騒動喫茶ユニオンリバー The novel 異端たる双眸   作:級長

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 遂に集いし精鋭達! 悪魔城に侵入し、ミリア(とついでにカラス)を助けるのだ!
 勝利条件:悪魔城への到達
 敗北条件:プレイアブルキャラの全滅


ステージ3 全選手入城!

 さなと陽歌は問題の城の前にやってきた。兎に付いて行ったのだが、街中と思わしき場所を進んでいた筈である。にも関わらず、たどり着いたのは森に囲まれた大きな湖とその中心に建つ城があるという有り様だ。

湖は堀の役割をしており、巨大な監視塔を潜って石橋を渡らなければならないが、道中が跳ね橋になっている。跳ね橋は当然、持ち上がっていて侵入者を通さない。

「さて、どうしたものか……」

「とにかく、進むしかない」

さなは厳重な城の警備を見て、これ以上の接近は無理と判断した。一方、早いところミリアを助けたい陽歌は早く先へ進みたかった。が、ここまで案内してくれた一つ目の兎は行く手を塞ぐ。

「早くしないとミリアさんが……」

「乗り過ごした電車を走って追い掛けるより、次の電車に乗った方が早いこともあるよ。特に目的地が遠い時はね」

焦る陽歌に、さなは言う。既に救援は呼んであり、後はそれを待つだけなのだ。

「それって……」

「うちには正攻法で攻略するにしても裏技を使うにしても手っ取り早い方法があるってこと。まぁもう少し待ちなよ。目は覚めただろうけど体力は戻ってないだろうしさ」

二人は暫く待つことにした。肝心の救援が来るまで。

すると、ガシャッガシャッと足音が聞こえ、遠くから一匹の大きな機械のライオンがやってくる。陽歌はそれに見覚えがあった。喫茶店のガレージにいたものだ。

「ワイルドライガー?」

「来たね」

白と青の機械のライオン、ワイルドライガーに乗ってやってきたのは、四人の少女だった。

「いやー、狭かったですよこれ」

「エヴァリー」

真っ先に降りてきたのは、緑の髪を二つ結びにした少女。エヴァリー、通称、エヴァである。陽歌は彼女達四聖騎士団を通称ではなく正式名で呼ぶ傾向にある。彼をユニオンリバーに引き取って色々やっている黒幕的存在なのだが、底知れぬぐだっとした空気を纏っている。

「本来1人乗りなんだから当たり前だアホ姉!」

ライガーの上からエヴァに反論したのは、緑髪を伸ばした少女。エヴァの末妹であるヴァネッサだ。

「いやすいません無理に乗せてもらって……」

次に降りてきたのは赤いポニーテールに丸眼鏡の少女。小動物的な印象を受け、エヴァやヴァネッサはともかく陽歌並に頼れるかどうか微妙な雰囲気を感じる。だが、彼はこの人物を見てある種の安心感を覚えた。

「シエルさん! 前線に来るなんて珍しいですね」

「今回はその方がいいと思いまして」

この少女、シエルは陽歌も何だかんだ世話になっている。ミリアやさなと出会った事件でオペレーターとして彼らをサポートしてくれた。

「ごはんー!」

「さくらさん? さくらさーん!?」

ワイルドライガーから飛び降りるなり、監視塔に向かって突貫するピンク髪の少女が一人いた。幼さを残す顔に似合わずグラマラスな肢体を持つ美少女だが第一声が全てを台無しにする。

彼女は城戸咲良。何気に右が緑、左が青のオッドアイなのでオッドアイ仲間として陽歌は付き合いがあったりする。

「ハロウィンパーティが楽しみなんでしょう」

「まさか食い気だけでこの事件解決するつもりなんじゃ……」

エヴァも特にブレーキはかけない。背負った大剣を軽々振り回して城へ突撃するさくらに置いて行かれぬ様、陽歌、さな、エヴァ、シエルも付いていく。

「私はライガー停めておくからな。切符取られたくねーし」

ヴァネッサはワイルドライガーの駐機場所を確保する為に残る。ロウフルシティではワイルドライガーの様なゾイドに関する交通整備も進んでおり、下手に放置すると違反切符を切られて罰金だ。

