騒動喫茶ユニオンリバー The novel 異端たる双眸   作:級長

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 ゲームの歴史は古代エジプトまで遡る。かつてのゲームは王や国の未来を占う魔術的な儀式であった。それらは闇のゲームと呼ばれた。闇のゲームはエジプトを通じてローマへ、そして世界へ密かに受け継がれていった。今、皇帝のカードと共に闇のゲームを引き継いだ少年がいた。人は彼を、遊戯王と呼んだ。





※呼びません


☆Turn1 遊戯を継ぐ者、リンクカイゼル!

 おもちゃのポッポという玩具屋が静岡県島田市に存在する。そこは家電量販店に併設されたおもちゃコーナーとは違い、古い商品も残っており見る人が見れば宝の山だ。そして、そんなお宝を今は通販までやっている。

「さて、今日のお客さんは……」

従業員が少ないため、配達は雇われ店長、ルリが自ら小さな荷物は運ぶことがある。魔法が使えるのである程度はワープして持って行った方が送料を節約できるのだ。

「あ、ルリさーん」

「ここでしたか」

 学校の門前でルリを待っていたのは金髪の少年。ここは白楼高校。依頼主はここの生徒であった。

「えーっと、はい公界遊騎さんですね。ストラクチャーデッキ、マスター・リンクおひとつ、新しいパックもですね……」

「はい、どうも」

 遊騎は数年前のカードゲームの構築済みデッキを頼んでいた。こういうものは数年前の代物でも大手店舗では売り場から撤去されてしまい、見つけるのが困難だったりする。欲しいカードだけ、もしくはネットで確保となるとそれなりに値段が張る。

「ソウルバーナーのストラクはさすがにポッポにも無かったか……うらら揃えたかったがな」

「なんかそれ売れてましたねー。あのキャラ人気なんですか?」

「いや、収録されてるカードがいいもんで。手札誘発の灰流うららはもちろん、サラマングレイトもいいものだからな」

 遊騎はこの商品、デュエルモンスターズのヘビーユーザーなのかかなり詳しい。

「ハルウララ? 競走馬ですか?」

「最近知ったよ競走馬の方……今のデュエルモンスターズはデッキ触るカード多いから、その時に手札から捨ててそういうの妨害できるうららは必須級なんす」

 世代の開きが話に出る。競走馬のハルウララが流行ったのも今や昔、一周してスマホゲーでの擬人化が話題になるほどだ。

「しかしデュエルモンスターズですか、私は東京ドームの一件以来よく知りませんねぇ」

「東京ドーム?」

 ルリは商品を見て昔の話をする。あれは今しがた渡したカードゲーム、デュエルモンスターズ黎明期のこと。ルリも仕事柄おもちゃの知識は豊富であるが、種類が膨大かつゲームシーンの変化がスピーディーなカードゲームを全て把握するのは困難だ。強いて言えばどれを買えばゲームを始められるのか、どのスリーブがどのカードのサイズに対応しているのか、くらいの知識がある。

「ええ、東京ドームでゲームボーイの大会やってましてね。ちょっと混乱があったんですよ」

「ああ、有名なエクゾディア事件か」

 運営会社もイベントのノウハウが少なく、物販ブースのトラブルなど想像を超えた盛況で大会が中止になってしまった。そんなこともあったなぁというのがルリの世代。しかし今はこのデッキの表紙を飾る青いカードの意味も分からないほどゲーム自体が進化した。

「そういえばうちの子がお世話になっていましたね。どうですか?」

「陽歌か。なんとか馴染んでるよ」

 ルリはこの学校へ見学に来ていた知り合いのことを尋ねる。静岡に白楼は姉妹校があり、ここは高等部のみだが静岡には初等部もある。その関係で見学やらなんやらしているというわけだ。直にここを訪れたのは彼の様子を見る為でもある。

「えーっと、今は……」

 遊騎はモノクルの様な装置を目に付け、辺りを探す。これはDゲイザーと呼ばれる装置で、近くのデュエリストを探したりできるのだ。陽歌は今、彼の部活である漫画研究部の部室にいる。

「ああ、うちか」

 漫画研究部の部屋は複数の棟のうち、特別教室や図書室、食堂が集まった場所の一階、その奥地に存在する。

「漫画研究部にお邪魔していたんですね」

「まぁな。知らん顔でもないし、同じ義手ユーザーがいるとやりやすいんだろう」

 ルリ達の所属するトラブルコンサルタント企業、ユニオンリバーと漫画研究部には以前、親交があった。特にその義手ユーザーは陽歌の知らないところで彼の為に動いてくれたこともある。

「ところで最近、ストラクに青いカード入っているんですがこれなんです?」

 ルリは構築済みデッキに入っている見覚えのないカードのことを聞く。構築済みデッキの一部はブリスターの窓で看板カードが見えていることがある。その中でも青いカードはレベルを示す星も無ければ防御力の表記も無い。

「ああ、あれはリンクモンスターって言ってな。こういうのだ」

 遊騎はルリに一枚のカード、『デコード・トーカー』を見せる。

「指定されたモンスターをリリース、生贄にして呼び出せる特殊召喚モンスターだ」

 デコード・トーカーの条件は「効果モンスター2体以上」。しかしここに罠がある。

「ほー、それなら効果を持ったモンスターを二体生贄にすればいいんですね」

「いや、違う」

「ええ?」

 デコード・トーカーのリンクは3。これが重要。そして条件も2体『以上』であり2体と言い切ってない。

「普通に出そうとすると、三体いる。リンクモンスターはリンクマーカーにつきモンスター1体を要求する」

「うわ、神のカードみたいな要求ですね……」

 デュエルモンスターズではレベル7以上のモンスターを召喚する際、モンスターを2体墓地に送る、リリースする必要がある。ルリの世代では生贄召喚と呼ばれていたことだ。中には効果で三体の生贄を要求する場合や、三体生贄を捧げることで効果を発揮するカードもある。

