騒動喫茶ユニオンリバー The novel 異端たる双眸   作:級長

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 わ、忘れてないっすよ(震え声)


第二話 ワイルドエリアの謎!

「っは……!」

 陽歌は悪い夢を見て目を覚ました。あの周囲全てが敵で安らぎのない金湧という地獄から離れてしばらくするが、その時の夢をまだ見る。

「夢……」

 この時の陽歌はまだユニオンリバーで暮らすことを決めておらず、流れでいるだけでいつかは帰らねばならないと考えていた。自分のいるべきはこのガラルでもユニオンリバーでもなく、あの街なのだと。

(ん?)

 何かが飛び起きる様な音がして、陽歌はそちらを見る。今彼はマグノリア博士の家のソファで寝ていた。そして、床ではシャルが寝ているはずだ。

「はぁっ……はぁっ……」

 やはり飛び起きたのはシャル。息を切らしており、彼女も悪夢にうなされていたのだろうか。

「くそっ……!」

 彼女は立ち上がり、家の外に出る。基本的に態度が刺々しく他人に心を許さない印象のシャルだが、陽歌は今まで出会った人々の様に強い悪意を感じなかった。それが不思議で気になっていたが、自分も目がぐるぐる回ってそれどころではないので追いかけることは出来なかった。

 

   @

 

 マグノリア博士の家で迎えが来るのを待っていた陽歌はこの数日、チャンピオンのダンテの帰郷、そしてマサルとホップ、ユウリがポケモンを手にするなどの出来事を目の当たりにした。つまりそれは、冒険の始まりであった。

「ソニア、あなたには課題を課します」

 マグノリア博士はソニアにある調査を依頼した。

「この地方にまつわる伝説を調べてきなさい。各地に史跡こそ残っていますが、この伝説はまだ謎が多いのです」

「なるほど……それの調査ってことね」

 まだ助手止まりのソニアに経験を積ませて実績を得させるための課題。一方で陽歌もやることが出来ていた。

『とりあえず各地を調べてあの装置が他にないか調べてほしいんですよ』

 エヴァの頼みで人為的にダイマックスを引き起こしたあの装置について調べる必要があった。ダンテにも報告して装置も預けたが、他の場所でも似た様な事態が起きていないかという問題があった。謎のウルトラホールとも関係しているかもしれない。世界と世界の間にある時空の乱れを解決しないと帰れないので、原因を少しずつ追っていくしかない。

『ガラル粒子の乱れはこっちでもモニターしているのですが、サンプルとしてダイマックスが可能なパワースポットを回ってその数値を測定……そうすれば乱れを感知して装置を追いかけることが出来るんです』

