頭に浮かんだ設定吐き出す場所   作:Colore

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この作品はフィクションです。それっぽい組織が出てきますがそんな事実はありませんのでご了承ください。組織とか考えるの楽しいよね。


ヴェルデの助手になる話

 風によって紡がれる木々のせせらぎ、ちろちろと陰っては光る木漏れ日、耳になじむ女性の柔らかい歌声。風で(なび)くうねりのある女性の黒髪は幻想的な景色を一層非現実に思わせる。幸せそうに歌う彼女と目が合えば、花も咲くような笑顔を浮かべ、聞きなれない異国の言葉で愛おしそうに話しかけてきた。それがまた心地よくて、ぬくもりにあふれた世界を名残惜しく思いながらも意識を手放した。

 

 

 

「夢……」

 

 ふっと目を覚ましたのは暗闇の中。自分の手すら確認できない空間に少年は首を捻る。夢と現実を混同しているわけではない。確かに自分はさっきまで違う空間にいたはずだ。しかし少年はそれがどこだったかは思い出せないでいた。フクロウの鳴き声と葉の擦れる音、湿った匂いと土の感触から少年はこの場所が少なくとも林であることを察する。もし林、もしくはそれ以上の環境であるならば、暗闇で無暗に動くのは得策ではないだろう。少年はそう判断して朝が来るのを待つことにした。

 何故この場所にいるのか分からない以上、状況確認が必要である。少年はそう判断して今までのことを振り返った。

 今まで何をしていた?

 分からない。

 何のためにここにいる?

 分からない。

 自分の職業は?

 分からない。

 自分の名前はなんだ?

 分からない。

 分からない。分からない。分からないこと続きである。

 今着ている服はなんだ?

 恐らくナイロン地のベストだ。

 リュックサックはあるか?

 あった。

 懐中電灯は持っているか?

 感触としては、無い。

 少年は考える。物の名前は憶えているようだ。今何が必要か、それが所持品にあるのか。そういった判断もできる様だ。それらを踏まえて少年は一つの結論にたどり着いた。

 自分は記憶喪失である。

 少年は腕を広げて寝ころんだ。どうせこのまま何もせず朝を迎えるのだから、寝て体を休める方が先決だ。自分自身なんとも図太い奴だと評するが、それが元来自分の性格なのだろう。一つ、自分のことが分かって少年は満足げだった。

 雲の合間にうっすらと月が輝き、木々の間から少年の周りを淡く照らす。細部までは認識できずとも、自分の周りが今どんな状況かだけは判別が可能だった。少年は寝転がった体勢のまま首を左右に振って辺りを見回す。すん、と鼻に柔らかな甘い香りが広がった。嫌味の無い仄かな香りはまさしく花のもので、見れば周りには何十本、いや恐らくは何百本もの花が咲いている。筒状の、まるでベルのような花弁を持った花はその重さからか頭を垂れ、何かを懇願する妖精を彷彿とさせる。美しいその花々を見ながら、少年は二度目の夢入りを果たした。

 聞こえるはずもありはしないのに、少年はどこかでベルの合奏が鳴った気がした。

 

 

 

 瞼への明るい刺激で少年は目を覚ます。冷たくなった肌の表面をさすりながら少年は体を起こした。辺りはすっかり明るくなり、自分の手も確認できた。握って閉じて、感度は良好である。しかし、はて、自分の手はこんなに小さかっただろうか。少年は考えてみるも、以前の自分を覚えていないのだから比較のしようがない。今考えることではないと頭の隅に追いやって、昨夜できなかった持ち物の確認を始める。

 機能性を重視した黒いリュックサックの中身はそれほど入っていなかった。必要最低限の筆記具、何も書かれていないメモ帳、何に使うのか用途不明な機械、何かを採取する予定だったのであろう小瓶とピンセット、水分補給のための小さな銀色の水筒、方位磁針。自身を証明するものは一切持っていなかった。一体どうやって過ごして何をして生きてきたんだ? そんな疑問が少年に浮かぶが答えは出てこない。自分が記憶している限りでは、この年の少年は親の庇護下にあるものではなかっただろうか。だとすれば、たまたま好奇心で立ち寄った森に入り迷子になった、ということだろう。我ながらなんとも情けない話である。記憶が無いから証明はできないが、可能性は大いにあるだろう。少年は自分の仮説にため息を吐いた。

 少年は背伸びをして固まった身体を解し、ひと先ず出口を探すことにする。仮説が正しければ今頃捜索願が出されている頃だろうが、もしここが森の最奥であれば見つけてもらえる可能性は低い。なんとしてでも人家に近づかなければならなかった。幸い今は太陽もあり方位磁針もある。東に向かえばきっと何かあるだろう。少年は意を決して道の無い森の中を歩き始めた。

