騒動喫茶ユニオンリバー The novel 異端たる双眸   作:級長

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二回戦&三回戦 バイス&レジー

 あっと言う間に運命の五王女は半分が脱落した。ニパ子も自分が出る幕の無さに危機感を覚えていた。

「ねぇ、これ私の出番……」

「お前が前線に出てみろ、リング禍を装って殺されるぞ」

 七耶は戦いということもあり、どさくさで王女の始末を狙っていると考えていた。そのため、彼女をそもそも出場させる気は作戦としてない。

「よろろん、例のモノは?」

「磐田さんはもうすぐって言ってました」

 そして夜露にもある頼み事をしていたので、彼女の出番も基本無い。そもそも、害虫退治のバイトをする女子高生に人を斬れなどとても頼めない。

「それがあれば、小僧が不死を壊せる。頼むぞ陽歌」

 そして陽歌も出番が決まっているため、出られる人間は必然固定となる。

「次は私の出番ですわ! 最高額の傭兵軍団の力をとくとあれ!」

 次に名乗りを上げたのはバイスチーム。トラブルコンサルタントのユニオンリバーなら、どれも顔と名前くらい聞いたことのある名だたる傭兵が四人、バイスの傍に仕える。

「相場上、最高額のチームか。宇宙最強の殺し屋の血筋を持ち父の記録を半年で塗り替えた、ギラーミンJr。生涯獲得賞金宇宙最高記録を持つバウンティーハンター、史上最も多くの人命を奪った個人と目される傭兵にある宇宙の創造神を屠ったデビルバスター……」

 とても一国のお家騒動に出る規模ではない人選に、七耶は自分での決着が最も安全と考えて名乗りを上げた。

「これは私が出るしかないな」

「ほーほっほっほ! 小娘一人に、一人につき5000兆ギルタン支払ったこの最強のチームが破れるはずありませんわ!」

 経歴を聞く限り、響と夜露はこの戦いに分の悪さを感じていた。

「おいおい、こいつら売り文句だけじゃねぇ……流石にレギアスのジジイには一歩劣るがそんなもんが四人だと?」

「大丈夫なんですか?」

 一方、七耶を知る陽歌とマナの態度は至って冷静だった。

「勝ったな風呂行ってくる」

「あー……何というか描写じゃなくて肩書が強そうなキャラは噛ませ傾向が」

 とんでもない温度差に風邪をひきそう。当事者のニパ子は七耶を指差し、それと同じ方の足を軽く上げて宣言する。

「なんだか分からんが、ヨシ!」

「ダメじゃねぇかな」

 絵柄も酔った勢いみたいな緩さになっており、響はニパ子が王女なのに戦力を把握できてないと確信する。エピックのマルガレータでも時と場合によってはもうちょっと王女している。

「時間と金が惜しい、五人纏めて来い!」

「お望み通りやって差し上げますわ! 戦力の逐次投入は愚策、畳み掛けまして!」

 七耶はキャンディの様なものを手に、リングへ上がる。

「だぁああ! 油断もしねぇ戦力の回し方だ!」

 絶体絶命と響は感じ、刀を構える。だが七耶がキャンディを口に含むとロボットの様な姿になる。

「いやさすがにこの数はきついだろ!」

 戦力としては認めているが未だに分の悪さを主張する響をよそに、陽歌が解説する。

「説明しよう! 超精神文明、超自然文明、そして超科学文明が突如現れた機械惑星という共通の敵を前に戦争を止め、共同開発した伝説の超攻アーマー、サーディオン七号機、それが攻神七耶なのである! そのあまりに高い戦闘力から他の聖四騎士姉妹と同様、普段は人型のコアと戦闘用ボディキャストに分割され、修正プログラム『天魂』を摂取した時のみ元の姿に戻ることが出来るが、それでもなお一秒につき百円の代償を要するのだ!」

 バイスもその戦闘力を一応確認してはいたが、そこが知れない故に畳み掛けることを選択した。

「タガネを一撃でやった姿! 警戒を! ですがさすがにこの戦力で負けるはず……」

「超攻、アルティメット!」

 しかし七耶が光り輝き、敵を全員吹き飛ばす。

「うわあああ!」

 気絶だけで命を取られていない。手加減された上で瞬殺されたのだ。

「まさかな……」

「ひえええ……」

 ディズィーは不死の為か静かに驚愕していたが、レジーは大きく動揺する。ここまで、全く戦いになっていない。本来ならばニパ子チームを瞬殺して自分達で王位を決定する予定が、ニパ子を引きずり下ろすことさえ厳しくなったのだ。

 

   @

 

「まずはこれをこう」

 一方、東京シャードの成子坂製作所では陽歌の持つ守り刀の調整が行われていた。アークスの刀匠、ジグも加わり、不死の敵を討つ準備を進める。高級な武器を分解して摘出するゴードニアやプラムニアを限界までつぎ込み、基礎性能をジグが高める。エーテルフューズや各種ブースター、時還石クロノスに希少石エレボスや創望石アンフィトリテ、原闇石デイモスと神眼石グライアイまでと知る人が聞けば卒倒する様な素材を潤沢に用いての強化だ。

「しかし異なる世界の技術を束ねるなんてとんでもねぇな」

「まぁ、それが私の役目でスので」

 当然、技術体系の異なるものを纏めるためアスルトもいる。

「それより驚きなのはここまで潤沢な素材を陽歌くんが持っていたことでスが……。強力な敵を倒したという事実が紐づけられるのでいいですけど」

 実は素材自体、以前陽歌がオラクルシップに飛ばされた時知り合ったアークスの響やジョアンが融通したものではない。戦えるうちに全部のボスと戦いたいとか言い出したキリトに連行され、地獄を味わった結果手に入れたものだ。

