騒動喫茶ユニオンリバー The novel 異端たる双眸 作:級長
文字通り、企業と契約したプロデュエリストによる決闘が繰り広げられるプロリーグ。とはいえショー性があり人気商売の側面が強いため純粋な勝率より内容が求められることも多い。
そのため勝てていても対話拒否デッキなんかを使うとファンが離れたりスポンサーが苦言を呈することも。
多くのプロが三積みサーチ無しでキーカードを引き込む超人ばっかなのでテーマのサポートカードなどはファンが同じデッキで戦いたいという要望を出して作られたりする。
パックに封入された白紙を手に取ると謎のナンバーズへ変異する現象。これはアスルトの解析を持ってしても分からないことが多かった。
銀髪に抜群のスタイルを誇る美人の錬金術師、アスルト・ヨルムンガンド。陽歌の使う義手など通常の技術では考えらえないものを作る脅威の技術力を誇るが、このナンバーズのことは分からないことが多い。
「既に変異してしまって、元々なんだったのかが掴みにくいんでス」
「何か材料があるってことか」
無から何かを作ることは、例え紙一枚でも困難。それが闇のゲームを行う権限を持っているとなれば尚更だ。七耶はカードを眺めて状況を調べる。見れば見るほど、カード以上の何物でもない。特に響や陽歌のナンバーズとキングダムのナンバーズなど、差が無い様に見える。
「ねぇ、ミリアお姉さん知らない?」
そこにやってきたのは小柄な長髪の少女。さなは相方のミリアを探しにきたのだ。
「あいつか? そういえばデュエルモンスターズの特訓するって言って出てったな」
七耶はミリアのいつもの突拍子もない行動を聞き流していた。しかしなぜ、ゆにカフェというゆるい紹介動画を出すミリアがデュエルモンスターズの練習を使用などと言い出したのか、それが気になっていた。
「で、なんであいつは特訓なんかを?」
「ほら、ハートランドで今度ライバー杯があるんだよ」
ライバーカップ、それは動画投稿者を集めたデュエルモンスターズの一大イベント。銀の盾レベルの投稿者は一次予選を免除されるが、そうでない投稿者は予選で多くの参加者を相手に勝ち抜く必要がある。
アイドルであるマナとサリア、天導寺重工の広告塔をしている陽歌は銀の盾を持っており一次予選を免除されているが、さなとミリアは一次予選からとなっており練習の必要性があった。
「あれ? 二枚足りませんね……」
「は?」
カードを調べていたアスルトは、それが二枚も無くなっていることに気づいた。厳重に管理されていたはずなのに、何故か二枚、キングダムの持っていたものが欠けている。不知火の宣教師とドルフィー・ナイトメアは残っている。
「何ぃ!」
「まさかお姉さん……」
ミリアはいろいろ残念なのでこのカードを見ても『わーい強そうなカードだー』くらいの感覚で持ち出しかねない。しかしこのセキュリティは彼女に突破出来るものではない。
「仕方ない、探してくる」
本当にミリアが持ち出したものなのかは分からないが、とりあえずさなは探しに行くことにした。
@
デュエルモンスターズは世界でも屈指の人気を誇るカードゲームであり、プロリーグも存在する。そんなプロの試合には、多くの観客が駆けつけるのだ。ネット配信も盛んな時代となったが、やはり生で見たいという人は多い。
「いやー、今日は対戦カードの割に盛況だな」
「やっぱ万丈目サンダーのおかげだよ。相手が違ったらすっからかんさ」
観客にフードやドリンクを売って回る売り子は会場でデュエルする二人の男を見る。観客の視線は黒いコートの男、万丈目準に移っている。
「おいサテライト野郎! 今日はしょっぱいデュエルすんなよ!」
観客からヤジを飛ばされているのは、ライダースを着込み、顔に黄色いラインの入った男。このラインはネオ童民野という地でかつて、犯罪者に行われていたマーカーという刻印だ。被差別階級、サテライトの希望の星を名乗ってプロリーグに参戦したこのデュエリスト、希望ヶ峰流星。しかしその立ち位置には既に不動遊星、クロウ・ホーガンなど名だたるデュエリストもおり、イリアステルを名乗る組織が起こした一件でその遊星が人々に希望を見せたことにより根深かった差別問題も解決へ動き出している。
要するに、旬を逃しており誰も熱狂しない話題を一人で振り回しているだけなのだ。実社会に疲れてデュエルで元気を貰おうとしているのに、それを思い出させる様な話題を出されても興醒めというもの。
