騒動喫茶ユニオンリバー The novel 異端たる双眸   作:級長

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 浅野陽歌

 誕生日:3月30日
 血液型:B型
 身長:130㎝
 体重:26㎏
 種族:人間(地球人、純日本人)
 年齢:9歳
 学年:小学4年


忌むべき生命

 東京都庁では、ある緊急記者会見が開かれていた。都知事が鳴り物入りで明かした病院島が僅か数時間で吹き飛び、SNSにその島が持つ処刑場としての機能が明かされたのだ。それも、写真ではなく都知事本人がその詳細を語る映像として。

「この映像は本当なんですか?」

 記者が質問を飛ばすが、これは台本通りだ。オリンピック利権を獲得する為に、大手メディアは大海都知事を支援している。

「もちろん、よくできたフェイク映像です。病院島の爆破という許しがたいテロについては、現在犯人を捜索しています」

 ユニオンリバーの凛によって暴かれたものの、とりあえずテレビと新聞がそう報じればこの騒動は収まる、と都知事は思っていた。

「では街中に落ちて来た都知事の遺体は?」

「それもフェイクです」

 輸送作戦中にベイルアウトして墜落死した都知事に関しても一環してフェイクだという。この主張を大手メディアが取り上げればなんとかなる。そう都知事は思っていた。が、流石にツイッターやインスタに沢山写真が広まってしまったので収拾がつかない。

 さらに会見の時刻と遺体発見の時刻から、同時刻に二人都知事がいたのではないかという疑問まで浮かんでいた。とりあえずフェイク、デマの二言で誤魔化せると思っている都知事だったが、さすがに旗色が悪くなっていた。

「警察だ!」

 その時、会見会場に警察が踏み込んできた。赤いネクタイの刑事を先頭に、かなりの人数である。

「大海菊子、破壊防止法違反の容疑で逮捕する!」

 刑事は逮捕状を手にしている。罪状は、死刑一択の破壊防止法違反。考えてみれば当然だ。国に黙って変な島を作ったり、武装集団を率い、挙句公共の道路を占拠しての暴走行為。黙って見過ごせというのが不可能なレベルだ。

「警察なんて呼んでいませんよ。それとも腐った男組織お得意の弾圧ですか?」

「特殊状況課刑事、泊進ノ介だ。物的証拠は揃っている」

 グローバルフリーズを発端とするロイミュード関連の事件、通称どんよりに対応する為に作られた特状課を再結成させるほど、警察は今回の事態を重く見ていた。刑事、泊は手錠を掛けるべく都知事に迫る。逃げられない様に、他の警察官も周囲を取り囲む。

「あなたに私を捕まえることはできない!」

 都知事は何か波動の様なものを吹き出す。すると、周囲の動きがゆっくりになる。これは、もう起きるはずのない出来事であった。

「どんより?」

「ん? なぜ動けるのですか!」

 大海を取り押さえようと警察官が動くが、その動きはスロー。しかし、泊は普通に動けている。

「俺は、刑事で、仮面ライダーだ!」

 泊は青と銀のベルトを取り出し、腰に巻く。

「なるほど、それならこれを持ち出した意味があるというもの」

 都知事の姿は忽ち、黒いバックルのベルトを巻いた怪物の姿になる。これが本当の姿だというのか。

「ロイミュード? 都知事は擬態だったのか?」

「擬態? 本物ですよ」

 ロイミュードの胸のプレートには通常、番号が刻まれているのだが、彼女にはない。そして、その動きは抑揚がなく、まるでベルトに操られているかのようであった。

(ロイミュードかもしれない、とは思っていたけど通りで繋がらないしトップギアにもならないはずだ……)

 泊は逮捕に踏み切る前から感じていたもやもやの正体に気づく。まだ真相は見抜けないが、相手が武力で反抗するならば取り押さえねばならない。

「変身……!」

 都知事はベルトのキーを回し、変身する。その姿に、彼は見覚えがあった。

「ゴルドドライブ!」

 かつての強敵の姿。しかし、ここで負けて取り逃がすわけにはいかない。彼はアイテムをベルトに装填すると変身する。

「変身!」

『シグナルバイクシフトカー! ライダー! デッドヒート!』

 白と赤の仮面ライダー、デッドヒートドライブ。本来の装備が封印されている今、この姿で戦うしかない。

「カビの生えた古臭い存在、仮面ライダー。カメラの前で跪かせて新時代がどういうものか教えて差し上げましょう」

 自信満々の都知事。果たして仮面ライダードライブは、万全でない状態で最強の敵と同じ存在に勝利することができるのか。

 

   @

 

 Tウイルス感染の疑いがあった陽歌は、BSAAが指定した病院に一時入院することとなった。それはいつもお世話になっている松永総合病院の本院である。個室の病室を宛がわれ、ベッドに寝ながら陽歌は検査と治療を受けていた。

