騒動喫茶ユニオンリバー The novel 異端たる双眸   作:級長

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 これから数時間、あなたの目はあなたの身体を離れ、この不思議な時間の中に入っていくのです。


☆2020年の挑戦

 時は1966年。太平洋戦争の傷跡も癒えようとしていた時期のことである。警察署の給湯室ではある男がお茶を入れていた。

「うん、やはり茶は静岡に限るな」

「浅野さん、そんなのお茶汲みの女にやらせとけばいいんですよ」

 その男、浅野仁平は後輩に促されてお茶を乗せたお盆を持って部屋を出る。昭和の男にしては線が細く、なよっとした中性的な人物であった。三十路にもなるだろうに若々しい見た目といい、警察では変わり者扱いされていた。

「いやいや、煮詰まった時の気分転換だからな。それに、自分の飲む茶くらいは自分で淹れるべきだと思うが……」

「そんなことより、パトロールの時間ですよ」

 刑事課の人間でありながら事件の捜査に関わらず、パトロールなどの雑務を行う浅野。変人故に出世コースから離れており、後輩も彼の下に付けられたことで自身の出世を諦めるレベルであった。

「そうか。では行こう」

 二人は日課のパトロールに出向く。閑職待ったなしの仕事にも浅野は文句一つ言うどころか、むしろ率先して行っている節さえあった。パトカーは使わせてもらえず、歩きでの巡回になる。

「しかしいいんですか浅野さん。手柄もすぐ譲って、いつまでもこんな雑用……。本当はキャリア組にペコペコしてる連中なんかよりずっと優秀なのに……」

 我欲の垣間見えない浅野の態度に後輩は業を煮やしていた。本当なら今すぐ昇進してもおかしくない人物なのだが、悉くチャンスを逃している嗅覚の無さだ。

「私の仕事は市民を守ることだからな。それさえ果たせれば、それ以外は望まないさ」

 いや、嗅覚が無いというよりは職務に忠実過ぎるというべきか。

「上に昇った方が遠くまで見渡せると思うんですが」

「言う様になったな。だが組織はそうもいかんみたいだ。上に行くと余計な仕事が増えて、こうして見回りをする時間も無くなる。それに忙しくなると、子供が出来た時に行事に行ってやれないだろ?」

 既婚者である浅野はやはりこの時代の男にしては珍しく、家庭を尊重する人物であった。未だ子宝には恵まれないが、先のことは考えている。

「偉くなった方がお給料も増えて子供をいい学校に入れてやれるでしょう?」

「そこなんだよな……でも警官の時点で給料は安定してるし……」

 出世して給料を増やすべきか、ここに留まって家族の時間を大事にすべきか、という悩みはあった。出世も子供も無い時点でまだ皮算用の域を出ないのだが。

(なんか妙に所帯じみてんだよな……本当に露助を震え上がらせた鬼神、浅野仁平なんだろうかこの人……)

 後輩は浅野の過去を聞いてはいたが、とても信じられなかった。太平洋戦争で日本が降伏した際、軍事空白を突いて北海道の占領を狙ったソ連を動員された学徒の身ながら樋口季一郎と共に占守島で押しとどめ、スターリンから名指しで懸賞金を掛けられたとか。

 今の彼にはそんな、一国の首脳から首を狙われる様な男という空気はまるで感じない。

「しかし、随分と復興したな」

「そうですね。疎開先から帰って来た時とはえらい違いです」

 今パトロールしている町は戦火からの復興を果たそうとしていた。沖縄が唯一の本土決戦と言われているが、他の土地は決戦どころか家屋を燃やす為だけに作られた焼夷弾による一方的な殺戮を受けている。どっちが悲惨、という話ではないが、この二十年ちょっとでそのダメージは少なくとも物理的な面での回復は見せている。

「で、何してるんです?」

 しんみり話している隙に串物をしれっと買い食いしている浅野に後輩はツッコミざるをえなかった。

「ん、ああ。ほら些細なところに事件の匂いがあるというだろ?」

「それは食べ物の匂いでしょう」

 昼行燈を演じているのかマジで昼行燈なのかよくわからないのであった。

「ほんとうに大丈夫なのかこの人……色んな意味で……」

「ところで連続失踪事件は捜査本部立った?」

 そんな先輩を心配していると、浅野はある事件の経緯を聞いた。最近、この近辺で失踪事件が相次いでいるのだ。

「失踪なんて珍しくないでしょうし、どうも捜査が行き詰っていて手を出したがらないみたいですね」

 警察は面子を重視するところがあり、この時代は特にその傾向があった。まさか世間を騒がせる連続失踪事件に打つ手なしと公表するわけにもいかず、ならば最初から関わらないでいようという判断をしたらしい。

「やれやれ、我々からしたら数ある事件だろうが、当事者にとっては人生を左右しかねないことだろうに……」

 食べ終わった串をきっちりゴミ箱に捨てると、浅野は溜息をつく。

 しばらく二人はパトロールを続けた。事件の起こりやすい裏通りなどは特に念入りに見て回る。この時何かを見つけられなくても、定期的に警察官が見回っているという事実があればこの場所を犯行場所に選ぶ狼藉者も減るだろう。

「ん?」

 数本目の裏通りで、浅野達は一人の少女を見つけた。長い銀髪の不思議な雰囲気を纏った少女だった。顔立ちは日本人と西洋人を足して割った様な印象を受けるので、ハーフだろうか。歳は二桁になったばかりと見える。小柄であるが、その幼さに似合わぬ大人びた立ち姿をしている。

 金の十字架に目が行くのだが、季節の割には着込んでおり首元や手首さえ見せない。そして陽の様なオレンジの瞳は吸い込まれそうな美しさがあった。

「おや、お嬢さん、迷子かね?」

 浅野は屈んで視線を合わせながら少女に話しかける。彼女は強い警戒心を放っていたので、後輩は近づかず浅野に任せることにした。先輩の人当たりの良さだけは信用しているところがあったのだ。

「……」

「別に怒ったりしないさ。迷子くらい誰でもなるからな」

「先輩なんかこの歳で迷子なりましたからね。犬のお巡りさんが」

「いやそれは新しい路地見つけてな……」

 携帯の無いこの時代に迷うと、助けも呼べず地図も見られずに結構困るのだ。それはさておき、少女はなぜ自分がここにいたのかを答える。

「お巡りさん?」

「そう、お巡りさん。スーツじゃやっぱわかりにくいし、今度から制服着ようかな……」

「いよいよ交番勤務に異動する気ですか。絶対そっちの方が向いてると思うんですけど」

 刑事はスーツなので、少女に浅野達が警察官であることが分かりにくかったらしい。

「お姉ちゃんを探しているの。学校から帰って来なくて……」

「それは心配だ」

 どうやら友人を探しているらしい。とはいえ、そろそろ日も暮れる。ここは彼女を家に送り届けた方がいいだろう。

「お姉さん思いなんだね。でももうすぐ暗くなるし、今日はおうちに帰ろうか。お巡りさんがお友達を探してあげるよ」

「本当?」

「ああ、本当だとも」

 浅野は少女の警戒を解いていく。こう、すっと信用されるのは彼の人柄が成せる技なのだろう。浅野は少女を抱きかかえて家まで送っていく。細身の割には余裕を見せており、よいしょとも言わないほどだ。

