騒動喫茶ユニオンリバー The novel 異端たる双眸 作:級長
オリジナル要素入れ過ぎてユニオンリバー感無くなったからなんとかしなければならなくなった。
本当にすまない……
☆謝罪会見
ガンプラネクサスオンライン、通称GBN。それはガンプラバトルを行える、新感覚のオンラインゲームである! まさにゲーム世界へダイブしているかの様な他に無い感覚のゲームは、ガンプラを嗜まない層にもウケて今、世界で最も熱いコンテンツになっているのだ! メディアミックスも盛んであり、アニメ二回に外伝漫画と関連した商品の発売もある。
そんなGBNの新たに開かれたディメンション、エルドラで会見が開かれていた。荒野の村に似合わないパイプ椅子や机が並べられ、カメラを持った取材人が押しかけていた。そこにやってきたのは、ワインレッドの髪をしたスーツ姿の女性ダイバーだった。動き易さと女性らしさを兼ね備えた肩までのセミロングで、瞳はオレンジだが左目に傷がある。眼鏡を掛けており、髪色以外は普通に社会人っぽい。彼女がやってくると同時にフラッシュが焚かれ、カメラが様子を収めていく。画面ではなく会見の場に『※フラッシュの明滅にご注意下さい』と書かれたテロップが表示される。
「えー、本日は私、級長の開いた会見にお忙しい中お集まりくださりありがとうございます」
その女性ダイバー、級長が頭を下げると『機動戦士ガンダム00』に登場した記者、絹江・クロスロードっぽい人物が質問を投げかける。
「これは何の会見ですか?」
「一言で申すなら、謝罪会見です」
会見をするとは聞いていたが、内容までは聞かされていなかった。しかしGBNの運営に関わる人間の会見となると、これだけ多くの報道関係者が集まる。GBNの影響力を思い知らされる。
「何か最近、トラブルがございましたでしょうか? 私の記憶ではGBNの運営はつつがなく行われているはずですが?」
絹江は最近のことを思い出して言った。特に謝罪する様な不具合や不祥事は起こっていないはずだ。それを聞かれると、級長は変な声で泣きながら机に突っ伏し、内容を明かす。
「この度はハァアンンハハンン! 小説版『騒動喫茶ユニオンリバー』の大幅な路線変更に皆さまを巻き込んでしまってェエエエエェェェ!」
「うわメタい話だった上になんか泣き出した!」
突然の奇行に絹江は当たり前だがドン引きした。そんな中、冷静に話を聞こうとするジャーナリストもいた。
「フリーのマリー・ファスティアです。一体なぜこんなことになってしまったのですか?」
「思いつく限りの要素を入れようとしたら……収集が付かなくなってしまい、本来やる予定だったホビー関連の話が出来なくなりつつあったので本来のテーマに立ち返るという意味でヘエエンヘエエエエェェ!」
「野々村すんな!」
要点を説明しながらも号泣会見を続ける級長。一体何がどうなっているのか。精神状態が心配である。ツッコミはどこからともなくVガンダムの主役であるウッソ・エヴィンが行っている。彼以外はこの会見の変な所を意識していないのか、普通に質問していく。
「OREジャーナルの桃井です。なぜ思いついたアイディアを導入する前に精査しなかったんですか?」
「それは……その……」
言葉に詰まる級長だったが、突然隣にいた着物の中年女性が適切な言葉を囁く。だが、マイクは性能がよく声を拾ってしまう。
「頭が真っ白になって……」
「頭が真っ白になって」
「おおい! 誰だあんた! そんなとこで何やってんだ!」
一人を除いて突如出現したこの異様な女性に反応しない。そんなまるで笑ったらケツバットを受ける企画の様な空気の中、会見は進んでいく。
「それで売れ残った商品の餡子を削ぎ落して翌日に使いまわしたわけなんです」
「それ違う不祥事ぃ!」
「フリーの神宮寺です。当初はパートの判断だったと説明していましたが、本当は本社の指示ではないんですか?」
「あれこれ僕がおかしいんですか? 荒んだ心に武器持っておかしくなったの?」
この会見において正常な判断が出来ているのはウッソだけなのか。ここまで自然に馴染んでいる様子を見ると、自分こそが狂っているんだと思ってしまう。あまりに騒ぐ彼を級長が嗜める。
「おい煩いぞウッソ。おかしいのはお前だ。思い出せ、急に虚空へ向けて自己紹介したり電子レンジに入れられたダイナマイトとか意味の分からない比喩をぶちかましたりしてんだろお前」
