頭に浮かんだ設定吐き出す場所   作:Colore

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白蘭に成り代わった、白蘭以上に救いようのないサイコパスな男の話。



白蘭成り代わりモノ

トイ・ドール・ミニチュア・ガーデン

 

 一人の白い男は小さく嗤う。面白いテレビジョンを見ているわけでも、コメディコミックを読んでいるわけでも、誰かと話しているわけでもない。遮光カーテンに光を遮られた薄暗い部屋で、男は一人虚空に向かって笑い飛ばした。やがてその笑いは部屋中に響き渡るほど大きくなりさらに男を笑わせた。何が可笑しいのか、男は理解していなかったがただ可笑しくて笑い続けた。そのうちに疲れ果てて真っ白なシーツのベッドに倒れこむと、男は自身の髪をくしゃくしゃに搔き乱してその手に赤い血を付けた。手入れのされていない爪が頭皮を傷つけたからだ。それがまた可笑しかったのか、男は再び乾いた笑みを浮かべる。

 

「僕が白蘭だなんて、随分と酔狂なことをしてくれる」

 

 男は手についた血も気にせずに硬く胸で合掌し、頭を垂れて神に祈りを捧げる。ところどころ赤く色づいた白い髪がふわりと揺れ男を惨めななりに演出する。その姿はクリスチャンが教会で懺悔しているようにも見え、風によって靡いた遮光カーテンの隙間から差し込む光は神の慈悲か、はたまた天使の戯れか。神聖な儀式を彷彿とさせる祈りを捧げた後、男は天を仰いで思い切り睨みつけた。口元は鋭く弧を描き笑みを湛える。男が感謝したのは神か、それとも悪魔か。

 

 男、否、白蘭は先ほどの間にすべての記憶を思い出した。記憶喪失だったわけではない。本来は今生に置いて記憶している必要はない、前世の記憶というものだ。その全てを思い出した。そして同時に、この世界がかつて生きた世界とは理の違う、まったくの異世界であることを認識した。そう、かつての男が少年期にこよなく愛した漫画の世界だと。

 

 漫画の中の"白蘭"は酷く残虐な性格をしていた。自らの能力に溺れ、世界を望み、多くの命を切り捨てた。挙句は一回りも幼い少年と、巫女の少女に打ち滅ぼされ、悪夢の世界を彷徨う魂となった。そういうキャラクターだった。白蘭はそんな彼が好きで大嫌いだった。ちっぽけな執着のために楽しいことを捨ててしまったのだ。惜しい。白蘭はずっとそう考えていた。

 

 そして今、白蘭は漫画の中の彼として生きている。漫画の中の彼を模範して生きることができる。それはつまり、人知を超えた能力を有することになる、ということだ。白蘭は心の底から喜び打ち震えた。

 

「僕が完璧な白蘭になってあげる」

 

 白蘭、今生の齢7歳。彼は人生の目標を立てた。

 

 

 21世紀中国、上海の郊外に白蘭の家はあった。父は都市部へ働きに出ていて、母は死去し現在は再婚相手の継母が白蘭を見ている。見ている、というものの、張り付いた笑顔から表情の変わらない白蘭を彼女は不気味に思い、必要最低限のコミュニケーションしかとらない。彼は実質一人で毎日を過ごしている。二年前ほどは心寂しくも思ったものだったが、記憶がある今、白蘭にとって都合が良いことこの上ない。何を勉強しようが、作ろうが、どこへ行こうが、彼に干渉してくる人間はいなかった。

 

 初めに、白蘭は白紙のノートに覚えていることを書き出した。いつか忘れてしまう可能性を考え記録することにしたのだ。同時に記憶の整理もできて一石二鳥だった。そして、最後のページに"白蘭"の行動を書き出した。白蘭は"白蘭"の行動を模範するつもりだった。横軸の能力があれば、どんな職業に就くことも可能だろうが、どうせなら面白い方が良い。彼はそう考えて、マフィアを立ち上げることにしたのだ。"白蘭"がマフィアを立ち上げたのは恐らく大学卒業後、マーレリングの守護者が集まってからなのだ。ならば、立ち上げに尽力したのは雲の守護者の桔梗である可能性が高い。"白蘭"が彼を引き入れたのはそのためだったのだろう。ならば、と白蘭は考える。能力が開花したら、真っ先に桔梗の場所を洗おうと。

 

 それから考えるのはこれからのことだった。目指す大学はアメリカのロボット工学で有名な■■■■大学だとして、高級中学――日本でいうところの高等学校である――はどこへ通おうか。どうせなら面白いところがいい。何なら初級中学から私立へ進むのも良いだろう。きっと大学へ入りやすくなる。白蘭はペンを置いて暫く思考を巡らせていた。あまり、納得のいく答えは出なかったらしい。興味を無くしたようにぶっきらぼうにノートを閉じてベッドへ倒れこんだ。そのまま瞼を閉じてシーツを手繰り寄せる。ふて寝である。