「ったく、警察ならともかくなんで治安局みてーな民間に違反取られなきゃいけねーんだ?」

そしてその管理をするのがロウフルシティを牛耳る大企業、スロウンズインダストリアルの私設警備組織、治安局。つまり警察では無い上、法的な根拠も無い。乗り回す側からは不満しか出ない有り様だ。

 

監視塔を潜り抜けた五人は跳ね橋の前にやってくる。サーチライトが暗い道を照らし、侵入者を探していた。もちろん、先頭を走るさくらにこれを回避するという発想は無い。

「見つかった!」

ライトが彼らを発見すると、何かを叩く様な警告音が鳴り響く。陽歌は敵を警戒し、銃を抜く。彼らの前に出てきたのは、巨大な骸骨であった。

「亡霊タイプ! こいつは僕が……」

ボンヤリしたその姿から物理的攻撃が効かない亡霊であることを察した陽歌は銃口を敵に向ける。が、その瞬間、さくらが大剣でその巨大な骸骨をバッサリ切り捨てた。

「ええ?」

「俺たちをただの剣だと思うなよ!」

そして剣から声がする。さくらの剣はこの声の言う通りただの大剣ではない。ロックという龍が宿る宝剣なのだ。 魔法の力を持っているため、亡霊に対しても効果を持つ。

「早くごはんー!」

そのままさくらは突撃を止めず、跳ね橋を突進技で粉々に粉砕してしまう。見事に交通手段が無くなったが、無関係とばかりに彼女は橋の分の穴を飛び越える。エヴァとさなはそこに続く。陽歌には戦わせたくないので二人共あわよくば置いていく気満々だ。

「あ、そうだ。話の大枠はエヴァさんから聞いていますが、その兎さんについて話があります」

「はい?」

シエルは一旦、歩みを止めて陽歌の側にいる一つ目の兎を気にする。

「その兎さんって、『怪異』の類だと思うんですけど、どこで『仲魔』にしたんですかー?」

「え? 怪異?」

シエルはこの兎をただの動物ではないと判断した。それには陽歌も心当たりがあった。突然いなくなったことはともかく、ただの兎にしては名古屋やこの静岡に現れたり、行動範囲が広すぎる。

「はい、あなたに取り憑いているみたいなんです。随分陽歌くんのことを気に入っているみたいで……」

「うーん、前に通っていた小学校の兎小屋にいてですね、何だか他人に思えなくって特に気にしてた子なんです。ある日を境にいなくなってしまったんですけど……」

陽歌は経緯を説明した。もちろん、自分のピンチには度々駆けつけてくれることも。シエルはその兎がどういう存在なのか、解説する。

「簡単に言ってしまえば、その子は『悪魔』ですー」

「え? 悪魔?」

「意思を持つ怪異を纏めて便宜上そう呼ぶだけですけどね。有名な怪談に『一つ目の兎』、というものがあるんです」

悪魔という呼称に陽歌は驚くが、単に神以外が召還した超常の存在や、土地神が一神教によって悪魔へ貶められることもあるので悪しき存在という意味ではないとシエルは解説する。

彼女は国立魔法協会と呼ばれる機関で司書をしており、魔法にはとても詳しい。今回も魔の存在であるこの城を攻略するキーパーソンとしてエヴァが連れてきた程である。

「一つ目の兎の怪談ですか?」

「はい。多分同じことを体験していると思うのでサックリしたあらすじになりますが、兎小屋にこのような一つ目の兎がいたという話ですー。語り部は『こんな兎もいるんだなぁ』と気にしていなかったのですが、ある日小屋の外から檻になっている金網に木の棒を差し込んで兎を虐めた子がいまんですねー。すると何故か小屋の中にいるはずの一つ目の兎がその子の脚に噛み付いていたのです。しかもその歯形は明らかに人間のものだったとか……。つまりこの兎は力こそ微弱ですが怪談の属性を持つ悪魔なんですー」

