騒動喫茶ユニオンリバー The novel 異端たる双眸   作:級長

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 カードゲームの初期というのは、あまりカードパワーが上昇していないこともあり現行のカードと比べると弱いことが多い。ルール上、フィールドのモンスターを一体生贄に捧げなければならない『モリンフェン』は攻撃力が何のコストも無く召喚できる効果持ちモンスターに負けることが多い上、モリンフェン自身は何の効果も持たない。
 だが初期のカードというのはファンが多いため後々強化する為のカードが追加されることがある。


Turn2 蘇りし究極龍

 突如、通常パックに紛れ込んでいた謎のカード。それは人の心の闇を映したナンバーズを生み出す脅威であった。ルリ達の前に姿を現した時点では、十分にユーザーの間へ出回っている可能性がある。

「あー、ルルイエ店長遅いですねぇ」

 ルリが配達に言っている間、緑髪の少女がおもちゃのポッポで店番をしていた。ユニオンリバーの聖四騎士リーダー、青龍姉妹長女、エヴァリー。彼女もホビーなどの知識は豊富で、そのことからたまに店番をする。

『プロデュエル大会、新進気鋭のルーキーが大躍進です! 強い! 強いぞ赤城桂馬!』

「最近は平和ですねぇ」

 以前はダンガンレーサーというホビーを扱う集団に襲われたことのある店だったが、今となっては平和そのもの。このポッポは様々な発掘品が眠る宝の山であり、それを狙う者も多い。ルリは元より、エヴァは腕っぷしも強いので安心して任せられるというわけだ。

 今やどこへ行っても見かけないデュエルターミナルというアーケード筐体の音が聞こえる中、エヴァは通販の準備をしていた。

「その平和は突然崩れ去った!」

 が、そんな時急に店へ現れた人物がいた。太っているばかりか顔も洗っていないのか肌がバリバリだ。

「うわくっさ」

 体臭も激しい。カードゲーマーには稀に、おぞましい体臭を放つリアルアンデッド族がいるという。この人物は正にそれだ。

「我が名はキングダムの使者! この店のデュエルターミナル、その中身をいただこう!」

「デュエルターミナル?」

 キングダムの使者を名乗る人物はデュエルターミナルの中身を要求した。このアーケードは一回百円でカードを一枚排出する。カード自体はパックで再録されているが、ターミナルから排出されたカードは特別で、今でも高値で取引されている。

「そう、そのカードはあるべきところにあるのが相応しい!」

「あ、買い取りですか? 中身どうだったかなぁ」

 エヴァはターミナルの鍵を取り出す。だが使者はお金を払う気はないらしい。

「金は問題ではない! こんな片田舎の場末にあるカードを正しく流通させるのが我らの使命! ターミナルの中身だけではない、店の在庫も頂いていく!」

 使者はデュエルディスク展開する。まさかの力づくである。

「店荒らしならデュエルなんてする理由もないですねぇ」

 だがわざわざ、そんな茶番に付き合うエヴァではない。デュエルなどせずとも、腕っぷしで追い返せばいいだけだ。

「それはどうかな?」

「なに?」

 だが使者はあるカードを掲げる。黒いカード、モンスターエクシーズだ。それと同時に、店の窓から見える光景がカードの背景を思わせる宇宙に変化する。

「闇のゲームのルールは何よりも優先される! お前がいくら暴力を行使しようが意味などない!」

 初めからユニオンリバーのメンバーが強いことを計算済みであった。そこで闇のゲームを仕掛け、自分の土俵で戦おうというのだ。

「ならば私は青眼の白龍デッキでお相手しよう!」

 しかしそれに臆するエヴァではない。ちゃんとデュエルの心得はあり、デュエルディスクも持っている。知識で言えばエヴァ、陽歌の双璧というべきか。ルリの知識が少ないというよりエヴァの情報量が異常、かつ陽歌が専門的に特化しているのもある。

「ふん、安直な環境デッキか……その程度俺の三幻魔で粉々にしてやる!」

 デュエルモンスターズにはの性質上、出自から世界に数枚しかないカードなども多い。しかし大会などが盛んに開かれると、競技の公平性を保つため、スター選手のファンアイテムとして調整されたカードが販売されている。デュエルアカデミアに封印されている三幻魔も同様である。

 ただ、比較的すんなりカード化させてもらえたホープやギミック・パペットなどのナンバーズと異なり、ブルーアイズは結構苦戦したらしい。『ほら! イラストもフォーマットも社長のと違うから!』、『他の人がブルーアイズ使うことでより社長だけがブルーアイズを使いこなせるって証明になるから!』と必死に説得して渋々レベル。最近は何か吹っ切れたのか物分かりが多少よくなったとはいえ、それでもこの難色ぶりである。