「レイシスト共が……」
それに気づかないのは、彼とその熱心な支援者だけ。一応、極端な思想はごく一部の極端な人間に受け入れられやすい。
「サンダー! サンダー!」
「今日のフィニッシャーはおジャマか? アームドか? それともXYZ?」
ヒールとしての魅力にも欠け、この会場は万丈目の人気一つで持っている様なものだ。
「悪役としても微妙だな、本人がベビーフェイスぶってるし」
「まだNTR佐藤の方が悪役としては面白い」
観客の散々な前評判はデュエルで覆せばいい。希望ヶ峰はそう思っている。
「デュエル!」
こうしてデュエルは開始された、希望ヶ峰の先攻だ。
「俺は手札から、無限起動ロックアンカーを召喚! その効果により、手札から無限起動ブルータルドーザーを特殊召喚!」
フィールドに二体の重機が並ぶ。いつものデッキとは異なる展開に観客は僅かばかりの期待を寄せる。
「おお、電脳じゃない」
「さすがに学習したか」
「俺は更に、ロックアンカーの効果を発動! このカードとブルータルドーザーはお互いのレベルの合計、則ちレベル9となる!」
だが、レベルの宣言があった瞬間に落胆の声が聞こえる。この先の展開が読めてしまうのだ。
「なんだよ……」
「レベル9のモンスター二体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
星々に吸い込まれるモンスター。出現したのは巨大なかっこいいドラゴンだが、エースモンスターの登場に反して会場はブーイングの嵐だ。
「真竜皇、VFD!」
「ふざけんな!」
「つまんねーデュエルするな!」
真竜皇VFD。フィールドのモンスターの属性を統一し、その属性のモンスターは攻撃と効果の使用を封じられる封殺系のモンスターだ。フィールドにモンスターを出せば宣言した属性にされた上で効果も攻撃も封じられ、その影響は手札のモンスターにも及ぶ。手札での効果や魔法でなんとかVFDの攻撃力3000を超えるモンスターを出しても、攻撃できなくなるため対処できない。
プロデュエリストは勝利を求められるが、それ以上に観客を「魅せる」必要がある。そのため、カードの応酬がなくなる封殺系のデッキは嫌われる傾向がある。
「更に手札からテラフォーミングを発動、手札にフィールド魔法、『魔晶洞』を加え、そのまま発動!」
さらには相手より多くのモンスターを並べると攻撃を封じるフィールドまで使用し始めた。モンスターを派手に並べて殴り合う激しいデュエルを期待していた観客からは、ブーイングも加速する。
「これで俺の勝利は盤石だ! ターンエンド!」
「なーにがサテライトの希望だ、不動遊星は拾ったカードでキングになったってのによ」
それに加えて目に見えて高級なカードの投入は当人の想定するキャラクターに反している。
「それはどうかな?」
「何?」
しかし相手もプロ、そんな程度で勝てる様な甘い世界ではない。万丈目は当然対策をしていた。
「俺の雑魚共にモンスター効果はない!」
「ふん、だが攻撃も出来なければ突破されることはない!」
万丈目は財閥の御曹司だが、何故か雑魚カードを好んで使う癖がある。一応強いカードも入っているのだが、なぜデッキが回せるのか不思議な構築をしている。
「俺のターン、ドロー! まずは手札から魔法カード、『予想GUY』を発動! デッキからレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚する! 来い、おジャマイエロー!」
万丈目が繰り出したのは、小さいが控えめに言っても可愛いとはいえない黄色のモンスター。
「おお、サンダーの舎弟だ!」
「一体どうなるんだ?」
だが観客の反応は好感触。ここから更に展開が続く。
「そして手札から融合を発動! 手札のおジャマグリーン、おジャマブラック、フィールドのイエローを融合し、おジャマキングを召喚!」
三体のモンスターが融合し、巨大な王へと姿を変える。守備力3000。なかなかの壁だ。
「はっ、壁を立ててやり過ごす気か!」
「最初はそのつもりだったが、このドローでその必要はなくなった! 俺は融合解除を発動! 戻って来い雑魚共!」
しかし、せっかく出した融合モンスターを元の素材であるおジャマ三兄弟に戻してしまう。一体どういうつもりなのか。
「サレンダーはスポンサーに悪印象だから、わざと的を用意して負ける気か?」