「それで僕のとこに時々来たんだ……」

ただの兎ではなく魔の存在、だから陽歌のピンチに駆けつけることが出来た一方で、力が足りないため周囲に自分と同じ様な怪異がいないと姿を現すことが出来なかったのだ。

「本来、悪魔と契約を結んで仲魔にするには呼び出す手間や契約の代償が必要です。しかし、向こうから懐いているのなら現界のコストを負担するだけ。これを機に正式な契約を結んで仲魔にしましょうよー。契約をすればこの子も存在が安定していつでも力になってくれます」

「そうですね。ひとりぼっち時代からの長い付き合いだ、これからもよろしく頼むよ」

シエルの提案で、陽歌は一つ目の兎と契約を結ぶことになった。戦力としては決して頼れるものではないかもしれないが、馴染みの顔が傍にいるのはありがたいものだ。

「はい、という訳で契約してしまいましょう。実は兎さんの件はエヴァさんから聞いていて、その為に準備したものがありますから」

シエルは一枚の羊皮紙を地面に敷いた。そこには魔方陣が書かれている。

「二人共、この魔方陣に手を乗せて下さい」

「はい」

陽歌はしゃがみこみ、羊皮紙の魔方陣に義手の手を乗せる。そこでふと気になった。

「これって義手でも有効なんですか?」

「『手を置く』という行為そのものが重要なので、有効です」

一つ目の兎も手を乗せる。すると魔方陣が赤く輝き出し、生き物かの様に動き始める。シエルは詠唱を開始し、契約の手順を進める。

「契約者、浅野陽歌が怪談の悪魔に宣誓する。汝、我が従僕として仕えよ。名を与えることでこの契約の証とする」

シエルは陽歌に彼が行うべき手順を説明する。

「この子に名前を付けて下さい。それが契約の証になります」

「名前……えっーと……」

彼はしばらく考え、自分に寄り添い続けた一つ目の兎に名を与える。それは、兎が出てくる代表的な物語を書いた人物のペンネームから取られたものであった。

「ルイス。今日から君はルイスだ。よろしくね」

これにより契約は成立。魔方陣は二人を包み、消えていく。同時に陽歌の右手の甲に紋章の様な物が浮かび上がる。赤いもの一つと、青白いもの二つのパーツで構成されたものだったが、すぐに消えてしまう。

「これは?」

「悪魔遣いの証にして、絶対命令行使権です。お二人の間では必要ないと思いますが……」

そうした保険の様なものも存在するのだ。それだけ、本来なら悪魔との契約はリスクを伴うということになる。

「そして、これが話を聞いて用意したものですー」

大方の話をエヴァから聞いていたというシエルは、この兎、ルイスとの契約を見越してアイテムを用意していた。彼女が取り出したのは、レトロゲームのカセットにも見える小さな少し厚い長方形の板であった。短辺の一つに端子らしきものもあるので、本当にカセットに見える。刻印された文字からして、縦長になる様に持つのが正しいらしい。

 カセットには縦書きで『ラピットアニマル』の文字が書かれている。そして、何の動物かは特定出来ないが動物のシルエットも描かれている。

「悪魔を強化するプログラムですー。これなら基本的に弱い悪魔でもパワーアップして戦闘に耐えられる様になります。ハッキリと使う意思を持って横のボタンを押して起動してください」

「詳細は分からないけど、シエルさんが用意したなら大丈夫でしょ」

 陽歌はシエルの指示通りに、カセットの横に付いているボタンを押して起動する。うっかりで暴発しない様にするためなのか、使う意思を持って押す、と彼女は説明したが具体的には魔力を流して起動させる必要がある。魔法と縁など無い陽歌でも魔力は人間ならば微弱には持っているので、魔法は使えずともこれを起動することに難は無い。

『ラピット!』

 カセットが光り、音声が鳴る。

「もう一度ボタンを同じ様に押してくださいー」

 暴発防止措置なのか結構厳重に安全装置が掛けられており、ボタンを再度押す様に指示される。再びボタンを押すと、光るのは同じだが音声が変わる。

『animals program』

「それを今度は契約の紋章に翳してくださいー」

 そして次は、右手の紋章にそれを触れさせると来た。一度は消えた紋章だが、使おうとする意志を見せるなり右手の甲に出現する。そこにカセットを近づけると、何かが読み込まれる様な音と共に、陽歌の目の前にポリゴンで出来た動物のシルエットが出現する。

