騒動喫茶ユニオンリバー The novel 異端たる双眸   作:級長

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 運命の五王女

 レジー

 惑星コウグの農村部出身。力が自慢だが王座の重要性の認識はイマイチ。


運命の五王女

 陽歌はかつて自分が残したガンダム紅蓮の縁を辿り、ワープに成功した。いわばこのガンダムがワープ目標を定める楔として機能したのだ。

「あなたは……アクトレスの比良坂夜露さんですね」

「そうっすけど……、これは一体?」

 突如として現れた陽歌に夜露は困惑する。陽歌側は当然、夜露を知っているが逆は違う。アクトレスというのが職業柄、エースとなればメディア露出も増えるので一方的に知られていることも少なくないのだが。

「惑星コウグでクーデターが起きたんです。あなたもその救援で?」

「そうっす」

 目的は一緒と知り、二人で敵に向き合う。

「ヨモツヘグイ!」

 夜露は遠隔兵器、ピジョンを飛ばし、それで五人の敵を囲んで牽制する。アリスギアは人間に向けて撃てないが、それを向こうが知っているとは限らない。ハッタリくらいにはなるだろうか。

「アリスギアはセーフティがあるんだろう。リサーチくらいしてある」

 だが、銀髪の少女は一瞬で周囲のピジョンを掴むと弱点を見抜いてみせた。これは手ごわい、と陽歌が代わりに出ることにした。武器が使えない夜露では戦いようがない。

「ここは僕がやります」

「ふむ、下がれレジー。妙な相手は私がやる」

 銀髪の少女がレジーを退かせる。初見の相手に有利な能力があるということか。

「いいよなー、不死身。危ない仕事し放題だ」

「不死身ですか?」

 敵に不死身の能力があると聞き、夜露は素直に驚く。ただ陽歌は真に受けていなかった。

「おそらく、フカシかと。不死身というのもものの例え!」

 陽歌は切り込む。本当に不死身ということはあるまい。加えて、陽歌は不死身という存在に対抗策がある。

「果敢鳳凰翼!」

「何!」

 不死鳥の様な斬撃を飛ばし、敵に攻撃を仕掛ける陽歌。刀を携えながら遠距離攻撃という初見殺しに敵は対応しきれず、そのまま攻撃を受けてしまう。

「うわあああ!」

「よし」

 ざっくり身体を斬られ、燃え上がりながら敵は転がり、炎を消そうとする。

「き、傷が再生しない……!」

「やっぱ傷が即治るタイプか」

 不死身特攻。転輪を繰り返す都知事、大海菊子を斬り、その繰り返しを断ち切った陽歌に与えられた不死斬りの功績とその力。不死身というものは彼の前で意味を成さない。

「ぐわああ……」

「お、おいディズィー!」

「死んじゃった?」

 銀髪の少女、ディズィーはそのまま息絶えた。敵があっけなく死亡してしまい、夜露は戸惑う。レジーも不死の能力を持った味方が殺され、焦りを見せる。

「あわわ……どうしよう……」

「さて、切り札も尽きたようですね」

 陽歌は残る四人に刀を向ける陽歌。しかし残りのメンバーはレジーの様に焦ってはいない。

「レジー、落ち着け。ディズィーの能力を忘れたのか」

 緑髪を後ろで束ねた少女がレジーをたしなめる。

「け、けどピンサ! 実際死んじゃったし……」

 レジーが慌てる中、銀髪のドリルヘアの少女がディズィーの残した筒を見ていた。

「あーあ、死体でも残してくれれば好き者に売れるでしょうに。この損傷具合では能力の都合が無くても臓器一つ売れませんわ」

 筒は上下で二つに分かれており、その姿は陽歌にとっても馴染みがあるものであった。

「あれは……デザインナイフの替え刃?」

「それってプラモデルを作る時に使ったのですか?」

 その筒からなんと、新たにディズィーが現れた。

「おいバイス、臓器はまだしもネクロフィリアへの商売を考えるな」

「お堅いですわねぇ。そっちの方が儲かりますのに」

 なんと、一度死んで生き返る方式である。これでは一回死んでいるので不死無効も意味を成さない。

「さて、片付けるか」