「「デュエル!」」

 使者はDゲイザーをセットするが、エヴァはロボットなので目にその機能があり必要ない。ここにポッポの財産を賭けたデュエルが始まる。店内だとARビジョンでえらいことになるため外に出る。とはいえ駐車場の外は宇宙空間だ。

「運命のダイスロール!」

 先攻後攻を決めるダイスは、エヴァの後攻を指示した。

「デュエルモンスターズは先攻有利! この勝負貰った!」

 使者がまずは先攻となる。

「俺は三枚のトラップを伏せ、オーバーレイネットワークを構築!」

「トラップでエクシーズ?」

 なんと、伏せたトラップでエクシーズ召喚を行うという暴挙。禁止にぶち込まれた十二獣だってまだモンスター一枚に重ねていた。

「現れろ! No.3801 真神炎皇ウリア!」

 ランク10、攻撃力4000のナンバーズ。しかも三幻魔を模したものだ。赤い龍の姿はウリアそのもの。

「このモンスターがいる限り、トラップカードはセットしたターンに発動できる!」

「マキュラやんけ」

 エラッタされたカードを同じモンスターと同じ効果を持つ脅威のナンバーズであった。

「早速使わせてもらう。トラップカード、『強欲な瓶』を発動! カードを一枚ドロー!」

 二枚の手札。その中身は同じだった。

「強欲な壺発動!」

「禁止カード!」

 まさかの禁止カードを使ってのドロー加速。これで手札は四枚。

「さっき引いた強欲な壺を使用!」

 さらに壺を使って五枚の手札を揃える。

「三枚の魔法カードをセット! 何が起きるか分かるな?」

「やはり……ハモン!」

 魔法カード三枚とくればハモン。エヴァには予想が出来ていた。

「魔法カード三枚でオーバーレイ! No.3802 真降雷皇ハモン!」

 攻守共に4000のランク10モンスターエクシーズが出現する。金色の翼竜はその場にいる限り、他のモンスターを攻撃させない。

「フハハハハハ! 三幻魔を使いこなす古参デュエリストの属するキングダムにこそターミナルの遺産は相応しい! 第一、氷結界もラヴァルも簡単に手に入る様になった今のデュエルモンスターズはすっかり甘くなった! デュエルというのは本来厳しい世界だということを教えてやる!」

「出た出た、古参アピ」

 エヴァは露骨な古参アピールに呆れる。コンテンツというのは昔からいたユーザーが偉いのではない。それどころか新規が入らないとコンテンツは先細りまっしぐらだ。

「負け惜しみか? ではこれでどうだ! 残された通常召喚権で混沌の召喚神を召喚! そしてエクシーズ召喚! No.3803 真幻魔皇ラビエル!」

 レベル1のモンスターからランク10のエクシーズが現れる。蒼い巨人がその姿を見せた。攻守共に4000と驚異的だ。

「とんだオリカ祭りですね……」

 好き放題ぶりにエヴァは溜息を吐く。だが、そこでふとデュエルディスクの機能を思い出した。

(待ってください。デュエルディスクにはイカサマ防止機能があります。オリカなんかどんなに精巧に作っても反応しないはず……)

 ARビジョンでモンスターを投影するということは、そのモデルが必要。そしてカードをディスクが認識しなければならない。そのため、公式に販売されたカードは中にチップが入っている。

つまり印刷しただけのカードではディスクに対応せず、使用することが出来ない。それに偽造カードはともかく、この見たことのないモンスターがARビジョンのデータに存在するのか。姿こそ三幻魔によく似ているが、ナンバーズの数字が刻まれている。

(何かがおかしい……)

「そして手札からフィールド魔法、失楽園を発動! このカードがある限り三幻魔は効果の対象にならず、効果で破壊されない! これでターンエンドだ、先攻のバトルフェイズが無くて命拾いしたな」

 怪しむエヴァに対し、使者はデュエルを続ける。こうなれば本気で潰すしかない。

「私のターンですね。ドロー! まず手札から、『ドラゴン・目覚めの戦慄』を発動! 手札の『伝説の白石(ホワイトオブレジェンド)』を墓地に送り、二枚のドラゴン族をデッキから呼び出す! 私が手札に加えるのは『|青眼の亜白龍《ブルーアイズオルタナティブホワイトドラゴン》』二枚! そして『伝説の白石』が墓地に送られた際、青眼の白龍を手札に加える!」

 単純なコンボだが、確実にブルーアイズを手札に呼べる。

「そして手札より、『竜の霊廟』発動! デッキからドラゴン族を墓地に送り、それが通常モンスターならばもう一体送れる。私はブルーアイズと青眼の亜白龍を墓地へ送る!」

 ブルーアイズは初期のカード故に単純なパワーこそあれ効果のない所謂バニラカード。カードプールの増大でバニラだからこそ活きる場面があるのもデュエルモンスターズの特徴だ。竜の霊廟は一枚目がバニラなら、二枚目に送るカードに規定はない。