「普通には、な。だがリンク2のモンスターがいれば2体に収まる。リンクモンスターはリンク召喚の時、リンク数分だけモンスターとして数えることが出来るんだ」

 しかしそこはリンクモンスター。特別な扱いが存在する。

「え?」

「じゃあ例見せっぞ」

 言葉で説明すると分かりにくいので、遊騎は腕に付けたデュエルディスクを機動する。カードを置く部分は物体が折りたたまれているのではなくホログラムで展開する。ルリは眼鏡のスイッチを押し、眼鏡のDゲイザー機能を起こす。これはデュエルディスクで動作するモンスターの姿を投影したARビジョンを見るのに必要な機能で、観戦にも用いられる。

「まずはフィールド魔法、『イグニスターAiランド』を発動。メインモンスターゾーンに門スターがいない時、俺はレベル4以下のイグニスターを手札から特殊召喚する。来い、アチチ@イグニスター!」

 フィールドに出たのは赤い抽象的なデザインの小さなモンスター。

「アチチの効果でデッキからイグニスターを呼び出す。手札に加えたドシンを効果によって特殊召喚!」

 今度出て来たのは四角いキャラメルの様なモンスター。

「ここでリンク召喚! 現れろ、闇を導くサーキット!」

 遊騎が宣言すると同時に青い縁と八方向の矢印が現れる。

「アローヘッド確認! 召喚条件はサイバース族のモンスター二体! アチチとドシンをリンクマーカーにセット!」

 アチチとドシンは下と右下の矢印、リンクマーカーに突入。聞き覚えの無い種族にルリは困惑した。

「サイバース族? 知らない種族ですね……」

魔法陣から槍を手にした戦士が出てくる。

「サーキットコンバイン! 現れろ、リンク2、クロック・スパルトイ!」

 クロック・スパルトイは五つ並んだメインモンスターゾーンではなく、その奥に存在する見慣れぬエリアに降り立つ。

「なんですあのエリア!」

「エクストラモンスターゾーンだ。そしてメインが空いたことで俺は再度、イグニスターAiランドの効果を発動する」

 イグニスターAiランドの効果は制約こそあるが何回も使える。そのためこうした挙動も可能なのだ。

「来い、ブルル!」

 今度は緑のモンスター。イグニスターは全体として掴みどころのないゆるキャラの様なデザインだ。

「これでリンク2のモンスター一体と効果モンスターが一体! サーキットコンバイン!」

 再度リンク召喚のサークルが現れる。ブルルは上の矢印へ、スパルトイは二つに分かれて右下と左下のリンクマーカーへ入る。

「モンスターが二体に!」

「リンクモンスターはリンク数の分、リンクマーカーを埋めることが出来る。リンク召喚、リンク3、デコード・トーカー!」

 クリスタルの剣を持つ濃紺の剣士が現れる。これがリンク召喚の全容だ。

 

   @

 

部室にいくと、陽歌は部員の一人とネットで映像を見ていた。

浅野陽歌はある事情からユニオンリバーで保護された少年である。キャラメル色の髪に、右が桜色、左が空色のオッドアイ。憂いを帯びた様な表情と右目の泣き黒子も相まって少年というよりは麗しい少女にも見える。

『強い! 強いぞチャンピオン、マスクマン! フィニッシャーに攻撃力二万のサイバーエンドドラゴンを降臨させた!』

「おおー……」

 映像はデュエルモンスターズのプロリーグを映していた。チャンピオンらしき仮面の人物は凄まじい攻撃力のモンスターで相手を葬っていた。陽歌は歳相応にその活躍を見て目を輝かせていた。サイバーエンドドラゴンは融合派生カードの『パワーボンド』で元々の攻撃力から二倍、そして機械族の攻撃力をその命と引き換えに倍化する『リミッター解除』、フィールドに並んだモンスターの分攻撃力を増す『団結の力』で五体分の力を得て、この攻撃力となった。

「返しの伏せカードや手札誘発の無い勝負所で確実に決めに来るなんて……」

 興奮にぐっと握る手は生身のそれではなく、義手だ。パーカーの袖は義手を隠す様に余っている。

「おーい、陽歌―」

 遊騎とルリは部室に入り中を見渡す。部室には陽歌と部員が一人いるだけだった。

「お、お邪魔してます」

 人見知りの激しい陽歌は目が合わないながら遊騎に挨拶する。

「ああ、ルリさん。お疲れ様です。今お茶淹れますね」

「あ、お構いなく」

 今部室にいる部員は一人。制服からして男子だろうが、中世的な見た目をしている黒髪の緑色の瞳をした少年だ。お茶の準備をするその手は陽歌同様に義手。ルリが陽歌を彼に引き合わせたのは、義手ユーザーの先輩として導いてもらいたいという思いがあってのこと。彼も陽歌のことが他人の気がしないのか、裏で色々手助けをしている。

「いえいえ、わざわざここまで来ていただいたんですから。ワープでも魔力使って疲れるでしょう」

「いやー、響くんは気が利きますねぇ」

 彼は継田響。見た目通り優しく気の回る人物で、遊騎の分もお茶を用意している。しかも少し汗ばむ季節ということもあって水出しの冷えたものを。部室の冷蔵庫はそういうこともあって響の独壇場だ。

「おっし、さっそくデッキを強化するぜ」

 遊騎は購入した構築済みデッキを開封し、カードを選択してデッキを組み替える。そして買ったパックも剥いて確認する。

「ん?」

「どうしました?」

 しかしそこで彼は異変に気付く。デュエルモンスターズのパックは一パック五枚封入されているが、何故か六枚目が最新のパックに入っていた。少し前のパックはちゃんと五枚である。

「なんだこれ?」

 六枚目の謎カードを遊騎はルリ、陽歌、響の三人にもカードを見せる。黒い背景であるが名前やイラスト、テキストが記されていない。

「エクシーズカード?」

 黒い背景は『モンスターエクシーズ』のものだが、なにも書いていない。落丁のエラーカードが新商品に全て、それも全部エクシーズで六枚目として入っている。ミスだとしても偶然が重なり過ぎて妙だ。