「今のところ、ウイルスはワクチンで抑えられているよ。安心して」

 主治医である松永順も新型肺炎の研究を行うべくここを訪れており、偶然ではあるが鳴れた相手による診察で陽歌も安心出来た。

「チェンバーズ教授のワクチンはベロニカを除くT派生型のウイルスにも有効だから、無いと思うけど今後そういうウイルスに感染する危険があっても少しは役に立つよ。もう一人の感染者はワクチンの過剰摂取という特殊例でね、親族とも絶縁状態だし、BSAAがワクチンの改良に役立てるため回収したそうだ」

 順は診断の結果を伝える。すっかり忘れていたが、ゾンビ化した陽歌の担任は結局助からず、そのままサンプルとして弔われることもなく保存されることになった。子供を導くべき教師が率先してその子供を傷つけたのだ。無為な死でない時点で、その罰としては軽すぎるくらいだ。

「そうなんですか」

 陽歌もそれについて特に何の感情も湧かなかった。BSAAが確保しているなら大丈夫か、くらいなものである。一応頭も潰したし、まかり間違って復活することもあるまい。

「それでですね、あなたについていろいろ分かりましたよ。お目当てもありましたし」

 同席していたエヴァは救出作戦に参加せず、当初の目的であった陽歌の母子手帳回収などを行っていた。予防接種の状況を確かめるため、順はエヴァから母子手帳を受け取る。陽歌も起き上がって話を聞こうをした。

「随分ボロボロだけど……意外だ。ちゃんと予防接種を受けている」

「母子手帳自体は彼の自宅だったアパートにはありませんでした。そこで両親をちょっと『インタビュー』して、陽歌くんの本当の両親を見つけましたよ」

 エヴァはあの後、なんやかんやあって他の場所を探す羽目になった。そして、全ての事実を知ることになった。

「僕の……本当のお母さんとお父さん?」

 陽歌は物心ついた時から太陽の両親が自分の両親だと思って育って来たので、それは意外な事実であった。生まれついての特異な色素が原因で、顔が似ていないのはもう当然なので気にしなかったが、エヴァや順など外から見れば外見は元よりあの両親や弟からこうも善良な人間が生まれること自体不思議であった。

「ええ、あなたは太陽と書いてソーラーくんが『お爺さん』や『お婆さん』について言及したことを覚えていますか?」

 エヴァはつい先日、陽歌の弟である太陽が言っていたことについて指摘する。彼は『お前に何が分かる! 生まれた瞬間から邪魔者がいる俺の苦しみが! お前がいる為に、ジジイとババアがお前を拾ったせいで……俺たち家族は!』などと被害者ぶった随分勝手な理屈を振りかざしていた。

 そのジジイとババアが関係しているのだろうか。

「戸籍上は、ソーラーの母方の祖父母、浅野仁平と浅野さとがあなたの本当の両親です。高齢故に現在は亡くなっており、青森の実家は処理の費用を捻出出来ないことが幸いし、結構荒れていましたが残ってはいましたよ」

「その人達が、僕のお父さんとお母さん……」

 陽歌は意外とも言える事実に戸惑う。だが、一つ引っ掛かった。エヴァは彼らを『戸籍上』としか表現しておらず、太陽もその二人が陽歌を『引き取った』としか言っていない。とすれば彼らは養父母であり、産みの親ではないのだ。

「なんだ? じゃあ偉大な血縁フラグかなんかか?」

「最初から言っているならともかく、終盤で結局血縁でしたー、って展開多いよね最近」

 七耶とミリアが病室に入ってくる。入院中、というより東京が自粛の嵐で遊びに行けないので病室で暇を潰せるアイテムを集めて来たところだ。

「うーん……正直本当のことを話すのはお爺さん達の意向を継いで大人になってから、としたかったのですが、このまま推進委員会との戦いに巻き込まれ続けると『ホウジョウエムゥ!』される可能性が高いので先にネタバレしておきますか……」

 エヴァは陽歌の出自について、何か語ることに抵抗があるのか悩んでいた。それほど、彼の生まれは簡単に話せない内容だというのか。

「既に私達は貴方がこの病院で目を覚ます前に、このことを知っています。ですが、いつもと変わらなかったでしょう? アステリアさんとお母さんも知っていますが、電話した時いつも通りでしたよね。それを前提として聞いて下さい」

 エヴァは陽歌にそう伝える。七耶やミリアはもちろん、保護猫のダニエルの様子を聞くために電話したアステリアやアスルト、頭を打ったので一応検査するために病院へ来ていたさなとナル、カイオンのメンテをするために病院の駐車場で会ったヴァネッサは確かにいつも通りであった。

 僅かに態度が変わったとしても、常に他人の顔色を窺って生きてきて、ユニオンリバーの仲間に見捨てられることを恐れて彼らの変化には敏感になっている陽歌が気づかないはずもない。