『open your eyes』

「それをルイスに刺してください」

「え?」

 急にそんなことを言われたので、陽歌は戸惑ってしまう。恐る恐るカセットをルイスに近づけると、それはルイスの中に吸い込まれていった。

「うわぁ!」

 そしてポリゴンの動物はバラバラになって宙を舞い、0と1の帯となってルイスへ集まっていく。それを纏ったルイスは光と共に大きく姿を変える。

 サラブレッドほどの巨体になり、兎のようなふわふわを維持しつつ、その暖かそうな毛皮からは細身でしなやかながら強靭な四本脚が生える。

「おお、何だかホッキョクウサギみたいになったぞ」

「あー、多分あなたのそのイメージも反映してますねー」

 大きな体躯の割に兎としては耳が短く、特徴だった一つ目も一般的な動物らしい二つ目になっている。光が弾けると、陽歌には読めない文字の様なものが周囲を回って何かを伝える。

「『ポラリスラグゥ』。この子の種別ですね」

 シエルにはそれを読むことが出来た。仲魔が何に変化したのかを知らせる機能もあるらしい。ポラリスラグゥへと変貌を遂げたルイスは身体を屈めて陽歌へ背中に乗る様促した。

「よし、行くよ!」

 陽歌を乗せて走り出すルイス。シエルはそれに飛行魔法で追随する。ルイスの脚力は凄まじく向上しており、忽ち景色が溶けるほどの速度まで加速した上に本来なら跳ね橋を必要とする穴を容易に飛び越えて向こう側に到達する。それでいて、乗っている陽歌には殆ど衝撃が伝わらないほど柔軟なバネを持っている。

「凄い!」

 驚くべき能力に関心する陽歌だったが、怪異と呼ばれる存在が強化されて辿り着く領域に生身で踏み込んでいるさくらやさなは何だろうという疑問が頭を過ってしまう。エヴァは一応、ロボットなので疑問には思わなかったが。

 

   @

 

「さて……跳ね橋を降ろしてやるか」

ワイルドライガーを停めたヴァネッサは城へ向かう跳ね橋を降ろすため、監視塔へ向かった。大体、こういうもののスイッチは橋やそこから入る人間の見える高い場所に設置されているものなのだ。

陽歌達が走り抜けた監視塔は、吹き抜けになっておりどういう仕組みか石の床が柱の支えも無く浮かんでいる。ヴァネッサは軽々とその飛び石地帯を登っていくと、あっという間に天井に突き当たる。塔はもっと高い筈だが、これはどういうことか。

「なるほど、こういうことか」

彼女は無銘と呼んでいる愛用のガンブレードを取り出し、天井を斬り付ける。インパクトの瞬間、引き金を引くと銃声と共に衝撃が増す。天井に穴が空き、上に登れる様になる。

「やっぱりな。ん?」

そこでヴァネッサは下から巨大な蟹の様な悪魔が迫っていることに気づいた。監視塔の幅いっぱいの巨体で、脚を壁に引っ掻けて登ってくるではないか。

天井付近に近づくと、蟹の悪魔は緑色の身体に力を込めて茹で上がった様な赤色に変化する。そして、鋏を鳴らして天井へ攻撃を仕掛ける。一発では破壊出来ないのか、数回叩いて天井を砕く。

「敵がやっぱいるよね」

特に慌てた様子も無いヴァネッサは引き続き、飛び石の足場を登っていく。進行方向にいるわけではないので無視するのが手っ取り早いと彼女は感じていた。蟹がガスや泡で攻撃を仕掛けるが、軽やかに避けていく。登ると、また天井があるので ガンブレードで破壊して先に進む。