 歩き始めて三時間。小さな水筒に入った水は底をついた。あらゆる可能性を考えて少年は節約して飲んでいたのだが、もともと入っていた量が少なかったのかあっという間になくなってしまった。その事実に顔を顰めるも、何も収穫がなかったわけではない。歩いて歩いて歩き続けて、ようやく人の営みを感じる音に出会えたのだ。その音は僅かながらも聞き違えることはないし、幻聴でもない。人家に近づいたのだ。少年にとって大きな収穫だった。後はその音を辿っていけば良いのである。苦労が報われたからか、少年の足取りは軽く早くなり最後には小走りになって森から飛び出した。

 少年の目の前に広がる人家は石造りで何件もくっつくように並ぶヨーロッパの風景だった。少年の記憶は木造の平屋や立ち並ぶコンクリートビルが浮かんでいたので、そのギャップに首を傾げる。記憶がどこの国のものかは覚えていないが、自分は所謂観光客で外国に来ていた人間だったのだろうか。そんな疑問も交番に行けば解決するだろう。安心からか、今までごまかしていた疲労感が少年を襲いすでに足は小刻みに震えている。交番へ行くにしても休憩が必要だろう。見慣れない住宅街を進んだ先の噴水に腰掛け、少年は街並みを観察した。

 目に映る人々は等しく鼻が高く、また色白の人間ばかりだった。その光景を見慣れない、と認識した少年は、やはり自分は違う国の人間だったんだろうと推測する。自分がどこの誰で、何をしていたのか。本当に思い出せるのだろうかと不安が襲うが、少年は頭を振って考えるのを止めた。答えの出ないものをいつまで考えていたって始まらない。どうせいつかは戻るのだし、戻らなくても生きているのだからどうとでもなるだろう。少年の心は強かだった。

 それより、と少年は自分のリュックサックへ意識を向ける。用途がまるで分からないボロボロのリュックサックに見合わない機械が気になって仕方なかったのである。この広場であれば森よりは安全だと考え、その機械を手に取った。二つに分かれるその機械はコードでつながれていて、片方は画面や指針が、片方はタイルが付けられている。何かを測定するためのもの、というのは判明したが、何を測定するためのものかは分からない。分解したらわかるだろうか、と少年は好奇心を持つものの、明らかに高級なものであるそれを分解するには知識が足りていなかった。

 

「おや、こんな郊外で見かけるなんて珍しい」

 

 諦めて戻そうとしたとき、声をかけてくる人物がいた。少年はその存在を探そうとしたけれど、声の主と思わしき姿は見当たらない。もっと上からだろうか、と視線を空へとやったとき、ひょいと機械が取り上げられ少年はその存在をようやく認識した。

 緑色の無造作に跳ねた髪に、黒縁の大きな丸い眼鏡をかけ、白衣を身にまとったその姿は赤ん坊そのものだった。彼はそのまま慣れた手つきで機械を見やり、満足したのか口角を上げる。

 

「いいものを持っているな、少年。だが少し改造してあるな……この機械で何を測定するつもりだった? 答え次第では私が買い取ってやってもいい」

「え……あ、いや……その」

「なんだ目的がないのか? ただの改造小僧に過ぎないか。つまらん」

「違う! あ、いや分からないけど……でもただいじっただけじゃない! 計測できれば現代科学に大きな影響を与えられるほどの発見になるはずだ! ……て、その、僕が言えるようなことじゃないんだけど」

「先ほどから要領を得んな。言いたいことは簡潔に述べろ」

「……僕、記憶喪失で。それが何の機械かも分かってないんだよ」

「分からないのに反論したのか、キミは」

「その機械は僕が作って、確かに目的があって作ったものだ。それに誇りをかけている。他人に侮辱されるのは許せない」

「……なるほど、キミも科学者の端くれというわけか。その機械についても知りたいし、どれ、キミの名前を教えてくれ。もしかしたら何か分かるかもしれん」

「……名前も覚えていないんだ」

「全く面倒な。これでは何の研究してたかも分からんな……いや、キミほどの年齢であれば親御さんがいるだろう。彼らに聞けばいいか。何か身分証明ができるものは持っていないのか」

「それらしいものは、何も……」

「どれ、そのリュックサックを見せてみろ。どこかで見覚えがあったような気がするんだが」

 

 彼は手に持っていた測定器を少年に渡し、脇に置いていたリュックサックに手を伸ばす。中身を見るでもなく装飾を気にしている彼は、ある一点を見つけると驚いたように声を上げた。

 

「この紋章……アコナイトベル研究所のものじゃないか。確か話によればこれの裏に……ああそうだやはり名前が記されている。キミの名はマルコ。まさか、ABIN(エイビン)の研究員だったとはな」

 

