騒動喫茶ユニオンリバー The novel 異端たる双眸   作:級長

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 タイムリープ風総集編って便利


二周年記念 マーガレットの時間旅行(前編)

 説明しよう! マーガレットとは東京オリンピック編の頭、節分イベで登場した名前付きモブ敵である! その後ガチャに詰められて放置されたり意味深な伏線を引っ張って来て負けたりその伏線は音沙汰なかったりしたあいつである。

 何故かそんな奴がユニオンリバーの本拠地、喫茶店までやってきたのだ。当然、気にする敵でもないので全員が無視する。

「アマツキ、充電くん用意しておいたからね」

「勝手に名前つけるな」

 陽歌はフレズヴぇウルクに充電器を渡していた。

「災いを意味する禍津、そこから由来するフレームアームズマガツキ、だったら天上に住む天津神から名前を取ってアマツキってのもいいんじゃないかなって」

「由来の話ではないんだが……」

 フレズは人間嫌いなのだが、大雨を避けるために入った建物がここだったことが運の尽き。以前より因縁のある陽歌に引き取られ、今に至る。

「ったく、私は戻るぞ」

 逃げたくても陽歌及び部屋を軸に展開するデジタルハーネスのせいでそれも出来ない。

「いや私を無視するな!」

「あらいらっしゃい。お席ご案内しますね」

 アステリアに自然と接客されたが、彼女の目的はそんなことではない。

「いや違うし! 私はここにリベンジに来たの!」

「お、また炒った豆でサバゲーするか?」

 久々の再会にカティも厨房から出て来た。が、リベンジもそんな生温いことではない。

「それも違う!」

「だろうな、お前節分担当だもんな。二周年記念に出るキャラじゃないし」

「いつから私が節分担当になった!」

 完全に節分キャラ扱いされているが、彼女はそれを払拭する為にあるものを用意していた。

「これを見ろ! なんか落ちてたこの『トキヲモドソードZ』でお前達に復讐してやる!」

 マーガレットが取り出したのは古時計型の手甲一体型の剣。

「時間遡行で全ての始まりに今の知識を持ったまま戻れば、節分で負けることもガチャに放置されることも、ましてや東京オリンピックの延期も無かったことに出来る!」

「時間遡行? そんなことが……」

 剣を機動して時間遡行を開始したマーガレット、そこにフレズことアマツキが飛行してぶつかりそうになってしまう。キラービークの羽を背負って飛べるようにしてもらったのだ。

「だから由来の問題じゃ……っと悪い」

「あ」

 アマツキが避けようとした瞬間に時間遡行が発生してしまい、彼女も一緒に時を駆けてしまった。周囲がモノクロになりながらぼやけ、風景が変化する。そして気づけば、病院らしき場所にワープしていた。

「あれ? ここは?」

「お前がなんかしたんだろ。なんで分かんねぇんだ」

 自分で時間遡行したにも関わらず状況を把握出来てないマーガレットにアマツキは呆れる。

「いや、てっきり一年前の節分か一昨年のオリンピック推進委員会の時にでも戻るかと」

「試運転とかしたのそれ?」

「一応、三日くらい戻ってみたけど……」

 マーガレットも全くテストせずに使ったわけではないらしいが、思わぬ事態になっている様だ。その時、近くから赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。

「な、何?」

「普通の泣き声じゃないな」

「あ、待って」

 尋常ならざる鳴き声にアマツキは飛んでいく。マーガレットも追いかけると、保育器のある部屋で一人の女性が赤ちゃんの首を絞めていた。

「何してんの! マーガレットパンチ!」

「いや剣使えよ」

 剣ではなく殴ってマーガレットは赤ちゃんを救う。アマツキはその赤ちゃんを見て少し考えていた。ネームプレートに他の子と違って名前が書いていないことが気になった。が、アマツキのことをおもちゃか何かと思っているのか赤ちゃんが泣きやみ目を開けて笑うとその疑念は確信に変わった。

「こいつ……陽歌か?」

 右目は桜色、左目は空色のオッドアイ。そんな珍しいものをアマツキは陽歌以外見たことがない。

「え?」

「人が来る、離れるぞ」

 混乱が収まらないマーガレットにアマツキが声をかけ、その場を離れる。何が何だか分からないので彼女もついていくしかない。

 