「青眼の亜白龍は手札のブルーアイズを見せることで特殊召喚できる!」

 見せるだけで攻撃力3000のモンスターが降臨する。目覚めの戦慄と伝説の白石のコンボで確実に決められるというわけだ。

「だがこの瞬間、ラビエルの効果発動! 相手が召喚や特殊召喚に成功する度、幻魔トークンを二体生成する!」

 大元のラビエルが持っていた能力を、このナンバーズも強化した状態で所持していた。

「私は手札から『調和の宝札』を発動! 手札から攻撃力1000以下のチューナー、伝説の白石を墓地に送り、デッキから二枚ドロー! 伝説の白石の効果でブルーアイズを手札に加える!」

 これで手札に二枚のブルーアイズが揃う。

「そして手札からトレードイン発動! レベル8モンスターを手札から墓地へ送り、二枚ドロー!」

 トレードインで墓地に送ったのは目覚めの戦慄で引いた青眼の亜白龍。

「さらに手札からアドバンスドロー、発動! フィールドの亜白龍をリリースし、二枚ドロー!」

 これで墓地に亜白龍が三枚揃った。

「復活の福音を発動! 墓地のブルーアイズを復活! そして手札から融合! 現れろ! 青眼の究極龍!」

 フィールドと手札に揃ったブルーアイズで究極龍が呼び出される。

「更に手札から『龍の鏡』発動! 墓地の亜白龍を除外し融合、『|青眼の究極亜白竜《ブルーアイズオルタナティブアルティメットドラゴン》』! そして二枚目の『龍の鏡』でブルーアイズを除外! 『真青眼の究極竜(ネオブルーアイズアルティメットドラゴン)』を融合召喚!」

 三体の究極竜が並ぶ。謎の幻魔にも負けない正当な力だ。

「インチキしなくてもこのくらい余裕ですよ」

「ブルーアイズで古参マウントか……いい気になるなよ! その強化は付け焼刃だってことを教えてやる!」

 他人は自分を映す鏡とはまさにこのこと。使者は自分が古参マウントしているからただのブルーアイズデッキもマウントに見えてしまうのだ。

「付け焼刃はどっちやら、もうあなたの場には伏せカードも手札もないじゃないですか。究極竜! オリカ幻魔を粉砕!」

 究極竜の攻撃で幻魔は破壊される。僅か攻撃力は500ずつしか上回っていないが、全滅の憂き目と計1500のダメージを受ける。

「くそがあああ!」

「カードを一枚伏せてターンエンド! さて、あなたのターンですよ?」

 使者のライフは6500まで減った。なんとかトークンはあるが、手札一枚で形成を逆転できるとは思えない。

「ふふ、甘く見るなよ……ハモンはオーバレイユニットを取り除いて破壊を免れる!」

「守備表示でなくとも使えるから強化なんですかね?」

 ハモンは蘇生し、フィールドに戻る。

「後悔させてやる……。失楽園の効果で二枚ドロー! トークン二体でオーバーレイ!」

「あーもうめちゃくちゃだよ」

 レベルを揃えて召喚するエクシーズから大幅に反れた召喚、エヴァはもういろいろ諦めた。

「No.3804 真混沌幻魔アーミタイル!」

「てっきり幻魔を融合させるものかと……」

 幻魔を融合して本来姿を現すアーミタイルですら謎ナンバーズに。このモンスターエクシーズは何なのか。

「このモンスターは常に攻撃力一万! そしてエクシーズ素材を取り除いての連続攻撃が出来る! 食らえ、三連打ぁ! まずは踏ん反り帰った負けフラグからぶちのめしてやる!」