「……」

 やけにハードルを上げにくるが茶化す様子は一切無いエヴァ。そんな彼女を見て、陽歌も息を飲む。

「僕からも言わせてもらうよ。遺伝子なんていうのは所詮、目安に過ぎない。仕事がら、理論上DNAが完全に一致している一卵性双生児を何組も見て来たけど、漫画みたいに完全なコピーという例はなかったよ。顔こそ似ているが、それ止まりだ」

 順さえ、医学の観点から釘を刺す。

「私だって、八千年も封印されていた超攻アーマーだ。それも干からびたミイラ一個の為に起きた悲劇の尻ぬぐいをさせられるために産み出された、な。だから人間がどんな生まれ方をしようが、宇宙では塵みたいな誤差だ」

 七耶は自身の生まれを例に出す。もう人間の単位に収まらない壮絶な話である。西暦が未だに二千年程度ということを考えると尚更だ。あと四回は蘇我入鹿を暗殺して南北朝で争い、幕府開いて外国に攻められて幕府開いて戦国やって幕府開いて黒船が来て外国と三回戦争して国の体制が変わってオリンピックして万博してオリンピックして万博してもう一回オリンピック出来る余裕がある。

「何があっても、陽歌くんは陽歌くんだよ! 私が保証する! 肉体はただの器に過ぎない!」

 本当に肉体がハードウェアなミリアにそう言われると説得力が半端ないのであった。思えば、陽歌を救ってくれたのは人間ですらない彼女達だ。

「そ、そこまでの話なの……?」

 あまりのハードルぶち上げっぷりに陽歌は身構える。どうせ実は宇宙人とか魔族のハーフだか生まれ変わりだとかの大した話やないんやろ、騙されんぞとズッコケる準備を整えた。

「準備はいいですか? ありのままを伝えますよ?」

「うん。例え、僕が人間じゃないとしても、むしろ納得できる気がするから」

 陽歌は覚悟を決めた。エヴァはゆっくり、彼の出自全てを語り始める。

「まず、事の始まりは軍人であり、戦後は警察官を務めた浅野仁平が定年後、部下からある犯罪者を捕まえたという連絡を受けたことです」

 警官であった仁平は定年退職していたものの、その犯人が残した物の厄介さから相談されることになった。

「逮捕した女は身ごもっていました。しかし、堕胎を望んでいたらしく流産を狙って自傷を繰り返したものの失敗。子供は生まれたものの、母親であるその女は死んでしまいます」

「その時生まれたのが、僕なんだ……」

 陽歌は大方の事情を察した。その様子では父親もいないだろうし、憐れんだ仁平らが引き取ったという流れは想像できる。ハードルを上げた割に、大した話ではなかったので陽歌は安心する。人間であるという前提さえ覆らなかったのだから。

「それでお爺さん、じゃなくてお父さんとお母さんが僕を引きとってくれたんだ」

 話を纏めた陽歌だったが、エヴァはそれを否定する。

「いえ、普通そういう場合は施設に預けられるんですよ。ましてや仁平氏は退職していて、事件については知る由もなかった……なのに現職の後輩から相談されています」

「……どういうこと?」

 たしかに、それでめでたしめでたし。今まで親だと思っていた二人は遺産狙いで引き取っただけでした、では済まない要素が隠れていた。仁平が現職で事件の顛末を知り、陽歌を引き取ったなら自然な流れだ。だが、本来話が流れる余地のない退職警官にわざわざ相談が舞い込んでいる時点で何かがおかしい。

「施設では預かれなかったんですよ、あなたは」

「多分、目の色が原因で虐められるかもとか……」

 エヴァの結論に、陽歌は自分なりの予想を述べる。

「その様な不確定な要素で国の福祉施設が引き取りを断ることは無いな」

 だが、それは順に否定されてしまう。国のセーフティネットは『かもしれない』で身寄りの無い子供を弾き出したりしない。やれ持ち家があるだの車があるだの言いがかりをつけられる生活保護と違い、生まれたての子供を断る理由など捻出しようがない。難病や障害を理由にしようものなら大炎上待ったなしだ。

「父親が、その女性の実の父親だったんですよ。あろうことか、十五歳の娘を妊娠させた……」

「……でも、それくらいじゃ福祉が断る理由にならない。もっと違う理由があるんでしょ?」

 エヴァの告げた事実に陽歌は動揺するが、平坦な目で見れば近親相姦で生まれたというのも保護施設が断る理由にはならない。エヴァは続けるが、あまり乗り気ではない。

本当なら伝えたくもないことだが、今オリンピック推進委員会との戦いを降りたとしても連中は彼がユニオンリバーの一員であること、それまでに自分達へ損害を与えてきたとう逆恨みから、この情報を暴露して利用する危険が高い。その時、陽歌への負担を少しでも減らすにはこうするしかないのだ。

 死体を見ても動じなかったり、ゾイドに乗って前線を張ったりするせいで強いメンタルの持ち主と思われがちだが、陽歌の心は本来傷だらけで今にも崩れる寸前なのだ。それを守るには、予測しうる精神攻撃の手札を減らす他無い。