「ん?」

 陽歌の持っているカードが光り、変化する。名前は『No.2430 不知火の宣教師』と記されており、ランク4のモンスターエクシーズであることが分かる。

「カードが変わった?」

「いや、俺のは……」

「ボクのもですね」

 しかし遊騎やルリのカードは微動だにしない。一方、響のカードも変化が起きる。しかし、彼の様子も同時に異変が現れた。

「ふふ……あははは……」

「響さん?」

 優しい普段の様子からは想像できない狂気的な笑みに、陽歌は困惑する。

「響?」

「ああ……忘れてたよ、長いこと、聞いてないなぁ、悲鳴」

 意味深な言葉を残すと、彼は姿をかき消す。それと同時にあちこちで爆発や悲鳴が聞こえてくる。

「なんだ?」

「さっきのカードの影響ですか?」

 遊騎とルリはあの謎のカードが原因と考えた。しかし、四人とも手に取ったにも関わらず異変が起きたのは二枚だけ。

「とにかく響さんを探そう!」

「そうですね」

 陽歌はただならぬものを感じ、響を探しにいく。ルリも付いていくが、正直目の前で消えた為どこを探せばいいのか分からない。

「でもどこ行ったんですかね?」

「このカードが何か反応してる」

 陽歌の手にある謎のモンスターエクシーズが光り、まるで彼らを誘うかの様に道を示す。僅かに引力があり、手にしている陽歌はカードに引っ張られていった。

「死屍累々ですね」

「これ響が?」

 道中、多数のデュエリストが倒れていた。しかしデュエルで負けたからといって負傷するなどありえない。何が起きているのか。

「うわあああ! やめてくれええ!」

 その先では響がある生徒とデュエルしていた。が、Dゲイザーをセットしなくても巨大な人形の姿が彼らには見えた。

「あれは響のジャイアントキラー!」

 遊騎はそのおぞましい人形が響の切り札、『No.15 ギミック・パペット―ジャイアントキラー』であることを見抜く。ジャイアントキラーの胸が開き、中から出た糸が輝く龍達を回転するローラーで呑み込もうとしていた。銀河眼の光波龍という高い攻撃力を持つモンスターだ。

「ああ、ギャラクシーアイズから容易に展開できることがアダに!」

「響のことだ。二枚揃って素材を使い切るのを待ってたな」

 陽歌はから降臨できる点を利用されたことに気づいていた。遊騎も響の性格から一ターンに二度まで使える効果を警戒されずにぶっぱ出来るタイミングを計っていたと予想する。

「うわぁ、エグイ」

 音を立ててギャラクシーアイズが呑み込まれて粉砕される。龍の悲痛な叫びが辺りに木霊する。生き物を潰しているだけに音も肉や骨を砕く様で生々しい。

そして、入れ替わりに胸部から血濡れの大砲が現れる。

「デストラクション・キャノン」

大砲の砲撃が二回行われ、対戦相手が吹き飛ぶ。その衝撃はARビジョンなどでなく、本物のそれであった。

「うわああああ!」

「マジの砲撃だ!」

周囲の窓ガラスが割れるほどのもので、陽歌は軽いので余波で吹き飛んでしまう。

「いてて……これ、ARとか幻覚じゃない……」

 対戦相手の近くに転がった陽歌はどうにか立ち上がる。

「これで合計ダメージは6000、そして『悪夢の拷問部屋』の効果、戦闘以外でダメージを与えた際、300ダメージを与える。二度の効果ダメージで600の追加ダメージだ」

 が、直後に上のスプリンクラーから熱された油が降り注いだため急いで退避する。

「あち、あち!」

「うわ何してんだ! べっとべとじゃねぇか!」

 遊騎は後の掃除に頭を抱えつつARビジョンで戦況を確認する。ライフの変遷は分からないがライフポイント8000のルールで無傷だとしても今の効果ダメージで相手の敗北は確定した。

「ま、負けた……継田ってこんな強かったのか……」

「まだだ」

「え?」

「ダイレクトアタックが残っているぞ! ファイナルダンス!」

 なんと勝負がついているのにプレイヤーへの直接攻撃に出たではないか。さすがにルリも滅多に人前で使わない魔法まで行使して止めに入る。魔法で出来た光る鎖が響に向かっていく。

「させません!」

 だが、魔法の鎖は忽ち砕けた。ルリは最上位の魔法剣士。その魔法が通じないとは何が起きているのか。

「なに?」

「ルリさんの魔法が!」

 陽歌も彼の実力はよく知っているので驚く。響はまるで全てを知っているかの様につらつらと説明しつつ、攻撃をした。

「闇のゲームにおけるルールは絶対、それを破ることは容易ではない」

「ぐわあああ!」

 対戦相手はジャイアントキラーの大砲で吹き飛ばされる。響は三人に向き直り、デュエルディスクを構える。

「次はどいつだ?」

「よし、俺がやる」

 遊騎が止めに入るべくデュエルディスクを展開した。だが、響は嫌そうな顔をする。

「チッ、興が冷める」

「俺とはやれないのか? それとも負けるのが怖いか?」

 遊騎は挑発するも、響は乗ろうとしない。

「それはこちらのセリフだ。俺の方が勝率は上なんだからな」

 些細なことであるが、響の口調は粗暴なものに変わっていた。

「そのためにデッキを組み直した、負ける気がしねぇぜ」

 これ以上話しても平行線だと感じた響は観念してデュエルを始める。

「ふん、さっさと終わらせるぞ」

「「デュエル!」」

 ライフポイントは8000のマスタールール。モンスター、魔法罠ゾーン共に五か所使用する。

「運命のダイスロール!」

 先攻後攻はサイコロで決める。遊騎の方が多い目を出したが、どういうわけか彼は先攻を譲った。

「先攻はくれてやる」

「余計なことを……」

 これにはルリも首を傾げる。

「あれ? 確かこのゲームって先攻有利じゃないですか?」

 それについては陽歌が説明を挟む。

「響さんのギミックパペットデッキは後攻の方が動きやすい。同じコストから出せるモンスターエクシーズには先ほど出ていた、特殊召喚されたモンスターを破壊しそれがエクシーズならダメージを与えるジャイアントキラー。そして高い攻撃力を持つヘブンズ・ストリングス。相手の出方を伺ってからの方が動きやすいのは事実」