(いや、たしかに鍛えてるけどちょいちょい力あるよな……)

 浅野がこうして迷子の子供を抱きかかえて送ることは珍しくないが、いい加減持ち上げるには重い年頃の子供もこうして平然と持ち上げてみせることに後輩は疑問を抱いていた。脱いだところを見たことがないわけではないのだが、圧倒的な筋肉という感じはしなかった。

「お嬢さん、お名前は?」

「ルシア」

「ルシアちゃんか、おうちはどっちかな?」

 ルシアと名乗る少女を連れ、二人は彼女の自宅へ向かう。その道中、姉のことについても聞き出した。

「探しているお姉さんのことを教えてくれないかな? 名前とか、いなくなった時にどんな格好だったのか、とか」

「カオリお姉ちゃんはセーラー服を着ていたよ。学校から帰ってこなかったの」

「カオリちゃん……セーラー服……下校中に行方不明、か……」

 後輩は話の内容をメモに取る。

「下校中となると夕方頃ですか……」

「ふむ、学校はどこかな?」

「第三中学校」

 学校が分かれば、通学路の特定も容易い。とはいえ、中学生ほどの子供はまだきまぐれで好奇心も旺盛。その道から外れることも珍しくない。

「一人で帰ってたのかな?」

「ううん。他の子といたんだけど、カオリお姉ちゃんだけ急に消えちゃったんだって」

「急に? 目を離した時にかい?」

 話によれば複数人で下校中、行方をくらましたらしい。集団下校は安全であるが、時折誰の目にも留まっていない子供の消息が途絶えることもある。油断から目を離した隙にいなくなるというパターンだ。

「違うの。消えたところをみんなが見てたって」

「みんなの目の前で消えたのかい? 影に隠れたところを出てこなかったとか?」

「そうじゃなくて、私もわからないんだけど……本当にみんなが見ているところで消えたって」

 が、話の内容はより奇妙だった。複数の子供が見ている前で、すっと消えてしまったらしい。

「あ、ここが私達のおうち」

 話を聞いていると、ルシアの自宅に辿り着いた。家、というよりは児童養護施設だった。教会も併設している場所である。

「トミー、いい子にしてた?」

 ルシアの帰りを待ち望んでいたかの様に、一匹の猫が駆け寄ってきた。が、いかつい牙に角と普通の猫には見えなかった。

「猫ちゃん?」

「うん、足怪我してて……私とカオリお姉ちゃん、それからユウちゃん以外は怖がってるけど……」

 野良猫? を保護したのだがその外見から殆どの人間が怖がって近づかないらしい。浅野に対し、しばらく様子を見てゴロゴロと喉を鳴らし始めたので狂暴ではなさそうだ。

「あ、ルシアちゃん、無事だったみたいですね!」

 どうやら帰ってこないルシアを心配していたのか、門の前で一人の男性職員が待っていた。服装からして、併設された教会の神父で施設の運営もしている人物ということだろうか。

 しかし、妙にトミーが職員を威嚇する。尻尾を立てる姿はまさに猫だが。

「わざわざすみません……児童が一人いなくなったばかりなので心配で……」

「いえ、警察官として当然のことをしたまでです」

 浅野はルシアを下ろすと、そのいなくなった児童がカオリではないかと考える。

「もしかして、いなくなったのはカオリちゃんですか?」

「え、ええ……そうです」

 予想通り、消えた少女はここで暮らしている子供の様だ。口ぶりからして本当の姉妹の様に慕っている様子で、心配になるのも頷ける。

「やはり……今日は遅いので失礼しますが、またお話を伺いに参ります。それでは」

 浅野と後輩はそのまま立ち去る。ルシアは手を振って別れを告げた。

「お巡りさんありがとう」

「おう、お姉さん、探してあげるからな」

 見つけてあげる、と言い切らないところに浅野の絶妙なシビアさが読み取れる。警察官として様々な事件を見て来た浅野は、多くの犠牲者も見て来た。そして警察が事件の後しか動けない、基本的に手遅れの存在であることも自覚している。

施設から離れた辺りで後輩が口を開く。

「衆目の中で人が消えるって、最近噂の失踪事件と同じですね」

 彼はルシアを怖がらせない様に黙っていた様だ。だが、その事件と同じとなれば少々厄介だ。手がかりがない上に、警察の助けも期待できない。

「そうだな。まずはその事件を洗うか」

 こうして、二人の捜査は始まった。

 

   @

 

「ただいま」

「あら、おかえりなさい」

 浅野が自宅に戻ると、妻のさとが出迎えてくれた。結婚からそれなりに年月が経つのだが、まだ子供に恵まれない。学徒出陣で出兵した浅野が占守島での戦いの後、帰る道すがら青森で出会ったのがさとである。

 どこか儚さを感じる大和撫子でありながら、芯の強さがある彼女に惚れ込んだ浅野は即座に結婚を申し込んだ。そうして今に至るというわけだ。東京に出て来たのは彼の地元である鹿児島で警察官になった後、人員調整で異動になった為。慣れない土地に二度も付いてきてくれた妻に浅野は感謝しかなかった。

「そうだ、今日はどうだ……その、余力というか……」

 浅野は口を濁しながらさとにあることを聞いた。それを見た彼女は腕を組んで拗ねる様に返す。

「もう……私を抱きたいなら抱きたいとはっきり言いなさいな。いつもながら」

「すまん……」

 故郷では世間一般の女性より貞淑さが求められる巫女をしていたというのに、さとは割合明確に言い切る。一方、思いの外ウブな浅野なのであった。

「どうせその時になったら私の足腰立たなくなるまでするくせに……」

「本当すまん……」

 が、妻の魅力にやられている時の彼は自分でも歯止めが効かないのか思いの丈を全力でぶつけてしまう。だがそんなところもさとは好いていた。そうでなければ行きずりの学徒からの求婚など受けない。

「私ならいつでも受け入れるから、夜這いするくらいの根性見せなさい。でも……こんなに子供授からないのはどうしてかな……私がよくないのかな?」

 この時代は子供を作って一人前という風潮も強く、さとは子供ができないことに若干の焦りを感じていた。浅野の両親は甲斐性なしの息子が嫁を貰ったというだけで大喜び、彼女の両親も気が強くて嫁の貰い手がいないところに誠実な若者がやってきたと安堵しており身内ほど孫について急かさない。