 そしてアーミタイル最大の弱点、圧倒的な火力は攻撃時のみという守りの弱さも克服した上で連続攻撃。青眼の究極竜がまず餌食となる。

「はいトラップ発動。『スノーマンエフェクト』。フィールド上のモンスターの攻撃力がアルティメットに加算。攻撃力が一万3500で返り討ちね」

 まさかのトラップ。効果で破壊されないとはいえ、戦闘での返り討ちは別だ。

「お前積み込んでんのかぁ!」

「丁寧に作ったデッキは応えてくれるんですよ」

 切り札を次々に瞬殺され、使者は憤る。これでライフは3000だ。

「では私のターン! ドロー!」

 エヴァはもはやドローカードに関係なく勝てる状態まで来た。

「ハモンに攻撃!」

 究極竜の攻撃を受け、ハモンは撃破。しかしオーバーレイユニットを取り除くことで甦れる。が、それが仇となる。

「残る蘇生は一回! いっけー!」

「ぐおおおお!」

 ハモンを何度蘇生させても、ダメージは防ぎきれない。これで使者のライフは1500まで減った。

「カードを一枚伏せ、これでターンエンド!」

「くっそー、ドロー!」

 使者はみるみるボロボロになっていた。このゲームのダメージがリアルなものであると、一撃も受けていないながらエヴァは感じ取っていた。

「なぜだ! 三枚積んでる死者蘇生が出ない!」

「どうやらデッキに見限られたようですね」

 不正なカードを入れ、レギュレーションにも抵触したデッキは使者の期待に応えない。妙なナンバーズに頼り切ったデッキ故、それらが枯渇した今、打つ手はないのだ。

「トドメです! 究極竜、三連撃! 滅びのバーストストリーム!」

「ぐわあああああ!」

 ダイレクトアタックにより使者は倒れた。ライフは当然0。エヴァは散らばったカードから謎のナンバーズを四枚回収する。

「これは!」

 そのナンバーズはエヴァに拾われると忽ち姿を変える。それぞれ『No.3801 ハリボッテウリヤン』、『No.3802 コケオドシ破門』、『No.3803 幻滅王ラビリビリエル』、『No3804 あみたいやなつ』となっており、その姿も子供の工作だってもうちょっと丁寧に作りそうな張りぼてだ。

「攻守も0、効果もない……」

 しっかりとランクは10だが、召喚条件はレベル10のモンスター三体と重い。それに効果も三枚全て『このモンスターが破壊された際に受けるダメージは二倍になる』、『守備表示のこのモンスターが破壊された際、相手の攻撃力が守備力を上回った分のダメージを自分は受ける』となっている。

「これは一体……」

「くそぉ……俺だって三幻魔ストラク使えばキングダムで古参デュエリストの地位に……」

 エヴァは全裸になって倒れている使者が呻いていたことを頭の片隅に置く。

 

   @

 

 配達から戻ったルリと一緒に帰って来た陽歌、そしてエヴァはそれぞれ回収したカードを見せ合う。謎の四桁ナンバーズは響が生み出したもの、使者が使ったもの、陽歌が変化させたもの、これで合計六枚となる。

「心の闇を映すナンバーズですか?」

「はい」

 とても同じ経緯で生まれたとは思えないカード群にエヴァは思わず確認を取る。使者のクソみてぇなカードに対し、響が生んだ『No.0666 ギミック・パペット―ドルフィー・ナイトメア』は元々のデッキのシナジーもあり効果もまとも。コストに見合っている。しかし使者のモンスターエクシーズは滅茶苦茶な高性能に反して負けた瞬間張りぼてが露わとなった。

「どうしてこんなに差があるんでしょう?」

「光が強ければ影も強くなる……ということなのでしょうか」

 ルリは響の人格が大きく関わっていると予想した。彼は優しい表面に対してその奥に強い破壊衝動を隠していた。光の側面が弱いと影も薄くなる。使者は光が少ないので影たるナンバーズも薄っぺらだったのだろう。

「影がもう一人の自分を作る……」

 四桁ナンバーズは則ち、その人の闇人格とも取れる。陽歌は自分のナンバーズ、『No.2430 不知火の宣教師』をまじまじと見る。赤い髪を伸ばした修道女だが、その衣装はノースリーブでスカートにもスリットがあるなど露出は激しい。そのスリットから覗く右腿にナンバーズの刻印。これが何を意味するのか。

「不死身……? まぁ、不死身?」

 ランク4、炎属性のアンデッド族、そして不知火名称。なのでこの数字は不死身なんだろうが、陽歌にはますますわからなくなっていた。

「そして刻印は基本、0を前後に含む場合は三桁なんですね」

 エヴァはドルフィー・ナイトメアと不知火の宣教師を見てあることに気づく。0が前後に付く場合は刻印に0が入らない。似非三幻魔は間に0があるので刻印が四桁となっている。

「まだサンプルが少ないですが……」

「このナンバーズにキングダムの使者を名乗る者……また何か起きそうですね」

 ルリとエヴァはナンバーズとキングダム、二つの事件から新たな騒動を予感していた。




 エヴァ「今日の最強カードは『ドラゴン・目覚めの戦慄』!手札を一枚捨てることで特定のステータスを持つドラゴン族をデッキから呼び出せるんですよー。さらにこの時、『伝説の白石』を墓地に送ることで『青眼の白龍』をデッキから手札に持ってこれるんです。このコンボで『青眼の白龍』一枚、『青眼の亜白龍』二枚を呼ぶと、ブルーアイズを見せて『亜白龍』をいきなり召喚できるんです。凄いでしょー」
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