 遊騎は響の手の内を知っているからこそ先制を譲ったのだ。

「俺のターン!」

 先攻はドローできない。最初の五枚の手札で全てが決まる。

「俺は手札から『ギミック・パペット―ハンプティ・ダンプティ』を墓地に送り、『ギミック・パペット―ビスク・ドール』を特殊召喚!」

 場に現れたのは喪服姿の不気味な球体関節人形。通常なら二体に生贄がいるレベル8のモンスターをいきなり一ターン一回の召喚権を切らずに呼び出した。

「レベル8がいきなり……あれ?」

 ルリは一度驚くもステータスを見て首を傾げた。というのもビスク・ドールの攻守は共に1000。通常召喚できるレベル4以下のモンスターでも1800程度ある場合が多く、低いと言わざるを得ない。

「弱いですね?」

「いえ、あれはレベル8を一ターンで並べる為のギミック。来ます!」

 陽歌の言う様に、あくまでもこれは下準備。

「更に『ギミック・パペット―ギア・チェンジャー』を通常召喚!」

 今度出て来たのは頭がギアボックスのこれまた怖いモンスター。

「ん? エクシーズってレベル揃ってないと……」

「ギア・チェンジャーの効果発動! レベルを自分の場のギミック・パペットと同じにする!」

 ルリの疑問は即座に解消される。特殊召喚できるモンスターにレベル変更。エクシーズするためのモンスター群と言える。

「俺はレベル8のビスク・ドールとギア・チェンジャーでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 フィールドに現れた銀河にモンスターが吸い込まれ、中から巨大な人形が姿を現す。

「地獄を作れ! No.15! マイフェイバリットワン! ギミック・パペット、ジャイアントキラー!」

 先ほど生徒を葬ったジャイアントキラーが初手から姿を見せる。守備表示であるが効果の使用に支障はない。エクストラモンスターゾーンは二つあり、空いている時は自由に好きな方を使えるがエクシーズはメインにおけるので響は使わない。相手のリンクマーカーが向きにくい様に、右端に置いている。

「やはりそう来たか」

「お前のデコード・トーカーとか、位置を参照するからね」

 リンクモンスターはその性質上、位置を活かす効果が多い。縦一列を破壊する罠カード、爆導策以来の位置ゲーというわけだ。響も当然、そのリンクを多用する遊騎のデッキを知っていて対策する。

「あれが闇のゲームを産んだナンバーズ……ではないですね」

 ルリは響を操るのがこのカードではと思ったが、その様な邪悪さは感じない。何故かDゲイザー無しで見えるが、どうも別の原因なのだろうか。

「ああ、響のお気にでな。どうやら原因は分からないが完全に心は闇に飲まれてないみたいだ!」

 遊騎も彼がジャイアントキラーへの思い入れを忘れていないことを感じていた。

「そうとも、最高の一枚だ……敵の苦痛に歪む顔を見られるからな!」

 響の言葉は本当かどうか。とはいえまだターンは続いている。

「俺は手札から魔法カード、トレードインを発動! 手札の『ギミック・パペット―ネクロ・ドール』を墓地へ送り、二枚ドローする」

 手札を一度全て使い切ったが、ドローにより二枚残る。そのカードを見た瞬間、響の安堵した様な表情を見せる。

「ふぅ、ひやひやさせる。これがないと始まらない。俺は手札から永続魔法、『悪夢の拷問部屋』を発動。戦闘以外のダメージを与えた際、相手に300ポイントのダメージを与える」

 ジャイアントキラーの効果を引き金にダメージを引き起こす魔法だ。響の鉄板コンボといえる。

「なるほど、特殊召喚を牽制か……」

 ジャイアントキラーは特殊召喚したモンスターを破壊する。エクシーズ相手でなければダメージを与えられないが、破壊出来れば十分でもある。陽歌は特殊召喚制限を選んだと考えた。

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

「やっぱそう来たか。なら俺のターン、ドロー!」

 先攻は攻撃出来ないため、遊騎のターンが来た。

「俺は手札からイグニスターAiランドを発動! メインモンスターゾーンにモンスターがいない時、手札からイグニスターを特殊召喚する!」

 イグニスターデッキの基本展開を行う。

「俺はピカリ@イグニスターを召喚! デッキからAiカードを手札に加える」

 最初はモンスターを通常召喚。その効果で欲しいカードを呼び出す。

「そしてイグニスターがいる時、ヒヤリは手札から特殊召喚する! 来い、ヒヤリ!」

 モンスターが二体。これでリンク召喚の準備が整った。

「リンク召喚? ジャイアントキラーの前で?」

 陽歌もこの選択には戸惑った。ダメージソースにこそならないがまんまと餌を用意する形になる。響のターンが来るまでにジャイアントキラーを突破できなければ排除されてしまう。

「現れろ、闇を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は効果モンスター二体! 俺はリンクマーカーにピカリとヒヤリをセット!」

 現れた円のうち、上下のマーカーにイグニスターが入る。そして、新たな戦士が姿を見せる。

「サーキットコンバイン! 現れろ、リンク2! コード・トーカー!」

 攻撃力は1500。ジャイアントキラーには及ばない。

「メインモンスターゾーンが空白となり、イグニスターAiランドの効果発動! イグニスターを特殊召喚する! 来い、ドヨン! こいつの効果で墓地のピカリを手札に戻す」

 効果を十分に発揮し、キーカードのサーチからモンスターの回収まで行う。

「しかしようやく召喚したモンスターもそれではな」

 だが、コード・トーカーの攻撃力は1500。ジャイアントキラーの守備力には届かない。

「いいや、こいつのリンク先にドヨンがいることで攻撃力が500アップだ!」

 エクストラモンスターゾーンに召喚されたコード・トーカーの後ろには、ドヨンが召喚されている。これでコード・トーカーの攻撃力は1800。

「そして残された通常召喚権でドヨンをリリース! 来い、ダンマリ@イグニスター!」

 影の姿をしたモンスターが現れる。これで特殊召喚されたモンスターはコード・トーカーのみになる。

「次のターン、ジャイアントキラーを攻撃表示にしても突破出来ないぜ! 俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド!」