 だが、やはり周囲の目は気になるし子供はまだかと知人に聞かれるのだ。

「いやいや、俺が種無しなんじゃねぇかって思うわこんな回数。あの豊臣秀吉だって世継ぎに困っていたくらいだ」

「側室との間にはすっと出来ましたけどね」

 フォローのつもりが全然成立していない。これには浅野も困ってしまう。

「いや……知ったかぶりで言うのは良くなかったな……」

「気持ちは伝わったけどね。ありがとう」

 軽口を叩きながら笑い合う。おしどり夫婦とはこういうものだというのを、まさに見せつけんばかりであった。

「そうだ、今日巡回で養護施設に立ち寄ったんだ」

「あら、そうなの」

「家庭があることが幸せの絶対条件ではないと思うが……縁があれば養子というのも考えてみるのもいいかもな」

 子供は授かり物。もしかして自分達に来ないのは、孤独な誰かを幸せにしてやれという導きなのかもしれない。浅野はふとそんなことを考えていた。

「いい縁があるといいわね……」

「そうだな」

 頭の片隅にそんな選択を二人は置いておくのであった。

「ところでこれ、気晴らしにでも読んでおいてくださいな」

 さとがある本を浅野に差し出す。『2020年の挑戦』と書かれたその本は、見たことも聞いたことも無かった。所在を示すハンコが押されており、図書館から借りてきた様だ。

「人間の想像力って不思議よね。ケムール人っていう医学の進んだ世界の怪人が、若い肉体を求めて地球を襲うお話なんて……。それも、そんな話を交信で聞いた体で物語にしたためるなんて」

 さとは巫女であるが、かといって不思議な力があるわけではない。ましてや霊感も夫婦揃ってからっきしだ。なのでこういう怪奇物語は純粋な空想として楽しめるところがある。

「そうだな……あまり根詰めてもあれだ」

 頭を使うことというのは、そればかりに集中して視野が狭まってはいけない。こういう図書館の片隅でひっそり息をひそめている様な本が、息抜きには丁度いいのだ。

 

   @

 

 浅野達のデスクは警察署の隅にある。手柄を立てることに拘らない彼は必然的に実績が少なく、窓際部署に送られている。加えて、GHQの意向を汲んだ上層部が学徒兵とはいえ戦地で大立ち回りをした浅野を嫌がっている節もある。

「浅野さん! お茶くらい私が汲みますって!」

「いや、お茶を淹れる時間ってのは考え事に丁度いいんだよ」

 部下の一人である婦警が、給湯室からお茶を持って来た浅野に言う。配属されて間もないため、彼のマイペースさに慣れていない。後輩も最初は先輩が先んじて雑用をやってしまうことに慌てたものだが、そのいずれも浅野にとって思考を切り替える大事な時間だと分かってきたので、彼の意思を尊重する様になった。

「もう……数少ない女性警官ということで配属された場所がお茶汲みも出来ない場所だなんて……」

「いずれは君の力も借りるだろうが……なるべくならその機会は来ないことを祈るよ」

 婦警がぼやいていると、浅野はそんなことを言う。

「どっちなんですか」

「どっちもだ。警察官というのは暇な方が平和だが、そうもいかない時がある」

 上司がこの期待しているのかいないのか分からない態度というのもイライラの原因だ。

「話によると、いずれも被害者が消えた瞬間を多くの人が見ています」

「そこなんだよな……どうやってそれをしたのか、だ」

 事件を洗っていると、警察が捜査を諦めたポイントに浅野達はぶつかる。僅かに目を離した隙に攫うなら可能だ。だが、調書の通り消える一部始終を見ているというのでは方法など分かりもしない。

「現場の付近には、数日は晴れだったにも関わらず濡れた様な跡があったそうです」

 後輩が情報を纏めるが、攫った方法から犯人を特定することを浅野は早々に諦めていた。

「こりゃダメだな。方法を突き止めることはまず無理だ」

「諦めるの早くないですか?」

「人間の想像しうることは実現する。おそらくこの世界にはそれを可能にする方法もあるんだろうが、今の私達には分からん。なら、視点を変えよう」

 しかし、手段が分からなくても犯人を突き止める方法はある。

「視点、つまり動機から攻めるんですね」

「そう、ホワイダニットだよ」

 事件の犯人を導き出す方法はいくつもある。浅野が行き詰ると、必ずこうして視点の切り替えをするので後輩も話の流れは夜読めていた。

 どのようにして犯行を成立させたのか、を突き詰めるのがハウダニット。しかし今回はこれが警察にも分からず迷宮入りである。誰が犯行をしたのかを問うフーダニット。これも目星が付けられない以上、追及しようがない。そもそもこの二つは割と密接である。

 そこで出てくるのが、『なぜしたのか』、ホワイダニットである。動機の面から犯人を捜すのだ。

「まずは行方不明になった人間の統計を取ろう。そこから犯人が分かるかもしれない」

「そうですね……男女はばらけていますが、若者が対象です。不思議なことに、高齢者は被害者にいません」

 後輩によると行方不明者は若者に絞られている。それだけ行動的だから外に出て失踪する確率が高いと言えばそれまでだが、数少ない手がかりには違いない。

「ふーむ……」

「どうしたんですか?」

 浅野はしばらく考え込む。関係ないのかもしれないが、ルシアのことが頭にチラついてしまうのだ。

「ルシアちゃんのあの着込み具合、妙に引っ掛かるんだよな……」

「単に寒がりなのでは?」

「女性は冷えやすいというがな……」

 寒がりで済ませられる話でもある。それに、ハーフの少ないこの時代では彼女の白い肌は悪意が無くとも奇異の目で見られるだろう。それを避けたくて隠しているのかもしれない。

「ん? ちょっと待てよ?」

 資料を読み返していた浅野があることに気づく。

「この施設って、ルシアちゃんやカオリちゃんのいたことじゃないか?」

 行方不明者のリストに、やたらある施設の名前が出てくるのだ。それはルシアのいた施設。もしくはその系列の施設や学校である。そこに在籍する、もしくは通う少女が特に多く消息を絶っている。

「なんか妙ですね」

「これだけの失踪者数だ。母数が増えれば、という可能性も否定は出来んが……」

 単なる偶然の可能性も否めないが、そういうハズレを一個ずつ確実に潰すのも捜査の基本。二人は早速、あの施設へ聞き込みをしにいった。

 

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「アポなしで悪いね」

「先輩、普通はアポなしですよ」

 浅野は突然の来訪を詫びた。二人はルシアのいた施設へやってきたのだ。それは、季節の割に暖かな日のことであった。

 警察の訪問は基本、突然である。事件の捜査をします、などと先に言ってしまえば証拠隠滅の隙を与えてしまうからだ。こればかりはどうしようもないので、浅野はせめて非礼を詫びる様にしている。

「え、ええ……」

 先日の神父が対応する。どうやら、警察が来ること自体は予想外だった様子だ。

「カオリちゃん以外にもあなた方の系列で運営している施設で特に十代の少女が行方不明になっている傾向にあるのです。何か心当たりはありませんか?」

 浅野は一種のヘイトクライムを疑っていた。戦後時間が経ったとはいえ、人々の中にあの戦争がもたらした傷は残っている。石を投げれば空襲の被害地域に落ちるというほど本土も被害を受けた。一応、教会自体は戦前から存在するとはいえ国家神道が広がったこともあり敵国だったアメリカを連想させる要素であることは事実だ。