 彼は目を見開いて少年――マルコに向き直る。マルコには彼の言っていることが分からなかった。アコナイトベル研究所? マルコ? エイビン? そのどれもが聞きなじみがなかったのだ。いや、頭の片隅では同意している自分は存在するのだが、現在覚えている記憶ではそんな機関も知らなければ名前の響きもしっくりこない。自分はそんな女のような名前ではなかったはずだ、しかし自分はマルコであると肯定している自分もいる。マルコはさらに頭を悩ませた。

 

「とにかくABINへ向かうぞ。何かわかるかもしれないからな。……あの研究所は私でさえ出入りができないほど厳重な機関だ。この際に見学させてもらうぞ、マルコ」

「ああ、うん……ところで、キミは誰?」

「記憶喪失であれば私のことも知らなくて当然か。私はヴェルデ。科学者をやっている」

「赤ん坊なのに……?」

「人は見かけによらずというだろう。キミだって、年端のいかない少年なのにABINの人間だ。外面に騙されるのは科学者として恥ずべきことだぞ」

「え、あ、ごめんなさい……?」

 

 こうして、マルコはアコナイトベル研究所を目指すことになった。会話もない道中、マルコはふとした疑問を覚える。この世界に慣れている自分と、慣れてない自分が存在していることだ。世界に対して違和感を持つ自分は、赤ん坊がこうして一人で歩いていることに驚きを持つし、何かが違う。そう感じるが何が違うのか分からない。研究所へ行ったらすべて思い出すのだろうか。不安を胸に抱きつつ、マルコはヴェルデに連れられ電車に揺られる。

 

「おや」

 

 ぼーっとしていたヴェルデが突然声を出し、マルコの尻ポケットへと手を伸ばす。小さな手でつまみ上げたのは小さな一つの花だった。今朝方、マルコが世話になった森に咲いていた花の一つだ。花畑の上に寝転がっていたから千切ってしまったのだろう。ヴェルデは掌の上の小さな花を転がして観察する。

 

「これはイングリッシュ・ブルーベルの花だな。森にいたのか?」

「目が覚めたら森の中にいて、その花がたくさん咲いてたんだ」

「ふむ……そういえば、この国アイルランドには面白い伝承があったな。ブルーベルが咲く森に子供が迷い込むと、二度と戻ってこないのだと。まあ、キミは戻ってこられたのだから迷信に過ぎないのだろうがな」

 

 それ以来口を閉じてしまったヴェルデに、マルコは意外に感じる。彼は研究者として現実を追求する者、そういった迷信や伝承を信じるタイプではないと感じていたからだ。だからだろうか、彼の話した伝承はマルコの記憶に強く根付くのだった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

マルコ:ちび〇〇コって呼ばれそうだけどなんでだろう。

ヴェルデ:見たところ年端もいかない年齢に見えるが自分と同じような理由で小さいのだろうか。

 

 

 

 

この後は研究所にいってもしかしたら記憶が戻るかもしれないし戻らないかもしれないし未定。

っていうかもともと記憶がある設定で考えていたのに書き始めたら記憶喪失になってしまった。どゆこと。

とりま、何とかヴェルデの助手になってお互いの理想の追求を頑張ってほしい。目指せノントゥリニセッテ発見&防護服の開発! あとは個人的に主人公もロボット工学含めた科学者なので死ぬ気の炎の活用方法とか色々開発してほしい。例えば死ぬ気の炎をその他に応用可能なエネルギーに変換する装置の簡略化とか。新しい活用方法とか。考えるの楽しそう。

ブルーベルの森を出したいがためにアイルランドに設定したんだけど、これのおかげでアイルランドにめっちゃ興味が出てきた今日この頃です。どうしよう、まだドイツも調べてる途中なのに。最近は何とかまだネット上の情報だけで、アイリッシュ・マフィアだとか、ネーミングについての話とか色々勉強中です。流石にアイルランド語は本場に行かないと学ぶ機会はなさそうだし、その代わりブリティッシュ・イングリッシュでも勉強しようかなぁ……? 綱吉くんにはぜひクイーンズ・イングリッシュを完璧に話してほしいところですね。

そんなこんなで、今考えてる別のお話はブリティッシュマフィアVSアイリッシュ&イタリアンマフィアみたいな話ですね。思わぬところからネタがぽんぽん浮かんでくる。完結させる気はあるのでしょうか。

島国のアイルランド、イングランドは妖精の話なんかも多くて、それを使っていやらしい設定にしたりするのが凄く楽しいんですよ。はい。骸大激怒な内容いっぱい作れそう。

 

アイルランドの話はさておき、皆さまの投票が嬉しくてマーモン成り代わりの続編をちまちま書こうと思ってます。お楽しみに(?)

続きがほしいやつ

  • ヴェルデ助手
  • きまぐれで
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