「やはり、そういうことか」

 売店の新聞で日付を確認したアマツキはマーガレットに今どうなっているのかを伝える。

「お前の大雑把な指定のせいで私達は陽歌の生まれた時間まで戻ってしまったんだ」

「え? どういうこと?」

 全ての始まり、と指定したがそれがまさか陽歌の人生になってしまうとはマーガレットも予想していなかった。

「あの赤ん坊が陽歌だ。で、お前がぶっ飛ばしたのが陽歌の産みの親」

「親が生まれたばかりの子供を殺す?」

 アマツキは事実を伝えたが、マーガレットには信じがたいことであった。ニュースに関心を持って見ていれば少なからずそういう事件を耳にするだろうが、彼女は時勢に疎い高校生。幸せな家庭に育った彼女には信じられないことであった。

「珍しくもないだろ? 話には聞いたが、あそこまでしてるとはな。馬鹿な女だ、刹那的な快感の為に父親としてガキ出来たらいっちょ前に恥ずかしくなって病院に行けず、自己流で堕胎しようとしたら失敗した挙句身体壊して死ぬんだからな」

「あの、それって死因がマーガレットパンチにならないそれ?」

 アマツキの独白にマーガレットはヒヤッとした。下手すれば自分は人殺しだ。アマツキは軽く笑って見せる。

「ははっ、そりゃより間抜けになっていいや。気に病むな、お前が殴らなくても死ぬことには変わらん。むしろ地獄に持ってける笑い話が増えてよかったじゃないか」

「ええ……」

 話は脱線したが、どうやら二人は九年も戻ってしまったらしい。

「ともかく陽歌が生まれた時っていうことは九年近く?」

「正確には十二年ちょいだ。戻る方法は?」

「……ないです」

 時間遡行した後に現代へ戻る方法はない模様。これにはアマツキも大きなため息を吐く。

「ったくしょうがない。七耶がいたら五千年以上前の外宇宙に飛んでたかもしれねーから運がよかったし、充電くん持ってこれたのはさらに幸運か……。昔の商品でも買いながら待つか……」

「待って! あなたはメカだからいいかもしれないけど私は九年以上過ごすの?」

「仕方ないだろ、元々お前がやらかしたんだからな。せいぜい未来の知識使って金儲けすることでも考えとけ」

「ええー!」

 アマツキはマーガレットを見捨てようとしたが、少し考えて戻る。

「つっても私も私でこっちの時間じゃオーパーツの塊だ。ユニオンリバーの連中に手を借りるのも尺だしお前を見張って迂闊なことさせなきゃあいつらに恩も売れるだろ。そしてお前は陽歌の過去を知らないと行動の指針も決められない。一緒に行動するのがお互いの為と思わないか?」

「……はい」

 そんなこんなで無事丸め込まれ、マーガレットとアマツキは共に行動することとなった。

 

 その後、陽歌は浅野夫妻に引き取られ青森で育った。こういう場合、普通は施設へ預けられるものなのだが彼の出自と外見の特異性から、常に陽歌を肯定し愛する存在が特に必要だと感じた浅野仁平が養子に向かい入れたのだ。

「そうそう、そんな感じだ」

 マーガレットは付近に住んで陽歌と浅野夫妻を見張っていた。後に強敵となる、というか本来不死身の都知事を撃破するキーマンとなった陽歌を倒す隙を伺うとのことだが、マーガレットは一向に行動しない。アマツキが陽歌の様子を見ているだけだ。

(あれが特別な呼吸法か……)

 仁平は自身が高齢である故に陽歌を成人まで見てやれないと思い、彼の健康を守る為自分が使っていた特別な呼吸法を仕込んでいた。アマツキはそう聞いており、陽歌の呼吸リズムが常人と違うものであることも把握していた。彼女は借りを作りたくないのと恩を売りたい気持ちでその情報を集めていた。

(普通の子供なんだな)