「そうですよ……。あなたの母は中学を卒業した後、すぐに結婚し身ごもりました。しかし、父親はかつて教え子でもあった自分の娘と関係を持ちました。同じく教え子であった夫から奪う形で……」

「話がよく分からなくなってきた……」

 昼ドラか某メーカーのゲーム作品の主人公を中心とした家系図か、そのくらい混沌とした人物関係に頭を悩ませながら陽歌は整理する。齢九つながら雑食系読書家。昔の小説や歴史書ならこの程度にややこしい関係は普通に出てくるので自分のことという現実に目を背ければなんとか整理可能だ。

「つまり僕の産みの父は教師でありながら、実の娘であり教え子だった僕の産みの母を、自分の教え子から寝取ったと……」

「話はもっとややこしいですよ。何せ、寝取って無理矢理手籠めにしたとかではなく不倫の末にそうなったんですから」

 つまり、無理矢理ではなく愛し合ってこうなったと。陽歌は頭を抱える。夫がいるのに実父と事に及ぶとか淫売ってレベルじゃねーぞとか誰か止めろよとかツッコミが頭を巡る。

「ん? 待てよ? 今更だが、それじゃあ小僧の父親が産みの母親の父親とは限らねぇんじゃねえか?」

 七耶はふと、あることを思った。さしもの彼女も初見では話のインパクトが強すぎて疑問を感じる暇が無かったらしい。

「何はともあれ、お爺さんとお婆さんがあなたを愛して行く末を案じた、それが事実よ」

 ミリアはいいこと言っている風だが多分理解を放棄している。確かに真理ではあるのだが。

「というと?」

「だってよ、産みの母は夫との間にデキてたんだろ? そっちが父親の可能性なくないか?」

 陽歌は七耶の感じた疑問を聞く。確かに、十月十日という妊娠期間の長さが故にかつては女性が離婚してからある程度の日数経たないと再婚できなかった。それも、再婚後に生まれる子供の父親を確実にするためだ。こんな混沌とした状況では、陽歌を近親相姦の不倫の末生まれた子と断定するのは難しい。

「そこについては夫に子供を預けようとして断られた警察が頭抱えたり、民事のなんやかんやで必要になった為、DNA鑑定が行われました。結果として父親は母の実父であることが確定しています」

 エヴァが詳しい説明をする。本来生まれるはずの愛の結晶を蹴落とし、母の命まで奪ってこの世に生まれた陽歌は夫の側からすれば忌むべき生命そのものだ。

「さらに悪いことに、日本のメディアがこの話を美談として脚色し、あなたの父親は一躍時の人。夫の側からすれば手が届かなくなった本来憎むべき相手の丁度いい代用品、真相など知らない知りたがらない愚民からすればヒロインの命を奪った間男の子。もう混乱がえらいことになりそのまま施設に預けたのでは他の子の安全が保障できないということなので困り果てた担当刑事は先輩に相談することにしました」

 そこにマスメディア特有の『数字取って流行作れば後は野となれ山となれ』が発動し状況は一層混沌。

「まさかコンビニの内引き事件の捜査がこんな結末を招くとは、と退職した先輩、浅野仁平に語った後輩は何とかあなたが平穏に暮らせる環境を整えたかったのです。そこで仁平氏は自分の遅くに生まれた子としてあなたを引き取りました。警察もあなたの行く末は絶対に漏らしませんでした。そうして所詮は民間人のメディアに追跡が不可能となり、時が過ぎて事件が忘れ去られるのを待ったのです」

「お父さん……お母さん……」

 陽歌は胸の前で手を組む。気づかなかったけど、自分は大きな愛に支えられていた。辛くて苦しいのに、なんで自ら命を絶とうという気にならなかったのか、周り全てが信じられない状況だったのに、なぜユニオンリバーのみんなを信じることが出来たのか不思議だった。

だがそれは僅かな間でも一緒にいてくれた友の存在だけではなく、物心つく前から与えられていた愛情が希望をくれていたのだと実感する。ともすれば希望を希望して苦しみ続ける呪いに等しいものだろうが、結果としてユニオンリバーのみんなにこうして会えた。その事実は確かだ。

「ですが、悲しいことに彼らにも想定外だったことがあります」

 エヴァはまだあるのか話を続ける。ここで終わっているなら、陽歌は仁平らと平穏に暮らし、両腕も健在だっただろう。

「まず、この事実を知っているのはほんの僅かな人のみ。そして善良な彼らがそれを語ることはまずないのです。しかし、悪意を持った人間がそれを知ることになってしまった。それが、実の娘ということが第一の誤算でした」

