナティックモード!」
強化された状態で足へのラッシュを仕掛ける。陽歌やヴィオラ達も他の部位を攻撃して再生を遅らせていく。その結果か、コアが隠し切れないほど装甲が削れ、弱点が露出する。
「行くぞ、血の通いし鉄が意思を遂げる……アンサラー!」
大剣が開き、そこから迸るエネルギーの奔流でコアを切り裂く、というより溶断せしめた。中枢を失い、謎の敵は沈黙した。
「これが必殺技……」
二人の必殺連携で敵は倒した。しかし、それからほどなくして敵は目を光らせて再び立ち上がる。
「馬鹿な……再起動だと?」
コアを撃破されたにも関わらず、再生を始める。おそらく新たなコアが出来ているのだろう。これでは打つ手なしだ。
「な、何か変……」
「何かって……これは……」
それに呼応するかの様に、周囲は暗雲が立ち込める。この敵だけではなく、エリア全体に影響が出ているというのか。
「どうする?」
「こりゃいくら倒しても切りないぜ……」
まさかの無限再生。そして必殺技は使い切ってしまった。陽歌とヴィオラはまだ必殺技に目覚めていない。対抗手段はない。
「フルクレストキック!」
その時、見覚えしかない必殺技が敵を呑み込む。光の中に敵は灰塵となって消え、眩さが晴れた時にはチャンピオン、ガロの機体、ガンダムフルクレストのみが存在していた。
「チャンピオン!」
「こんなところに!」
イーグルとヴィオラは突然の再会に驚く。
「おや、奇遇だね。妙な気配を察知してきてみれば……」
ガロは見回りをしていて偶然ここに来た様だ。
「え? お前らチャンピオンと知り合いなの?」
「確かに有名プレイヤーと相互フォローなのは凄い……」
ヴェンと陽歌だけが知らなかったが、彼らは以前、初心者に偽装したガロと出会っていた。
「またバグか……最近は頻度や規模が多い……」
ガロは今日も今日とてバグを追っていた。たしかに前は敵が変異こそしたが、ダイバーのガンプラが融合したあげく無限に再生して天候まで帰るなどその影響は拡大傾向にあると言える。
「ことの仔細は私が記録し、提携企業であるハイムロボティクスへログを送信しています。ご安心を」
モルジアーナはトイボットであり通常のダイバーとは違う。こういう処理もお手の物だ。
「ほう、ハイムロボティクスのトイボットか。よいパートナーを連れているね。オーナーは……」
「私の主は、こちらのナクト殿です」
改めて紹介されると気恥ずかしいというか、主従という感覚ではないので変な気分になる陽歌であった。
「ほう、君はちょうどCランクか。では、メガ粒子杯デルタカイに出るのかね?」
「大会ですか?」
ガロは陽歌に大会の参加を促す。この大会はCランク、及びそれ以上であるが大会出場経験のないダイバーが参加できるルーキー大会となっている。
「いい経験になると思うよ」
「大会……」
これまでの自分なら、絶対に出なかったであろう公式の場。陽歌は自分を変える為に、少しでもあがこうとしていた。
「出てみようかな……」
こうして陽歌の新たな挑戦が始まろうとしていた。
メガ粒子杯デルタカイ
Cランク、及びそれ以上だが大会の参加経験がないダイバーのみが出場できる大会。初出の漫画「ビルドダイバーリゼ」では参加条件がCランク以上となっているが、大会も種類があるので差別化の為にルーキー大会となった。
今年度は新進気鋭のフォース『ライジング』からパーシヴァルが優勝候補となっている。