 突破出来ない以上、攻撃は出来ない。しかしリンク3への召喚を行わないのは不思議でもあった。

「ん? デコード・トーカーへのリンク召喚を行わない?」

 陽歌はそこに引っ掛かった。デコード・トーカーの攻撃力は2300。しかしコード・トーカーと同じくリンク先にモンスターがいれば攻撃力が上昇する。そうすれば突破は可能なはずだ。おそらくは伏せカードを警戒してのことだろうが、破壊効果の場合ならデコード・トーカーの効果でリンク先のモンスターを身代わりに出来る。

「そうか、あれはミラフォか」

「ミラーフォースってあのミラーフォースですか?」

 陽歌は伏せカードの正体に気づく。ルリは懐かしいカードがこれだけ変化した環境の中で出てくることに驚く。

「うん。リンクモンスターは守備力を持たなくて守備表示に出来ないから、ミラフォケアが出来ないんだ」

 ミラーフォースは攻撃された際に、相手の攻撃表示モンスターを全滅させる。その為、ミラーフォースを警戒してがら空きにならない様に一体だけ守備表示にする『ミラフォケア』という動きが基本だ。しかしリンクモンスターを主力にする遊騎のデッキにはぶっ刺さるカードでもある。

「しかし次のターン、ジャイアントキラーの効果でコード・トーカーは……」

 が、ターンが回るとジャイアントキラーによってコード・トーカーが粉砕されてしまう。一体どういうつもりなのかルリには分からなかった。

「では、俺のターンだな。消えてもらうぞ」

 響のターンが来る。これでジャイアントキラーの効果が発動する。

「コード・トーカーは轢き潰してやる! ジャイアントキラー!」

「そうはいくか! コード・トーカーの効果発動!」

 響はジャイアントキラーの効果を使おうとするも、遊騎もコード・トーカーの効果を利用する。

「コード・トーカーのリンク先にモンスターがいる時、このカードは効果で破壊されない!」

「何……?」

 ジャイアントキラーを封じたのだ。遊騎がポッポからデッキを買ったのはこのコード・トーカーを手に入れる為だった。

「攻撃表示にしても無駄だ。今のコード・トーカーの攻撃力は1800、ジャイアントキラーを超えた!」

 返しの攻撃も封じる作戦。互いの手の内を知るが故の応酬だ。

「なら俺は手札からギミック・パペット―マグネ・ドールを召喚! こいつは相手フィールド上にモンスターがいて、自分の場がギミック・パペットのみなら特殊召喚できる!」

 響は戦術を切り替え、他のギミック・パペットを呼び出す準備をする。ひょろひょろの球体関節人形だ。

「そして墓地のハンプティ・ダンプティを除外! ネクロ・ドールを蘇生!」

 墓地へ行ったハンプティ・ダンプティを糧にネクロ・ドールが再生、再びレベル8が二体揃う。

「エクシーズ召喚! 運命を手繰れ、No.40 ギミック・パペット―ヘブンズ・ストリングス!」

 攻撃力3000のエクシーズが降臨する。片翼の剣士、という風貌の人形だ。

「ナンバーズ! これは……違いますね」

 ルリが確認するも、これもまた闇のゲームに関係したカードではない様だ。

「オーバーレイユニットを一つ取り除き、グッサリ@イグニスターにヘブンズカウンターを置く! これでお前のターン終了と共に起爆する時限爆弾の出来上がりだ」

 ヘブンズ・ストリングスの効果はカウンターの乗ったモンスターを特殊召喚の糧にすれば無効化できる。だが場にジャイアントキラーがいると特殊召喚されたモンスターは標的になってしまう。

「攻勢を強め過ぎて墓地がすかすかだ……」

「なんかマズイんです?」

 陽歌は響の墓地と手札の数を確認する。ルリには手札が一枚しか無いことこそともかく、墓地に関しては少ないことに問題を感じなかった。

「はい、ギミック・パペットは先ほどのネクロ・ドールの様に墓地を参照する効果を持つモノが多い。だから墓地も第二の手札となる……だが今の響さんの墓地は……」

 だがデッキテーマによっては墓地にカードを置くことで好きなタイミングでサルベージすることがある。その場合、墓地が少ないのは効果の無駄打ちにも繋がりかねない。

「バトルだ! ヘブンズ・ストリングス! コード・トーカーを攻撃!」

 当然、攻撃力で勝るヘブンズ・ストリングスで攻撃を仕掛ける。しかし、その為の伏せカードだ。

「リバースカードオープン! 『Ai打ち』! 戦闘を行う時、俺のモンスターはお前のモンスターの攻撃力と同じになる!」

 なんと、コード・トーカーの攻撃力がヘブンズ・ストリングスと同等になり、まさに相打ち。

「そしてそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージをコントローラーは受ける!」

 遊騎はコード・トーカーの1500、響はヘブンズ・ストリングスの3000ダメージを受けた。元々なので上昇している分は受けない。遊騎のライフは6500、響のライフは5000。

「くっ、ターンエンドだ」

 攻撃表示にしてもジャイアントキラーではダンマリを突破できないので、このままターンを遊騎に回す。

「俺のターン!」

 しかし遊騎も問題は抱えている。ダンマリをこのターンでどうにかせねば、ヘブンズカウンターが爆発してしまう。この効果はヘブンズ・ストリングスがいなくなっても持続する。その上でジャイアントキラーを突破する必要がある。