 つまり、アメリカに敵意も持つ者が弱者を狙って報復ごっこの様なことをしている可能性がある、と睨んでいた。もしや、日常的に脅迫か何かされていないかと浅野は探った。

「いえ……特に」

 神父は何もないと答える。確かに、見た様子の印象だけでもその様な危害に晒されている様子もない。

「ところでルシアちゃんは元気にしているかね?」

「え、あ、はい……」

 神父は浅野の問いに対して心ここにあらずといった状態だった。施設の子供がいなくなれば、普通は気が気でないのでこの調子にもなろう。

 浅野は腕時計を確認し、既にルシアが学校から帰っているであろうことを予想した上で頼む。

「出来れば合わせていただきたいのですが……」

「あ……あの、彼女は今用事で……」

 神父は少し躊躇った。今はいない、というのなら仕方ない。だがそもそもルシアが心配でここに来たので手がかりを見つけたならまだしも、それさえ無く、顔も見ずに帰ることは出来なかった。

「待ちますよ。子供の用事ならそう時間も掛からないでしょうし、幸い私達も暇ですので」

「そう……ですか……」

 神父は浅野が居座りを決め込んだので、しばし考える。そして、ようやく彼に告げた。

「呼んできますので、少しお待ちください」

 神父はそそくさと去ると、結構な時間浅野達を待たせた。

「そう言えば先輩、あの本読んでるんですか?」

「あの本? 『2020年の挑戦』か?」

 待ち時間が長すぎて雑談をしゃれ込むほどであった。後輩は浅野が読んでいる本のことを聞く。彼が空き時間に読書をしているのは珍しいことではないが、趣味の違いからその内容に後輩が踏み込むことは滅多にない。

「今話題なんですよ、その本?」

「なんで?」

 後輩によると、2020年の挑戦は今話題沸騰であるとのこと。妙な偶然にも思えたが、さとはおそらくどこかで本の題名を聞いてそれが頭の片隅に残り、図書館で目についたのだろう。普段は片隅にある本でも、返却された直後は窓口の近くにまとめて置かれたりするので見つける確率も上がる。

「最近噂の行方不明事件がその本の内容に似てるって……。人が見ている前で消える様子が、まるでその本に出てくるケムール人に似てるんですよ」

「でもこれは空想物語だろ?」

 いくら状況が似ているとはいえ、2020年の挑戦は物語。古今東西、探せば似た内容の本くらいあるはずだと浅野は思っていた。だが後輩はそれを否定した。

「物語なんてとんでもない! これを書いた神田って人はケムール人と交信したって本気で言ってんですよ! 私も最初はプロモーションだと思ったんですが、あんまりにもしつこくて病院送りにされたって聞いた時はいよいよ怪しいぞと……」

「はーん……、もしそのケムール人ってのが犯人なら一世一代の大捕り物だな」

 浅野は話半分に聞いておいた。あまりのリアクションの薄さに後輩はがっくりするが、同時に彼と長く行動している為、浅野が犯人に目星をつけていることにも気づいた。

「あ、もしかして犯人突き止めてます?」

「証拠もないし、もし合ってても説明できないことが多いがな……。もしこの事件が一つの事件でないなら……だ」

 とはいえ、証拠を集めないと逮捕出来ないのは警察の掟。すぐ捕まえるわけにはいかないのだ。

「お待たせしました」

 神父がルシアを連れて戻ってくる。どういうわけか、髪が濡れて顔は上気している。

「あ、お巡りさん。今日はどうしたの?」

「いや、捜査の最中でね」

 浅野はルシアの元気そうな様子に安心した素振りをしつつ、彼女を注意深く見る。

「湯上りかな? 湯冷めしないようにね」

「あ、これはその……部活の後で汗かいてたから……ごめんなさい、お待たせして」

 浅野が風邪を心配すると、ルシアは聞かれてもいないのに理由を答える。湯上りにしては出会ったばかりの様な厚着である。

「いや、私は暇もいいところだからね。急ぐことばかりじゃないさ」

 浅野は明らかにルシアの様子を、そして神父のことを怪しんでいた。

「んぅ……」

 話していると、不意にルシアがあくびをかみ殺した。少し目に隈があり、明らかな睡眠不足の兆候がある。

「お眠だったかな? すまないね無理に呼び出して」

「いえ、最近失踪事件が相次いでいるから不安で……」

 またも聞かれていない理由を述べるルシア。さらに、この時だけは急に言葉が複雑なものになる。

「ん?」

 後輩はその時、遠くで様子を見ている女の子を見つける。警戒を解く様にゆっくり近寄り、話を聞こうとした。

「こんにちは、どうしたのかな?」

「……」

 女の子は話さない。どうやら、話せない、というのが正確なところらしい。

「うん?」

 女の子は手ぶり身振りで何かを伝えようとしたが、すぐに去ってしまった。後輩が顔を上げると、やたら神職らしき男がいるのが見えた。

「あの、ここの職員の方ですか?」

 後輩に声を掛けられると、男達はそそくさといなくなる。怪しい匂いがプンプンだ。

 

   @

 

「なるほど、だいたいわかった」

 浅野はあの一回の面通りで大方を見通した。

「え? たったあれだけで?」

 いつものことながら、後輩は驚く。何度共に行動をしても、この目ざとさは慣れない。

「いつも言っているだろう? 世界中、どこにでも麺類がある様に、人間の本質は同じだ。故に悪党の考えや行動は似通ってくる」

「でも状況証拠だけなんですよね? どうします?」

 後輩の言う通り、警察は証拠が無ければ動けない。加えて相手は戦勝国の国教ともいえる組織、その慈善事業団体だ。相手が悪いというレベルではない。

「うむ、そこはうちの新人の出番だな。それに……」

 浅野は婦警に活躍の場があるのを嬉しい様な悲しい様な、苦々しい表情をしていた。

「証拠を抑えなくても捕まえる方法がある」

 そして、一刻も早く市民を救う為の策を組み立てる。

 

   @

 

 その施設では深夜、あることが行われていた。暗い部屋の中、一人の少女を、複数の大人が囲む。その少女はルシアであった。薄手のシャツだけを纏い、雪の様に白い生足が露わになっている。この時代の女性にはこれでも十分な羞恥であるだろう。だが、彼女はそんな服装で大人に囲まれても、平然としている。

「んくっ……」

 口を抑え、何かを飲むルシア。それはよほど不味いのか、苦悶の表情を浮かべながら彼女は長く格闘している。周囲の男は焦れた様な態度を見せる。

「一人だと時間掛かるな……」

「前は二人いましたからね」

「他のガキを呼ぼうか」

 男の言葉に反応し、ルシアは口のものを飲み込み、必死に懇願する。

「まって! カオリお姉ちゃんの分も頑張るから……他の子は……」

 そんな様子に嗜虐的な笑みを浮かべる男が一人いた。浅野に対応した職員であった。

「ならさっさと愉しませてもらおうか。毎晩毎晩、時間ばっか掛かってしょうがねぇ」

 職員はルシアの首に手を伸ばす。薄着になって初めて見えた首元には、指の形がくっきり残る痣があった。

「っ……」

 恐怖で固まるルシア。その時、炎が弧を描いて部屋を照らした。

「ぎゃああああああ!」

 腕を抑えて転がる職員。そして点けられる部屋の明かり。ルシアの目の前には、刀らしきものを持った浅野がおり、残心していた。

「いてぇええ、いでえええよぉおお……」

「ふん、骨折などこの子らの心に比べれば痛くも痒くもないだろう」

 袖で分からないが、服が隆起しており赤く染まっていることから解放骨折したのだろう。ルシアを保護しに、婦警が駆け寄る。

「ルシアちゃん!」

「やっぱ先輩の読み通りでしたね」

 後輩もやってきて背中合わせになり、周囲の男と対峙した。

「お前があの子を見落とさなかったから婦警殿がこの部屋と時間を聞き出せたんだ」

「俺も成長してんのかね……」

 誰かが情報を漏らした。そう聞いた男達は目の前の脅威を忘れてしまった。

「誰だ?」

「探って罰せねば……」

「勝つ前から兜の緒を緩めるとはな……」

 浅野が踏み込み、横一閃によって男の一人を攻撃。思い切り張り倒して顎を外させた。やはり太刀筋に炎が灯るが、物理的なものではないのか火傷はしない。

「おあああああ!」

「武器など卑怯な!」

 どの口が、と言いたくなるセリフを吐く男達。だが、浅野の刀は本物などではない。木刀、それも鍛錬用の重いものではない。子供の玩具として作られた薄いバルサ材、軽いが脆い木材の代物だ。ぶっちゃけ竹刀以下の攻撃力しかないはずだ。