 ディズィーは片付けると言ったが、敵対する陽歌達のことではない。自分の死体を担ぎ、捕縛した夜露のピジョンごと筒の下に入れる。そういう循環システムなのか。

「多分、死体を回収することで次回以降に耐性を付けるのか」

「そんなのありっすか?」

 陽歌はこの手の超能力に慣れているが、夜露は漫画などにもシタラほど詳しくないので理屈の理解に苦しんでいた。

「さて、ではお前達には消えてもらおうか」

 ディズィーが動き出す。防御能力は把握したが、攻撃は未だ未知数。陽歌と夜露が構える中、高速で接近する物体があった。

「あれは!」

「なにっすかあれ!」

 陽歌にはそれに見覚えがあった。アークスのキャンプシップ、つまり七耶達が到着したのだ。そのキャンプシップの上には、見知った人物が乗っている。アークスの守護輝士、響だ。

「その徒花、最盛の可憐さは言うに及ばず散り際の潔きこと……花と等しく散れ」

 響がキャンプシップから飛ぶと、誰にも見えないほどの速度でディズィーに接近しその首を斬る。

「サクラエンド!」

 しかし首の骨が硬いのか、斬れはしたが頭部は取れない。

(浅い!)

 死と再生を繰り返したディズィーは素の防御力も中々。おまけに傷はつけた傍から回復する。

「零式!」

 だが、二撃目が首を切断する。それでもまだ死なないのか、ディズィーは首を手で抑えて戻そうと画策した。

「アサギリレンダン!」

 が、連続攻撃を受けて腕ばかりか体幹を支える身体の筋肉をズタズタにされる。

「やったな!」

「この!」

 残り全員が総攻撃を仕掛けるも、全てをすり抜けて刀を収めた。

「これで終わりだ」

 衝撃波に襲われ、四人の敵は吹き飛ばされる。

「ぐわあああ!」

 とりあえず危機は去ったが、陽歌は響に敵の特性を伝える。

「一人生き返る奴がいます! 気を付けて下さい!」

「何?」

 響が死体に目を向けていると、残った筒から新たにディズィーが出てくる。

「一日に二度死んだのは初めてだよ。腹立たしいね」

 ぶつくさいいながら筒に死体を入れるディズィー。五人の敵が並び、彼らに相対する。キャンプシップから七耶とマナが降りてきて陽歌達の戦列に加わる。

「お前達の目的はなんだ!」

「そういえば聞いてなかった」

 七耶が問いただしたことで、彼女達はようやく目的を語り始めた。陽歌はそこまえ考えていなかったのだ。

「私達は、惑星コウグの王位継承権を持つ者!」

 ディズィーから語られたのは衝撃の一言。たしかコウグの王室にはニパ子以外の姉妹はいなかったはずだが。

「妾の子とか?」

「そんなものではない。私達は正式な後継者である可能性があると同時に、ニッパーヌに王位を継ぐ資格がない疑いがあるのだ」

 ディズィーの言葉は要領を得ないもの。この五人に王位継承の権利があるというのならまだしも、正当後継者として帰還し一年も王政を治めていたニパ子にその資格がないというのはどういうわけか。

「私はディズィー。最も王座に近い存在だ」

「あたしはレジー、王様になったら便利なコンバインとか使い放題って聞いて!」

 ディズィーは確実に王座を狙っているが、レジーの方は全く王座について理解していない様子。

「ふわっとした経済観念で王が務まるものですか。わたしくバイスの様に、国庫を担う者は金銭や経済でのみ関係を構築する現実主義者でなければ」

 バイスはかなり守銭奴な印象を先ほどからの会話でも与えてくる。仲間の死体で一儲けしようというのはかなり倫理的に危ないが。

「私はピンサ。富める者による富める者の為の王政はここで終わらせる」

 緑髪の少女はピンサ。それぞれに多少なり王座を狙う理由があるらしい。

「理由はとにかくクーデターの主犯はお前らだな?」

 七耶は担当直入に問いただす。こちらはクーデターの鎮圧さえできればいい。理由などは聞く必要もないのだ。

「そうだ」

「ならさっさと始末して帰ろうじぇ。小娘五人揃って吹き飛ばしてやる!」

 七耶が口にキャンディ状の修正プログラム『天魂』を含み、等身大のサーディオンへ変身する。サーディオンイミテイト。収縮した模造品でありながら強い力故に制限が掛けられている代物だ。