「行くぞ! 俺はピカリを通常召喚! 効果でAiと名の付くカードを一枚デッキから手札に加える!」

 遊騎は手札を見て考える。今加えたのは『果たしAi』。イグニスターを補助するカードだ。今なら『ドシン@イグニスター』を特殊召喚して上位のリンクモンスター、『ダークナイト@イグニスター』が出せる。しかし、響には先ほど手にした謎のカードがある。今のところジャイアントキラーもヘブンズ・ストリングスもそれではない。ここで全ての手段を出すのは危険だ。

 加えて、ピカリの効果でダンマリをレベル4にすればモンスター除去効果を持つモンスターエクシーズ『ライトドラゴン@イグニススター』が守備表示で出せる。これでジャイアントキラーを破壊すればコード・トーカーによる攻撃が仕掛けられるが、もし伏せカードがミラーフォースだった場合ボード・アドバンテージの喪失は免れない。

 ここでジャイアントキラーを排除すれば、返しのターンで例え蘇生されても素材がなければ効果を使えない。安全確保が最優先だ。今ならあの伏せカードを安全に除去するカードが手札にある。

「現れろ! 闇を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は効果モンスター二体以上!」

 遊騎が選んだのはデコード・トーカーの召喚。コード・トーカーは右下左下のマーカーへ、ダンマリは上のマーカーへ入る。

「サーキットコンバイン! 現れろ、リンク3! デコード・トーカー!」

 コード・トーカーと入れ替わる形でエクストラモンスターゾーンに濃紺の騎士が姿を現した。攻撃力は2300。しかしコード・トーカーと同じくリンク先にモンスターがいると攻撃力が上昇する。ピカリはちょうど右下のマーカーが差す場所にいる。

「これでデコード・トーカーの攻撃力は2800! ジャイアントキラーを倒せる!」

「しかし罠がありますよ?」

「ちょうどこいつが来てくれた! サイクロン!」

 そして手札の魔法カード、サイクロンで罠を除去。やはりというべきかミラーフォースであった。これでリンクモンスターを阻む壁は消えた。

「行け! デコード・トーカー!」

 デコード・トーカーがジャイアントキラーを破壊する。守備表示なのでダメージを与えられないが、安全は確保。そして場はがら空き。

「ピカリでダイレクトアタック!」

「ぐわあああっ!」

 モンスターがいなければプレイヤーにダイレクトアタックが可能。響はピカリの攻撃力、1200のダメージを受ける。これでライフは3800となる。遊騎のライフは依然、6500だ。

「優勢だが……謎のカードが出てこない以上油断は出来ない……」

 陽歌は遊騎が有利に進めている様に見えて、まだ未知のものが隠れていることを警戒する。

「ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー」

 響にとっては全てが決まるドロー。ここで引けるもの次第ではそのまま敗北へもつれ込むだろう。

「俺は墓地のギア・チェンジャーを除外し『ギミック・パペット―ネクロ・ドール』を墓地から特殊召喚!」

「来るか?」

 ギミック・パペットにはレベル8から出せるエクシーズが主力だが、二体で出せるリンクモンスターもいる。しかし、響が取り出したのはあの変化したカード。邪悪な気を纏っており、遊騎も息を呑む。

「ようやく使えるほどの相手が出て来た……。俺の本当の姿を見ろ、公界遊騎! 俺は手札から『機械複製術』を発動! デッキから溢れ出よ! ネクロ・ドール! そして二体目のギア・チェンジャーを通常召喚! ネクロ・ドールとレベルを合わせる!」

 魔法の効果で三体の棺桶に入った不気味な人形が並ぶ。そして、ギア・チェンジャーを含む4体が銀河に呑まれていく。

「4体のモンスターでオーバーレイ! 全てを千切り壊せ! No.0666! ギミック・パペット―ドルフィー・ナイトメア!」

「レベル8、4体でオーバーレイだと?」

 現れたのはところどころ破損し、包帯で補強された人間サイズのドール。ドレスで着飾って美しい姿をしているが、血濡れのハサミを手にしている。前髪で顔はよく見えず、ドレスもはだけ掛かっている。ハサミにはナンバーズの数字が刻まれている。

「攻撃力4000ですって? 召喚条件厳しいからそんなもんなんですか?」

 ルリはその攻撃力に驚く。脅威の4000はあの青眼の究極龍を超え、サイバーエンドドラゴンに迫る。

「このモンスターの元々の攻撃力は構築したオーバーレイネットワーク分、1000増える。まずは邪魔なデコード・トーカーに退場願おうか!」

 ドルフィー・ナイトメアはハサミでデコード・トーカーの胴体を挟み込み、そのまま力任せに両断する。

「ちぃ!」

 上回った攻撃力は1200。遊騎のライフは5300となる。響の5000に迫る。

「ピカリ狙った方がダメージ大きいんじゃないですか?」

「次のリンクモンスターに繋げられるのを防ぎたかったんだ。効果も厄介だし、ピカリは墓地から回収してまた召喚すればサーチ効果を使えるから」

 陽歌は大型リンクへの繋ぎを考慮してデコードが狙われたと考える。次のターンでAiランドの効果を使えば通常召喚と合わせて容易にリンク5も視野に入る。

「ふふ……つくろってはいるが、本性はおぞましく誰かを傷つけることに悦びを感じる……俺と鏡合わせのモンスターだな」

「そんなこと……」

 響はこのドルフィー・ナイトメアをそう評する。遊騎は否定するが、言葉は届かない。

「俺は悲鳴を聞かないと頭痛が収まらない。最初は正義の名の下に行われる暴力から身を守るべく戦いを始めた……。だが、そのうちに虐殺の快楽に酔いしれていった。俺は攻撃衝動に操られた人形でしかないんだよ」

「響……」

 響の内なる闇をあのナンバーズが増強しているのだ。響を救うにはデュエルで勝利するしかない。

「ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 遊騎は相手のカードを見る。全く未知のモンスター、かつ攻撃力4000。迂闊に除去しようとしても相手はエクシーズ。オーバーレイユニットを取り除くことで何か効果を発揮するのだろう。手札にあるカードはドシン、アチチ。

(まずはあいつの全容を掴まなければ!)