「いや相変わらずそんなもんで骨とか折らんでください」

「太刀筋が合えば何でも斬れるのと同じだ」

「その理屈はおかしい」

「この野郎ふざけやがって!」

 男の中でも特にガタイがいい男が後輩になら勝てると見て殴りかかる。だが、一瞬で吹っ飛ばされて壁に激突し、穴が空く。吹っ飛ぶ最中、折られた歯を吹き出しており、腕も曲がっていた。

「うわ、この建物地震来たらマズイだろうな……」

「は?」

 今起きたことが理解出来ず、男達はもちろんルシアと婦警もあ然とする。今のは殴りかかったところに、拳へ左右二発のパンチ、その後回避して腕に手刀を入れ、勢いのまま肘を顎に入れ、ボディと顔面へそれぞれ二発、そのままアッパーをかましてがら空きになった胴体へ十発、というのが内訳である。人間やめてる。

「ば……馬鹿な、あいつは本国じゃヘビー級のチャンピオン……」

「え? ざっこ! 今の浅野先輩が相手じゃ初手で止められるってのに!」

 この程度がチャンピオンと聞き、驚愕する後輩。明らかにおかしいのは彼の方である。

「ま、待ってくれ! 降参だ! 警察なんだろ? 自首するから待ってくれ!」

「いや、自首は事件起きる前でないとな……諸君らは現行犯逮捕だ」

 浅野は男達の願いを全く聞かず、刀を構えていた。後輩も臨戦態勢に入っている。

「ま、ああいうのは揉め事起こして仏門に逃げていた手合いだろうな。しかしこう雑魚ばっかだと戦争に負けたのが納得出来ねぇぜ」

「ま、数と金があればどうとでもなるということだ。成敗」

 その夜、響き渡ったのは年端もいかぬ少女の嬌声ではなく、男達の情けない悲鳴であったという。

 

   @

 

「というのが事件の顛末でしたとさ」

「いやー、毎回書くと始末書って慣れるもんですね」

 後日、浅野は警察署で始末書の山を処理していた。文句のない現行犯逮捕とはいえ、令状を取らずに踏み込んだ上、戦勝国の教会が作った慈善団体の職員を半殺しにしたのだから仕方ない。懲戒免職にならないだけめっけもんである。

 こんなことを繰り返しているものだから、元々上層部に嫌われていることも相まって出世コースから離れていく。ちゃんと『事件は』解決しているから何とか首を切られずに済んでいる様なものだ。

「私、浅野さんの言ったことが分かりました」

 同じデスクで比較的少ない始末書を書いている婦警が呟く。報告の時に浅野が少し脚色したので彼女へのお咎めはかなり減った。

「ん?」

「私の様な婦警にしか話せない様な子が犯罪に巻き込まれることはあってはならない。でも現実には起きているから力が必要なんだってことですよね?」

 後輩の見つけた女の子は元々話せないこともあったが、大人の男を信用していないのもあって情報を聞き出すには婦警でなければならなかった。彼女がいなければ事件は解決しなかったと同時に、そんな女の子が事件に関わらなければならない状況は好ましくない。

「あれ? そんなこと言ったかな……」

「え?」

 だが浅野は率直に尊敬を向けられると生来の照れ屋で謙虚な性格から誤魔化してしまう。

「ま、例え先輩がそう言っても気づくかどうかはあんた次第だったし、あんたの発見でいいんじゃないか?」

 なので後輩や、時にさとがフォローする。この気質が後々悲劇を生むが、それはまた別の話。

「とにかく始末書書いてしまわないとな」

「今のうちに慣れとけよー?」

「はーい」

 三人は黙々と始末書を書く。ルシア達あの施設の子供達は保護を兼ねて事件の参考人として警察の施設へ移った。犯人が重傷を負ってしまったので逮捕や事情聴取が遅れ、しばらくはそこで暮らすことになりそうだ。だが、時間が出来たおかげで里親探しや同系列の施設の再編などの猶予が生まれた。

 ちなみに猫らしきトミーも同じ施設へ行った。あわや保健所送りだったが、逆に保健所がこんな意味不明な生き物勘弁してくれと断った。猫にありがちな古巣へ帰ってしまうといった様子もなく、心の底からルシア達に懐いている様だ。

「こうしてルシアちゃんは浅野先輩の娘として幸せに暮らすのでした。めでたしめでたし」

 勝手に話を締める後輩に浅野が反論する。

「いや、養子にはしないぞ?」

「えええ? いや絶対引き取る流れじゃないですか?」

「他の子もいるのに、不平等だと思うんだが……ルシアちゃんに一番ケアが必要なのはわかっているが……」

 あの施設には家庭を必要とする子供が大勢いる。あの歪んだ環境ではどんな虐待を受けていたか分からない。その中からルシアだけを引き取るという選択は浅野に出来なかった。

「なんだ、てっきりロシアとやりあったから気まずいのかと」

 婦警は浅野の過去からロシアとのハーフであるルシアの引き取りを躊躇ったと考えていた。だが、そこまで彼はロシアとの間に禍根を感じていない。向こうはバチギスに嫌っているが。

「私は別にロシアが嫌いなわけではないよ。あの時はたまたま守るものの都合敵対したが……」

「それはそうと、あの失踪事件って結局あの施設の連中が犯人だったんすか?」

 後輩は事件の切っ掛けである集団失踪について浅野に尋ねた。元々はそれを追っていてあの施設に行きついたのだ。

「うむ、どう考えても同系列の施設の児童が行方不明になっていた事件はそれで間違いないのだが……」

「たしかに、失踪者にはあの施設には無関係な人もいましたもんね」

 施設に関係する失踪はごく僅か。さらに、目の前で消える現象にも説明が付かない。

「私達は実際にあの『目の前で人が消える』現象を見たわけではないんだ。もしかすると、丁度『2020年の挑戦』が話題になってそんな情報が出回ったか、プロモーションで流したか……」

 とはいえ、不確かな情報を元に捜査をするわけにもいかない。週刊誌には消える瞬間の写真も載っていたが、何等かの加工も疑われる。地道に確かな情報を集めるしかない。

 

   @

 