一発で自分の通れる穴を作れるヴァネッサに対し、蟹の悪魔は数発全力で鋏を叩き込まないとならず、距離は開く一方だ。

「ん?」

繰り返していると、天井にも変化が見られた。刺が下に伸びている天井を目にすることになった。が、その左右に抜け穴の様なものがあるではないか。

「こっちか」

その抜け穴を通ると、天井を避けて上に登れる様になっていた。天井の正体は巨大なエレベーターの床であった。エレベーターとはいえ、しっかりと箱になっているわけではなく床板を木の枠で囲っている様なもので石の壁が見える。今は使わないので彼女はそれを一旦無視し、跳ね橋のレバーを探した。

「あったあった」

塔の外へ伸びるベランダにレバーは設置されていた。ここから跳ね橋の様子も見ることが出来る。だが、降ろす予定の跳ね橋は見るも無惨に砕かれていた。

「おいおい……」

ヴァネッサはこういう事態に慣れていたのか、特に驚くことなく引き返すことを決めた。面倒なので、せっかくあるのだからとエレベーターを使うことにした。

「これかな?」

エレベーターのレバーを引くと、エレベーターは想像の倍以上の速度で下に下がっていく。その際、蟹が巻き込まれた。

「おおおいいい!」

 周囲の壁にべったりと蟹の血が残る様を見せられ、ヴァネッサはドン引きした。一番下までエレベーターが落ちると、蟹の血が一帯に血が撒き散らされる。床もしっかり接地出来てなくてぐにぐに柔らかい感触があり、妙に生々しかった。

「……」

 完全にやる気を削がれたヴァネッサはそのままワイルドライガーのところへ戻っていった。

 

   @

 

 跳ね橋を超えても尚続くほど石橋は長く、湖を利用した堀の広大さを思い知らされる。きっとこの湖にも配下や集ってきた悪魔がいるのだろう。

「ごはんー!」

爆走を続けるさくらを止められる悪魔はいなかった。明らかにボスクラスだろう巨大な悪魔が雑魚同然になぎ倒されていき、もはやユニリバ無双としか言えない有様だった。剣に触れる傍から紙の様にスッパリ切れて炎と共に消えていく。大剣なので当然どんなに素早く振り回しても物理的に振り回す際の隙があるのだが、そこに攻撃を仕掛けても蹴りやパンチが飛んできて吹き飛ばされ、剣で斬られるのと大差ないダメージを受けて消し飛ぶ。

 その勢いについて行くことで、エヴァとさなは戦うこと無く先に進めた。そして遂に三人は見上げるほど巨大な城門の前に辿り着いた。城は更に高く強固な石の塀に囲まれており、守りの硬さを伺わせる。

ようやく石橋が終わり、城の本体に肉薄出来る。並のヴァンパイアハンターならばここに来る前に死ぬ者の方が多数だろう。

 進んでいくと、三人が通った道の下から柵が昇って来て道を塞ぐ。

「ん?」

 前方の門が開くと、小さなゴブリンが二人、二本の鎖を引っ張ってボロ布を被った猫背の巨人を連れて来た。鎖は腕に繋がれており、その手には身の丈ほどもある巨大な斧を持っていた。巨人の上にもゴブリンが乗っており、他の二人と違いが無いのに偉そうに指示を出す。

 巨人の足が止まるとゴブリンが鎖を強く引っ張る。それが巨人の不評を買ったのか、一人のゴブリンに拳骨を食らわせて倒す。おそらく頭蓋骨や頸椎を折られて絶命しただろう。そしてもう一人のゴブリンも鎖をちぎってそれごと橋の外に投げ捨てた。上に乗ったゴブリンはぴょんぴょん飛んで怒りを表すが、それを持って投げ……」

「いっけー!」

 という一連の登場演出を無視する様にさくらが大剣を奮う。聖剣の様なビームが巨人を襲い、その後ろで地味に進路を塞いでいた鉄の柵ごと吹っ飛ばして消し炭にした。演出すら許さない圧倒的な力を見せつける。

「さて、もうすぐ城の中ですよ」

「この調子だと城ごと吹き飛ばしそうだね」

 門を通って、塀の中へ侵入する三人。そこへ、進化を果たしたルイスに乗った陽歌と飛行するシエルが追い付く。

「ここまで敵がいなかったんだけど……」

「まぁみんな死んだからね~」

 一切の妨害に遭わなかったことに困惑する陽歌へ、エヴァは簡単な説明で済ませる。一行は揃って先へ進む。城への入り口は一体誰が潜るのを想定しているのかというほど大きな扉で、彼らが近づくと何もしていないのに扉は開いた。