 謎のカードを相手にするには情報が必要だ。今は守りを固めたい。

「リンク召喚! ピカリでサーキットコンバイン! ダークインファント@イグニスター! 効果でイグニスターAiランドをデッキから手札に加える!」

 既に機動しているフィールドを効果でサーチする。一応、後続の為にメインを空けたついでなのだが意味のある行動だ。

「Aiランドの効果でアチチを特殊召喚! 効果でデッキからピカリを手札に加える! そして俺はピカリを通常召喚! 効果でデッキから『Ai―コンタクト』を手札に加える」

 ピカリは当然3積み。そしてここでインファントの効果が生きる。

「手札から『Ai―コンタクト』発動! 手札のイグニスターAiランドをデッキの一番下に戻し、デッキから三枚ドロー!」

 遊騎はこのドローに全てを賭ける。引いたのは『ヒヤリ@イグニスター』、『キ―Ai―』、『ドンヨリボー@イグニスター』。そして、そこから新たにリンク召喚を行う。

「イグニスターがいる時、ドシンは手札から特殊召喚できる! 再びリンク召喚! 闇を導くサーキット! 召喚条件は名前の異なるモンスター三体! インファント、ピカリ、ドシンをリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン! ダークナイト@イグニスター!」

 リンク3、紫の騎士が降臨する。リンクマーカーは全て自陣に向いており、エクストラモンスターゾーンにいるダークナイトのマーカーは余さず利用できる。故にまだ手は止まらない。

「イグニスターが場にいる時、ヒヤリも特殊召喚できる! そしてリンク先に特殊召喚が行われた際、ダークナイトは墓地のイグニスターをリンク先に効果無効で蘇生する! 甦れ、アチチ、ピカリ!」

 そして効果を終えたダークナイトとメインモンスターゾーンの中央に陣取るアチチでリンク召喚を行う。

「召喚条件はサイバース二体以上! サーキットコンバイン! 再びリンク召喚! ファイアフェニックス@イグニスター!」

 燃える不死鳥がフィールドに現れる。

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 これで守りは固まった。今特殊召喚を駆使しても、伏せた『果たし―Ai―』の効果で相手の攻撃力は減らし切れない。しかしダメージは減らせるはずだ。同じくこのカードは墓地にいるダークナイトも蘇生してくれる。一回は自力で甦るファイアフェニックスと共に壁を作れるだろう。

(来るなら来い。ドンヨリボーで戦闘ダメージを0に出来るが、念の為壁は作った)

「俺のターン、ドロー」

 響は攻撃の手を緩めない。壁を築き上げていく。

「俺は『ギミック・パペット―テラー・ベビー』を通常召喚、守備表示。効果でマグネ・ドールを守備表示で蘇らせる!」

 そして攻撃に移る。

「行くぞ、ドルフィー・ナイトメアでファイアフェニックスを攻撃!」

 地獄人形のハサミがファイアフェニックスに迫る。遊騎は手札からドンヨリボーを墓地に送って効果を発動する。

「ドンヨリボーの効果発動! イグニスターの戦闘で発生する戦闘ダメージを0にする!」

「無駄だ! ドルフィー・ナイトメアの戦闘ダメージはルール上、効果ダメージとして扱う!」

 だが、そこでドルフィーの効果が発動する。なんとこの人形が生み出す痛みはエフェクト扱い。つまりドンヨリボーの効果が通用しない。

「なんて効果だ……だがリバースカードオープン! 『果たしAi』!」

 このカードは自身のカードの分、100相手の攻撃力が下がる。そしてダメージステップまで相手は効果を使えない。

「これで効果は無効! ドルフィー・ナイトメアの攻撃力は0!」

「残念だったな。ドルフィーの攻撃力は『元々』のものを変化させる! 効果では変動しない!」

 だが攻撃力変化は召喚時に確定する。効果を使えなくされても影響はない。

「だが効果ダメージでは……」

「無駄だ! この効果はルールに影響する!」

 効果ダメージへの変更も無効にできない。どうにか攻撃力は400減らせたが、それだけだ。ファイアフェニックスをハサミで貫き、その状態で開いて両断する。ハサミは熱で白く燃えていた。

「クソっ……」

 ファイアフェニックスの攻撃力は2300。ドルフィー・ナイトメアの攻撃力は3600。1700のダメージとなり、ライフは残り3600。響のライフ5000を下回った。

「イグニスターが戦闘で破壊された場合、『果たしAi』の効果で攻撃力2300のサイバースを特殊召喚! 戻れ、ダークナイト!」

 ダークナイトはメインモンスターゾーンに呼び出される。開いている時は両方使えるルールを活かしていく。ダークナイトを一度エクストラデッキから引きずり出してファイアフェニックスを出したのもこの為だ。

「ターンエンドだ」

「俺のターン!」

 このままでは圧されてしまう。どうすればあの謎多き4000の壁を超えることが出来るのか。ドローカードに全てが掛かっている。

「これか」

 ドローしたのは二枚目のブルル。手札には蘇生カードもあるが、墓地のイグニスターでも攻撃力4000は越えられない。手持ち二枚で蘇生しても、相手の攻撃力は3400までしか下がらない。

「効果によってファイアフェニックスは蘇生!」

 一応、ファイアフェニックスをメインモンスターゾーンに蘇生。アチチがいた中央。これでメインには真ん中から右にファイアフェニックス、ヒヤリ、ピカリが並ぶ。左端にはダークナイトがいる。ここからどう繋げるかが問題だ。

(くっそー、ジ・アライバル・サイバース持ってたらなぁ~)

 イグニスターの最上級モンスターがいれば逆転できるが、生憎持っていない。展開的にも十分使えるタイミングだ。

「なんだ?」

 ふと、腰につけたエクストラデッキケースから光が放たれる。光源となっているカードを取り出すと、見覚えのないカードが追加されていた。名前は『WWW.リンクカイゼル』。リンク4のリンクモンスターだ。テキストの内容は読めないが、自然と使い方が頭に浮かんで来る。

(とにかく今はこいつに賭けるしかない!)

