Re:夢X夜   作:ろあ

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2019/11/15

 私は王女という立場でダンジョンを運営していた。温めている作品の影響がかなり見て取れるが、特に怪物の姿にはなっていなかった。

 私はスタートからかなり長くの間、ミスだらけの経営をしていた。最大三×三マスの空間に部屋を配置するのだが、スコップのアイテムを見つけても部屋を拡張せず、ずっと二部屋のまま経営していた。弄るうちに寸断されたトロッコの線路がそのままになっていて、物資が運び込まれていなかった。さらに治水に失敗しており、植物も育っていなかった。このうち、トロッコの線路が一番手のかかる問題だった。終点のパネルは特殊なものを正しい向きに配置しないといけないのだが、それを指定するコマンドが分からない。触るうちにもっと幅の広い線路のパネルまで出てきた。おまけに先に水路を作ってしまったため、線路はほとんど水の上を走っている。部下と頭を捻った挙句、「まあ車輪幅の広いトロッコも来るでしょうから、これでもいいでしょう」と妥協することになった。

 一仕事終えた私は食堂へ行って、うどんを食べた。トッピングの卵が50円することに気付いた自分は手を止めたが、流石に出汁まで追加料金だとはつゆ知らず、20円取られた。

 

 

 

 別のシーン。私はかなりポップ寄りのアドベンチャーゲームのような世界で、小高い丘の上に登った。そこにはこれまたポップな恐竜がいた。どうやらこれまで何体か恐竜を倒してきたようだが、この恐竜とは二度目の戦いだ。そしてそれは全体のラスボスにあたるようだ。戦闘はリズムゲームのような具合で、観覧車のような足場に向かってくる色とりどりのマークをコマンドで対処するというものだった。一息ついて丘から下を見下ろすと、第一ステージで苦戦している人が見える。ほとんどチュートリアルだ。リズムに合わせてボタンを一回押すだけ。しかし、それをぴったり押すことがなかなか難しいようだ。スパルタコーチが隣について、何度もやり直させていた。「いいか?ウン、スッ(呼吸音)、ポン、だ。言うとおりにやるんだ」と繰り返していた。

 それから、コーチングはいつの間にか料理の指導に、私は弟子の側に回っていた。

 

 

 

 そのあと、裏ステージを目指して攻略していくことになった。これまでとは打って変わって無機的な世界、真っ白な空間だ。秒針のように回転する棒に乗った私は、周囲の柱の一本にかかる梯子を掴んで登ってゆく。しかし梯子には妨害者がいて、失敗して転落した。

 落ちた先は田舎の山の中の広場だ。祭りだろうか、夜中なのに人が集まっている。私の隣にいた少女は花火が上がると、その出来がいまいちだったのか「あいつら何やってるんだ」と毒づいた。どうやら彼女はこのイベント運営の音頭を取っていたらしい。凛としたという表現の似合う、気丈で魅力的な少女だ。それから少女は歌った。とても上手かった。私も多少なりと歌ったかもしれない。

 

 祭りが終わると、私は少女に連れられてまたあの無機質空間を進んでいた。今度は少女の庇護により、梯子の妨害者は苦にならなかった。

 それから私たちは、実に現実的な空間へ出た。山道だ。道路から、切り立った岩壁に登る。先に登りきった少女は私の手を取って引き上げてくれたが、どうにもなかなかうまく上がらなかった。

 

 

 

 さて、ここで状況は少しだけ変わる。私は山への出発前の物語を客観視していた。場所は大学だ。主人公は特定の人物でもキャラでもないが、後述の要素から私の作品の没主人公がモデルである可能性が高い(第二世界での物語の一つは外的世界による俯瞰と干渉を前提とする。この主人公はおそらくプロト版として抹消されるであろう外殻世界の第二候補、近未来都市オーサカに住む青年である)。少女と共に山に登る主人公を、彼の友人が追いかけている。この友人の容姿はアニメ『氷菓』の福部里志だったが、物腰は非情に穏やかでない。どうやら少女と山に登る主人公を妬んでいるようで、「野郎、抜け駆けとは許せねぇ。ぶっ飛ばしてやる」と息巻いている。ちょうどその没主人公にも里志のようなお調子者の友人がいるのだ。

 主人公と里志は一度部活に呼ばれてある教室へ集まった。里志は他の部員の手前、主人公に手出しできないようである。一人の女性部員が実在する私の文芸部友達に、新しい髪型は似合っているかと訊いた。その女性部員は顔立ちに恵まれず、梳いた前髪は毛が薄いようにも見えて不格好だったが、友人は自分がカットさせられる手間を憂慮して社交辞令で済ませた。

 そうしている間に主人公が抜け出し、里志のチェイスが始まった。主人公はこの日六コマの授業を入れていたため六階からスタートするのに対し、七コマ授業を入れた里志が七階から追う形だ。しかし主人公は回り道をしてしまったようで、直ぐに階段で鉢合わせて捕まりそうになった。その後も何度か里志とすれ違った主人公だったが、なぜか里志は主人公に気付かない。ここでしたり顔の主人公の解説が入る。主人公は以前山に行ったときに襲ってきた男から緑のカーディガンを入手していて、それをここで変装に使っていたのだ。この手の頭脳戦を仕掛ける役回りが、彼を自作の主人公と同一視させる最大の所以である。さて、次に里志は主人公の教室へ行って彼のクラスメイト達に目撃情報を尋ねた。しかし、ここでまた主人公のしたり顔が入る。「俺は普段周りにイタリア語専攻だと言っているが……さあて、本当は何専攻なんだろうなぁ?」と。こうして主人公は里志を撒いた。

 

 私はそれから主人公になった。なぜか山道ではなく階段を歩いていた。ガラスブロックの壁に囲まれた、長い長い階段だ。頂上あたりまで来ると、後ろから醜女がついてきた。造形の悪さに化粧のケバさが拍車をかけている。醜女は刺すような敵意を放っていたが、やがてそれは私でなく、私の追っている美女に向けられていることに気付いた(先ほどの祭りの少女ではない)。美女は醜女の模範解答のような姿をしていた。あるいは醜女が美女の失敗作なのか、とにかく同じ格好をしているのにあまりに出来に差があるのだ。

 頂上まで着くと階段は下りに変わり、横軸で見てもUターンして地下へ向かっている。私はその踊り場の部分にカウンターを作り、美女を相手にバーテンダーをやっていた。やがて数人の男女がそこへやってくると、私は万年筆を透明な液体の入ったグラスに突っ込み、ナプキンに文字を書いた。特殊なインクか何かだろうか?だがメッセージが浮かび上がる前に場は混乱した。数人の男女は雪崩れ込み、美女は地下へと逃げていってしまったのだ。

 

 どうやら私と醜女、数人の男女はあの美女に対する刺客だったらしい。そして私は美女を逃がした責により懲罰を受けていた。まず、尻に超高温のバターのようなものを塗られた。それからヤカン一杯の熱湯と水を絶えず飲まされた。しばらく水責めにあっていると、グループのリーダー格の男がやってきて「虹こちょこちょ」の時間だと告げた。男は私の口に唐辛子や錠剤、ハーブなどを突っ込んで味を滅茶苦茶にした。辛いの苦いのでひいひいいっているうちに、男は私の喉をくすぐった。

 

 

 

 私は情けない悲鳴と共に飛び起きた。喉の渇きと鼻づまりで、ひどく息苦しかった。


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