 遅くに生まれた子、と外にはいくらでも言えるが、自分の娘という非常に内側の存在には誤魔化しが効かない。当然、母の妊娠という重要な情報が無いまま子供が生まれたとだけ伝えられれば不信感を抱く。そして問いただされれば、正直に答えるしかない。ここで嘘を言えば実の娘を信じていないと言うのと同義な上、陽歌の存在そのものが後ろめたいと彼を否定することになる。それは彼らの正しさから、出来ないことであった。

「そして第二の誤算が娘の住む街、則ちあなたが将来的に住むことになる街があの金湧市であるということでした。普通の街なら事実を言いふらしたところで虚言癖と思われ他者から距離を取られますし、虐待の痕跡があれば教師に気づかれ通報されます。そして児相も動いて保護されるでしょう。しかしマーベル市民以下の民度しかないあの街ではそうはいきませんでした」

 エヴァの言う通り、あの忌み地は異常なのだ。それを込みで考えても、外見が特異なだけの子供を親が文句を言わないからと言って集団で虐待するだろうか。そこには陽歌の出生という自分が正義になれる条件の存在が大きく関わっていた。

「ま、とにかくあの街の連中がろくでもないことには変わらんな」

 七耶はあっさり結論付ける。それにしても、あの街で大海都知事が何をしていたのかわからない。殺しても殺しても蘇るなど、ますます不気味な奴である。

「仁平氏は莫大な遺産と引き換えにあなたを引き取る様に遺言を残していたのですが、自身の死後出来るのはそのくらいでした。足取りを断つために頼れる人間も僅かですし、まさか娘が子供を虐待する様な人間に育っているとは思いもしなかったでしょう」

 こうして、陽歌はユニオンリバーに保護されるまで金湧で過酷な暮らしを強いられることになった。これが浅野陽歌、出生の秘密である。

「ああ、それとシエルから質問があったのですが、何か怪異に巻き込まれた経験がありませんでしたか? 一度や二度ではなく、最低八回以上」

 話題を切り替える様に、エヴァはシエルから預かった質問を陽歌にする。マナとサリアのマネージャーにして万能の魔法使い、シエル・ラブラドライト。彼女の力なら分からないことなど無さそうなものだが。

「え……どうかな?」

 陽歌もその辺は曖昧だった。ただでさえいい思い出が少なく、常に極限状態にあったので、過去の記憶はところどころ抜けている。酷い時は数か月すっぽり抜けているなんてこともざらだ。

「そうですか……。あなたに適した魔法が無いか調査をしていたシエルが、あなたの中にある称号を見つけたので気にしていたんですよ」

 シエルは陽歌の欠損した腕や内臓を補える魔法を探して調べものをしていたのだが、彼の特性を調べる中であるものを見つけた。

「称号って、なんかゲームで条件を満たすと手に入るあれ的な?」

 ミリアはそんなわけないだろうと思って適当なことを言う。

「そうですねぇ。咲良やキサラ、店長代理のルリさんがいた世界ではその活躍に応じて魂に称号を刻まれるんですよ。もっとも、このセプトギア時空があらゆる世界と合流して混沌とする様になってからは地球でも同じことが起きる様になりましたが」

「あ、当たってた」

 しかし、エヴァによるとそんな認識でいいらしい。

「肝心の称号の名前は、『金湧第三小七不思議の解決者』。つまり学校お馴染みの七不思議を全て撃破したことを示します」

「そんな楽し気な肝試しなんかしたかなぁ……」

 よく倉庫やトイレに閉じ込められて学校で夜を明かすことはあったが、そんな体験をしたのだろうか。もう慣れ過ぎて分からない。

「楽し気なんてとんでもない。本来なら七不思議クラスの怪異は一般人が一個でも遭遇すれば生きて帰るのも難しいんですよ。逃げるならともかく、それを倒すとなると……」

 エヴァによると怪談というのはそういうものらしい。よくある怪談では無我夢中で逃亡、お寺の住職の力を借りてなんとか回避、というのが基本であるため能動的に撃破することの難しさがよくわかる。

「一般人にしては高い霊力も注目です。推測ですが、状況的に生死の境を彷徨うことが多かった可能性が高く、この世の淵に行って帰ってくることで霊力を底上げ出来たのでしょう。そのおかげで七不思議撃破も不可能ではなくなっていたのかも」

 シエルの推測をエヴァは語る。

「理論上は誰でも可能な霊力の上昇方法ですが……危険過ぎて誰もしないといいますか……」

 こうしてみると陽歌は外見以外心底、普通の人間でしかないのだと思い知らされる。これだけ特徴的な外見なら、少しくらい特殊能力の一つあってもよいのだが、あるのはリスクこそあれ誰にでも出来る方法で鍛え上げられた霊力くらい。

「それと、仁平氏は『あるもの』をあなたに残しましたが酷く錆びていて使えないので修理中です。これを先に渡しておきますね」

 エヴァは陽歌に、桐の小箱と筆を渡す。おそらく、へその緒と彼の髪で作った筆だろう。本当に仁平とさとは我が子の様に陽歌の幸せを願い、行く末を案じていたのだと伝わる品だった。