 見た目は違うが、普通の子供。そんな陽歌が腕を失う様な事態になってしまうとは、アマツキの中にある人間への憎悪は複雑な変化を初めていた。

「って、お前いつ動くんだ?」

 自宅に戻るとマーガレットに問い詰める。

「だって……あのお爺さんめっちゃ強いらしいし」

「トキヲモドソードVで時間停止出来るだろ」

 今回の事態を招いたトキヲモドソードには時間停止の機能もある。これを使いヤクザの事務所に忍び込んでお金を奪うことで生活費などを稼いでいたが、それを使えばさしもの仁平でも倒せる、というか普通に目的である陽歌の討伐を達成できそうである。

「時間遡行中に時間遡行は出来ない……凶悪事件を事前に止めても似た様な事件が起きて帳消しになる……本当に私がすることに意味ってあるのかな?」

 そしてこの数年で時間遡行にまつわる制限も浮き彫りになってきた。歴史の修正力やトキヲモドソード自体の制約もあり思った様なことは出来ない。もしかしたらあらゆる悲劇も食い止められるのでは? とも思ったが不可能が多すぎる。

「お前、陽歌に情が移っただろ」

「そそそそんなことないもん!」

「すごい動揺するやん」

 というのも全て建前。実際には幼い子供に暴力など振るえない、大きくなってから、と思っているうちに感情移入してしまったのだ。

「あんなお人よし集団に敵対するからどんなアバズレかと思ったが……お前も大概だな」

「だって……私だってオリンピック成功したらみんな喜ぶと思って……」

 マーガレットは経験が足りず浅慮なだけで基本は素直で善良だ。だから思想の偏った教師や大人の言葉を真に受けたりもする。

「ま、いいさ。大勢は変えられないかもしれんが個人的な復讐は出来るかもしれん。よく考えるんだな」

 これまでのことを考えれば、陽歌を倒しても大海都知事が敗北する未来は変えられない。だが、陽歌を倒すこと自体は出来るかもしれないのだ。マーガレットにとっても決断の日が近づいていた。

 

 浅野夫妻が亡くなり、陽歌があの忌み地、金湧に引っ越すこととなった。そこでの生活は地獄という言葉すら生温いものであった。養父母が信じた実の娘はその信頼を容易に裏切り、陽歌の出生を吹聴し虐待した。それを聞いて正義を笠に着つつうっぷんを晴らせる存在として、陽歌は周囲から暴力を受けることとなった。

(自分の人生にとっては一ミリも影響しないことによく執心できるものだ。犯罪者の子、まででこれなのだから近親相姦の話は出なくて正解だな)

 人の愚かさを一通り見て来たアマツキもこれには反吐が出た。仁平は元々完全に陽歌の出生を墓場に持っていくつもりだったのか、それとも積極的に語らなかったのか、実の娘である浅野撫子は犯罪者の子を引き取った程度のことしか知らなかった様子だった。

「野郎ぶっ殺してやる!」

 温厚なマーガレットもこれには怒り心頭で止めに入ろうとしたが、アマツキがそれを制する。

「待て、この馬鹿共には逆効果だ」

「なんで?」

「あのレベルのバカだぞ? ダメだと言われて辞めるものか。痛い目に遭えばそのストレスを陽歌にぶつけるに決まってる」

「くっそー、ほんと腐ってるわね……」

 アマツキの影響かどんどん口が悪くなるマーガレット。止めるのもダメとなれば、もう手段はあまり残されていない。

「あ、おい!」

 マーガレットはその方法を取ることに決めた。ただでさえ子供が傷つくところを見ていられるタイプではないのに、それが旧知の仲となれば尚更だ。

「ねぇ、陽歌くん」

「え……名前?」

 ボロボロになって座り込む陽歌に、マーガレットは屈んで視線を合わせながら声をかける。見つかるわけにはいかないアマツキは影で見張る。

(何考えてんだあいつ! タイムパラドックスになったら自分がどうなるかわかんねーんだぞ!)