「俺がそんなことするか! さらに手札から、おジャマデルタハリケーンを発動!」
万丈目が使ったのは、おジャマ三兄弟が全員揃うことで使用できる魔法カード、おジャマデルタハリケーン。相手フィールドのカードを全て破壊する恐ろしい効果を発揮する。
「くそおお! だが場に残ったのは雑魚! 返しで一層してやる!」
「用済みの雑魚共には退場してもらう! リンク召喚!」
そして役割を終えたモンスターの棒立ちも当然防ぐ。緩い条件で出せるリンク3を出し、次に備える。出て来たのは馬に乗り、槍を構えた騎士。
「電影の騎士、ガイアセイバー! そのままダイレクトアタックだ!」
「ぐわああ!」
思わぬ展開に苛立ち、希望ヶ峰はデュエルディスクを地面に叩きつけてしまう。
「くそがあああ!」
「おっとこれはいけませんね。悪い癖が出ました」
これには解説も苦言を呈する。デュエリストなら、ヒールぶっていても絶対にディスクやカードは粗末に扱わないもの。イメージダウン以上に、スポンサーからの提供品でも会ったりするので今後がマズイ。
この調子でペースを崩された希望ヶ峰が破れたのは言うまでもない。
@
さなは騒ぎのする方へ直観的に進んでいく。どうやら居酒屋でカードゲームをしている人がいるらしい。その噂話を元に駆け付けると、ミリアがいた。
「さぁどんどん持って来なさい!」
「うわ」
金髪を横にひっつめた、幼さの残る顔立ち。それに似合わぬグラマラスなボディを薄手のブラウスの包んだ美女。それがさなの相方であるミリア。黙っていれば文句のない美女だが、酒大好きの残念美人だ。どうやら周囲のデュエリストをなぎ倒して奢らせているらしい。
「あ、さなちゃーん。今調子いいんだよね、このカードのおかげで」
「あー、やっぱり」
ミリアはやはりというかナンバーズを持っていた。それも二枚、ユニオンリバーから無くなったのと同じ枚数。四桁ナンバーズに変化するカード自体はパックに封入されているので簡単に手に入るが、ここまで偶然が重なると怪しい。
「お姉さん帰るよ。そのカードも分析しなきゃ」
「えー、まだ呑む!」
「仕方ない……」
ミリアは言って聞く様なタイプではない。なのでいつもの様に腹パンによる実力行使に出ようとする。だが、拳は不思議な力で防がれた。
「何?」
「ふふーん、どうやらこのナンバーズが守ってくれているみたいだね」
やはり闇のゲームの力か。さなは溜息を吐きながらデュエルディスクを起動する。
「仕方ない、ここはやはりデュエルで叩きのめす!」
「今の私に勝てるかな?」
「「デュエル!」」
こうしてデュエルが開始された。ミリアのデッキは初心者にも扱いやすいと陽歌が組んだ『ガジェット』。極端なパワーはないが、ナンバーズの様なエクシーズを展開しやすい。
「私のターン!」
しれっと先攻を取ったミリアはモンスターを召喚する。色とりどりの歯車みたいなロボが勢ぞろいだ。
「私は手札から、ゴールドガジェットを召喚! その効果でシルバーガジェットを特殊召喚! さらに効果でレッドガジェットを特殊召喚!」
ガジェットモンスターのうち、シルバーとゴールドは召喚、特殊召喚時にレベル4機械族を特殊召喚する効果がある。そして、三色ガジェットは召喚された時に互いをサーチし合う。
「レッドガジェットが召喚された時、デッキからイエローガジェットを手札に加える!」
召喚すればアドバンテージが取れ、用意にランク4エクシーズやリンクに繋げられるガジェット。動きが単純で魔法罠の自由度が高いことから確かに初心者向きのデッキだ。複雑怪奇ソリティアだの言われるデュエルモンスターズで、ポンコツのミリアが問題なく回せているのが何よりの証拠。
「私は三体のガジェットでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
「来るか!」
そしてエクシーズ召喚。出て来たのはオレンジ色のガジェット。
「No.4:1! オレンジガジェット!」
「いや命名規則。三体目にしてもう外れたよ」
キングダムのあれなものを覗くと四桁ナンバーズの観測は三体目にも関わらず、もう名前の規則が分からなくなった。
「でもお姉さんにも心の闇があるんだね、意外」
だが一応、四桁ナンバーズは心の闇から生まれたもの。ミリアにそんなものあるとは思えないが、あるからこそ出現している。
「闇は誰にでもあるものさ……」
「一応聞くけど」
何か影がありそうな空気を出してミリアが言うので、さなも一応尋ねた。
