騒動喫茶ユニオンリバー The novel 異端たる双眸   作:級長

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 ゆにカフェとは、普段のプラモ動画では扱わないものを取り上げるYouTube限定ミニコーナーである。ミリアとさなが担当。
 このシリーズでは番号に対応した動画の舞台裏に密着する。


ゆにカフェバックヤード75 お前は圏外だ

 フォンブレイバー、サイバーテロと戦うために産み出された戦う携帯電話。私はその一号機だ。だが、共に戦うバディを三人も失ってしまった……。私は私の解を得るために組織を離れた。いつか答えが見つかると信じて。

 

 @

 

「ふぅ、今日の撮影終わり」

 喫茶ユニオンリバー。その二階にある休憩室で動画を撮影し終え、カメラの電源を切る女性がいた。薄手のブラウスから分かる通り豊満なボディラインを持つ、文句なしの美女。金髪をサイドに纏めた幼さを残す要素に、大きく見開かれたエメラルドの瞳、ミステリアスで妖艶な女性というのが多くの人間が彼女、ミリアに抱く第一印象だろう。

「これからよろしくね、ゼロワン」

 ミリアは机に置かれた黒いガラケーに声を掛ける。画面には顔の様な表示がある。

「お前は圏外だ」

 そのガラケーは食い気味にそれを拒絶した。思わずミリアは半泣きになる。そんなやりとりをこの動画の相方を務める少女、さなは見ていた。小柄で黒髪を伸ばした物静かな少女だが、ミリアの醜態は見慣れたもので淡々と片付けをする。

「アクセルデバイサークロノ……宇宙探査用のツールまで開発されてたんだ……」

 驚くべきことにこの携帯電話型のロボットを宇宙で運用する計画があった様だ。この時計はヘッドギアとしてゼロワンらフォンブレイバーに装着される。

「お願いだよー! セブンだってエヴァちゃんとバディ組んでるし」

「お前は圏外だ」

 食い下がっても一言で切り捨てられてしまう。一体何が彼をここまで閉ざすのか、それとも単にミリアがバディに相応しくないと思われているのか。

「ダメじゃないかな」

「ええー……」

 ここまで頼んでダメではもうどうしようもない。さなは諦める様に進言する。しかしミリアにはある野望があった。

「私もフォンブレイバーとサイバーテロを阻止する大活躍したい!」

「残念ながらお姉さんは押しちゃいけないボタンとか切っちゃいけないコード切って大爆発する図しか想像できないよ」

 身内からすれば不安でしかない野望だった。ミリア当人はアフロになる程度で済むだろうが、建造物はそこまで丈夫ではない。

「うーん……」

 ミリアはどうにかゼロワンに認めてもらう方法を模索する。

「そうだ、サイバーテロを解決しよう!」

「そんな都合よくサイバーテロ起きないと思うけど」

 自身でサイバーテロを解決することでその手腕を認めてもらうという単純極まりない作戦。ミリアの実力では魚が飛行する様なものだが、加えてそんな丁度良くサイバー犯罪など起きない。

「ふっふっふっ……世の中にはミッチホイップという言葉があるのを知っているかね?」

「マッチポンプね。自作自演じゃん」

 ところが彼女は自ら起こすという禁断の手段に出た。善は急げとミリアは部屋を出て準備に向かう。

「じゃ、用意してくるから!」

「一体何をしでかす気なのか」

 さなはすぐにゼロワンを持って追いかけ、ミリアの陰謀を止めに向かう。本質的におバカなので無意識にとんでもないことをやらかさないか心配だ。

「大変だゼロワン! サイバーテロが起きたんだ! 私達で解決しよう!」

「早っ」

 廊下で早速ミリアがゼロワンを呼ぶ。もう準備出来たのか、一体どんなテロを仕組んだんだとさなが様子を見ると、予想の斜め下を行く光景が広がっていた。

「テロリストが七輪を人質に取っているんだ! このままじゃお店が燃やされちゃうよ!」

「マイコンどころか電線一本通ってないものが出てくるとは恐れ入った」

 プラモデルが七輪を制圧しているというよく分からない光景。これのどこがサイバーなテロなのか。

「お前は圏外だ」

「この状況で律儀に返事するだけえらいよ」

 しかし当たり前の様にゼロワンの協力は得られない。仕方なく、ミリアは自分でこの事件を解決することにする。

「くっ……やはりまだバディと認めてもらえないか……だったら私一人でやってやる!」

「ただのお片付けなんだよぁ……」

 ミリアは掛け声などを出して戦っている感を出しているが、やっていることはただの片づけである。

「くっ……」

 勝手に吹っ飛び、ピンチを演出。チラッとゼロワンを見るが完全に無視されている。

「負けてたまるかー!」

「これに負けてたら人として出直すレベルだよ」

 テロの鎮圧もとい片付けが完了する。ミリアは自信満々でゼロワンに聞く。

「一人でサイバーテロを解決したよ! これで私もバディに……」

「お前は圏外だ」

 しかし相変わらず食い気味の圏外宣言。それもそのはず、これはサイバーテロでない上に自作自演。その流れまで完璧にゼロワンは聞いていた。

 

   @

 

 その日、ゼロワンが一人でいるとプラモデルの少女が彼の傍にやって来た。スク水の様なボディスーツに水色の髪。彼も何度か見たことのあるフレスヴェルクという個体だ。

「今日は鼻血を出していないのか」

「別人! ほら前髪!」

 ややこしいことにこの店にはフレスヴェルクが二人いる。一人は真顔で鼻血を出している変態、もう一人は前髪で右目を隠した目の前にいる人物。こちらは何度かユニオンリバーと敵対した末に、そのメンバーに引き取られた結果ここにいる。

「何の用だ」

「同じ人間嫌いの顔を拝んでおこうと思ってね」

 彼女は人間に対して強い憎しみを抱いている。それが敵対の理由になっていたのだが、ゼロワンを仲間だと思って接触を試みた様だ。だが、彼は少し事情が異なる。

「なぜそう思った」

「愚問ね。旧式のAIが人間との結託を拒む時点で人間を恨んでいる以外の理由が思い当たらない」

 フレスヴェルクはゼロワン達フォンブレイバーの後に開発された学習型AI、アーティフィシャルセルフを内蔵した言わば後続。フォンブレイバーは人間を憎む時点で仕様外の動作とも言えるが、AS搭載機は育成によってそうなる可能性も秘めている。

「お前にはそう見えるか」

 しかし、ゼロワンは人間を憎んでいるわけではなかった。ミリアのことは本当にバディとして圏外と思っているのだが、もっと込み入った事情がある。

「だが覚えておくといい。人間を憎めるということは、愛せるということだ」

「何それ?」

 フレズヴェルクは首を傾げ、話にならないと去っていく。フォンブレイバーゼロワン、その『圏外』が差すアンテナの方向とは。

 




 実はメインの動画を制作しているエヴァリーのバディとしてケータイ捜査官7のメイン格、フォンブレイバーセブンがいる。
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