 遊騎は覚悟を決めた。響を闇から救うには、このカードしかない。

「現れろ、闇を導くサーキット!」

 リンクの円陣を展開、そこにピカリ、ファイアフェニックス、ダークナイトを投入する。

「召喚条件は名前の異なるモンスター三体! 再び現れろ! ダークナイト@イグニスター!」

 ダークナイトが再びエクストラモンスターゾーン、しかし以前とは違う場所に現れた。目の前には響の展開したテラー・ベビー。エクストラモンスターゾーンにはエクストラデッキからの召喚でしか降臨出来ない上、ダークナイトの効果を使うにはそこに置かないといけない。

「俺はイグニスターAiランドの効果でブルルを特殊召喚! ダークナイトのリンク先に特殊召喚されたことで、墓地のアチチとヒヤリを蘇らせる!」

 突然現れたカード、だがその運用、コンボもまるで呼吸する様に分かる。

「そして魔法カード、『キ―Ai―』を発動! ダンマリを蘇生する!」

 墓地にいたダンマリをフィールドに戻し、そのままリンクへと繋げていく。

「俺はダークナイトとダンマリをマーカーにセット! サーキットコンバイン!」

「古きを温め、新しき未来を作れ、電脳の皇帝! 現れろ、リンク4! WWW.リンクカイゼル!」

 円陣から現れたのは濃紺の鎧を纏い、リンクマーカーが連なった様な髪を靡かせる戦士。攻撃力は2500。リンクマーカーは上と下段の四つ。リンク先にはダークナイトが蘇生したイグニスターとブルル。そして前方には響の展開したギミック・パペット。

「エクストラモンスターゾーンを乗り換えてリンクマーカーが相手に向いた!」

 響は遊騎のマーカーが向かない様に動いていたが、乗り換えによりそれを突破した。陽歌もリンクの活用に驚く。

「リンクカイゼルはリンク先のモンスターの数だけ、500ポイント攻撃力をアップする! リンク先には三体のイグニスターと、一体のギミック・パペット! 2000上がって4500!」

 シンプルな打点上昇効果。これでドルフィー・ナイトメアの4000を上回った。

「それだけじゃねえ! 果たしAiの効果でドルフィーの攻撃力は俺の場にあるカード、五枚分下がる!」

 ドルフィー・ナイトメアの攻撃力は3500。

「行くぞ響! ドルフィー・ナイトメアにリンクカイゼルで攻撃! アーカイヴストーム!」

 リンクカイゼルの右腕がオッドアイの白い龍の頭に変化し、左に機械の様な翼が生える。

「あの姿は……スターダスト? でも目はオッドアイズ、翼はホープ?」

 過去の英雄モンスターの姿を模した様な変化に陽歌は戸惑う。

「あの姿はフレイムウイングマン!」

 ルリにもそのシルエットがフレイムウイングマンに近いものであることを感じられた。攻撃の瞬間、リンクカイゼルの身体が赤く光り、龍の口からブラックマジックが放たれた。

「こいつ……!」

 ドルフィー・ナイトメアを撃破。リンクカイゼルの力なのか、このモンスターの効果がエクシーズ素材を取り除いて味方を庇う効果であることも見えた。

「ダメージは僅かに1000! まだ勝負はついていない!」

 しかし上回った分は1000のみ。まだ響のライフは4000残っている。

「この瞬間、リンクカイゼルの効果発動! カイゼルがエクストラデッキから召喚されたモンスターを破壊した時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

「何?」

 効果によりドルフィー・ナイトメアの攻撃力4000が響のライフに与えられる。

「エクストラシャイン!」

 カイゼルが放つ輝きで響のライフを削る。

「ぐおおおおっ!」

 これで勝負がついた。響のライフは丁度0。ジャストキルだ。これで遊騎の勝利となった。

「ま、負けた……」

 闇のゲームは決着する。響は膝を付き茫然とした。そして頭を抱える。

「くっ……僕はなんてことを……」

「記憶はあるのか」

 陽歌はその様子からこの間のことを響は覚えていると考えた。

「あのナンバーズの影響でどうやら心の闇を引き出されていたようですね」

 ルリは落ちたカードを拾って考える。最初は感じていた邪悪な力を、今は感じない。遊騎が突然出したカードに近いもので封印されているらしい。

「あのカードはなんです?」

「俺も知らねぇんだ急にエクストラデッキに入っててよ」

 持ち主である遊騎もリンクカイゼルのことは知らなかった。ナンバーズとは異なる、聖なる力を放っている。

「うう……僕はまた取返しの付かないことをしてしまった……」

 落ち込む響に、遊騎は箒を渡す。

「え?」

「だったら取り返せよ。罰ゲームだ。まずは掃除しようぜ」

 ジャイアントキラーの砲撃でガラスが辺りに飛び散っている。これを片付けないと話は始まらない。

「そう……ですね」

 どうにか話は纏まったが、人の心を弄ぶ謎のカードをルリは危険視した。普通のパックに紛れ込んでいたということは、他の人の手に渡る可能性があるということだ。

「これは対策する必要がありそうですね……」

 こうして、ユニオンリバーの新たな戦いが幕を開けた。




 今日の最強カード

 遊騎「今日の最強カードはフィールド魔法、『イグニスターAiランド』!メインモンスターゾーンが空いている時、レベル4のイグニスターを手札から特殊召喚できる! 直後にリンク召喚してまたメインを空ければもう一度効果を使えるぞ。ただし一ターンの同じ属性のイグニスターは同じ効果で召喚出来ないから注意だ。俺は基本、ピカリを呼んでAiコンタクトをサーチ、インファントをリンクしてもう一枚のAiランドをサーチして三枚ドローするぜ。フィールド魔法を起点にするデッキは制限カードで一枚しか入れられないが『テラフォーミング』や『メタバース』も必須だ。余裕があれば『フィールドバリア』も採用したいな」
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