「有名になってお金持ちになって毎日居酒屋で飲み放題! おつまみもどんなに頼んでも財布が気にならない生活を送りたい!」
「聞いた私が馬鹿だった。はやくターン回して」
なんともありきたりな欲求だった。だからシンプルなランク4で攻撃力2500のモンスターになったのだろうか。
「あ、カードを伏せてターンエンド」
「私のターン、ドロー!」
さなのデッキは獣戦士族の融合テーマ、『月光』。この得体の知れないナンバーズをどう倒すべきか。とりあえず効果破壊は効かないだろうことを想定して、戦闘破壊を狙っていく。
「私は手札から、『月光融合』を発動! 相手フィールドにエクストラデッキから召喚されたモンスターが存在する場合、デッキ、EXデッキのモンスターを素材と出来る! 私は手札の
両手を胸の前で組んで、融合召喚の構えを行う。呼び出されたのは獣人の女戦士。
「
攻撃力2800、二回攻撃の効果を持つ強力な融合モンスター。融合モンスターを名指しで素材に指定するなど重い召喚条件があるが、月光融合があれば後攻から捲り上げる為に出すのは容易。
「月光舞豹姫でオレンジガジェットを攻撃!」
オレンジガジェットは攻撃を受けたが、破壊されずに残った。
「オレンジガジェットは相手のカードによってフィールドを離れる場合、オーバーレイユニットを一つ取り除きフィールドに残る!」
「除外やバウンスにも耐性があるのか……ん?」
自慢げに効果を語るミリア。そこでふと、さなは彼女のプレイミスに気づいた。
「それなら守備表示の方がよくない?」
「しまったー!」
破壊耐性があり場に残れるカードは先攻で攻撃出来ないのなら、守備表示がいいに決まっている。攻撃力の方が高く殴り倒されにくいというメリットもあるが、オレンジガジェットの場合はあまり問題にならない。
「と、取り除いたオーバーレイユニットがガジェットモンスターの場合、デッキからガジェットモンスターを特殊召喚出来るし……」
ミリアはイエローガジェットを特殊召喚、グリーンガジェットを手札に加える。今度はちゃんと守備表示。
「はいもう一回攻撃」
「あーっ!」
さながライフアドバンテージを重視した結果、オレンジガジェットは二度目の攻撃を受ける。
「れ、レッドガジェットを特殊召喚……」
レッドガジェットの効果でイエローガジェットを手札に。何気に三色の相互サーチはターン1指定がない。300ダメージを二回受け、ミリアのライフは7400。
「ふふふ……だがさなちゃん、迂闊だったね。ガジェットを破壊していれば有利に進められたのに!」
「まぁ、来るよね」
罠を伏せた時点でさなもこの展開を予想はしていた。なのでメイン2で対策を立てる。
「私は速攻魔法、サイクロンを発動! フィールドの伏せカードを破壊する!」
「ぎゃーっ! デストロイリボルバー!」
三色ガジェットがフィールドにいる時、強力なモンスターとなる罠が破壊された。手札にお手軽除去を握っていたからこそ、オレンジガジェットによる特殊召喚を許したとも言える。
「カードを伏せてターンエンド、まぁ勝負は決まったよね」
さなは一枚カードを伏せておく。
「それはどうかな? ドロー!」
ミリアのターン。オレンジガジェットは全貌を明かしているとはいえない状態だ。
「私は手札からゴールドガジェットを召喚! その効果でイエローガジェットを特殊召喚!」
そしてお馴染みのサーチ。そしてエクシーズ召喚が行われる。持ち出したカードは二枚。これがもう一つの手だ。
「エクシーズ召喚! No.3.5:1 スカイガジェット!」
出て来たのは水色のガジェットモンスター。攻撃力はたった500だが、特殊効果がありそうだ。
「オレンジガジェットの効果! エクストラデッキから召喚されたガジェットの分だけ、攻撃力を1000上げる!」
「とんでもない脳筋効果だ!」
隣にガジェットが並んだだけでオレンジガジェットの攻撃力は3500に。しかも場を離れない耐性付きだ。
「そしてスカイガジェットはエクシーズ素材の分、相手にダイレクトアタックできる!」
ミリアはスカイガジェットでさなに攻撃する。たった500でも、二回で1000。しかもダイレクトアタックは防ぐ手段が限られる。地縛神やサンアバロンなど受けやすいデッキ構築でない限り対策は積まないことが多い。
「くっ……お姉さんのくせにやってくれる!」