「誘ってる……?」

「いや、まさか」

 さなは敵がこちらを迎え撃つ気ではと予想したが、陽歌は城の構造にも見られるほどの入念な妨害からそれは無いと考える。扉の中からは白い不気味な仮面を被った、黒いてるてる坊主みたいな悪魔が現れ、一行に一言を告げる。

「トレバー、今はその時ではない」

 それだけ言うと、悪魔は引っ込んで扉を閉める。やはり歓迎する気はない様だ。

「ふん」

 さなが扉を殴ると、あれほど巨大な物体がまるで発泡スチロール製だったかの様に、容易に吹き飛ぶ。軽々と砕け散ったにしては重い音が辺りに響く。件の悪魔はバラバラになった扉の前で唖然としていた。

「いや、あの……まだその時では……」

 その隙に、エヴァがいつの間にか手にしていた二本の光剣で悪魔を切り伏せた。

「体験版のふりはいけませんねー、これ製品版なので」

 そのぐだぐだした態度からは想像も出来ない早業だった。悪魔は自分が死んだことすら自覚出来ないだろう。これが四聖騎士団を統括する人物の実力、その一端なのだ。

 

こうして、全選手が入城した。果たして、ミリアとカラスの運命は? 世界は闇に包まれてしまうのか? 全ては、五人の少年少女と一匹の兎に託された!

全選手入城!

四聖騎士団統括、青龍長女! 全てのぐだぐたと娯楽を愛する騎士! 夜更かしはいいけど明けない夜はご勘弁! エヴァリー・クルセイド・コバルトドラグーンだ!

月の住人にしてミリアの保護者! その正体は狐か狼か、自称普通の女の子! トランジスタモンスターマシン、さなの登場だ!

三度の飯より四度の飯よ! 流浪の魔法剣士(ソーディアン)、美味しいご飯がある世界を守る為なら不可能など存在しない! 城戸咲良こと、サクラ・ルーシェ・クアトリガ! 宝剣ラグナと融合した相棒の皇龍ロックと共に参戦だ!

国立魔法協会所属! 見た目に騙されるな、架空の魔法だって使いこなす伝説級『司書(セイファート)』! 永遠の初心者、シエル・ラブラドライトが何と前線入りだ!

ヤバイ級のメンバーに真人間が飛び入り参加! 新進気鋭のフェミニンガンスリンガー、浅野陽歌が無謀にも悪魔城へ挑む! かつて救われた恩は、必ず報いてみせる!

近代怪談から参戦! 一つ目兎のルイスだ! 不安定? 希薄? 否! 全ては可能性と伸び代の裏返しだ! 主を守る為に怪談が伝説の悪魔に立ち向かう!

 加えて前線をサポートする豪華なアシスタントをご用意いたしました!

 ユニオンリバー、そしてAIONを支えるチート錬金術師! だいたいこいつのせい! 早く酒を取り上げろ! アスルト・ヨルムンガンド!

 万能の魔法は一人で成らず! シエルの姉貴分、霊鳥ラピード・シェラレオーネ!

 みんなが帰る家と世界を守ってこそ一人前のメイド! アステリア・テラ・ムーンス!

 どうやら一名は到着が遅れているようですが、到着次第皆さんにご紹介します!

 今、ここに伝説の城を攻略せんとするチャレンジャーが集う。彼らを待ち受ける試練とは如何に?

 




 プレイアブル解説

 ヴァネッサ
 ガンブレードで軽やかに攻撃する。見た目に反して射撃は出来ないので注意。攻撃が当たる瞬間にボタンを押すことでさらに威力を増す『ジャストアタック』が可能。天魂で一時的にパワーアップ出来るぞ。

 さくら
 大剣で豪快アクション。リーチが長いので高いところに手が届く。武器のせいで遅く見えるが、思ったよりアクションスピードは速い。また、秘密を持っている…。

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