 

 ***

 

 白蘭の記憶が戻ってから3年の月日が経った。7歳という幼さだった彼は10歳となり、活動範囲も広がった。ついでに言えば継母との精神的距離も広がったが、白蘭は気にする様子はなかった。

 

 これだけの時が経てば必然と記憶は薄れてくるもので、白蘭は"白蘭"の行動を、心理を思い出せないことが増えた。その為に1週間に一度はノートを確認するようにしている。

 

 そんな時、ふと白蘭は入江正一の名前を目に止めて考える。漫画の世界の"白蘭"は、入江正一の策略に嵌りボンゴレに負けていた。序盤こそ自分の手の平で転がしていたが、終盤はボンゴレに力を貸し結果大きな科学力を得ていた。もしも、と白蘭は思考を巡らせる。もしも、入江正一を現時点で懐柔できたのなら、面白いことになるのではないだろうか。そして、ともう一つの可能性を考える。入江正一が手に入れば、必然的にスパナという天才発明家が手に入る。この二人が自分のものになれば大きな力となり、もっと楽しくなるだろう。白蘭は手を叩いて楽しみ夢想する。

 

 考えるだけでワクワクしてやまないのだから、実行しない手はない。白蘭はこれからの活動予定に日本行きを加える。

 

 随分と都合の良いことに、ここ最近の中国は日本旅行がわずかにだが流行っていた。格安な航空券も手に入りやすくなっている。この分なら、父に頼めば長期休暇にでも連れて行ってもらえるだろう。白蘭がそう考える程度には、白蘭の父は彼に甘かった。母親が死に、継母とも上手くいっていない負い目を感じているためだった。そういった人間の心の隙に入り込むのは白蘭の十八番である。

 

 思い立ったが吉日、ということわざを胸に、夜帰って来た父を笑顔で出迎えた白蘭は自身の想いを伝えた。

 

「お父さん。僕ね……家族で旅行に行きたいんだ。今日のテレビで日本特集がやっていてね、美味しいワショクに落ち着いたオンセン、家族風呂っていうのがあって、一家団欒を過ごすのに良いんだって。お父さん再婚してからずっとこういうとこ行ってなかったし、どう……?」

 

 我が子を愛する父親に、大人のような余計な駆け引きは無用である。純粋に、子供らしく、弱みを見せて、相手の庇護欲を掻き立てる。負い目を感じている人間なら尚更こういった行為には弱いものだ。白蘭はそれをよく理解しているために普段の口調から、いくらか子供らしい言い回しを心がけていた。そして案の定、父は動揺し、白蘭の表情を伺う。彼に抜かりはない。少し照れた様子ではにかむ姿は家族と打ち解けたい子供そのものだった。父は何度か考え、一息吐いた後に了承する。

 

 計画通り。白蘭は思わず前世で見かけた名台詞を口の中で転がして笑みを深めた。

 

 これで日本行きの計画はほぼ確実となる。白蘭は忙しくなる、と身を引き締めた。日本へ行くのが決定しても問題は山積みなのである。並盛への誘導、両親と別行動、この二点は白蘭のコミュニケーションスキルで解決するだろう。しかし、問題は入江正一とどうやって巡り合うか、である。現在、白蘭は能力に開花しておらず並行世界の知識を頼ることはできない。いくら並盛という事前情報があるとはいえ、広い街の中、家から出ているかも分からない少年をしらみつぶしで探すというのは無謀である。ならばどうするべきか。白蘭は情報を書き留めていたノートをめくり考える。入江正一の項目で、一つとっかかりになりそうな情報が存在したのを白蘭は見逃さなかった。Blood+Peppersの文字を。

 

 ブラッドペッパーズ、通称ブラペパは現時点ではブラッドペッパーであり、音楽番組などに稀に顔を出す上海でも比較的有名なバンドである。入江正一はこのバンドをこよなく愛しており、十年後――今から数えれば十四年後のことだが――でも隊服の下に常にプリントTシャツを着用している。それだけのバンド愛があれば今の時代でもファンをしている可能性がある。白蘭はそれに掛けてみることにしたのだ。まずは日本での知名度。上海で名が挙がるからと言って、日本でも同じだとは限らない。あの国は元々海外アーティストが流行るような国民性ではない。身をもって知っている白蘭だからこそ言えることである。

 

 結果としては、あまり知名度は無いようだった。日本語で検索を掛けると上位にサイト、ブログ、Wikiが並ぶ程度で、4ページ目にもなれば関係ないサイトがずらりと並んでいた。これならば、ブラペパのグッズを身に着けているだけでファンからいくらか注目されるだろう。入江正一なら尚のこと食いついてきそうである。そう思った白蘭は使えるかもしれないため、上海を発つ前に購入しておくリストに記載しておく。