 彼は後に語る、あれをノリノリで熟すあの夫婦はお似合いだと。

 ゲームと違い無限にも思える量のファルスアームを供給するエルダー、デカすぎて弱点の腕に追いつくのがやっとなルーサー、ダークブラストなんてないのでフォトンキャノンを護衛した後地べたを這いつくばりながら戦うオメガアプレンティス、広い範囲をくっそ走り回らされるダブルから連続して深淵なる闇、何故か省略されないライドロイドでの追撃戦からマザーと戦いやはり何故か省略されない前座との戦闘からのデウスエスカの連戦、仮面を四回も張り替えて『仕切り直しだ』してくるペルソナ、普通に強い原初の闇とこの世の地獄を煮詰めた様な有様だった。サービス8年分のレイドボスラッシュは伊達ではない。

「こっちも可能な限りとっておきのキット装着と、チューンアップしておくぞ。品質も上げないとな」

 異世界の最高技術を見せられた磐田のおやっさんも奮起し、自分で考えられる限りの強化を施す。

 

「では私は独自のルールで戦いを挑む!」

 レジーは最初から真向勝負に向いていないと分かっていたのか、新たな戦いの場を用意していた。それがこの、広大な荒地だ。ひび割れた土地に雑草が生えている。

「名付けて、開墾対決!」

 バトルではなく畑を耕しての勝負。農家であるレジーにとっては自分の得意分野で戦いたいというところだ。彼女はフリップを手に、チームメンバーのムキムキ四人衆と並び、ニパ子に宣戦布告する。レジーの先導したセリフを四人が唱和する謎スタイルだ。

「ニッパーヌ王女」

「ニッパーヌ王女!」

「王族なら」

「王族なら!」

「農業大事にしろ!」

「農業大事にしろ!」

 響は夜露に思わず聞いてしまった。

「なにこれ?」

「シタラさんなら知ってるんじゃないですか?」

 ともあれ、今回は純粋な人海戦術。響も鍬を持って荒地に向かう。

「ま、雑草生えるんなら畑にもなるだろ」

「難しいんじゃないですか?」

 だが、陽歌は頬で土の様子を確かめながら否定する。手に感覚がないので、これが土の状態を知る手っ取り早い手段なのだ。

「え?」

「この土地は農地じゃないし、土が乾いてるし、肥沃な土地ならもうちょっと柔らかいはず、ここはとても砂っぽい。耕す途中で大きな石とか出るかも……。それに雑草と呼ばれる植物は非常に生命力が強いためこの様な土地でも生育できるけど、農作物はデリケートだから同じ様にはいかない。加えてただでさえ痩せてる土地に雑草があるってことは、少ない栄養も吸い尽くされてるかも」

「とにかく土ざくざく起こしゃいいんだろ?」

 難しいことはさておき、耕しかない。響が鍬を振り上げた瞬間、ディズィーから横やりが入る。

「待て、前の戦いに出たメンバーに参加権はない」

「はぁ?」

 急に追加されたルールに苛立つも、こんな奴らだったなと彼女は大人しく引き下がる。

「じゃ、任せたわ」

 陽歌に鍬を託そうとするも、それさえ阻まれる。

「あとここで出場したメンバーは後の参加権を失う」

「おいふざけんな! それじゃうちのチームはよろろんとチビ二人と王女様から一人外さねーといかんじゃねーか!」

 響はこのルールの狡い部分を理解していた。一人をこの人数がモノを言う戦いから外す、というのはあくまで次の戦いに参加する最低条件。最終戦のディズィー戦も五人チームで来るだろう。どう転んでも残り二戦が不利になる仕組みだ。

「私そんなことしなくても負けないのに……」

「私に従え」

 これにはレジーも苦言を呈するが、聞く耳はない様だ。

「案ずるな小娘。こいつ一人で十分だ」

 そんな中、七耶はマナを指名する。陽歌もどういう作戦か納得した様だ。

「あんたほどの奴がそう言うなら……」

 あの高額殺し屋軍団を一掃した七耶なら何か策があるのだろう、と響は引き下がる。

「それでは……スタート!」

 五対一という圧倒的不利で始まった開墾対決。猛スピードで耕すレジーチームに対し、マナはおもちゃのベルトを装着するだけだった。そして、そこに緑のメダルを三枚入れる。

「変身!」

『クワガタ! カマキリ! バッタ!』

 そして変身。普段の小ささからは考えられないほど、豊満なスタイルをした金髪の白いドレスの乙女へと変身し、分身を始めた。

「え、ちょ……」

 道具も一緒に分身を始め、驚愕しているレジーを置いて作業を進める。

『ウォーター!』

『ランド!』

 他のベルトの能力も駆使し、みるみるうちに畑が完成する。ルール面で有利を作ったのに、あっと言う間に覆されてしまった。

「すっごーい! その能力があったら収穫も増えるね!」

 レジーは負けたというのに、マナの能力に関心を寄せていた。他のメンバーと違って、ああまり王位に興味がないのかもしれない。

「残るはお前だけだな」

「ふん……」

 いよいよ、王位争奪戦はクライマックスへ。残る不死身の王女を倒せるのは陽歌のみ。果たして、惑星コウグに平和は訪れるのか。

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