「お父さん……お母さん……」

 陽歌は記憶にない両親に、何を想えばいいのか分からなかった。突然突き付けられた事実を、飲み込むにはまだ時間が掛かる。

「そして、修理中のものというのは模擬刀です。五月人形の代わりだったのでしょう、仁平氏が従軍時代に愛用した軍刀の刃を落としたものに拵えを施したものがあったのですが……拵えは朽ちて刀身は錆びていました。あなたに渡せる状態まで復元している最中です」

「ありがとう、エヴァリー。何から何まで。僕だけだったら、二人の祈りに辿り着けなかったから」

 エヴァの暗躍により、陽歌という存在の仔細が明らかとなった。例えその生誕を望まれることなく、忌むべき生命だったとしても愛した人がいたのだ。

 一通り話が終わると、丁度検査を終えたさなが病室にやってくる。

「あー、検査疲れた……じっとしているだけってのも大変……だ、ね……」

 彼女は部屋に入るなり、突如停止する。

「さな?」

「さなちゃん?」

 陽歌とミリアはさなの様子をよく見る。顔が火照り、息が荒い。急に暑くなったせいだろうか。否、院内は空調が効いているので問題ないはずだ。それでは噂の新型肺炎による発熱か? それも否、彼女は部屋に入るまで平然としていた。

「そぉい!」

 さなは突然、飛び上がって陽歌のベッドに飛び乗り、彼を押し倒す。

「さ、さな?」

「一体どうしたの?」

 ナノマシンで構成された尻尾を振り、陽歌を見つめる。彼の過去を知っての行動ではないのは明らかだ。月の住民である彼女に地球人の痴情の縺れなど無関係もいいところなのだから。

「わっかんないけど……なんか欲しい!」

 その理由はさな本人にも分かっていなかった。とにかく、順と七耶も協力してさなを引き剥がすことにした。

「可能性があるとすれば……いやまさか……!」

「おい、手伝え!」

 七耶がエヴァに要求するも、こいつは面白の味方である。

「乱暴するんでしょ? 同人誌みたいに」

「アホ言ってないで手伝え! そしてお前も自分で止まれ!」

「む、無理! なんか抑えが効かない!」

 本来静かであるべき病院は、原因不明のどったんばったん大騒ぎに包まれていた。

 

   @

 

 作戦に失敗した【福音】であったが、心配事はそんなことよりも愛機のゾイド、タマのことであった。

「怪我が大したことなくてよかった」

 撃退こそされたが、傷は浅く軽いメンテナンスで復帰できそうだ。一方、海上でユニオンリバーの別動隊と戦った【双極】姉妹はたった一人に撃破され、重傷を負った。

「きっと話せば戦わなくて済むはずなのに……」

 生まれながらの幸運ゆえ、人の悪意を見ずに済んで来た【福音】には対話ができない存在がいること、そしてその筆頭が自分達の上司である大海都知事だということを知らない。だからこそ、ユニオンリバーや秋葉原自警団とも対話で解決を図ろうとしている。

「やぁ、久しぶりだね」

 そんな彼女に、声を掛ける人物がいた。大学生くらいの、爽やかな好青年であった。手首には数珠の様なアクセサリーを巻いている。

「ん? 刀李?」

 彼は天竜宮刀李。その道では知らない人はいない霊媒師の息子である。都内の大学に通い、【福音】も友人として付き合いがある。見た目通りに誠実で優等生な上、スポーツ万能、家系も特別と完璧そうな人物であった。

「ここでは【福音】と呼んだ方がいいかな? 呪い対策なんだってね」

 家柄の都合、フロラシオンがコードネームを名乗る理由を知っている。しかし、特に霊媒業界にツテの無いはずの大海都知事がなぜ急にそんなオカルトじみたことを真面目にやり出したのか、【福音】は彼に相談したが分からなかった。

 曰く、呪いの被害に遭っても普通はそれが呪いによるものだとは断定できず、疑いを持っても対策などしようがないとのこと。まるで呪いが実在し、自身の計画を妨害出来るだけの力を持っていることを初めから知っている様な動きだった。が、そこまで呪いを恐れるのなら実名を出さざるを得ない政治家になどならないはずだ。

「それとも、ふくちゃんと呼んだ方がいいかな?」

 刀李は冗談めかして言う。本当の名前さえ分からなければ呪い対策としては十分なのだ。正直、あだ名レベルでも問題ない。それを知ってのことだろう。

「やだー、なんかそんな風に言われると友達以上みたいじゃない」

 【福音】は少し照れる。控え目に言っても整った顔立ちの青年に、そんな風に言われるとまるで恋人同士の愛称みたいで照れ臭く感じてしまう。真面目なだけでなく、場をほぐすのも上手いのが鷹人という人間だ。