「超攻アルティメット!」

 そこから放たれる究極奥義、アルティメット。しかしこれに不用意にも立ちはだかる者がいた。

「こんなガキの攻撃なら私でも防げる」

「タガネ!」

 迷彩の戦闘服に身を包んだ少女が前に出て盾を出す。

「宇宙で最も硬い金属とカーボン複合の盾だ! 表面にはビームコーティングがされているんだ!」

 なんだが凄そうだが、アルティメットの前には即座に蒸発する。

「ぎゃああああ!」

「言わんこっちゃない……!」

 倒されたタガネの代わりにディズィーが前に出た。

「小娘に止められるか!」

「いや、ダメだ!」

 陽歌はディズィーに勝算あっての行動と判断した。そう、彼女はヴァイスの技術、アリスギアを取り込んでいる。

「ぐぉおっ!」

 両腕を突き出すと、その腕が裂けて出血しただけで攻撃を防いでしまった。

「何?」

「少しラグがあるが……私は受けた攻撃に耐性が出来る。あの羽虫、相当なものだな」

 ディズィーは夜露のピジョンを取り込み、通常兵器へのバリアを得てしまった。

「厄介な能力持ちやがって……」

 黒こげになって倒れているタガネはともかく、残りの四人は無事。しかし旗色が悪くなったのか彼女達は去ってしまう。

「ふん、無事に条件を達成するとは思わなかったが、せっかくの機会だ。ニッパーヌには大衆の面前で王の資格がないということを証明してもらおう」

「消えた!」

 幹部特有の謎ワープで消滅する四人。倒されたタガネは無視である。

「おーい! みんなー」

 一波乱あった後、ダンゴムシの様な物体が彼らに迫ってきた。

「なんすかあれ? ダンゴムシ?」

「グソクムシ型の宇宙船?」

 夜露と陽歌がよく見ると、それにはニパ子が乗っていた。

 

   @

 

「というわけで王宮は差し押さえられたのでこれしか残ってないけど……」

 ニパ子は王宮を追われて愛用の宇宙船に避難している状態であった。

「あの人達は一体なんですか?」

 マナが聞くと、ニパ子は事情を話した。

「私が生まれた首都の病院で火事があってね、そのどさくさで保育器が転倒して五人の赤ちゃんが混ざったのよ。母親はそれとなく自分の子供を見分けたけど……」

「それが今になってもしかしたら自分が後継者かもしれないと言いだしたんですか……ん?」

 陽歌は状況を纏める中であることに気づいた。

「DNA鑑定しないんですか?」

「あ、その手があったかー」

 ニパ子は思いつかなかったが、即座にその案は響によって否定される。

「無駄だ。それで正当性が証明できるならとっくにやってる。それをしないってことは、そういうことだ」

 本当にそれで王位に正当性が出るならDNA鑑定の結果を持ってくるだろう。しかし、ディズィー達はそれを一切しない。もし彼女達の中に入れ違いのあった国王の実子がいたとしても、果たしてはいそうですかと王座が譲られるだろうか。

「んで、あいつらは何を要求しているんだ?」

「公式の決闘みたいです」

 響は救援を受けただけで、仔細までは知らなかった。彼女達は決闘を求めていると陽歌は聞いていたが、仲間を友好国から募れと言った傍からそれを妨害したりまともなことはしてこないことが予想出来る。

「どんな罠仕掛けてようがそれごとねじ伏せて諦めさせてやろう!」

「そうだね」

 七耶の言う通り、相手の狙いが何であれ全て倒せば諦めるだろう。ここに惑星コウグ王位争奪戦の幕が上がった。




 運命の五王女

 タガネ

 兵士をしており腕っぷしには自信があったが、合掌。
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