「データが揃えば原因も分かりやすくなるんだね」

 陽歌がすることはパワースポット巡り、それはつまりジムのある町を巡ることである。

「んじゃあソニアも陽歌も俺達と一緒に来るんだ!」

「そうだね」

 ホップの言う通り、彼とマサル、ソニアと陽歌は共に行動することとなった。

「で、シャルは……」

「もう行ったよ」

 肝心のシャルは推薦状を貰うとさっさとポケモンリーグの開会式が行われるエンジンシティへ向かってしまった。彼らも駅から電車に乗ってエンジンシティに向かった。

「頑張ってねー」

「おう、絶対優勝してやる!」

「俺が優勝だ!」

 ユウリに別れを告げ、ホップとマサルは出発する。ソニアと陽歌も後に続く。

「そういえばイーブイ、進化しないですね」

「キョダイマックスが出来る進化前の個体はそのポテンシャルを費やしてしまっているのか、進化出来ないのよ」

 陽歌のイーブイは進化の兆しを見せない。まだ懐いていないのでゲームの様にさっくりと進化することはないだろうが、やはりキョダイマックスは特別なのだ。

「さて電車だ」

「ん?」

 電車に乗ろうとすると、入り口の前でヤドンが立ち往生していた。

「あのポケモンは……」

 陽歌は剣盾から入った勢なのでヤドンをよく知らない。またこの時はヤドンのリージョンフォームも公表されていなかったので、黄色っぽいことにも違和感を覚えなかった。

「あら珍しい、ヤドンね」

「ヨロイじまから迷い込んだのか」

 ソニアとホップによると他の場所に生息していたものがこっちに来てしまったらしい。

「島に電車が通じてるのか」

 マサルの頭では電車が橋で島に通じているイメージだった。

「いや、途中で空飛ぶタクシー」

「迷い込んだってレベルじゃねーぞ!」

 だが乗り継ぎまで熟すこのヤドンとは。

「とりあえずどかすか……」

 ホップがヤドンを引っ張って邪魔にならないところへよけようとする。だが想像以上に重くて腰にダメージが入る。

「うごぁ!」

「ホップー!」

 仕方ないので陽歌が移動を試みる。

「ダメですよ腰の力で動かそうとしたら。こうやって足を地面について、立ち上がる力で……」

 が、ダメ。知識があっても肝心の筋力が足りない。ヤドンは抵抗しているのかいないのか。

「やーんじゃありません!」

 陽歌はさすがに痺れを切らし、モンスターボールを投げる。ボールは結構あちこちに落ちているので、散歩していると拾ったりするのだ。

 一体なにがしたかったのか、ヤドンはボールに入るとそのまま捕まった。

「何だったんだこのヤドン……」

 あとで島にでも行った時に逃がしてやろうと考え、とりあえず確保。ちょうど電車も来たのでそれに乗ってエンジンシティを目指す。

「この地方は鉄道が普及しているんですね、こっちのイギリスみたいだ……」

「へぇ、そっちの世界にも似た様な土地あるんだ」

 モチーフのこともあるだろうが、ゲームハードの性能向上で鉄道を敷ける様になったということだろうが、こうしてゲームではなく並行世界の一つとして存在するとなると、色々陽歌も思うところがあった。ゲーム的な都合で処理されている部分はこっちの世界でどうなっているのだろうか。例えばカントーやジョウト、シンオウにあるゲートはメタ的にはマップ切り替えの緩衝地帯なのだが、実際はどういう意図で設置されているのか、など。

(思ったより広いんだな……)

 ゲームでは大した面積ではないハロンタウンもしっかり牧畜をやれる広さの街であり、あの事件の時は大変だった。

(ゲームのシナリオを辿ればいいと思ってたけど……あの機械は……)

 最初はゲームの追体験程度に考えていたが、本来はどちらかしかいないユウリとマサルが両方おり、シャルという見知らぬ人物の登場、そして何者かの影と事態の大きさを考えさせられる。

「何?」

 その時、電車の放送が流れる。ソニアは周囲を見渡す。

『お客様にお知らせします。ただいまエンジンシティ方面の線路にてウールーが立ち往生しております。当列車はワイルドエリア駅にて停車いたします』

「あ、そういうこともあるんだ……」

 田舎の列車みたいなハプニングだが、一応駅に止まるだけ有情だ。ユニオンリバーに出入りしている人の話では新幹線に閉じ込められたとかも聞く。

『復旧の予定は現在未定です』

「あら……」

 このタイミングで列車の停止。こういう時はどうするんだろうとホップとマサルを陽歌は見る。

「よし、ワイルドエリア抜けてこうぜ」

「そうだな」

 迷わずワイルドエリアを通ることにする二人。だが、一応そこは危ないので列車が通っているわけで。

「危険じゃない?」

「ソニアもいるし大丈夫でしょ」

 そんなガバガバな危機管理の下、一行はワイルドエリア通行を決める。ゲームでは目の飛び出るレベルのポケモンが歩いている程度だが、実際の危険度は折り紙付き。そもそも攻撃力ポッポだのネタにされているイワークでもあの巨体で岩の硬さしている時点でかなり危ない。