「僕はそれでもいいけど?」

「んんっ……、それよりこんなところまで何の用?」

 ただ天然ジゴロの気があるのはいただけない。そこそこ付き合いが長いので【福音】はそういう勘違いさせやすいところを分かっている。彼女は咳払いをし、本題を聞く。刀李が外出自粛の叫ばれるこのご時勢に、ただ友達に会うために出歩く男でないことは知っている。そして大事な話ほど対面でしたがることも。

「君は早く東京から離れた方がいい」

 突然、刀李はとんでもないことを切り出した。真剣な表情で、突飛なことを言われたので【福音】も固まってしまう。

「それってコロナ疎開しろってこと?」

「いや、肺炎は関係ないんだ」

 最初は噂の新型肺炎の件かと思ったが、彼の聡明さからしてウイルスをばらまきながら医療機関の少ない地方へ移動するコロナ疎開などさせないだろうことは明白だった。

「やっぱり、霊的な何か?」

「そうだね。ここのところ、地脈の汚染が酷い。近々、関東平野でとんでもないことが起きるかもしれない」

 それは災害の予兆を感じたが故のことだった。しかし、今の状況では県を跨いだ移動だけは避けねばならない状況だ。特に【福音】にはここですべきことが残っている。

「でも私ラッキーだから大丈夫!」

 一抹の不安はありつつも、彼女は強がって見せる。彼のことだ。他の友人にも避難を促すだろう。少しでも自分のことで心配はかけたくない。

「君の幸運は不確定要素の塊だ。もしものことがあれば、俺は……」

 しかし刀李の言う通りであった。絶対と思われた自分の幸運が敗れたからこそ、タマは負傷してこのガレージでメンテナンスを受けている。

「突然こんなこと言ってゴメン。君はとても優しい、だから無理をしてしまわないか心配だったんだ」

「ううん、心配してくれてありがとう」

 互いの想いがすれ違い、二人の間に微妙な空気が流れる。それを変えるために、刀李が口を開いた。

「ああ、そうだ。オリンピックとパラリンピックのマスコットのさ、プラモデルがあるんだよ。秋葉原にあるらしい工作室が再開したみたいだから、今度の休みに二人で作りに行こうか」

「へぇ、プラモデルなんてあるのね」

 そんな約束をしながら、二人の時間は過ぎていく。

 

   @

 

「へーい! お見舞いに来たヨー!」

 一富士・デュアホーク・三茄子が陽歌の病室を訪れた。しかし、その有様を見て驚くことになる。

「ジーザス! 敵襲?」

 ミリアはスケキヨの様に床へ埋まり、七耶はうつ伏せで倒れ、鼻血で『犯人はヤス』とダイイングメッセージを残しながら希望の花し、エヴァはサイバイマンの自爆に巻き込まれたヤムチャの様になっていた。

「いや内紛」

 唯一無事な順が状況を説明する。この事態の犯人は天井に首から突き刺さっているさなだ。陽歌はミリアを救助しようと引っ張っている。

「結論から言うと、陽歌くんの発するフェロモンに暴露したさなくんが暴走した。もう体が慣れたから大丈夫だよ」

「人を色情魔みたいに……」

 天井に刺さったままさなは順の出した結論に反論する。随分滑稽な状態だが、半分は自業自得だ。

「うんとこしょー、どっこいしょー。それでも蕪は抜けません……」

 陽歌はミリアの救助を諦めていた。

「お姉さんの株はストップ安だけどね」

「この姿勢にした張本人が何を言う」

 ありえない体勢で普通に話すさなとミリア。陽歌にとっては慣れた光景だが、三茄子からすればトンチキジャパニーズである。順も特に気にせず話を続ける。

「さなくんの様な月の住人はナノマシンセンサーとして獣の耳や尻尾が生えているが、そのナノマシンの最初期型は狼型だったんだ。代を重ねることで兎など個人に合ったタイプに変化するナノマシンが作られる様になった。その最初期型ナノマシンは狼をベースにしているせいで、狼の群れであるアルファ、ベータ、オメガという因子が存在した」

「ふむふむ」

 事の始まりは月の環境に適応するべく開発されたナノマシンであった。狼の群れの因子は、人間社会においては機能しないと考えられていた。

「最初は人間への適合を優先していたからこの因子についてはあまり重要視されなかったんだけど、因子が人間と結びついたことである性質が発生した。まずオメガ因子持ちの発情期、所謂ヒートの発生。オメガ因子を持つナノマシンユーザーが定期的に強い性的衝動に駆られ、あるフェロモンを分泌する現象だ。そうだね、英語圏出身の君にはオメガバースと言えばわかるかな?」

 想定外の事態はこれに収まらなかった。オメガの発するフェロモンに強い影響を受ける者がいたのだ。

「そして、アルファ因子を持つナノマシンユーザーはオメガの放つフェロモンに暴露するとそのオメガへ強い性衝動を覚える。現在、月ではこれらの欠陥ともいえる性質はナノマシンから排除されたが、稀にこの特徴を発現する者がいる」