 浅野は時間が出来ると、ルシア達に会うため警察の施設を訪れていた。しかし頻繁に足を運んでいると、僅かな異変にもよく気づく。妙に施設がざわめいていたのだ。

「何か変だな……」

「お巡りさん!」

 玄関から一歩踏み入れると、ルシアが走ってくる。廊下を走ったりする様なわんぱくな子ではないし、妙に切羽詰まった様子であった。

「ルシアちゃん?」

「また、いなくなったの!」

 主語や要点をすっ飛ばした叫びであったが、浅野は察した。まだ失踪事件が続いているのだと。

「この施設の子か?」

「ううん……学校の、違う学年の子……体育の時に、消えたって……」

 消えた、この言葉が意味するところを浅野は問いただした。

「それって、もしかしてみんなの目の前で消えるあの?」

 ルシアは頷いた。以前と同じで彼女が直接見たわけではない様だが、結局犯人を捕まえてもカオリの遺体すら見つけることが出来ていないのは事実だ。もしかすると、本当に消えたのだろうか。

「すみませんお騒がせして……」

 騒動を聞きつけ、施設の職員がやってくる。

「いえ。もしかして、この子達が来る前から失踪とかあったりしたんですか?」

 浅野が聞くと、職員は渋々口を割る。警察の傘下で原因不明の失踪多発など、面子に関わるのであまり言いたくないのであろう。

「はい……主に若者が……。多分家出なんでしょうけど……」

「失踪者のリストをくれ」

 職員は家出と決めつけていたが、浅野は一応確認することにした。すぐに失踪者の素性を辿り、家出する様な人物かを調べれば不審な失踪かどうかは判断できる。これ以上事件が広がらない様に、解決しなければならない。

 だが、ルシアが今まで以上に脅えている。直前の事件も耐えがたい恐怖だったはずだが、目の前で起きている奇怪な事件の方が堪えているのか。浅野は彼女の傍にいてやろうと決めた。引き取れないのならせめて、自分の出来る範囲で何とかしようと。

「……いや、失踪者を洗い出して、その素性を確認してくれ。家出を試みる様な人間かどうかを調べるんだ。そうでないのなら、自発的に失踪したわけではない可能性が出る」

「ええ? 私ですか?」

 職員は突然の指示に困惑した。だが、浅野は非常に真摯な態度で頼んできたので断りにくくもあった。

「頼む」

「分かりました、やってみます」

「感謝する。手を貸してくれ」

 浅野は職員を送り出すと、ルシアの手を引いて建物の中へ入っていく。職員を一人駆り出してしまったので、さとも呼んで施設を手伝わねばな、と思っていた。

 

   @

 

 後輩は若者の失踪が多いと聞き、若者の集まる場所へやってきた。都会の遊園地である。決して遊びに来たわけではない。ここでは時折失踪、それも衆人監視の中で消える失踪が起きているのだ。

「そうですか。ありがとうございます」

 聞き込みを終えた後輩はふと、ゴーカートのコースに目をやった。恋人の一人でもいればなぁ、と思ってぼんやり眺めるが、仕事も忙しい上に出世の芽もないとなれば難しいだろう。だが、自分がそういう立場になくとも人々が笑っている姿を見るだけでどこか満たされた気持ちになるのだ。

(先輩をとんだ偽善者だって笑ってたが……俺も大概だな)

 自分が幸福になるより他人の幸せを守りたい。そんな浅野を最初は信じられないでいたが、彼も次第に感化される様になっていた。いや、人間誰しもそんな部分があるのだろうが、浅野にそれを気づかされたというべきなのか。

「ん?」

 その時、人々の歓声が困惑の色に染まっていく様子が聞こえた。コースにはどうしたことか、誰も乗っていないカートがある。投げ出されたのだろうか。いや、いくらなんでも遊園地の遊具がそんな危険なはずがない。

「なんだ? 難しいコーナーでもあんのか?」

 後輩は後続のカートを見る。コースは平坦でカーブもなだらか。カートだってスピードは出ない上、しっかりシートベルトもある代物。そんなもので投げ出されるほどの事故になれば、カートなどひっくり返っているだろう。

「え?」

 後続のカートがコース内にあるアーチを潜った時、そこに乗っている人物が消えた。比喩ではなく本当に消えたのだ。

「止めて! 乗り物止めて!」

 後輩は慌てて係員に警察手帳を見せながら要請する。コースに乗り込み、消えたカートや始点となったアーチを調べる。

「なんだこれ?」

 アーチには妙な粘液があった。手を触れようとして、後輩はある本の内容を思い出す。マッチを取り出すとその粘液が垂れて溜まった場所に投げ込んでみる。すると、粘液に燃え広がりひとしきり炎を上げて消え去った。

「これは……」

 この粘液の性質は、神田という人物が書いた『2020年の挑戦』という本に登場する、ケムール人が人を拉致する時に使う液体そのものだ。

「まさか……本当に?」

 後輩もあれだけ熱くケムール人のことを語ったが、実際にいる証拠を突き付けられれば固まるしかない。

 

   @

 

 ケムール人の実在を示す証拠が次々と見つかり始めた。だが、まさか上層部にそう報告するわけにもいかない。言ったところで信用されないのがオチだろう。なら、どうするか。神田というケムール人と交信した人物を探し出すしかない。

後輩は遊園地の件から数日後、神田が入れられた病院へと脚を運んだ。遊園地周辺を散々捜索したが、あの時消えた人間は遺留品一つ見つかっていない。

病院は山奥にあり、車でもかなり時間が掛かる場所にある。当時は精神疾患への理解がなく、その手の病院はこういう場所に追いやられたのだ。

「神田さんですか? それならもう退院しましたよ?」

 勤務の看護師の口から出たのは衝撃の事実であった。神田はもう退院した。ケムール人という妄想に憑りつかれた状態は精神疾患とも言い難く、無理矢理分類するとしても統合失調症の類で完治までは長い時間が掛かるはずだ。それが瞬く間に退院とはどういうことか。

「ええ? そんなに早く?」

 不治の病、と見捨てられて自宅療養に移る場合も世の中にはあるが、妄想著しい場合は周囲の安全も考えて治療の見込みがなくても病院に押し込まれるものだ。それが一体、どういうことなのか後輩にも分からなかった。

「ええ、ずっとケムール人がどうとか言ってたんですが、急に大人しくなって……。本人も疲れてどうかしていたんだと」

「んん? これは……」

 本まで出して本気にしていた人間が急に説を取り下げた。しかも自分が狂っていたことを認めるなど、明らかに不自然だ。

「とにかく、神田さんの住所を教えてください」

「はい」

 神田の居場所を聞き、後輩は向かうことにした。この急な態度の移り変わり、もしかすると彼はある覚悟をしたのだろうか。

(もしかすると神田さんは、一人でケムール人と戦うつもりなのか?)