「そんな記憶ありませんよ!」
謎の奇行をねつ造され、憤るウッソだったがスルーされてしまう。
「先ほどの質問ですが、確かに私がパートに『あいつにタックルしてこい』と指示しました」
「また事件混ざってるし……」
もう何の話だったか分からなくなった時、突然スタッフの一人が急に叫びだす。
「GBNブランドは落ちません!」
ウッソはもうツッコミを放棄した。もはや意味不明だ。
その時、異変が起きた。この会見は地上波のテレビではなく、動画投稿サイトの生放送機能で配信しているのだが、その様子をチェックしているスタッフがコメントの様子がおかしいことに気づいた。
「あの、何か不具合みたいですが……」
「ニコニコの不具合なんていつものことだろ。鯖強化せんとリアルイベントばかりやりやがって」
最初は気にもしなかった級長だが、複数の媒体で同じ不具合があったのでスタッフは報告する。
「それが、YouTubeやGBN内の動画共有サービス、Gtubeの方でもトラブル発生です」
「なんだって?」
級長はスタッフが覗いているモニターに駆け寄る。運営側の画面が映っているのだが、コメントに『放送が変わった?』『電波ジャックかな?』といったコメントが流れている。どの媒体でも似た反応が見られる。
『種死のオーブ侵攻直後みたいだな』
『ダカール演説かな?』
『これって東京都知事だよね?』
「何が起きている……?」
周囲の取材陣や級長はゲーム内のブラウザ閲覧機能で生放送の様子を確かめる。すると、タイトルは『GBN緊急会見』になっているのにも関わらず、テレビでよく見るおばさんが映っていた。他の生放送でも同様の事態が起こっており、大規模なハッキングと思われた。
「これって、東京都知事の大海菊子では?」
神宮寺真理が真っ先にそのおばさんの正体に辿り着く。日本初の東京都知事である大海がこんな犯罪紛いの大規模なことをやらかして、何をするつもりなのか。
『皆さま、こんばんは。私は東京都知事、大海菊子でございます。ご存知の通り、この閉鎖的な男社会とも言える日本の政界において、初の東京都知事となりました。そして、オリンピックの責任者としての大役を得ました』
その物言いが気に食わないのか、スタッフの一人が声を荒げる。
「まるで自分の力だけの功績みたいに! 有権者の支持あってこそだろう!」
『これからとても大切なお話をします。オリンピックまで後半年を切りました。しかし残念なことに、現在の日本の惨状はとても世界に誇れる開催国のものではありません。そこで、私達は「オリンピック推進委員会」を立ち上げ、オリンピックの成功を目指すと共に日本を世界に出しても恥ずかしくない立派な先進国の手本とすることを誓います』
放送はコメントなどを反映する仕組みではないのか、知事は一方的に話し続ける。
『まず行うべきは我が国の恥ずべき文化、児童ポルノの規制です。その促進源となっているコミックマーケットの即時中止、出版社に対する大規模な規制強化を行います』
「おいおい……出版社の九割は東京に集中してるんだぞ?」
知事が言っていることは実現不能な絵空事ではないとスタッフは判断する。条例レベルでも東京を抑えてしまえば日本の出版界全体を規制することは容易だ。
「そして、先進的資源であるガンプラバトルネクサスオンラインのシステムをオリンピックの実行委員会が預かり、パブリックビューイングの為に運用することをお約束します」
「何ぃ!」
突然の決定に記者やスタッフからブーイングが飛ぶ。一企業の所有物を勝手にそんなことしていいわけないのだが、知事はそれが当然という顔をして語っていた。
「カツラギさんは何か言ってた?」
「いや、特に……」
級長は近くのスタッフにゲームマスターの動向を聞く。当然、ゲームマスターがこんなユーザーの反発を買う真似を行うはずもなく、スタッフもその手の話は聞いていない。
「また、ポルノ問題に加えて児童労働を促進する女性アイドルの活動禁止、不当に女性を戦場に立たせるアクトレス制度の廃止などを予定しています」
「一体何をする気なんだ……?」
突然の電波ジャックに無茶苦茶な宣言、放送を聞いていた人は殆どが意味を理解出来なかった。これが、人類最後のオリンピックの幕開けになるとも知らず……。
というわけで仕切り直し!
ユニオンリバー、始まるよ!