 

 情報が少ないながらもなんとか入江正一と会うために思考を巡らせる白蘭だが、何も会うだけが目的で日本を目指すわけではなかった。目標は会い懐柔することだが、会わなくてもこれからの計画に支障はない。出会えれば漫画に無い知らない展開になるため面白いと思った程度で、出会わなければいずれ工科大学で落合い漫画と似たような展開になるだけだからだ。そこで、日本へ行くもう一つの目的を白蘭は作った。沢田綱吉との接触、並盛及び黒曜の偵察。綱吉との接触による未来への影響を考えれば当然の発想だった。彼という人間は一度懐に入れた相手を憎めない。そんな相手が敵対してきたらどうなるだろう。白蘭は想像だけでもゾクゾクと快感を身体に巡らせた。楽しいに違いない。それが白蘭の考えのすべてだ。並盛と黒曜という町は、漫画の通りに家庭教師がやってくるのであれば雲雀恭弥率いる風紀財団と六道骸率いる死刑囚の巣窟になる。敵の情報を得るのは早ければ早いほど良い。

 

 これが未来を知る者の強みである。今はまだ無力な子供故に行動範囲も情報も限られてくるが、それでも他の者たちよりも行動を早く起こすことができる。今はそれだけで十分だった。さながら神にでもなった気分を白蘭は口の中で味わう。

 

 しかし、白蘭は神になる気はさらさらなかった。白蘭は"白蘭"ではない。この世界を気持ち悪いと思ったことはないし、この世界を本当の意味で思いのまま操作したいとも思わない。気持ち悪いからテラフォーミングします、何て駄々をこねる子供には到底なれないのだ。白蘭は当事者として、また傍観者として、いずれ巻き起こす世界大戦を楽しみたい。ただそれだけである。

 

――捻くれ者だと言われたことがあったけれど、前世の自分(ぼく)はそれが理解できなかった。でも今の自分(ぼく)は分かったんだ。確かに前世の自分(ぼく)は捻くれ者だったんだ。実現する実力がなかったんだもの!

 

――この夢想(ゆめ)を叶えてしまえば、もう誰も前世の自分(ぼく)を捻くれ者だと言わなく(言えなく)なるね。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

白蘭:"白蘭"になったらやってみたいこと全部やるつもり。

"白蘭":並行世界の自分が自分よりやばい奴で頭覚めそう。

正チャン:一瞬、胃痛になりそうな予感がした。

綱吉:この時点で8歳。

 

年齢設定

白蘭→正一の一つ上

正一→綱吉の一つ上

綱吉→原作突入時点で12歳。

 

 

トゥイー・ボックスの人形劇場聞いてたら欲望が抑えられなくなりました。ミクちゃんと白蘭って似てない?

ということで、発想元が心がささくれている作曲家様の小説になりました。

続きはいくらか考えてるけどほとんど救いがない。

 

Q.なんで白蘭成り代わりなの?

A.原作白蘭は恐らく身の丈以上の能力で心を病み、その結果あの正確になったためまだ救える性格してる所謂ソシオパスかもしれないっていう考えと、歌詞の人格のサイコパス性をすり合わせた結果、と、「ミセカケ未満ホンモノ以上」という歌詞を混ぜ混ぜしたら成り代わり主人公になりました。作者が白蘭としてやってみたいこと、白蘭にやらせたいことの二つを考えて都合がいいのが白蘭成り代わりでした。

 

こう、「踊ればいいじゃないか」という他人事の視点とか、「みんな尻尾たらして」「笑えばいいじゃないか」って王様気分で玉座にふんぞり返ってる感じとか、「"meta"(仮定:理屈・理由)なんてない」「遊んでいただけ」という純粋かつ子供じみた動機をすごく白蘭にしてほしかったんです。

他にも「ひねくれ王子(綱吉)」「ワガママプンセス(ユニ)」と白蘭視点で置き換えて、彼らに「難しいこと言わないでほしい」ってぶーたれてるのもなんとなく白蘭ぽいなと。

最後の自殺のシーンですが、最後の最後まで嫌がらせするためだけに死んでくれたら救いようのない屑として"白蘭"との相違性を描けそうですし、楽しそうなことこの上ありません。

 

作中内では歌詞の直接的な言及はもちろん避けますが、全体的な流れとしては参考にしたいなって思ってました。

うーん、「積み木重ね人形揃え」だけで5,6話くらい使いそうですよね。

 

今回も例によって(?)上記で力尽きてしまったのと、ほぼオリジナル構成になるために原作部分をほとんど描けないため小話が入れられないのでここで終わりです。

 

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