 もし一連の事件がケムール人の仕業だとすると、神田以外に頼れる人間はいない。後輩も何かの間違いだと思いたかったが、実際に見てしまい失踪者の足取りが掴めない以上、ケムール人犯行説を軸に捜査するしかなかった。

 

   @

 

 施設では浅野とさとが子供達の面倒を見ていた。本来すべき捜査を職員にぶん投げた結果、減った人手は自ら補うのが礼節と考えたからだ。さとも事件の早期解決を願っており、自ら手伝いを申し出た。

「ほう、なかなか腕を上げたじゃないか」

「えへへ……」

 浅野はルシアと校庭でベーゴマをしていた。事件の傷も癒えた様に見えるルシアだが、浅野は注意深く彼女を見ていた。表面上は大丈夫に見えても、まだ眠っている時にうなされている様子もあり油断出来ない。

「仁平さん」

「さと」

 施設の中からさとが女の子の手を引いて現れる。事件解決の糸口になった、あの喋れない子だ。口が聞けないのもあり、彼女はあまり友人がいなかった。そこでさとが手話を教えていたのだ。

「ほら、遊んでらっしゃい」

 さとが女の子を送り出す。女の子がルシアに向かって走ってくる。彼女にとってルシアは数少ない友人であった。だから勇気を出して助けようとしたのだ。

「ユウちゃん! こっちこっち!」

 ルシアも彼女を呼ぶ。だが、その時異変があった。浅野が微かな気配に気づいた瞬間、女の子の姿が消えたのだ。それこそ、景色に溶ける様に、目の前で。

「え? ユウ……ちゃん?」

 浅野は気配のした方へ走る。施設の門を出て外を見渡すが、気配はとっくに消え、何も追跡することが出来なかった。

「何だったんだ今のは?」

「い、いや……いやぁぁああああ!」

 困惑する浅野だったが、ルシアの絶叫で我に返る。彼女は震えて座り込んでいた。話には聞いていたが、目の前で友人が消え去る姿を見て正気でいられるはずもない。抑え込んでいたストレスが一気に爆発したのだろう。

「ルシアちゃん! 大丈夫、大丈夫だから……」

 さとが彼女を抱きしめ、宥める。

「さと、何か感じなかったか?」

「いえ、霊的なものはなにも」

 霊感の強いさとが何も感じず、生物的な勘に長けた自分が何かを感じたということは『生物による犯行』で間違いない。だが、あんなことが出来る生き物がいるというのだろうか。

「これは……一体……」

 人智を超えた何かが起きている。今の浅野には、それしか分かることがなかった。

 

   @

 

 後輩はどうにか神田の居場所を突き止めた。退院した神田は即座に引っ越しをしており、住居を探すのに手間取ってしまった。とはいえ、彼は自分を尋ねてくる人物を想定していたのか、かつての住居に暗号を残していた。

 それは出版した『2020年の挑戦』を用いたもので、彼の書籍を持っていないと解くことが出来ない様になっていた。

「Pがページ数、Lが行数、Wが文字数か……物書きらしい暗号だな」

 付箋の大量に貼られた本を手に、後輩は神田の家を訪ねた。都会のボロアパートの一室であった。山奥ではなくここ、というのは木を隠すなら森の中ということなのだろうか。

「神田さーん、警察です。お力を借りたいのですが」

 後輩は扉をノックする。だが、返事はない。チャイムの様な高級装備はないアパート。扉も薄く、ノックの音は隣にだって聞こえるはずだ。

「これは……」

 後輩はふと、扉にある違和感に気づく。扉のノブが無くなっているのだ。強引にもぎ取った、というよりはノブのあった部分から綺麗にすっぽり抜かれている様な、奇怪な消え方であった。

「神田さん!」

 鍵が掛かっていないので後輩は扉を開け、部屋に踏み込む。だが、部屋には誰にもいなかった。布団の上に一枚の封筒があるだけだ。

「遅かったか……」

 神田は既にケムール人の手に掛かってしまったのか。だが、封筒は妙に膨らんでおり手紙以外の何かが入っている様にも見えた。

「……」

 中には見知らぬ物質が一つ。手紙には『ご依頼の品をお作りしました。Kミニオード、というこの物質は……』と書かれていた。

「Kミニオード?」

 それは神田の著書に記されていたケムール人の弱点、チャンネルX光波を出すためのものだ。

「だが、希望はあるのか……」

 後輩は手に入れたKミニオードを手に、アパートを後にした。これがあれば、もし本当にケムール人がいるのなら、この事態を打開する鍵になるはずだ。

 

   @

 

「どうしたのかね?」

 浅野が施設に泊まり込んで数日が経った。子供達は目の前で人が消えた恐怖から寝付けず、ベッドルームではなく一つの部屋に集まって布団を並べ、寝ていた。

 その中でルシアが起き上がり、どこかへ行こうとしていた。

「ちょっと、トイレ」

「一緒に行こうか?」

「ううん、大丈夫」

 本当は不安があるのだろうが、彼女は気丈に振舞っていた。流石に思春期へ入りかけている歳でもあり、信頼しているとはいえ男性をトイレへ同行させるのは恥ずかしいというのもあったのかもしれない。

「そうか」

 その複雑な感情を悟り、浅野は寝ずの番を続ける。ルシアは他のみんなを起こさない様に静かに部屋を出ていった。

 

 それが、浅野とルシアの交わした最後の会話となる。

 

   @

 

「先輩! ついに見つけたましたよ! 神田博士の残した手がかり!」

 後輩が日も暮れる頃、施設を訪れた。だが、施設では短期間に二人の子供が消えてひどく職員たちがピリピリしている。浅野もその一人だった。

「手がかり?」

「ええ、神田博士が外部の人間に作らせたKミニオードです。製作者の書面によれば著書と同じ製法で制作でき、チャンネルX光波も記された通りの性質を見せているそうです。もしケムール人が本当に存在するなら、これで……」

「もはやそれに頼るしかないのか……」

 浅野はルシア達を探し続け、疲弊していた。手がかりや遺留品もなし。当然、目の前で消える手段を突き止められない以上は藁にもすがる思いだ。後輩も正気を疑われることを想定し、理屈的な根拠も用意していた。

「先輩、大丈夫ですよ。ケムール人をぶっ飛ばしてルシアちゃんやみんなを取り戻しましょう!」

「で、そのチャンネルX光波をどうやって放つ?」

「それはですね……もう仕込みがあるんです。とりあえず行きましょう」

 後輩はパトカーを用意していた。彼は車内で詳細を話してくれた。

「あの婦警がアイディアをくれまして。警察無線の新パーツと言って東京タワーに浸かって貰って、広域にチャンネルX光波を流すんです。もしケムール人が擬態とかしていても、苦しんで姿を現すはずです」

「なるほど」

 婦警が東京タワーに向かい、チャンネルX光波を出す準備をしていた。後輩は運転しつつ腕時計ちらりと見て時間を確認した。

「そろそろです。辺りの異変をしっかり確認しましょう」

「そうだな」

 そして、チャンネルX光波が東京タワーから流される。無線や人体に異変が無いことから人間には無害な電波らしいが、果たしてケムール人は実在するのか。

『こちら……市街で怪しげな着ぐるみの不審者を発見……物凄いスピードで、車で追いつけない!』

 しばらく走っていると、警察無線から連絡が入る。怪しい人物を発見した上、そいつが車より速く疾走しているらしい。後輩はハンドルを切り、無線の場所へ向かう。

「なんだあいつは?」

 サイレンを鳴らすパトカーに合流すると、変な走り方であったがパトカーを振り切りそうな速度を出している不審な着ぐるみを見つけた。萎びた瓢箪の様な頭に小さな眼、黒タイツを着込んでいるのか、闇に溶ける身体。