 そこまでの説明を受け、さなは納得半分、疑問半分だった。

「そこは学校で習ったから知ってるし、私がそのアルファ因子持ちなのは分かったよ。今まで自覚する機会が無かったのも、ただでさえ稀なオメガ因子持ちのヒートに遭遇しなければならないって条件から不自然じゃない。でもなんで陽歌くんが?」

 そう、問題は陽歌はナノマシンユーザーではないではないかということだ。陽歌によって床と腹の隙間に洗剤を流されながらミリアはその疑問を補強する。

「あー、そうだもんね。陽歌くんにはケモミミもケモ尻尾もないからナノマシンは持ってなべべべ! 顔に垂れる! 目が、目がぁああ!」

 倒れている七耶がスマホで『フリージア』を流しながら補足する。

「いや、小僧は立派なナノマシンユーザーだぞ」

「え?」

「そうなの?」

 意外そうなさなとミリアに対して、陽歌はそのことを把握していた。

「なんか驚くシーンで突き刺さったままドアップになって集中線つくのシュールだな……。忘れたの? 僕の義手を繋いでコントロールできるようにしているのはさなから貰ったナノマシンだよ? その作業をした本人が忘れてちゃ困るよ」

 そう、陽歌の義手を欠損部と接合している黒い包帯状のものや、神経を伝達する回路はさなのケモミミと同じナノマシンなのだ。というかジャンクに突っ込んであった四聖騎士の腕パーツを使える様にしたのはさななのだから忘れてはいけない。

「いやー、義手変わった時にてっきりそれはなくなったものかと」

「あー、そうか……」

 だが、陽歌の義手は既にジャンクポン付けの間に合わせやそれの再調整品ではなくなっている。その為さなはナノマシンはもう使っていないと勝手に思い込んでいたのだ。

「月のナノマシンって大元は同じで、使用者個人によって性質が変化するから偶然陽歌くんにオメガ因子が発現しちゃったのね」

「そもそも株分けがさなくんの時点でプレーンのナノマシンを使うより因子発生の可能性は非常に上がっていたよ……」

 まったく手垢の付いていないナノマシンならともかく、貴重な因子発生タイプを分け与えた結果、分けられた方も因子発生の可能性が上がったということである。

「お前が撒いた種ぢゃねーか!」

 結局さなが原因という結論を聞き、七耶はガバっと起き上がる。

「あー、それより聞いて。実はこの2020年はループしてるっぽくて……」

「これ以上ややこしい情報を詰め込むな!」

 三茄子の突拍子もない告白に七耶の頭はパンク寸前であった。

 

   @

 

 アスルトのラボでは、ある調査が進められていた。エヴァがギーガーから回収した大海都知事の遺体、ベイルアウトした結果墜落死した大海都知事の肉片、病院島で凛が撃破した大海都知事、それらの調査である。

「何のトリックも使っていないなら、同じタイミングに大海都知事が四人いたことになりまスね……」

 アスルトはサンプルを解析しながら、不可思議な現象を纏めていた。あの時、壮行会に出席しサウザンドライバーで変身した都知事、陽歌の輸送を行った都知事、病院島でロックマンモデルVとなった都知事、そして都庁で会見をしていた都知事。同じタイミングで同一人物が四人同時に出現しているという事実。

 魔法などを考慮すればいくらでも方法はある。だが、それぞれの都知事は少なくとも撃破された三人が遺体を残していることからして、分身の類でないことは確かだ。

「あ、来ましたね」

 コンピューターが音を鳴らし、遺体の成分解析が終わったことを告げる。これで複数人の都知事という奇怪な現象の正体に近づけるはずだ。

「え……嘘でスよね?」

 その結果を見た彼女は絶句する。真実は単純なものだった。だが、それ故におぞましい。

「こんなことって……!」

 

   @

 

『ヒッサツ! フルスロットル!』

 ドライブのキックが都知事の変身するゴルドドライブに直撃し、彼女を吹き飛ばす。戦いに関しては、終始ドライブが圧倒していた。

「あ」

 爆散する都知事。逮捕するはずが、敵の強さを警戒して全力で戦った結果撃破してしまった。

「あ、待って!」

 爆風の中から漂うコアも砕け、完全に死亡する。本体と思わしきベルトも必殺の余波で粉々だ。

「なんか変だな……」

 変身を解除した泊は、首を傾げる。都知事が金湧でサウザンドライバーを使った件について本来の所有者に問いただしたところ、『1000%ありえない』と言っていたのも気になる。自信家の彼が芸術と評するドライバーを他人に提供するだろうか。使われたと聞き非常に不快感を示していたのもあり、嘘を言っている様には思えなかった。

 果たして、増える都知事の真相とは……?

 




 サイコパス、その称号は成功者の証か、異端者の照明か、それとも単なる獣の証明か。内なる異常が今、明らかになる。
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