 万が一これで歴史が変わってマーガレットが節分で陽歌に負けてリベンジするという、この時間遡行における前提が覆ってしまったら何が起きるか分からない。巻き込まれた自分も消えるかもしれないというヒヤヒヤを感じつつアマツキは見守る。

「ここにいるの辛いでしょ? お姉さんと一緒に暮らさない?」

「え……?」

 突然の提案に陽歌は困惑していた。アマツキは急いでマーガレットに声をかける。

「おい! いい感じに嘘つけ! 親戚だ親戚!」

「私、実は君のお姉さんの親戚でね」

「お姉ちゃんはいないよ?」

 この時点で陽歌は仁平の娘を姉ではなく母だと認識していることにマーガレットは気づいていなかった。これにはアマツキも頭を抱える。

「あー、まぁ色々あるじゃない? とにかく、ここよりゆっくり出来る場所で暮らさないって話!」

 マーガレットは勢いで押し切る、だがこの時期の陽歌は彼自身にも大きな問題を抱えていた。

「ありがと……でも、僕がいると迷惑になると思うから……」

 陽歌は立ち上がると、走る様に去ってしまった。そう、彼は救いの手を取ることが出来なかったのだ。それこそ七耶達の様に、強引に引き込むくらいの勢いでなければならない。

「あ……」

「そういうことか、あいつが言ってたの」

 陽歌がいなくなったのを確認し、アマツキは合流する。マーガレットは自分のふがいなさにただ滂沱するだけであった。

「私は……時間も巻き戻せるのに……無力だ……」

「諦めが早いな。ガチャに詰まってまでリベンジの機会を伺った女がここで諦めるのか?」

 しかし、このまま周囲の思うがままというのはどうにも納得できないアマツキはマーガレットに発破をかける。

「でも!」

「要するにあいつが死ななきゃいいし、あいつに危害を加えたことが原因でボコられてると悟られなきゃいいわけだ」

 アマツキには案があった。そう、小さい彼女にしか実行できないアイディアが。

 

「まず、陽歌が死なない様にひっそり角砂糖などを届ける」

 最初にするのは陽歌の生命維持。まともな食べ物ではないがあるとないとでは大きな違いだ。

(長期の虐待を受けた子供は栄養失調などで発達に影響が出ると聞いていたがあいつにはあまり感じなかった……まさか自分でその原因を作っているとはな……)

 栄養が偏らない様にサプリメントを砕いて溶かしたものなども舐めさせる。特に夢遊病で徘徊している時はがっつり食べさせるチャンス。こちらに気づいてないのをいいことに消化のいいリンゴなどを与えていく。

「で、次に仕返しのお時間だ。自己満足にしかならねぇがそれで充分。広谷小鷹、狭山雲雀、八神紬以外全員敵だからな、ターゲットをばらけさせて誤魔化す必要がないのは楽だ」

 お仕置きに関しては「陽歌に危害を加えた」という共通点が浮き彫りにならない様にしたいが、もう周りがみんなアレ過ぎてアリバイ工作は不要だった。金品を盗んだり冷蔵庫を開けっぱにしたりとやりたい放題。

 特にここはトキヲモドソードVの時間停止が有効に働いた。マーガレットは僅かでも金湧にお金を落としたくないのか買い物はわざわざ隣町でしていた。

 

 それからしばらく、ある事件が起きた。ある日のこと、いつもの様に陽歌を遠巻きに見守っていたのだが、彼を含む周囲の人間が凍り付いたのである。

「これって?」

「ああ、これが噂の、ギャングラーによる大量失踪事件か」

 異世界の犯罪組織であるギャングラー怪人、ザミーゴ・デルマの能力による大量集団失踪事件。二年の月日が経ってようやく解決されたそれに陽歌も巻き込まれていた。

「無事に助かることは確定だが……どうする?」

「ついてくついてく」

 トキヲモドソードには追跡機能があるのか、なんとついていくというマーガレットの意思のみで時空を切り裂いてギャングラーの追跡を開始した。ギャングラーの本拠地は暗い枯れ果てた森の中にある不気味な洋館であった。