ポンコツのミリアでも使いこなし、下手なデュエリストなら撃破できるデッキに仕上げた陽歌の腕が凄いのだろう。そこに決定打となるエクシーズが追加され、さらに強くなった。
「オレンジガジェットで月光舞豹姫を攻撃!」
「やはりそう来たか……」
モンスターへの攻撃は予想出来た。計2300のダメージを受け、さなは5700のライフ。ミリアを下回った。
「ターンエンド! 私だってやるんだからね!」
「うん、偉い偉い。でも私に勝つには少し足りないね。ドロー!」
さなは伏せていたカードを使う。
「トラップ発動! 死魂融合! 墓地のモンスターを除外して融合召喚を行う!」
墓地にいる月光舞豹姫とその融合素材を除外し、新たなモンスターを召喚する。墓地融合は消耗の激しい融合デッキにとって、重要な手段だ。
「
攻撃力3500、月光舞猫姫から連なる融合体の到達点だ。
「そして
月光狼の方には死魂融合と似た効果がペンデュラム効果で内蔵されており、もし伏せカードを割られても問題はなかった。所謂保険やブラフというものだ。
「そして手札から魔法カード、ペンデュラムエクシーズを発動! ペンデュラムスケールのモンスターを特殊召喚し、その二体のみでエクシーズ召喚を行う! その際、片方のレベルにもう片方を合わせる! 私は月光狼のレベル6でオーバーレイ!」
現れたのは、剣を携えた白き希望の戦士。
「No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ!」
このモンスターは召喚された際、全ての相手モンスターの攻撃力を0にする効果がある。これで上昇していたオレンジガジェットも突破できるようになる。
「ええ! そんなー!」
いくら戦闘破壊されなくても、ダメージが通ってしまっては意味がない。さなはさらにミリアへ追い打ちを叩きつける。
「月光舞獅子姫は二回攻撃が可能! そして一ターンに一度、モンスターを攻撃したダメージステップの終了時に特殊召喚されたモンスターを全て破壊する! オレンジガジェットへ攻撃!」
オレンジガジェットが攻撃を受けるも、効果で素材を取り除いて耐える。だがダメージステップの終了と共に月光舞獅子姫の効果が発動して爆散した。隣にいるスカイガジェットも素材を一つ失う。
「だけど素材を無くす度に手札からガジェットが……あ」
ミリアは効果でガジェットを補充しようとしたが、無駄だということに気づいた。なぜなら場には攻撃力0で棒立ちのスカイガジェット、そして攻撃回数を一回残した月光舞獅子姫とホープ。攻撃力3000級の攻撃を三回など、例えライフが全快でも即死だ。
今のミリアのライフは7400から3500減って2900。ガジェットを守備で出して壁にしても、スカイガジェットが一発貰えば終わり。
「月光舞獅子姫! スカイガジェットに攻撃!」
「あーっ!」
ミリアは爆散し、勝負は付いた。
「帰るよ」
「はい……」
ミリアはさなに引きずられて帰っていった。カードももちろん回収されることとなる。
「なるほど、そういうことなんでスね」
回収されたカードを見て、アスルトは概ねこの奇妙なカードの仕様を把握する。
「どういうこと?」
「一度カードになってもより強い精神に惹かれて変異するみたいでス。ミリアさんは少々特殊な精神性なのでこういうナンバーになったんでスけど」
ミリアは人格を肉体にダウンロードできる特殊な人造人間。故に他の人間と精神の構造が違うのでナンバーの法則がいつもと変わった様だ。
「そしてこれは、かつてハートランドにばら撒かれたカオスの欠片」
「カオスの欠片?」
そしてアスルトはその正体にまでたどり着いていた。さなはそのことについて聞いた。
「カオス?」
「かつてハートランドを中心に世界の侵略を試みた別世界、バリアン世界の神がばら撒いたものの一部みたいでス」
「へぇ」
ともあれ、そんなものがなぜ一般販売のパックに紛れ込んでいるのか、疑問は尽きない。
「どちらにせよ、行ってみないとわからないよね、ハートランド」
謎を解くため、さなはハートランドの大会へ行くことを決めた。
次回予告
あの事件で多くを失った者がいた。あの事件で生きる意味を得た者もいた。だが両者は同じ事件の犠牲者。争い合う理由はない。その戦端は立ち直った者への嫉妬か、それとも行き場のない怒りの発露か。
戦うべきを間違える復讐者に、本懐を遂げたかつての復讐者は何を思う。
次回、『決闘を憎む者』
in to the VRAINS!