「離れないでよねー」

「大丈夫かなぁ……」

 陽歌は周囲を警戒しながらソニアの後をピッタリついていくが、ホップとマサルはあちこちを見て回る。そして、やはりというか光の柱を見つけてそっちへ向かってしまった。

「お、なんか光ってるぞ!」

「よし行ってみよう!」

「ああ、光はダイマックスポケモンがいる巣で……」

 しかしあの光はガラル粒子の反応。つまりダイマックスしたポケモンが潜んでいる証だ。しかも行ったのは見張り台跡地。比較的強いポケモンのいる方だ。

「もう……落ち着きないんだから」

「よし、ここはイーブイを用意して……」

 ソニアについていく陽歌はイーブイをボールから出して一緒に歩く。イーブイのとくせい、にげあしがあればどんな相手が出ても逃げられる。

「ん? なんであの廃墟から……」

 しかし、妙なことに光の柱は巣穴ではなく塔の廃墟から飛び出ている。陽歌は詳しく知らないが、一応ゲームだとダブルパックの早期購入特典を使う場所らしいが、ここは現実。何が起きているのか。

「あれは!」

 陽歌がよく見ると、その塔に件の装置が置いてあった。やはり何者かが意図してポケモンを暴走させているのだろうか。

「あの装置……」

「うわぁ! でかいジャラコだ!」

 巣穴から飛び出したのはジャラコ。ドラゴンタイプのポケモンだ。当然ダイマックスしている。

「巣穴から出てこないから大丈夫でしょ」

 そんなソニアの楽観視も虚しく、ジャラコは巣穴を出てエンジンシティの方へ向かう。

「え? ダイマックスは巣穴でしか維持できないはず……」

 トレーナーの行うダイマックスはバンドによってガラル粒子を集めてやっと数分。しかし巣穴のダイマックスはガラル粒子の極端に集まった場所でしか起きない代わりに時間制限がない。つまり巣穴から出てしまえばものの数分と経たずダイマックスは解けるはずだ。しかしジャラコはずしずしと歩いてエンジンシティへと行く。

「あの装置が原因かな……」

 陽歌は装置を破壊して回収する。だが、ジャラコのダイマックスは解除されない。このままでは町が危険だ。

「とにかく止めないと!」

「そうだな」

 マサルとホップは先回りしてジャラコに立ちふさがる。ソニアと陽歌も追いついてレイドバトルの体勢になった。

「行け! ヒバニー!」

「行ってこい! サルノリ!」

 二人は貰ったポケモンを出し、攻撃を仕掛けていく。

「ワンパチ! ほっぺすりすり!」

 しかし案外ソニアのワンパチが早く速攻で麻痺を決めていく。

「進化してなくても鍛え方が違うんだなぁ」

 ヒバニー、サルノリ、イーブイの順に攻撃を繰り出す。同じ進化していないポケモンでも、育成が違うと素早さも変わってくる。

「よし、このまま畳み掛ける!」

「おっしゃあ!」

 バリアが貼られても気にせずに吶喊する二人だが、ジャラコは気の様なものを高めて空から拳らしきエネルギーを降らせる。

「な……ダイマックス技!」

 その矛先はイーブイ。ダイナックルはノーマルタイプに効果抜群のかくとうタイプ。それをもろに受けてしまった陽歌の運命はいかに。

「その程度は……予想済みだ!」

 だが、陽歌は先にポケモンを入れ替えていた。ノーマルタイプのイーブイからエスパータイプのヤドンに。しかもヤドンは防御に秀でたポケモン。大したダメージになっていない。

「これで終わりだ!」

 残り三匹の一斉攻撃を受け、爆発に沈むジャラコ。

『そうだ陽歌くん、サンプルにそのジャラコを捕まえてほしいんですが』

「うん、これで!」

 エヴァの提案で陽歌はボールを投げ、ジャラコを捕獲した。ダイマックスはポケモンに大きな負担を与えるのか、それとも巨大な自分を打ち負かす相手は否応なしに認めざるをえないのか、ダイマックスポケモンは捕獲しやすくなる。

「よし」

 カチッとボールが鳴り、捕獲成功を告げる。

「装置も二つ目か……なんかきな臭くなってきたな……」

 ボールを回収し、陽歌は装置と交互に見る。一体何がこのガラルで起ころうとしているのか。

 

   @

 

 その様子を遠くで見ている存在がいた。

「あの子供……まさかな」

 この事件の黒幕にとっても、予想外の事態が起きようとしていたのであった。




 ダイパリメイクまもなく! 追いつくのか?
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