「ここがギャングラーのアジトか……」

「来たはいいけど……どうしよう?」

 勢いで来たのでマーガレットも予定は組んでいなかった。ここで変な動きをすればどんな影響が出るか分からない。

「はぁ……ったく、様子だけ見て帰るぞ。ここには私も用事がある」

 いつものことにアマツキは溜息を吐きつつ先導する。

「居場所分かるの?」

「パーツの一部を奴の服に忍ばせたからな。それで追跡する。この時期にはMSGも補充できる」

 部品が供給できる時代になったため、そういう策も取れるのだ。

「それ便利。ずっとやっとかない?」

「近くないと無理。屋敷の中にいるのが分かればそのうちヒットするだろうが、十メートルちょいが限界だ。それに得体の知れない部品なんて見つかったらゴミだと思われる」

 しかし決して万能ではない。セッション中に飛ばした遠隔兵器の回収機能を応用しただけなので限度もある。

「いた。あそこだ」

「厨房?」

 何故か厨房で魚の頭蓋みたいな怪人に鮭料理を振舞われている陽歌。これは一体何なのか。

「ふふふ……お前みたいに痩せている奴は鮭を食え!」

「何あれ……」

 彼はサモーン、陽歌の好物が鮭になった原因だ。

「サモーン様! あの鮭が手に入りました!」

「何? 早速秘密の保管庫にしまうぞ!」

 そこに部下が発泡スチロールの箱を手にやってくる。中には氷と輝く様な巨大鮭が入っていた。

「ふっふっふ、あのフィンダンサイクルの英雄、フィン・マックールの食した叡智の鮭の対局に位置するという強健の鮭……、これは大事に大事に取っておこう。この世のあらゆる記念日に鮭を食う習慣が根付いた記念まで……」

「気が長いわね」

 サモーンはオーブンの前に移動すると、スイッチやつまみを複雑に動かした。すると、大きなオーブン棚が動き扉が出現した。その扉にも長いパスワードが掛けられており、それを開錠して中に入るとそこにはエレベーター。

 そのエレベーターの上下ボタンをバリアフリー用の低い位置含めて複雑にコマンド入力。

 エレベーターは初めからこの階にいたのか、待つことなく扉が開く。アマツキは飛行しつつ即座に乗り込む。

「少し待ってろ。私はこれに用があったんだ」

「え? どういうこと?」

置いていかれたマーガレットであったが、アマツキも概ね事情を話さずとも自分を置いて帰らないと思う程度には彼女を信用していた。中に入ってさらに階数ボタンを長押しなども駆使しつつ入力。そうして動き出したエレベーターは地下に向かう。そこには大きな冷蔵庫があり、いくつものダイヤルでロックされていた。

「しかしいいんですかサモーン様? このダイヤルはゴーシュ様謹製、ルパンコレクションの中で奪取しそこねた『ダイヤルファイター』の開錠機能を対策するために少数生産された特注防御ダイヤル。それを黙って全て私用の冷蔵庫につぎ込んで……」

「そもそもこの部屋がバレない様に作ってるからな、俺が盗んだってバレても何に使ったのかまでは分かるまい。こんなガチガチ対策は臆病者のすることだってギャングっぽいこと言えば許してもらえるだろう」

 鮭のことしか考えていないのにギャングラーで許されているのは処世術に長けている面もあるのだろう。アマツキはこのフロアに至る方法をしっかり録画して戻る。

 

 それから二年後、陽歌は無事解放された。しかし同じ金湧で捕まった人で解放されたのは彼だけであった。それが周囲の逆恨みとも言える憎悪を駆り立てる結果となってしまった。

「おそらく原因はその目立つ外見のせいで化けの皮として適さなかったことと、遺伝子特異性のせいで臓器売買も出来ないからだろうと言われている」

 アマツキの説明を聞き、マーガレットはふと思い出す。陽歌の姉夫婦がたびたび怪しい病院に陽歌を連れて行っていることを。

「え? じゃああの内臓売買は……」

「無駄だろうな。買った方は詐欺られたと思って、あいつらきっと今頃東京湾の底でたい焼きくんと仲良くしてるぞ」

 自業自得の結末を迎えることとなった姉夫婦の末路はどうなるやら。長い時間の旅も終着点を迎えようとしていた。




 思いの外長くなったので前後編に分割。これでもいくつか飛ばしたイベントがあるんだけどどんな人生送ってんだこの九歳
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