「あれがケムール人?」

「とにかく只者じゃないな」

 それがケムール人かはともかく、怪しいのだけは確かだ。しばらく追跡が続いたが、チャンネルX光波のダメージがあるのか、それとも別の理由か、不審な着ぐるみは足を止めた。

「そこのお前! 大人しくしろ!」

 車を止めて警官達が降りる。そこで浅野達も降りるが、怪しい着ぐるみが頭頂部から粘液を飛ばす。

「うわ!」

 警官の一人がそれを浴びると、姿を消してしまう。これが失踪事件の正体。すなわち目の前にいるのがケムール人ということか。

「ルシア達を帰してもらうぞ、ケムール人!」

 浅野は刀を手にケムール人へ斬りかかる。今度はおもちゃではない、真剣だ。

(小隊長、みんなを助ける為に手を貸して下さい!)

 この刀は、学徒兵時代の上官から譲り受けたもの。犯人を止め、事件を解決する。その為に持っていた。

 ケムール人は粘液を飛ばして浅野へ攻撃を仕掛けるが、その攻撃は悉く回避された。そして、首へ斬撃が加えられる。

「やった!」

 ケムール人は見たこともない色の血を吹き出し、倒れた。神田の著書によると肉体改造を受けているはずだが、外傷には強くないらしい。

 ケムール人が絶命すると共に、消された警官が姿を現す。パトカーからも、無線が入っていた。

『こちら葛飾区! 急に人が現れました! どうやら例の失踪事件の被害者の様です!』

「先輩!」

 もしや、と思い後輩が車を出す準備をしていた。浅野もケムール人の処理を後回しにし、施設へ向かった。ケムール人が倒されると同時に、その粘液で消された人達が元に戻るということは、消えたルシア達も戻っているはずだ。

 

「ルシアちゃん!」

「ユウちゃん! いますか?」

 施設へ戻った浅野と後輩は大声でルシア達を呼び、探した。だが、返事が返ってくることは無かった。

 

   @

 

 その後、複数回に渡るチャンネルX光波の使用とケムール人の討伐が行われたが、ルシアとユウが帰ってくることは無かった。浅野達は警察署の屋上で無力感に項垂れるしかなかった。

「ケムール人はいた……そして倒した、なのになぜ戻ってこないんでしょうか?」

「それは、分からん。ケムール人の犯行に見せかけた誰かの仕業か、それとも……」

 後輩の問いに、浅野は最後まで答えなかった。神田の著書によれば、ケムール人は医療技術による延命の限界を超えるため、若い肉体を探していた。最悪、もうその身体は使われてしまったのかもしれない。

 現に、神田も帰っては来なかった。口封じをされたのだろう。

「カオリちゃんは何とか見つけてあげられたのに……」

「そうだな、せめて同じ地へ葬ってやることさえできれば……」

 ルシアが探していたカオリという少女の遺体は、例の施設の職員が証言した通りに捜索したところ、遺体が見つかった。亡くなっていたのは悲しいことだが、ルシア達は弔うことさえできない。主人の喪失に呼応してか、トミーも姿を消した。

 事件は終わったが、虚しさだけが残る結果となった。

 

   @

 

 それから四十年程度の月日が流れた。浅野は警察を退職、後輩も定年が迫っていた。その時、珍しく後輩が相談を持ち掛けてきたのだ。後輩からの呼び出しで、浅野は病院へ行くこととなった。

「子供?」

「ええ、詐欺事件の犯人を逮捕したんですが身重で……。医者に頼らない無理な堕胎が祟って母親は子供を産んで亡くなりました」

 すっかり老いた二人は再会を喜ぶ暇もなく、事件の話をする。当該の子供は、産院に預けられている。

「親類がいないのか?」

「いえ、いるんですが……」

 話の流れで身寄りがいないのだと思ったが、今の日本は福祉が充実している。それに加え、親類がいるのに問題がある様だ。

「ちょっと複雑でして……」

「養護施設に預けられないほどに?」

 わざわざ退職した警官に話を持っていくということは相当なことなのだろう。後輩もすっかり一人前。大概のことは何とかできる。

「それが母親は父親の教え子でして……」

「教師と生徒の恋愛の末……か」

「教え子夫婦の妻を寝取ったそうです」

「なんて?」

 どこにでもある痴情の縺れと思いきや脳が破壊されるレベルの寝取られが展開されており、浅野は困惑した。

「更にその母親、父親の娘です」

「え?」

「最初は不倫だったんですが……避妊に失敗して……」

「どういうこと?」

 かなり噛み砕いても意味不明な状態であり、それは親類も引き取りを願い下げたくなるわけだ。

「とはいえそんな理由で施設は断らんだろう?」

「まぁ、実際には本人に会って下さい」

 そう言われ、浅野は件の赤ん坊に会うことになった。生まれてから数か月経ったのか、やけに小さいが髪が僅かに生え、瞳も開いている。その髪は明るいキャラメル色で、瞳は左右で異なる。右が桜色で左が空色だろうか。

「ハーフ?」

「いえ、遡っても親族に外国人はいません。純粋な日本人です。珍しい色合いですが……」

 出自故、なるべく目立たずに周囲へ馴染んで生きていきたいところだが、生まれつきの外見がそれを邪魔する。いつか大人になって、自分のことを知った時に誰かが傍にいてくれるのか、そんな保障さえない。

「私が引き取りたいんですが……養子縁組は結婚していないとダメみたいでして」

「なら私が引き取ろう」

 浅野は赤子を抱きかかえる。まだ首も座らない子供が、生まれながら過酷な運命を背負ってしまっている。

「この先、この子が誰かの愛を受け取らないとは限らない。だが、それがいつになるのかもわからない。なら私達が最初の二人になろう」

 この子を愛することが、救えなかったルシアへのせめてもの弔いになれば、そして彼自身が幸せになれれば。そう願い、この赤子を育てることに決めた。

 

 物語は2020年へと導かれた。

 




 ウルトラナビ

 誘拐怪人 ケムール人

 頭頂部から物質消失液を出し、人々を連れ去る謎の怪人。神田博士によると2020年のケムール星から来た、らしいが……。優れた医療技術で長生きをしているが限界が訪れ、若い肉体を求めて地球へ来た。
 イルカのエコーロケーションの様な方法でコミュニケーションを取れるとか。
 限界という割には車より速く走れる。ケムールの要求スペックが過大なのか、それとも来ているのはまだ若い動けるケムールなのか。Kミニオードから発せられるチャンネルX光波が弱点。連れ去られた人は戻ってきたが、戻って来ていない人もいる。

 ソフビは「X」でスパークドールズシリーズから発売。来年には「Z」での予想以上の反響から現行シリーズでの再販が予定されている。ライブサインは無いので注意。
 ケムール人のスーツアクターが後にウルトラマンを演じる、ウェットスーツで造形する宇宙人というウルトラマンの先駆けになる、などシリーズでは重要な位置を占める存在。
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